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ウルトラマンマックスの第1話


地球上空──

宇宙空間から、巨大な赤い光球が飛来する。


そして日本、とある山中の河原。
親子連れの3人組がキャンプを楽しんでいる。

「お母さん、行って来るよ!」「はぁい、気をつけて」
「お父さん、行って来ます!」「あぁ、行っといで」

突如、何かに怯えたかのように、山から大勢の鳥たちが飛び立つ。

林の中に駆けてゆく少年。目の前の洞窟の中から、不気味な声が響く。

少年の両親が不安を感じ、息子を捜し始める。

「翔太!」「どこだ、翔太!」「翔太!」

突如、地面が大きく揺れ始める。

「あぁっ!?」「危ない、つかまれ!」

少年・翔太の目の前の洞窟。不気味な目玉が覗く。

山が突然にして大噴火──!


テレビがニュースを伝える。

龍厳岳(りゅうげんだけ)の突然の噴火は、地元住民に大きな衝撃を与え、現在も予断の許せない状況です。近くの公民館や小学校などに避難所では……』

龍厳岳付近の住民たちが避難した避難所。
炊き出しをしているボランティア団体の中に、主人公の青年、トウマ・カイトの姿がある。

カイト「どうぞ。がんばって下さいね!」

そのそばでは、翔太少年が警官に必死に訴えている。

警官「怪獣?」
翔太「本当だよ。こんなにでっかい目玉を見たんだ!」
警官「確かにあそこは、龍の洞窟って名前だけどね。龍が住んでるってのは古代の伝説でぇ……」
翔太「龍じゃないよ! 怪獣だよ!」
両親「す、すいません。なんせ、子供のいうことですから……」
翔太「本当だってば! 信じてよぉ!」「怪獣だよ!」
両親「翔太!」


証拠を確かめるために翔太が1人、龍厳岳に入る。
地面が大きく揺れ、山肌が砕け、巨大な怪獣・グランゴンが咆哮とともに出現する。

翔太「うわあぁ──っ!?」

避難所の人々もそれを見て、大混乱に陥る。

「うわぁ──っ!」「怪獣だぁ!!」

山へ向かおうとする翔太の両親を、警官が必死に制止する。

警官「どこへ行くんですか!?」
両親「息子が、龍の洞窟へ行ったんですよ!」
警官「危険です! 早く避難して!」

それを聞いたカイトが、咄嗟に車に飛び乗る。


21世紀──
世界各地を襲う自然災害は留まるところを知らず
ついには 空想の産物と思われた「怪獣」がその姿を現した
人類の危機に対処すべく 国連はUDF(地球防衛連合)を設立
その精鋭チームが 対怪獣防衛チーム「DASH(ダッシュ)」である


東京湾上に浮かぶ、対怪獣防衛チームDASHの日本支部基地、ベースタイタン。
司令室に集う隊長のヒジカタ・シゲル、隊員のコバ・ケンジロウ、外国人隊員ショーン・ホワイト、紅一点コイシカワ・ミズキ、オペレーターアンドロイドのエリー。
そこに司令官のトミオカ・ケンゾウが現れる。

ヒジカタ「長官! ついに、わが国にも……?」
トミオカ「うむ。諸君、UDFも存在を把握していない、未知なる怪獣が現れた」
エリー「エリアJI549。全長55メートル」
トミオカ「市街地が近い。被害が広まる前に食い止めるんだ」
ヒジカタ「はっ! DASH、出動!」
一同「了解!」

空中機動母艦ダッシュマザーに一同が乗り込む。

ミズキ「みんな、訓練の成果をみせましょう」
一同「了解!」

エリー「全隊員、搭乗確認。計器類異常なし。出撃準備、完了しました」
ヒジカタ「ダッシュマザー発進!」


山中を闊歩する怪獣。上空にダッシュマザーが飛来する。

エリー「ダッシュバード1、ダッシュバード2、出撃」

ダッシュマザーから、ミズキの乗る戦闘機ダッシュバード1号、コバとショーンの乗るダッシュバード2号が出撃する。

ヒジカタ「フォーメーションβ7でヤツを叩く」
ミズキ・コバ「了解!」

グランゴンの攻撃をかわしつつ、ダッシュバードがミサイル攻撃を繰り出す。

一方でカイトの車も山中に到着する。


ウルトラマンマックス誕生!


