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ウルトラセブンの第1話



姿なき挑戦者



地球は狙われている
今 宇宙に漂う幾千の星から 恐るべき侵略の魔の手が


夜の検問場。1台の車がやって来る。

「免許証を。──どちらまで? 車検も」

突如、車内に閃光が走り、運転手の姿が跡形もなく消え去る。

「あ──っ!?」
「どうしたんだ?」「どうした?」
「人間が消えたんだ!!」


翌日。地球防衛軍の基地。


ここは 宇宙のあらゆる侵略から地球を守るために組織された
地球防衛軍の秘密基地である
地下数十メートルに建設されたこの要塞には
科学の粋を集めた最高の設備があり
最新鋭の武器が装備されていた

そして ウルトラ警備隊を始め 300名の防衛隊員が
昼夜を徹して 鋭い監視の目を光らせていた


ウルトラ警備隊のキリヤマ隊長が、高官たちの部屋を訪れる。

護衛官「キリヤマ隊長がお見えになりました」


キリヤマ隊長 年齢38歳 隊暦16年 東京都出身


地球防衛軍の最高責任者・ヤマオカ長官を始め、参謀のタケナカ、マナベ、ヤナガワ、ボガートが迎える。

キリヤマ「キリヤマ、参りました」
ヤマオカ「キリヤマ隊長、昨夜の人間喪失事件を聞いておるか?」
キリヤマ「はっ、今朝のニュースで」
ヤマオカ「よし。ひとつ、ウルトラ警備隊に骨を折ってもらうことになったんだが…… タケナカ参謀、説明を」
タケナカ「警察当局からの報告によれば、すでに数件の不思議な消失事件が発生している。この1週間の間に、夜の公園、ホテルのロビー、大学の研究室といった場所で、あっという間に人間が消えているんだ」
キリヤマ「原因は?」
タケナカ「目下のところ不明。消失した人間の職業を調べても、スポーツマン、学者、サラリーマン、エンジニアと、まったく関連性がなく、不特定多数にわたっている」
キリヤマ「手がかりもないんですか?」
マナベ「消失するとき、スパークでもしたように一瞬白熱を発したというだけだ」
キリヤマ「白熱を?」
ヤマオカ「まったく奇怪と言うよりほかはないが、これは明らかに優秀な科学力を持つ何者かの仕業だ。我々5名の見解では、犯人を一応宇宙人と考えて、その線で捜査をしてみたらどうかということになった」
キリヤマ「え、宇宙人?」
ボガード「キリヤマ、あなたはそう思いませんか? この事件は、現在の我々の科学では想像もつかない魔術が使われている。これは宇宙人でなければできない」
ヤマオカ「そこで、我が防衛軍のエースとも言うべきウルトラ警備隊に、この事件を担当してもらうことになった」
キリヤマ「はい、わかりました!」


『ウルトラ警備隊全員集合せよ ウルトラ警備隊全員集合せよ』

指令を受け、作戦室に隊員たちが集合する。


ソガ隊員 年齢25歳 隊歴3年 九州出身
フルハシ隊員 年齢29歳 隊歴7年 北海道出身 地球防衛軍きっての怪力の持ち主
アマギ隊員 年齢24歳 隊歴2年 名古屋出身 名プランナー
アンヌ隊員 年齢……いや、こりゃ失礼 隊歴2年 東京都出身 ウルトラ警備隊の紅一点


キリヤマ「敵はついに、我々地球防衛軍に対して挑戦状を叩きつけてきた」
フルハシ「挑戦状?」
キリヤマ「たった今、パトロール中の防衛隊員2名が、自動車ごと消されたという報告が入った。敵はすでに我々の動きを知って、襲ったものと考えられる。みんな、今後の行動には充分注意するように」
フルハシ「隊長、どこでやられたんですか?」
キリヤマ「V地点から西へ50キロのところだ」
ソガ「と言うと、すぐ近くじゃありませんか」
キリヤマ「よし。フルハシとソガ、すぐ現場へ」
フルハシたち「はっ!」
キリヤマ「アマギとアンヌは、俺と一緒に敵の行動を監視する」
アマギたち「はい!」

