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潜在能力伝説!
イ ク ミ の 秘 密



人は進化し 科学を手に入れ
文明的で安全な 今日の生活を得た―

現代の世の中には

@ 科学的な現象(もの)と
A 非科学的な現象(もの)がある―

そして
@ 科学的な現象の中に
未だ化学的に解明されてないものがある

それを未科学(みかがく)という

1995年(平成7年)現在―
今 起こっている現象の9割は
未科学の状態なのだ

そんなある日
ある所で
ある少年の中の
何かが
目覚めはじめていた――



〜 第1話 潜在能力・・! 〜



ボクの名前は立花イクミ
県立東高校に通う15歳
成績は中の下
運動神経はなく…
もてもせず…
つっぱる勇気もなく
ただただ平凡な帰宅部だった


授業中
「zzz…」
ゲームセンターの格闘ゲーム真っ最中の夢を見ているイクミ。
「立花…気持ちよさそーだな?」
横からイクミを覗き込んだ先生に向かって、
ガバッと立ち上がりざま、
「10年早インダヨ!」
と、こぶしを突き出すイクミ。
ゴンッ!ゲンコツ一発! 「おまえだ、このボケ!!」


清掃時間
イクミが、階段の掃除をしている。
「亨(とおる)ちゃん、さっさと終わらせて
早くゲーセン行こーぜ!」
「悪り〜い!イクミ!つきあえねーんだ。」
イクミの誘いをアッサリ断る亨ちゃん。
「なんでー!?」
その時、階段下から 「亨〜(は〜と)まぁだ〜」 の声。
亨ちゃんは、バッと振り向いて
「あっ!かずみ!すぐ行っからよ!」
そして、ちりとりをイクミに押し付けると、
「アト、よろしく!」
あっという間に、カノジョのかずみと一緒に帰ってしまった。
亨ちゃんには不釣り合いなほど、カワイイかずみ…。
「やっだ〜!亨〜、そうじさぼって〜(は〜と)」
「オレってけっこうワルだからよ。」
ラブラブにじゃれ合って歩いてゆく2人。
そんな2人の後姿を、ボー然と見ているイクミ。
「な、なんだ〜?アイツは…。
い、いつの間にあんな彼女を…」
すると、友人曰く… 
「おまえら『もてないコンビ』も解散だな。」
イクミ、汗…!!
「オレもあんな彼女ほしーよ。ちょっと…がんばろうかな…」
「おまえは無理じゃない?」
「へ?」
「そーよねー、イクミってなんかたよりないしねー。
男の子って感じしないしな。」
女子も同じ意見のようだった。
「そ、そう?」
「うん…おまえ、おこったりするコトねーしな。」
ひえ〜〜
「でも、もてたいんすー!」


イクミの部屋
「亨ちゃんめー、『ちゅー』くらいしてんのかな?
でも、あのいちゃつきよーだと最後までいってたりして…
あいつスケベだもんなー、ありうるな〜」
イクミは、亨ちゃんをやっかんで、
想像しまくりの夜を過ごすのだった。


次の日の放課後
学校からゲーセンへ、一人直行するイクミ。
タンタン ピルルル… カッ カン パンパン
イクミの格闘ゲームの腕前は、かなりのものらしい。
「よォし!あと一撃!あと一撃!」

