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ウルトラマンネオスの第1話



私たちの住む太陽系は およそ300万年に一度
ダークマター漂う未知の宇宙空間を通過します
そこは 何が起こっても不思議ではない世界
そのアンバランスゾーンを 今から皆さんは体験することになるのです



オープニングテーマとともに流れる、プロローグ映像。

宇宙空間に浮かぶ電波望遠鏡。宇宙服に身を包んだ作業員たちが、作業にあたっている。
突如、宇宙の彼方から隕石群が降り注ぎ、次々に望遠鏡に突き刺さる。
恐怖におののく作業員たち。

望遠鏡に係留されているスペースシャトル内。
主人公の青年カグラ・ゲンキが、隕石の惨事を目撃し、宇宙服に身を固めて宇宙へ飛び出す。

カグラが作業員たちを誘導し、シャトル内へと避難させる。
ようやく全作業員たちの避難を終え、あとはカグラ1人。
しかし、なおも隕石群は降り注ぐ。

その隕石に混じり、奇妙な形の宇宙船が飛来。
望遠鏡に宇宙船が激突し、閃光があふれる。

衝撃で吹き飛ばされたカグラが、宇宙の彼方へと漂っていく──



ネオス誕生
怪獣アーナガルゲ登場



山肌のそばに築かれた高架道路を、数台の車が行く。

突如、爆発のような大規模な崖崩れ。落下した岩石群によって道路が寸断される。
危うく車たちが急停車し、道路下への落下をまぬがれる。

「なんだよ、おい!? なんで崩れて…… うわ、煙出てる!」「どうするのぉ?」
「マジかよ、おい……」

「何、あれ!?」

崩れた山肌から、何者かが生物のように動いている。


東京近郊の山中に築かれた特捜チーム・HEART(ハート)本部。
隊員のハヤミ・ナナ、ヒノ・タカヨシが廊下を歩きながら言い争っている。

ナナ「絶対に調べるべきですぅ!」
ヒノ「その必要はないな。ただの崖崩れだ」
ナナ「でも目撃者がいるんですよぉ!? 岩肌が生きてるように動いたって」
ヒノ「まぁ人間、恐怖で正確な判断がつかなくなることもあるだろ?」

司令室に入ってくる2人。隊長のミナト・ゴンパチ、隊員のウエマツ・ヒロノブ、キタバヤシ・アユミがいる。

ナナ「しかし、錯覚かどうか調べるのも仕事です」
ヒノ「俺たちゃ、カグラみたいなミラクルマンじゃない。すべての報告に対応するわけにはいかないんだ」
ウエマツ「どうした、2人とも?」
ナナ「例の崖崩れの事故ですけど、検証の必要があります」
ヒノ「ないって!」
アユミ「目撃者に、確かに動く岩肌を見たっていう人がいるね。これが本当なら、この国初の怪獣目撃事例かな?」
ナナ「ほら!」
ヒノ「さっきから言ってるけど、崖崩れに遭遇したら気も動転する。だいたいな、そんなでっかいヤツがどこに行っちまったんだ?」
ウエマツ「認識不足だぞ、ヒノ。今世界中で、ダークマターの影響と思われるアンバランス現象が起こってる。全長1メートルもあるゴキブリや、逆に手のひらに乗るほど小型のゾウの群れが発見されたり……」
ミナト「この国に怪獣が現れても何の不思議もない」
ウエマツ「勉強しとけ!」

突如、警報が鳴り響く。

アユミ「阿賀鉱山からアンバランス現象の報告! 坑道内で青い発光と共に岩肌が動いていくという複数の証言が。しかも現在洞窟の中からは、怪獣らしき叫び声が聞こえていると」
ウエマツ「阿賀鉱山なら、崖崩れの現場に近い…… 隊長!」
ミナト「フェイズ2と認める。HEART、出動!」
一同「了解!」



HEART──High-tech Earth Alert and Rescue Teamは
内閣情報局直属の危機管理チームである
最新鋭の科学を駆使して 怪事件・難事件に挑む 勇気と情熱あふれる6人は
知力・体力に優れると同時に、さまざまな分野におけるエキスパートでもある



HEART本部から大型ジェット機のハートワーマー、2機の小型ジェット機ハートウィナーが出動。
鉱山のふもとに着陸する。

ナナ「後方ゲート、オープン確認」

ハートワーマー内から、隊員たちを乗せた専用車ハートビーターSXとハートビーターRXが出動。
坑道付近に到着する。鉱山の作業員たちや、地元の住民たちが大勢集まっている。