フルハシとソガが、専用車ポインターで出動する。


現場近くの山道。1人の青年が道の真ん中に立っている。

フルハシ「こら、どいたどいた! ヒッチハイクの相手をしている暇なんてないんだ! 早くどかんか、こいつ!」
ソガ「道を開けろ!」
フルハシ「仕方がない。ここは一丁、お見舞いしてやれ」
ソガ「よぉし」

ポインターが煙幕を発射。もうもうと煙が満ちる。
煙がやむと、青年は姿を消している。

フルハシ「ははっ、さぁ行こうか」

ところが、ポインターのタイヤは空回りするばかり。

ソガ「おかしいなぁ…… おい、もっと吹かしてみろ」
フルハシ「──ダメだなぁ……」

2人が車外に出る。

「はっはっはっは!」

あの青年が笑いながら、ポインターの屋根の上に乗っている。

ソガ「おい君、我々の邪魔をすると承知しないぞ!」
フルハシ「こいつぅ! おい!」
青年「邪魔だなんてとんでもない。その逆ですよ、ソガ隊員」
ソガ「……どうして僕の名前を?」
青年「あなたがフルハシ隊員で、防衛軍きっての怪力の持ち主だってことも知ってますよ」
フルハシ「我々に何か用でもあるのか?」
青年「あなたたちの命を助けてあげようと思って、さっきからここで待ってたんです」
フルハシ「命を助けるぅ?」
ソガ「君がか? はっはっはっは!」
青年「笑いごとではありません! 命が惜しかったら、これから先へ行ってはいけません!」
フルハシ「ははっ、命が惜しくてウルトラ警備隊の任務が務まるか! ソガ、行こう」
青年「おやめなさい! 罠に落ちるようなもんだ!」

後ろからパトカーがやって来る。

青年「これから先へ行くのは危険ですよ」
警官「樹海一帯を巡回しておりますが、現在のところ異常ありません」
フルハシ「ご苦労さん」

パトカーが発車。青年が後を追う。

警官「ほら、どいたどいた! おい、どいた!」
青年「危ない! 行っちゃいかん!」

警告を無視して走り去るパトカー。
空から飛来した光弾がパトカーを捉え、パトカーが忽然と姿を消す。
愕然とするフルハシたち。

青年「あれほど言ったのに…… 今、ウルトラ警備隊が相手にしているのは、恐るべき宇宙人です。ヤツらは地球を侵略するのに、数年前から実験用の人間の標本を集めていたのです。だが今や、ヤツらは次の行動に移ろうとしている。なぜだと思いますか? 地球防衛軍、いや、あなたたちウルトラ警備隊が行動を始めたからです。どんな恐ろしい手段を使うかもしれません。気をつけてください!」
フルハシ「君は一体、何者だ!?」
青年「ご覧の通りの風来坊です」
ソガ「名前は?」
青年「名前? ……そう、『モロボシ・ダン』とでもしておきましょう」
ソガ「モロボシ・ダン?」
青年「危ない!」

空から奇妙な音。
フルハシたちと、モロボシ・ダンと名乗ったその青年は岩陰に身を潜める。

パトカーを襲った光線が閃く。

ソガ「あれだな!」
フルハシ「うわっ!」

光線が地面に炸裂。岩が砕けて欠片が飛び散り、ソガとフルハシを襲う。

ダン「車に!」
フルハシ「おい、運転できるか!?」

ダンは負傷した2人を車内に運び込み、自らは運転席に就く。

フルハシ「バリヤーのスイッチを押せ! それだ!」

ポインターがバリヤーで覆われ、光線を防ぐ。

フルハシ「今のうちだ、早く!」
ソガ「ソガより本部へ、ソガより本部へ」
アンヌ「はい、こちら本部」
ソガ「見えない宇宙船の襲撃を受け。フルハシとソガ、負傷!」
キリヤマ「おい、大丈夫か!?」
ソガ「はっ、大したことはありません。5分後に本部に戻ります」
アンヌ「迎えに行くから、待ってて」
ソガ「とんでもない! 頭上にはまだ敵がいるんだ!」