『KO!!あなたにはクンフーが足りないわ!』

「うおっしゃあ!!」
イクミが、ゲーム機に向かってこぶしを突き上げた時…
「楽しそうだな。」
ドスのきいたその声に振り向くと、
そこには、自分の顔に影を作るほど立派なリーゼントの男と、
ワルを絵に描いたような仲間達が、薄ら笑いを浮かべて立っていた。
(F組の安生君だ!!暴走族入ってんだよな、この人!)
イクミは青くなり、「じゃっ!ボクはこれで。」と、
その場を立ち去ろうとしたが
「おいおい、待てよ!」
安生君に引き止められ、カタマってしまった。
「ここのゲーム台、オレの席なんだよ。
使用料はらっていけよ!!」
「あっ、でも…今日は…持ち合わせが…」
頭をかくイクミのお腹に…ドス!
安生君の左ヒザが炸裂!
「ゲホッ、ゲホッ…」
イクミは、お腹を押さえてうずくまった。
「聞こえねーのか!?あぁ!?」
イクミは仕方なく、所持金全てを安生君に差し出した。
「そーやって、はやくはらやーいーだろ?」
「いや…ボクもそー思いました。ははっ…」
あいそ笑いを浮かべるイクミ。
「よし!これでうまいモン食いにいくぞ!」
満足そうにゲーセンを出て行く安生達。
イクミは、周りの冷ややかな視線を浴び、
その場に立ち尽くす…。そして、
「ははっ、どぉもー!」
と、頭をかいてみせた。
(なさけない…先生に減点くらうわ、帰り道カツアゲされるわ、
ほんっと…最近いいコト何にもないよな…)
背中を丸めて道を歩くイクミの目の前に、100玉が落ちている。
周りをキョロキョロっと見回し、靴で踏んで迷わずゲット!
「ラッキー!たまには、このぐらいささやかないいコトないとね…」
イクミは、そばにあった自動販売機で缶コーヒーを買って飲んだ。


電車の中
イクミの目の前に、ミニスカートのキレイな女の人が座っている。
(キレイな人みっけ!ラッキー見えそ!)
しかし、イクミの期待は裏切られ、
開きかけていたお姉さんの足は、ピタッと閉じてしまった…。
イクミ、泣く…


イクミの部屋
(さっきの姉ちゃんの残像が消えないうちに…)
イクミが目を閉じて、
電車のお姉さんのことを思い出していると…!
いつの間にか、どこかのシャワールームにワープ?
しかも、目の前で、シャワーを浴びるお姉さんが!!
ザーーーーッ…
あまりにもリアルなお姉さんの姿とシャワーの音に、あ然とするイクミ。

はっ!

イクミが我に返ると、そこはイクミの部屋…。
(あれ?まるで電車の中の女の人が目の前に…
まさか…現実的すぎるよ…)


食卓を囲み、イクミと父と母が食事をしている。
「チャンネル変えるよ。」
イクミがテレビのチャンネルを変えると、画面に
『超常現象に挑む!』
の文字。

『ありました!発見しました。
ウィルソンさんが透視したのと同じ三角形のカンバンです!』

スタジオで透視したものを、実際の現場から中継するという内容の
番組のようだ。

『そこを左に曲がってください。建物が見えます。
大きな…学校のような…』
『いや、本当おどろきましたね。
ウィルソンさんの透視とピッタリ符号します。
小西さん、引き続き捜索お願いします。』

「すごいわね〜この人〜。
私のイヤリングも見つけてくれないかしら。」
母の言葉に父は、
「そんなのあるわけないだろ、インチキだよインチキ。
世の中、目で見えるものしかないんだよ。
オレは信じんぞ、そんなもの!」
自信たっぷりにそう言って、ハンバーグを口に運んだ。
「じゃ、なんで神棚や仏壇…おがんだりするの?
お正月はみんなで初詣行くし、お墓参りとかもするじゃない?」
イクミの素直な、それでいて鋭いツッコミに、一瞬戸惑う父。
「いや…それは…おまえ、昔から…」
「昔から…どうしたの?」
「きまりなんだよ!」
「…わからん……」
箸をくわえて考え込むイクミ。


学校
「今日の体育は野球だっ!!
よ〜し!じゃあその前にグラウンド3周!!」
ええ〜〜っ!?
「るさい!早く行け!」
ぶうぶう言いながら、校庭を走るイクミと級友達。
その様子を、学校の外から金網越しに、じっと見ている男がいる。
スーツを着た、目つきの鋭い男だった。
「ちょっと、やだ〜、あそこ変なの立ってる〜」
「やだ、気持ちわりぃ〜」
「あいつ、前にも見た時ある〜」
「変態だよ〜絶対!」
騒ぐ女子になど目もくれず、男がみつめるその先には…
イクミだ。
男は、イクミを見ていた。
しばらく睨むようにイクミを見ていたが、最後に金網をグッとつかむと、
男は去っていった。