作業員「どうも、ご苦労様です」
ミナト「頼む」
ナナ・ヒノ「はい」

ナナとヒノの2人が、坑道の入口へ向かう。中からは、獣の声にも似た音が響いている。

ミナト「あの音は?」
作業員「夕べからなんです」
老人「ありゃ、間違いねぇ。アーナガルゲ様の怒りの声じゃ!」
ミナト「アーナガルゲ?」
作業員「昔から伝わる、鉱山を守る竜だそうです。金属の鉱脈を竜にたとえた伝説でしょう」
老人「アーナガルゲ様に間違いねぇ」
作業員「あぁ、わかった、わかった」
ヒノ「爺ちゃん! あれはね、風の音が竜の鳴き声に聞こえてるだけだよ!」
ナナ「じゃ、勇気あるヒノ隊員に、その論理を実証しに行ってもらっちゃおうかな?」
ヒノ「実証しなくても、今までのデータが物語ってる」
ナナ「じゃあ、青い発光や岩肌の移動は?」
ヒノ「そ、それは…… まだ、データが揃ってません」
ウエマツ「何ゴチャゴチャ言ってる? 俺が行く!」
声「俺が行く!」

見ると、そこには冒頭で事故に遭った青年、カグラ・ゲンキがいる。

ミナト「カグラ!」
ナナ「カグラ隊員! まだ入院中じゃなかったの!?」
ウエマツ「まだ出動は無理だ。ミラクルマンのお前でも」
カグラ「あの事故から助かったんです。ミラクルを超えて、そうだなぁ…… 『ウルトラマン』とでも呼んでください!」
ミナト「頼むぞ!」
カグラ・ナナ「はい!」

カグラとナナの2人が、ハートビーターSXに乗り込む。

ナナ「エアブースターシステム、セット」
カグラ「了解! ハートビーター・ディフェンシブモード」

ハートビーターが浮上走行形態となり、坑道へ入って行く。

ナナ「ねぇ、カグラくん。一体、何があったの?」
カグラ「何がって?」
ナナ「宇宙を漂ってるとき。お医者さんも言ってたわ。助かったのは奇跡だって。宇宙の果てで見たものは、神様? それとも、宇宙人?」
カグラ「そ、それが…… 憶えてない。気、失ってたから」
ナナ「あ、そっか。そうだよね。フフッ」
カグラ「あれは!?」

ヘッドライトの灯りを落とすと、坑道内をとりまく岩石が、ぼんやりと青く光っている。

ナナ「何なの……!?」


カグラは岩石の一部を、ハートワーマー内に持ち込む。

ミナト「この岩石の分析を頼む。いわゆる一連のアンバランス現象の原因かもしれない」
アユミ「了解、調べてみる。いや、みます!」
カグラ「あ、何か手伝おうか?」
アユミ「君は邪魔!」
ミナト「我々は坑道付近の住民の退去」
カグラ「了解!」

ミナトとカグラが去り、アユミは岩石をスキャン装置にかける。
分析中、岩石が青く光ったかと思うと、突如、触手が飛び出す。

アユミ「きゃあっ!?」

ミナト「カグラ!」
カグラ「はい!」

アユミの声を聞きつけたミナトたちが、ハートワーマー内に戻る。
岩石が動物のように、機内を飛び回っている。

ミナト「カグラ!」

ミナトとカグラが銃撃。岩石が床に転がり、光が消える。

分析が再開される。

アユミ「怪物の正体は、岩石に取り付いた光を放つ微生物だ」

機外の面々も、通信で声を受け取る。

ウエマツ「本来、鉱石に微生物が寄生するはずがないが……」
アユミ「おそらく、ダークマターの影響で突然変異を」
ミナト「ついに、我が国にもアンバランス現象が発生したか」
アユミ「坑道内には、大量の微生物が!」
ミナト「今後も同様の現象が起こる可能性が高い。誰も坑道に近づけるな」
ウエマツ「了解」
ナナ「任せといてください!」