フルハシたちが基地に帰還。キリヤマ隊長がヤマオカ長官たちに事態を報告する。

ヤマオカ「姿なき宇宙船か…… 彼らは何のために、人間を消しているのだろう?」
ヤナガワ「殺害が目的だとすれば、彼らの能力から考えて、もっと大量に、そして一気にやりそうなものですがね」
ヤマオカ「……殺害もないとすれば、一体何だろう?」
キリヤマ「フルハシとソガを救ってくれた、例の不思議な青年の言によれば『人間標本を集めているんだ』と言ったそうです」
ヤマオカ「人間標本?」
キリヤマ「つまり、人類の体力、頭脳、心理などの研究のために」
ヤナガワ「なるほど。敵に精通することは、いつの場合でも大事なことですからね」
ヤマオカ「キリヤマ隊長。敵がポインターを襲撃したとなると、この地下要塞も安全とは言えない。超高感度レーダーで監視を続けてくれ」

アマギ「長官、隊長、来てください!」

キリヤマ隊長たちが作戦室へ駆けつけると、スクリーンに不気味な姿の宇宙人が映っている。

宇宙人「地球防衛軍の諸君に告ぐ。即座に武装を解除して、我々クール星人に全面降伏せよ」
ヤナガワ「全面降伏? 地球防衛軍はこの極東基地だけではないぞ。地球の各地に我々の仲間がいるんだ。人類はそうたやすく地球を見捨てたりはしない!」
宇宙人「人類なんて、我々から見れば昆虫のようなものだ。これを見るが良い」

画像が切り替わる。さらわれた人々がどこかの部屋に閉じ込められ、無重力状態を漂っている。

「助けてぇ!」「誰か、助けて!」「ここから出してくれ!」

宇宙人「どうだね? 彼らの運命は君たちの返事で決まる。さぁ、すぐに答えるんだ。全面降伏に応じるか?」
ヤマオカ「……断る!」

クール星人と名乗る宇宙人の姿が消える。

フルハシ「モロボシ・ダンの言った通りだ……」


クール星人の攻撃が開始される。
京浜工業地帯に空から怪光線が降り注ぎ、工業地帯が次々に炎に包まれる。

ヤマオカ「とうとう、直接攻撃に出たか。このままいけば、世界はあっという間に壊滅してしまうぞ」
ボガード「姿が見えない…… 手も足も出ないな」
ヤマオカ「何か攻撃の方法はないか?」
マナベ「超高感度レーダーが、敵の宇宙船をキャッチしているはずです。ミサイルを撃ち込んだらどうですか?」
タケナカ「宇宙船には拉致された人間たちが乗っているんだ! 攻撃はできん。我々には彼らを救う義務がある!」
マナベ「いや、しかしこのまま放っておくわけにも……」


その間にも、被害はどんどん広がってゆく。

アマギ「隊長、京浜工業地帯は全滅です」
キリヤマ「何?」

再びクール星人からの通信。

「次は東京だぞ」

アマギ「隊長、出動しましょう!」
キリヤマ「待て! 冷静に作戦を練るんだ」

作戦室には、モロボシ・ダンもいる。

アンヌ「そうだわ。ダン、あなたの地球がピンチに立たされてるのよ。何か敵を倒す方法はないの?」
ダン「……ひとつだけある」
アマギ「本当か?」
ダン「敵の宇宙船を見えるようにすることだ。あの宇宙船は、保護色を使って姿を隠しているんだ。特殊噴霧装置を利用して、こちらで色を吹きつけてやれば、相手の正体はわかるはずだ」
キリヤマ「しかし、噴霧装置を作るのにどのくらいの時間がかかるんだ」
ダン「科学班の協力があれば、すぐです」
キリヤマ「うむ…… 長官に進言してみよう」