ゲームセンター

『昇龍拳!波動拳!波動拳!!波動拳!!!』
『ウオォウオオ!』

「よぉし!10人抜き!」
いつもの格闘ゲームで、ノリノリのイクミ。
「誰か乱入してくる人いませんか?」
うれしそうにそう言ったイクミの背後に…
「オレ達が乱入してやるよ。
ちょ〜裏、来いや。」
立っていたのは、安生と仲間だった。


ゲーセン裏の空き地
「持ってるだろ?1万や2万?ん?」
相変わらず、リーゼントの影を目のあたりにまでおとし、
安生は怯えるイクミをにらみ付けた。
「そ、そんな大金持ってるワケないじゃないスか?ホラね。
さっき渡した金で全部ッスよ!ホント。」
ズボンのポケットの中布を引っ張り出して見せ、イクミが言った。
「てめーん家、金に困ってるワケじゃねーべな。」
「金持ってんのは、お、お父さんですから…あの…」
「パパにもらってくりゃーいいじゃん。」
不気味に微笑みながら、イクミに近づいてくる安生達。
「そ、そんな…もらえるワケないじゃないスか?
ただでさえそーいうコトに厳しいのに…
お金なんかくれないですよ。
ボクの月のこづかい6千円なんスから。」
すると安生は、イクミの左頬と耳をぎゅうっとつかんで、
「オレは、パパにもらってこいっつってんだ!」
と、イクミの顔が引きつれるほど強く握った。
「ぐっ!!」
「もらってくるのか?もらってこないのか?
どっちなんだよ!?あ?」
「いっ…あ……ゆ…ゆるして…」
バチン!今度はイクミの右頬を、思い切り平手打ちする安生。
バランスを失って倒れこむイクミの口の中が切れ、
地面にボタボタと血が滴った。
「わかったよ…わかったから…はぁ、はぁ…
もらってくる…なんとか…はぁ…ごまかせば…
2万くらいは…だ…大丈夫だから…」
「5万だ。」
「…そんな、さっきは…」
「値上がりだよ、値上がり。てめェ、オレの手をわずらわしたじゃん。
その分、値上がりするのは当然だろ?あ?
もっと値上がりさして〜か?」
安生は、イクミの顔面に靴の裏を近づけた。
「わかったよ…5万…もらってくる。」
唇をかみしめるイクミ。
「…ふふん、はじめっから素直にそーしときゃよぉ。
さぁ、パパに言ってこいよ。」
と、その時…
「そこで何してるんだ!?」
「ああん?」
安生達がその声に振り返ると、そこに、一人の高校生が立っていた。
「また悪さしてんのか?安生〜〜!」
決して不良ではない、むしろ爽やかボーイともいうべき少年だったが、
その風格は、安生以上のものがあった。
「ケッ。」
(ヤナ奴が来た) そんな表情の安生。
安生の仲間の一人が、もう一人にボソッと尋ねた。
「誰よ、アイツ。」
「知らねーのかよ?東高(うち)のエースストライカー沢野だよ。」
沢野は、安生の後ろにひざをついて
口の血を拭っているイクミに気が付いた。
「イクミ!イクミじゃないか!」
ハッとするイクミ。 「沢野君…」
「おまえら、イクミになにをした!?」
唾をペッと吐き出して、沢野をにらみつける安生。
「てめ〜に関係ねーだろ、コラ!!とっとと消えな。」
「イクミはオレのダチなんだよ。」
「!」 イクミは、沢野の言葉にちょっと驚いた。
「なんだぁ、あのヤロウ。」
「うわさじゃ、中坊ン時ぁ、そ〜と〜ならしたらしいんだ。」
安生の仲間も、ヘタに手出しは出来ないとふんでいるようだ。
「イクミ、早くこいよ。」
「………」
声の出ないイクミ…。
すると沢野は、安生達の真ん中を通ってイクミのそばまで来くると、
右手を差し出して言った。
「さぁ帰ろーぜ、イクミ!」
イクミが、うれしそうに微笑んだその時だった。