コバ「とどめだ!」
ミズキ「待って、地上に人がいます!」

カイトが気絶している翔太を見つけ、彼を抱きかかえて車に運び込む。グランゴンが追って来る。

ヒジカタ「作戦変更、フォーメーションγ3だ!」

2機のダッシュバードが変形。両翼から鋭利なブレードが展開する。
怪獣が口から火球を撃ちだす。カイトが必死にそれを避けつつ、車を走らせる。

ミズキ「冷却弾、投下!」

ダッシュバード1号の放った弾丸から冷却ガスが振りまかれ、グランゴンの体がみるみる凍結する。

ミズキ「フリーズ完了」
コバ「一気にケリつけるぞ!」

グランゴン目がけてダッシュバード2号が舞い降り、ブレードで巨体を叩き斬る。
氷付けの巨体が砕け散り、無数の破片となって地面に転がる。


無事に避難所に戻ったカイト。翔太が救急車に運び込まれる。

両親「どうもありがとうございました」「どうも本当に、ありがとうございました」
カイト「いえ……」

救急車が走り去った後、カイトのもとにミズキが現れる。

ミズキ「今後は無茶な行動は避けて下さい」
カイト「え……? あぁ、DASHの人?」
ミズキ「今回は奇跡的に無事ですみましたけど、一歩間違えれば死んでいたところですよ」
カイト「でも、あの子も俺が助けなければ死んでいたかもしれないでしょ!? 俺も誰かを助けたいっていう思いはDASHに負けてない」
ミズキ「……」
カイト「負けたくないんだ!」


ベースタイタン司令室。

エリー「怪獣の細胞組織は、生物でありながら鉱物とよく似た特性を持っています」
ヒジカタ「だから溶岩の中でも平気だったわけだ……」
コバ「なんで突然こんなヤツが現れたんだ?」

トミオカと、DASH専属の怪獣生態学者のヨシナガ・ユカリが現れる。

ヨシナガ「世界各地で報告される怪獣災害。それらと無縁ではないことは、確かね」
トミオカ「ヨシナガ君。君の仮説を、みんなに話してくれ」
ヨシナガ「生態系には、調節機能があるの。だから特定の種が増えすぎると、天敵が現れ、個体数が制限されてしまう」
ヒジカタ「人類にとっての天敵が、怪獣だということですか?」
トミオカ「そうだ。人類の繁栄はある一線を越え、怪獣という試練が与えられた」

警報が鳴り響く。

エリー「伊豆半島の沖合いに新たな怪獣が出現しました」


伊豆の海に怪獣ラゴラスが出現。
建築物が次々に破壊され、人々が逃げ惑う。そこへダッシュマザー、ダッシュバードが飛来。

ショーン「怪獣の進行方向は龍源町だよ。Why?」
コバ「You and I! 退治するのが俺たちの仕事だ!」

ラゴラスが口から光線を放ち、光線を浴びたビルが凍結して砕け散る。

エリー「マイナス240度の冷凍光線です」
コバ「熱かったり寒かったり、忙しいヤツらだな!」
ヨシナガ「あれほど高温の生物が出現したからには、その逆の特性を持った生物も現れる。2体が同時に出現してくるのは、いわば自然の摂理なのよ」
ヒジカタ「すると、溶岩怪獣はもしや、まだ?」


カイトが、翔太の運ばれた病院を見舞う。

両親「おかげ様で、翔太も無事でした」
カイト「もう大丈夫か?」
翔太「大丈夫……」
カイト「親に心配かけんなよ」
翔太「お兄ちゃんのお父さんとお母さんは?」
カイト「……」

突然の轟音、病院が激しく揺れ、人々が驚く。

カイト「大丈夫! 落ち着いてください、大丈夫ですから!」

龍厳岳が再び噴火。噴火口から溶岩が流れ出る。

DASHの倒した怪獣の破片が溶岩を浴び、溶岩の海の中から怪獣グランゴンが復活する。


ヒジカタ「龍厳岳の怪獣が復活?」

DASHの砲撃を浴びつつ、2体の怪獣が出くわし、怪獣対怪獣の戦いが始まる。
ラゴラスの冷凍光線、グランゴンの火炎が衝突。その余波で、DASH機が激しく揺れる。

コバ「計器が、異常だ!」
ヒジカタ「エリー、何が起きた!?」
エリー「熱と冷気、相反する要素が拮抗して生まれた特殊な振動波が、精密機器に異常を」
コバ「解説はいいよ! どうすればいい!?」
ヒジカタ「各機着陸! 地上戦に切り替えよ!」

DASH機が次々に不時着。病院から人々が逃げ出す。

カイト「大丈夫ですから、落ち着いてください! 落ち着いてください!」

ミズキ「私が食い止めなきゃ…… 病院が!」

孤軍奮闘するミズキだが、ついに怪獣の一撃を食らってしまう。

カイト「あ……!」
ミズキ「あぁっ!?」

ダッシュバード1号が不時着。カイトが駆けつける。

カイト「おい、大丈夫か!?」
ミズキ「あなたは……」
カイト「DASHには負けないって言っただろ?」
ミズキ「は、早く避難して」
カイト「君の代りに俺が飛ぶ」
ミズキ「え……?」
カイト「俺、先月DASHの入隊試験受けたんだ。最終試験で落ちたけど、今度は落ちない自信がある!」
ミズキ「や、やめて……」

