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ウルトラギャラクシー 大怪獣バトルの第1話
宇宙空間を行く大型輸送宇宙船、スペースペンドラゴン。
乗組員の紅一点、副長のハルナが単身ブリッジを担当している。
ハルナ「予定コースを定刻通り通過。ブリッジから船長へ。──船長?」
船長のヒュウガは、自室でベッドに寝転んだまま返事をしない。
ハルナ「ブリッジから『ボス』!」
ヒュウガ「俺だ」
ハルナ「地球から緊急通信です」
ヒュウガ「わかった。こっちに転送してくれ」
ハルナ「了解」
別室では乗組員のオキが、怪獣の骨格模型を組み立てている。
オキ「できたぁ!」
そこへ、エンジニアのクマノがやって来る。
クマノ「お! その怪獣なら知ってる。当ててみようか? ペギラだろ」
オキ「違いますよ、チャンドラーです。よぉく見て下さい。ペギラの場合はですね、まずこの大腿骨が……」
クマノ「おっと! 怪獣の講義なら遠慮するよ。この前なんか、角1本に2時間も付き合わされたからなぁ」
オキ「興味沸きませんか? 地球では50年も前に怪獣が絶滅してるんです! 1匹残らずですよ! 今となっては、シーゴラスの角は大変貴重なんです!」
クマノ「わからん…… 大学で怪獣学を専攻するようなヤツの思考回路は」
通信の声が響く。
ヒュウガ『クマノ、オキ、至急ブリッジへ集まれ!』
2人がブリッジへ。
クマノたち「どうしました、副長?」「ボス?」
ヒュウガ「揃ったな。ペンドラゴンはコースを変更し、今すぐ惑星ボリスへ向かう」
オキ「惑星ボリス?」
ハルナ「ZAPの開拓惑星では、地球から一番遠く離れた惑星よ。ですがボリスの物資輸送は、宇宙船シャムロックの担当では?」
ヒュウガ「これは通常任務ではない。ボリスの長距離通信が途絶えたため、調査に向かえというZAP本部からの依頼だ。シャムロックは地球基地でオーバーホール中のため、惑星ボリスに一番近い我々ペンドラゴンに、白羽の矢が立ったというわけだ」
オキ「いや、近いと言ったって…… 最大速度で向かっても、2週間の距離ですよ?」
クマノ「輸送中の貨物はどうします? 惑星アボレーへ届ける予定の」
ヒュウガ「我々の代りに、宇宙船トリスタンが輸送を引き継ぐ。まずは、カーゴからコンテナを分離するぞ」
一同「了解」
スペースペンドラゴンが輸送コンテナを分離する。
ヒュウガ「ハルナ、コースを惑星ボリスへ変更!」
ハルナ「了解。──コース、変更しました!」
ヒュウガ「最大速度で発進!」
スペースペンドラゴンが航路を変更してから数日後。
ハルナ「惑星ボリスの捕捉領域に接近」
ヒュウガ「オキ、モニターに映してくれ」
オキ「はい。──でかい惑星ですね!」
ヒュウガ「地球の約3倍だからな。こちら宇宙船スペースペンドラゴン。惑星ボリス中央管制センター、応答せよ。中央管制センター、応答せよ」
ハルナ「……応答がないわね」
クマノ「大気や重力、その他、惑星の環境コントロールに異常は認められません。人工太陽も正常です」
オキ「地上で一体、何があったんですかね?」
ヒュウガ「……着陸準備だ。首都のベラルゴシティへ向かうぞ!」
一同「了解!」
スペースペンドラゴンが惑星ボリスへと近づいてゆく。
ハルナ「大気圏に突入しました!」
突然の衝撃。船体が激しく揺れ、警報音が鳴り響く。
ヒュウガ「どうした!?」
クマノ「正体不明の、干渉エネルギーです!」
ヒュウガ「干渉エネルギーだと!?」
クマノ「一種の時空エネルギーのようです!」
スペースペンドラゴンが制御を失い、惑星ボリスへ引き込まれてゆく。
オキ「これじゃ、地上に激突します!」
ヒュウガ「ハルナ、強行着陸できるか!?」
ハルナ「やってみます!」
ヒュウガ「頼むぞ!」
地面が次第に目の前に迫ってくる。