群がる人々の中、1人の少年の連れたイヌが、坑道に向かって激しく吼え始める。

少年「あ! やめろ、ゴン! 静かにしろって! 静かにしろ!」

イヌが少年を振り切り、坑道に向かって走り出す。

少年「ゴン、戻って来い! ゴン!」
ナナ「君!? 戻りなさい!」

坑道の入口のそば、ウエマツとヒノが口論している。

ウエマツ「何やってんだよ!?」
ヒノ「ウエマツさんだって……」

2人がよそ見している間に、立入禁止の柵を潜り抜けてイヌが坑道に入り込み、少年もイヌを追って坑道へ。

2人「お、おい!」「君ぃ!?」

ナナがハートビーターに乗り込む。

ナナ「どいてぇ! どいてぇ!」

慌てて避けるウエマツたち。ハートビーターも坑道へ突入する。

ヒノ「行っちゃった……」


坑内では、少年がイヌに追いつている。

少年「ゴン、もう大丈夫だぞ。心配かけるなよ」

突然、坑内に衝撃が走り、天井から土砂がパラパラと降り始める。

少年「怖くないぞ、怖くないぞ……」

そこへ、ハートビーターに乗ったナナが駆けつける。

ナナ「ここは立ち入り禁止よ。危険なことしちゃダメじゃないの」
少年「でも、ゴンが……」
ナナ「イヌを助けたいのはわかるけど、君が勝手なことしたら、君たちが危険な目に遭うだけじゃなくて、君を助けるために、私やほかの大勢の人たちが危険に巻き込まれるの」
少年「……ごめんなさい」

坑内が激しく揺れ始める。

ナナ「急いで!」
少年「早く!」

ウエマツ「隊長! ナナ隊員が坑道の中です!」
ミナト「みんなを避難させるのが先だ」
ウエマツ「しかし……」
ミナト「忘れるな! 我々はHEARTだ」
ウエマツ「……了解。みなさん、ここは我々を信じて、さぁ、急いで避難してください!」
人々「わかりました」「さぁ、早く!」
カグラ「ナナ隊員、応答しろ!」

ナナと少年は、ハートビーター車内に逃げ込んでいる。

少年「大丈夫なの……?」
ナナ「大丈夫、心配しないで!」

鉱山が大きく砕け、岩のような体を持つ巨大怪獣が姿を現す。

一同「なんだ、あれは!?」「アーナガルゲ……!?」「あれは!?」

ナナたちの乗ったハートビーターが、怪獣アーナガルゲの右肩に取り込まれている。

カグラ「ナナ隊員、応答しろ! エアブースターで脱出するんだ。ナナ隊員、ナナ隊員!」

ハートビーターの中。ナナと少年は気を失っている。

一同「ダメだ!」「隊長!」
ミナト「いいか! 怪獣とのファーストコンタクトだ。ナナ隊員と子供の救出、そして怪獣が街へ向かうのを阻止。人的被害を最小限に抑えるのが目的だ!」
一同「了解!」

カグラたち一同が2機のハートウィナーに分乗し、飛び立つ。

一同「ハートウィナー1、発進!」「ハートウィナー2、発進!」
ミナト「ハートウィナー、攻撃開始!」
一同「了解!」
ヒノ「こいつは難しいぜ…… どうしてもSXが引っかかっちまう!」
ミナト「SXに被害がおよばないように注意するんだ」
カグラ「そんな!? いくら注意しても限度があります!」
ウエマツ「わかってる! しかし、ヤツが街へ向かわないように、足止めだけでもするぞ。発射!」
ヒノ「発射!」

ハートウィナーの砲撃が、アーナガルゲに決まる。

ヒノ「やった!」
ミナト「ダメージは?」
アユミ「アーナガルゲの本体は微生物。いくら攻撃してもダメ」
ミナト「何か方法は……」
アユミ「冷却システムのようなものがあれば、微生物の活動を抑えられるかも」
ウエマツ「あんな巨大なものを冷却するシステムなんて……」
ヒノ「任せといてください!」
ミナト「何?」
ヒノ「冷却ミサイルを積んでる。しかし……」
カグラ「アーナガルゲが凍りつくってことは、車内のナナ隊員たちも一緒に!?」
ミナト「冷却ミサイルしか方法はないのか?」
カグラ「よし!」
ウエマツ「カグラ、何するつもりだ!?」
カグラ「俺が行って、SXを操縦します!」
ウエマツ「よせ!」

カグラが座席の脱出システムを作動させ、ハートウィナーからシートごと空中に飛び出す。

ウエマツ「あいつぅ……!?」

シートからの噴射で空中を舞いつつ、カグラがハートビーターに接近しようと試みる。

カグラ「くそぉ!」

アーナガルゲの鋭い鉤爪が、カグラを狙う。

カグラ「うわぁ!」

危うく攻撃をかわしたカグラ。だが、第2撃がカグラを狙う。

カグラ「わぁっ! わ…… あ……? え?」

次の瞬間、鉤爪の動きがピタリと止まり、カグラの目の前のすべての光景が、時間が止まったかのように静止している。

謎の声「ネオス── ウルトラマンネオス──」

虚空に光とともに、赤い巨人の姿が現れる。

謎の声「ネオス── ウルトラマンネオス──」
カグラ「あれは……?」
謎の声「カグラ・ゲンキ── 君の魂とともにある、もう一つの友の力を思い出せ── ウルトラマンネオスの力を!」

カグラ (友の力……? ウルトラマンネオスの力?)