ゴン!!
安生の仲間の振り下ろしたブロックが、沢野の後頭部を直撃!
!?
そのまま、地面にばったり倒れる沢野。
「さっ…!沢野君!」
駆け寄るイクミ。
安生は、沢野の頭に足を乗せ、靴でズリズリと踏みつけた。
「はぁ!脳震トウか!ぶざまだな!
エースストライカーかなんかしんねーけどよ、
かっこつけてんじゃね〜つぅのよ!」
「クッ、キサマら…」
それでも沢野は、安生の靴の下から、安生をにらみ返した。
「ひらめいた。エースストライカーさんのよぉ、
ヒザを割ってしまおう。」
「!」 安生の言葉に驚くイクミ。
「小寺、足の方おさえろ!」
「やっ…やめろ…」
よろよろと安生に近づくイクミだったが、
「ひっこんでろ!!」
ガッ!! 顔を蹴られて、そのまま壁に吹っ飛び、
ゴン!!後頭部が壁に激突!
ずるずると、その場に座り込んでしまうイクミ。
「よし!そのブロックの上に足のせろ!
二度とサッカーなんか、できないようにしてやる!!」
安生は、仰向けに寝かせた沢野の腹に馬乗りになり、
仲間の一人が、ブロックの上に沢野の右足のヒザをのせる。
イクミは、助けたくても動くことが出来ず、
目に涙を浮かべて、ただ見ているしかなかった。
「ちゃんとヒザの下にしけよ。」
ブロックの位置を確かめる安生。
「やめろ!やめてくれ!」
沢野の声に、
「あははは!泣け、泣け、叫べ!わめけ!」
安生は、楽しくてしかたがないとでもいうように大笑い。
仲間の一人が、拾った鉄パイプで地面をたたく。
「イヒヒヒ…じゃ、一発いくとすっか!」
イクミが、痛みをこらえて体をやっと動かし、
ガタガタと全身を震わせながら立ち上がった時、
仲間が、思い切り鉄パイプを振り上げた!!
「やめ〜〜〜ぇーーー!!あぁあ!」
沢野の叫びを聞いたその瞬間、
イクミは、鉄パイプの先をみつめながら、
不思議な感覚が全身に走るのを感じた。
すると…
転がっていたコーラのビンが、パン!と砕け、
破片が、沢野の足を押さえていた仲間の頬に当たり…
もう一人が構えた鉄パイプの先が、ゴン!と音を立てて曲がった。
「!?」
安生が、背中に殺気を感じて振り向くと…
まるで別人のような…、獲物を狙う黒豹のように
安生を睨みつけるイクミがそこに立っていた。
「何ガンくれてんだ!コラ!」
安生は立ち上がり、イクミを睨み返したが、
じっと安生を見据えたまま、微動だにしないイクミ。
ピシッ!
突然、安生の顔面が音を発し、
誰も指一本触れていない安生の鼻から血が流れ出した!
「えっ!?」 驚く安生。
イクミの瞳に、さらに力がこもる。
…と!!!
「っぐぉ!!」
安生の顔が変形し始め、安生は顔を抑えてもがきだした!
そして、周りのガラスというガラスが、次々音を立てて破裂!
「ごっ!」
安生の左頬が、内側から盛り上がるように腫れたかと思うと、
そのまま、ダーン!と、何かによって体ごと壁に吹き飛ばされた!
「っぐ…」 安生は、鼻と口から血を流し、そのまま気絶…。
(あの安生さんが…ふっとばされた…!?)
顔面蒼白の仲間2人…
「うあああぁぁぁぁ…」
あまりの恐ろしさに、安生を置いて逃げてしまった。

「イ…イク………」
倒れたまま、イクミを見る沢野。
イクミは、いつもの表情に戻り、
力が抜けたように、その場にガクッとヒザをついた…

「…ボク……」

― そして それは
ほんの始まりにすぎなかった ―


〜 第1話 終わり 〜

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