ヒュウガ「衝撃に備えろ!」
もうもうと土煙を巻き上げながら、スペースペンドラゴンが強行着陸。
船外に出たヒュウガが、荒涼とした大地を眺めつつ、船内のクマノに連絡を取る。
ヒュウガ「クマノ、被害状況は?」
クマノ「ボス、ペンドラゴンはかなり重傷です。メインおよび右舷エンジンも破損。エネルギーコアも深刻なダメージを受けています。宇宙はおろか、空へ飛び上がることだってできませんよ」
ヒュウガ「修理は可能か?」
クマノ「……やるしかないでしょう。あ、そうだ。ドラゴンスピーダーのほうは2機とも無傷です」
ヒュウガ「わかった。続けてくれ」
クマノ「了解」
ヒュウガが船内に戻る。
ハルナ「ボス、先ほど救難信号を送信しました。地球へは数日で届くはずです」
オキ「でも、救援隊到着となると……」
ヒュウガ「1か月は先だな」
オキ「辺境の惑星ですからね……」
ヒュウガ「ここから一番近いコロニーは?」
オキ「第27採掘基地があります。先ほど交信を試みましたが、何の応答もありません」
ヒュウガ「よし、我々でこの星を調査しよう。まずその、採掘基地に行ってみよう」
ヒュウガが保管庫から拳銃を取り出し、2人に渡す。
ヒュウガ「念のため、トライガンナーを携帯する」
ハルナ「輸送船のパイロットになって初めてよ。武器なんて携帯するの」
オキ「僕なんて初の宇宙勤務ですよ、副長。ちゃんと撃てるかな?」
ヒュウガ「あくまで、護身用だ。よし、行くぞ!」
2人「了解!」
ペンドラゴンに搭載されている小型機ドラゴンスピーダーαにヒュウガが、同型機のドラゴンスピーダーβにはハルナとオキが乗り込む。
一同「ドラゴンスピーダーα、テイクオフ!」「ドラゴンスピーダーβ、テイクオフ!」
2機が目的地に到着。しかし眼下の採掘基地は、無残に破壊され尽くしている。
オキ「大地震か何かがあったみたいですね…… この分じゃ、生存者は絶望的じゃないですか?」
ヒュウガ「手分けして捜索しよう。着陸だ」
3人が地上に降り立ち、周囲を捜索する。
ハルナ「半径100メートル以内に、人間の生命反応はないわ」
オキ「やはりそうですよ。ボリスは惑星規模の大地震に見舞われたんです」
ハルナ「ペンドラゴンを襲った干渉エネルギーと、何か関係があるのかしら?」
オキ「さぁ…… どうでしょうね」
突如、大地が揺れ、獣のような叫び声が響く。
ハルナ「ボス!」
ヒュウガ「今のを聞いたか!?」
ハルナ「はい! 何か、獣が吠えるような」
オキ「待ってください! 今のは…… 今の咆哮は、確か…… まさか!?」
大地を割り、地底怪獣テレスドンが出現する。
オキ「テレスドン!!」
さらに周囲の岩々を砕きつつ、岩石怪獣サドラが出現する。
オキ「今度はサドラです!!」
驚く一同の前で、テレスドンとサドラの戦いが始まる。
ヒュウガ「基地を破壊したのは、あの怪獣たちなのか!?」
オキ「これは貴重な発見です!! 絶滅した地球の怪獣と、こんなところで出会えるなんて!」
ハルナ「でも、どうして!? この星はZAPが開拓するまで、生物の存在しない死の星だったはず」
呆然とするヒュウガとオキ、むしろ興奮気味にカメラを向けるオキ。
そこへ、さらに怪獣レッドキングがやって来る。
オキ「レッドキングです! 怪獣の中でも、一番凶暴なヤツです!」
レッドキングが戦いの場に割り込み、テレスドンを投げ飛ばし、巨大な足で踏みつける。
サドラがレッドキング目掛けて突進するが、レッドキングに首を締め上げられ、あえなく息絶える。
オキ「すごぉい! 凄いぞぉ! レッドキングが勝ったぁ!!」
その声に気づいたレッドキングが、大岩を蹴飛ばす。危うくよける一同。
さらにレッドキングが、地上に転がっていた作業車を持ち上げる。
ヒュウガ「あの作業車を狙え!」
作業車目掛けて一斉射撃。
狙い通り、レッドキングの手の中で作業車が爆発するものの、レッドキングはなお襲って来る。