ピンチに立たされた地球防衛軍は キリヤマ隊長の進言に基き
特殊噴霧装置作戦をとることになった


ヤマオカ「よし、やってみよう」


こうして 特殊噴霧装置の完成が急がれる一方
超高感度レーダーが 敵の宇宙船を追い求めていた

ついに 特殊噴霧装置は完成した
そして モロボシ・ダンに対し 臨時隊員の資格が与えられ
ウルトラ警備隊とともに ウルトラホーク1号に搭乗することになった


ウルトラ警備隊員たちやモロボシ・ダンを乗せ、大型戦闘機ウルトラホーク1号が発進。
クール星人の宇宙船の居場所を目指す。

キリヤマ「基地のレーダーが敵機影をキャッチした。フルハシ、アマギ、充分気をつけて行動するように」

どこかからか、光線が降り注ぐ。敵の姿は見えない。

キリヤマ「目標、右15度。発射用意。──発射!」

特殊噴霧装置の弾頭を発射。
真っ赤な霧が振りまかれ、その中から赤く染まった敵宇宙船の姿が現れる。

キリヤマ「よし。分離飛行の後、攻撃開始!」
ソガ「はい」

ウルトラホーク1号が3機に分離。敵宇宙船とビームの撃ち合いとなる。
やがて敵宇宙船が逃げて行く。ウルトラホーク1号は再合体して後を追う。

切り立った岩場の隙間へ、敵宇宙船が降りて行く。
ウルトラホーク1号もそれを追うが、隙を突かれてビームを被弾、不時着して行く。

地上に降りた敵宇宙船から、無数の小型円盤が発進。

ウルトラホーク1号の中では、隊員たちが不時着の衝撃で気を失っている。
ダンが意識を取り戻し、小型円盤が迫っていることに気づき、機外へ飛び出す。

小型円盤からのビームが降り注ぐ。
岩陰に隠れたダンは、懐から小さなカプセルを取り出す。

ダン「ウィンダム、頼むぞ!」

カプセルを空中に投げると、爆発音と白煙とともに、怪獣ウィンダムが出現する。

ウィンダムが円盤を叩き落す。
円盤はビームで攻撃。ウィンダムもビームで反撃し、円盤を撃ち落とす。
しかし多勢に無勢で、ウィンダムは円盤からのビームを浴びてしまう。

ダン「ウィンダム、戻れ!」

ウィンダムが消え、ダンの手の中のカプセルへと戻る。

敵円盤が迫るダンに迫る。

ダン「デュワッ!」

ダンが大ジャンプ。眼鏡型の変身アイテム・ウルトラアイを装着し、赤い巨人・ウルトラセブンとなる。

敵の小型円盤が、地上の敵宇宙船の中へと戻って行く。

ウルトラセブンもそれを追い、宇宙船の中へ。内部の機器を破壊する。
背後から突如、クール星人が出現。
すかさずセブンは頭部から宇宙ブーメラン・アイスラッガーを撃ち出す。
クール星人が真っ二つに切断され、最期を遂げる。

船内の一室。窓越しに、捕われた人々の姿が見える。

「助けてくれぇ!」「出してくれぇ!」「誰か!」

セブンが部屋のロックのスイッチを捜し出し、人々を解放する。

人々が船外へと逃げ出し、ウルトラ警備隊員たちに助けられる。
船外に姿を現したウルトラセブンの巨体に驚く人々。

「あれは何ですか!?」「何ですか、あれは!?」

セブンが宇宙船を抱え上げ、空へと飛び立つ。


宇宙空間。

セブンが額からの必殺光線・エメリウム光線で宇宙船を破壊。


こうして、クール星人の野望は潰えた。


ウルトラ警備隊の作戦室。

フルハシ「いやぁ、今度の事件になくてはならなかったのは、あの風来坊だな」
アマギ「あぁ、まったくだ」
アンヌ「そう言えば彼、どこ行ったのかしら?」

ヤマオカ「ここだよ、諸君」

ヤマオカ長官に連れられ、モロボシ・ダンが隊員服に身を包んだ姿で現れる。

ヤマオカ「紹介しよう。モロボシ・ダン隊員だ。今日からウルトラ警備隊員として、早速勤務についてもらう」


(続く)
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