カグラの目の前の空間が歪み、その中から変身アイテム・エストレーラーが現れる。
それに向かって手を伸ばすカグラ。

カグラ「ウルトラマン・ネオ──ス!!」

光が満ち溢れ、銀の巨人・ウルトラマンネオスが登場。大地に降り立つ。

アユミ「また…… あれもダークマターの影響!?」

ネオスがアーナガルゲに挑み、ハートビーターを引き剥がしにかかる。

アユミ「巨人が、ハートビーターSXに接近!」
ミナト「ハートウィナー、SXを援護。巨人を攻撃せよ!」
ヒノ・ウエマツ「了解!」「発射!」

ハートウィナーの放った攻撃が、アーナガルゲに、そしてネオスにまで降り注ぐ。
衝撃で目を醒ますナナ。

ナナ「何!? ここは!? ……大丈夫?」

アーナガルゲが暴れ回り、ハートビーターが激しく揺れる。

ナナ「きゃあっ!」

ネオスはアーナガルゲの攻撃を避けつつ、大ジャンプで頭上に飛び上がり、ハートビーターを引き剥がして着地する。

ナナ「隊長、ミナト隊長! 巨人への攻撃をやめてください! 巨人は私たちを助けようとしてるんです!」

ネオスがアーナガルゲの攻撃を避けつつ、手の中のハートビーターをそっと宙に差し出す。
ハートビーターがネオスの手を離れ、飛び立つ。

ミナト「助けてくれたのか……?」
ナナ「ありがとう……!」
少年「ありがとう!」

ネオスが反撃に転じ、ジャンプキックでアーナガルゲの頭部の角をへし折る。
折り取られた角が地面に転がるが、それ自体が生き物のように動き、アーナガルゲの体内に戻ってしまう。

ウエマツ「あの巨人への攻撃を続けますか?」
ミナト「ナナ隊員は無事だ! あの巨人を援護する。冷却ミサイルをアーナガルゲに!」
ヒノ「了解! ──冷却ミサイル、発射!」

ハートウィナーのミサイルが炸裂。冷却ガスが振りまかれ、アーナガルゲの全身が凍りつく。

ヒノ「やった!」

しかしアーナガルゲは、怪力で凍結をぶち破り、再びネオスとの肉弾戦となる。
そのとき。空に金色のウルトラサインが浮かび上がり、ネオスにメッセージを送る。

『光を── お前の持つ光の力を使うのだ』

ヒノ「よぉし、巨人! 合体攻撃だ!」

ネオスが大ジャンプ。
ハートウィナーの冷却ミサイルが再び撃ち込まれ、アーナガルゲの全身が凍りつく。
すかさずネオスが、アーナガルゲを狙って手を十字に組み、必殺のネオマグニウム光線が炸裂。

胸のカラータイマーが点滅し、エネルギーの切れかかったネオスがガックリと膝を突く。
光線を浴びたアーナガルゲが粉々に砕け散る。
最期を見届けたネオスが大地を蹴り、空の彼方へと飛び去る。


ナナ「よく頑張ったね」
少年「ありがとう!」

無事に地上に降り立ったナナたちのもとに、ミナトたち一同が駆け寄る。

ミナト「地球は今アンバランスゾーンにいる。これからも、どんなことが起こるか……」
ナナ「カグラくん…… せっかく、宇宙で奇跡的に助かったっていうのに、最初の犠牲者になるなんて……」
声「おぉ──い!」

彼方からカグラが駆けて来る。

カグラ「みんなぁ! せっかく怪獣退治したのに、何、浮かない顔してるんですか!?」
ナナ「カグラくぅん!」
一同「カグラぁ!」「カグラくん!」「お前、どうやって助かったんだよぉ!?」
カグラ「ウルトラマンネオスに助けてもらったのさ」
ヒノ「ウルトラマン……ネオス? あの巨人のことか?」
ナナ「どうしてウルトラマン、ネオス……なの?」
カグラ「俺よりもミラクルな新世紀のヒーローだからさ!」
ウエマツ「カグラ!」

一括するウエマツに、思わずカグラが身構える。

ウエマツ「心配させやがって、こいつぅ!」
一同「そうだよぉ!」「もう!」

ウエマツに小突かれるカグラが、一同にもみくちゃにされる。

カグラ「あ!」

カグラが空を指し、一同の気がそれた隙に逃げ出す。

ヒノ「逃げたぁ」
カグラ「イェ──イ!」
一同「カグラ!」「待てぇ──!」


(続く)
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