気絶したミズキに代り、カイトがダッシュバード1号に乗り込む。

カイト「あれ……? これ、最新機種か?」

初めて見る操縦席に戸惑いながらも、カイトの操縦でダッシュバード1号が飛び立つ。
倒れているミズキにDASHの面々が駆け寄る。

一同「ミズキ!」「ミズキ!」
ヒジカタ「ミズキ、誰がバード1を操縦しているんだ!?」

ダッシュバード1号が怪獣たち目がけて銃撃。
ラゴラスの吐き出した冷凍光線が、ダッシュバード1号をかすめる。

ミズキ「あ……!?」

制御を失ったダッシュバード1号が墜落。眼前にどんどん地上が迫る。

カイト「わああぁぁ──っっ!? 俺がやられたら、たくさんの人が犠牲になる…… だから頼む! 飛べ! 飛んでくれ!」

地球上空を漂っていた光球が突如、地上へと降りてゆく。
今にも地表に叩きつけられんとするダッシュバード1号を、光球が包み込む。


「カイト…… カイト……」

不思議な空間の中で、カイトが目覚める。

カイト「ここはどこだ……? 誰だ…… 俺を呼ぶのは?」

目の前に、光に包まれた巨人がいる。

謎の巨人「私は、君たちが『M78星雲』と呼ぶ別の銀河系からやって来た」
カイト「……俺を救ってくれたのか?」
謎の巨人「この星の衛星軌道から君たちの文明を監視する内に、私は自らを犠牲に戦う君の勇気に、共振する個性を感じた。君と一心同体になることで、私は一定の時間ならばこの星で活動することができる。君の力を貸してほしい」

巨人の手から小さなアイテムが放たれ、カイトの手に収まる。

謎の巨人「君1人の力では尊い命を守りきれなくなったとき、それを使うといい」


怪獣たちの頭上から突如、まばゆいばかりの光が降り注ぐ。
光の中から巨大な人影が現れる。

驚くDASHの面々。そこに現れたのは、全身を赤と銀で彩られた巨人であった。

ヒジカタ「なんだ、あれは!?」

襲いかかってくる怪獣たちを相手に、巨人の戦いが始まる。
強烈なパンチ、キックが次々に怪獣に炸裂。
怪獣たちの突進攻撃。巨人は軽やかな身のこなし、素早い動作でかわす。
自分よりはるかに上回る体躯の怪獣を、巨人が投げ飛ばす。

巨人の胸のランプが点滅し、エネルギーの消耗を知らせる。

グランゴンが熱線を、ラゴラスが冷凍光線を吐き出す。
巨人が頭部からブーメランを放ち、光線を裂く。

巨人が左手を高々と掲げる。エネルギーが集中していく。
左腕から放たれた必殺光線を浴び、グランゴンとラゴラスが爆発四散。

病院から逃げ出していたから、歓声と拍手があがる。
眼を輝かせながら巨人を見上げる、翔太少年の姿もある。

勝利をおさめた巨人が、空の彼方へ飛び去って行く。


後日、ベースタイタイン。

ヒジカタ「相次ぐ怪獣被害に備え、DASHも増強が図られることになった。諸君に新入隊員を紹介しよう」

隊員服に身を包んだカイトが現れる。

カイト「本日付けでDASHに入隊することになりました、トウマ・カイトです! よろしくお願いします!」
ミズキ「……!?」
ヒジカタ「今回の功績を評価して、急遽大抜擢だ」
コバ「ハハ、まったく悪運の強いヤツだよ。あの状況で生還できるなんて」
カイト「彼が救ってくれたんです!」
ヒジカタ「……彼?」
カイト「あの光の巨人です。彼が俺を救ったんです」
ヒジカタ「あの…… 巨人が?」
カイト「はい! 彼は、我々の味方です」
ショーン「『彼』『彼』ってネ、名前は? 名前がなきゃ、変でショ?」
カイト「彼は、究極の…… MAX(マックス)! 『ウルトラマンマックス』です!」


夕暮れの海を眺めているカイト。
手の中にはあの巨人、ウルトラマンマックスに託された変身アイテム・マックススパークがある。

背後から声をかえるミズキ。

ミズキ「入隊おめでとう! それから…… ありがとう」

カイトが振り返って笑顔で応えると、ミズキも笑顔を返す。
つかの間の安らぎをかき消すように、警報が鳴り響く。

ミズキ「行きましょう!」

基地内へ駆けるミズキに、カイトも続く。


こうして、トウマ・カイト──ウルトラマンマックスの戦いが始まった。


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