ヒュウガ「撃てっ!」
ヒュウガたちが必死に銃撃を浴びせるが、レッドキングは意にも介さず近づいてくる。
そこへ、息を吹き返したテレスドンが体当たり。再び怪獣同士の戦いとなる。
ヒュウガ「しめた、今の内に逃げるぞ! こら、オキ!」
オキ「わぁ〜!?」
ヒュウガがカメラを構え続けるオキを引っ張り、ハルナとともに岩陰に身を隠す。
とりあえず一息つく一同。
するとそこには、巨大な氷浸けとなった怪獣の死体がある。
オキ「ペギラだ! わぁ〜、冷凍怪獣のペギラですよ! 動いてるところを一目見たかったなぁ〜。そうか、ほかの怪獣にやられて、攻撃用の冷凍液が体内に流れ出して、自分で凍結してしまったんだな」
突如、氷漬けのペギラの一部がみるみる赤熱化し、溶けてゆく。
ハルナ「人間の生命反応です!」
ヒュウガ「何だと!?」
真っ赤な光の中から1人の青年が苦しそうに現れ、気を失って倒れる……。
スペースペンドラゴンに戻った一同。
ヒュウガ「助からないと言うのか?」
ハルナ「恐らく…… 全身の傷と凍傷がひどく、生命反応は著しく低下してます」
ヒュウガ「彼の身元は?」
オキ「身元のわかるものは何も。認識票でもあれば、データバンクから一発なんですが」
ヒュウガ「あの青年だけが、今は唯一の手がかりなんだが……」
医務室で眠り続ける青年。
その脳裏にフラッシュバックする記憶。
岩山の中に埋まった、銀色の巨人──
ブリッジに警報が鳴り響く。
スクリーンに映る光景。レッドキングが次第にペンドラゴンに近づいてくる。
オキ「レッドキングだ!」
ハルナ「採掘基地にいた怪獣です!」
オキ「レッドキングが僕らを追って来たんです!」
ヒュウガ「船を破壊されたら最期だ。対アステロイド砲および、ワイバーンミサイル、スタンバイ!」
一同「了解!」
ヒュウガ「砲撃開始!」
ビームとミサイルの雨が降り注ぐが、レッドキングにはまったく通用しない。
オキ「そんな!?」
クマノ「ダメだ……」
ハルナ「私がスピーダーで出ます」
オキ「待ってください。船外に誰か出ました!」
見ると、瀕死だったはずの青年が船外に飛び出し、レッドキング目掛けて走って行く。
ヒュウガ「彼だ!」
ハルナ「そんな…… あの体で!?」
青年がレッドキングを見据えると、腰から取り出したアイテムを高々と掲げる。
『バトルナイザー・モンスロード』
音声とともに、内部に収納されていたカードが光り輝き、怪獣の姿に実体化し、地響きとともに地上に降り立つ。
オキ「ゴモラだ!」
青年「行け! ゴモラ!!」
青年の指示を受け、古代怪獣ゴモラがレッドキングに立ち向かう。
ヒュウガ「彼が、怪獣を操っているのか!?」
怪獣の巨体同士のぶつかり合い。ゴモラのキック、パンチが炸裂。
レッドキングが尻尾を振り回すが、ゴモラはそれをかわして自分の尻尾を叩きつける。
さらにゴモラがレッドキングの頭を抱え上げ、投げ飛ばす。
レッドキングが地面に転がっていた大岩を持ち上げ、投げつけようとするる。
だがそれより先に、ゴモラの頭部の角が赤き光り、強烈な振動波が放たれる。
レッドキングの手の中の岩が振動波を浴び、爆発。
さらにレッドキング自身も、振動波により岸壁に叩きつけられる。
オキ「超振動波だ! ゴモラは角からの超振動波で地中を掘削するんですが、あんな攻撃法があったなんてなぁ!」
ダメージを負ってなお、レッドキングが襲い掛かってくる。
ゴモラが体当たり、頭部の角をレッドキングの胴に突き立て、超振動波を直接体内に流し込む。
角で放り上げられたレッドキングが、ついに爆発四散する。
勝利の雄たけびをあげるゴモラ。
青年がゆっくりと頷く。
ゴモラが光に包まれ、再びカードの姿となり、青年の掲げるアイテム・バトルナイザーの中へと戻ってゆく。
ヒュウガ「彼は一体……何者なんだ?」
(続く)