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宇宙戦士バルディオスの第1回


宇宙戦士
バルディオス


月面。
昼夜の区別の無い暗い空、荒涼とした大地。

突如、閃光と共に虚空より宇宙船が出現。その外観は、明らかに地球のものではない。
大音響と砂埃を上げつつ、宇宙船が月面に不時着する。

コクピットの中、1人の青年が気を失っている。


どく追跡者ついせきしゃ


西暦2100年 22世紀を迎えた人類は
太陽系全域に開発の手を広げ
かつてない繁栄を謳歌している

だが 1隻の宇宙船が
その運命を大きく変えようとしていた

彼の名は マリン・レイガン
銀河のはずれ 惑星S-1からの訪問者だった

だが その惑星S-1は いまや放射能汚染により
やがて来る死を迎えようとしていた


宇宙船パイロット、マリン・レイガンの回想……。


彼の故郷、S-1星。

放射能汚染で赤く染まった大気が不気味に大地を覆う中、マリンの乗ったエアカーが無人の街を走る。
やがて、エアカーが地上のハッチから地下へと運ばれ、地下空洞へと運ばれる。

S-1星の地下に築き上げられた地下都市。
地上同様の街並みに加えて緑まで生い茂り、頭上が青空でなく天井だということを除けば、地上と変わらない環境である。

エアカーがやがて、S-1星中央管理局のビルに辿り着く。
車から降りたマリンが、局を護衛するロボット警備員に身分証のカードを示す。

ロボット「レイガン研究所・マリン・レイガン・コードナンバー・313206・確カニ」
マリン「ありがと」
ロボット「イエ」


中央管理局の会議室。
S-1星の最高権力者・皇帝トリノミアス三世を始めとする面々で会議が行なわれている。
十数人の出席者の中には、軍部総司令官ゼオ・ガットラー、マリンの父・科学者代表レイガン博士の姿もある。

ガットラー「皆さんの決断を促したい! S-1星の寿命は残すところあと2年、いや、2年を待たずに滅びる! それだけではない、これを見て欲しい」

会議室のスクリーンに、地上の汚染されきった光景が映し出される。

ガットラー「これがかつて栄華を極めたS-1星だと、誰が信じよう? 今やこの地下都市でさえ、放射能に侵食され始めている。一部の地域は無法地帯と化して、様々な悪しき行いが公然と成されている。我々は人口増加の対処策として、僅かな罪に対してさえ死刑を宣告した。すべては科学者の責任だ!」
トリノミアス「ガットラー! 少し口を慎みたまえ。レイガン博士、科学者を代表して何か言うことは?」
レイガン「確かに科学の進歩が、この星を破滅に導いたのは事実です。しかし、それを利用したのは君たち軍人だ!」
ガットラー「だ、黙れっ! 我々軍部は如何なる時にも平和のために戦ってきた! このS-1星のためにだ!」
レイガン「平和のため? 初めから平和であれば戦いなど無くても良いのだ。君たちの軍国主義……」
ガットラー「黙れ!! 今さら言っても始まらん! 我々の助かる道はこれしかない」

スクリーンに映る、とある惑星。

ガットラー「我々は、S-1星に替る星を発見した。この星を、全軍を率いて侵略し、S-1星人全員の移民を図る以外にない! 皇帝、ご決断を!」
レイガン「皇帝! これ以上、軍の言うがままになってはなりません!」
トリノミアス「レイガン博士。このS-1星を救う手段が、他にあるというのか?」
レイガン「あります」
出席者たち「何?」「ある?」
レイガン「私たち科学者は今、クリーンアップ計画最後の研究に打ち込んでいます」
トリノミアス「最後の研究?」
レイガン「そうです。ご覧下さい」

スクリーンに、レイガン博士の研究中の装置が映し出される。

レイガン「放射能濾過循環システムです」
出席者たち「成功する可能性は?」「性能は?」「開発の目処は?」「どうなんだ?」
レイガン「……それが、まだ」
ガットラー「ワッハハハハ! バカバカしい! そんな夢物語を待っておれば、S-1星人は全滅だ!」
レイガン「夢ではない! あと半年もあれば……」
ガットラー「半年!? バカな!」
レイガン「私には自信があるのです。他の星を侵略する前に、まず我がS-1星を救うこと。これが、我々の第一に成すべきことではありませんか!?」
ガットラー「理想と現実を一緒にするな!」
トリノミアス「その通りだ。レイガン、5日以内に明確なデータが出なければガットラーの提案を飲む」
レイガン「5日……!? せめて、あとひと月のご猶予を!」
トリノミアス「……余が民衆の心を引きとめておけるのは、それが限度だ。ガットラー、治安の方は?」
ガットラー「やはり5日が限度でございましょう」
レイガン「皇帝!」
トリノミアス「では、その5日の間の治安はそちに一任をする」
ガットラー「ははぁっ!」
レイガン「お待ち下さい、皇帝!」
ガットラー「くどいぞ、レイガン! 皇帝への反逆罪で処刑されたいのか?」
レイガン「う……」
ガットラー「フフフ……」


マリンが会議室へと続く通路を行く。
行く先で、軍部士官のミランと2人の士官が雑談をしている。

士官「おっ? あれがレイガンの息子、マリンだぜ」
ミラン「マリン?」

彼らにかまわずマリンが通り過ぎようとするが、ミランがマリンの胸倉を掴み上げる。

ミラン「待てっ! 貴様、よくも抜け抜けと……!」
マリン「うっ……許可は取ってある、通してもらおう!」

いきなりミランがマリンを殴り飛ばす。

ミラン「民衆の目を欺き、愚にもつかん機械いじりをしている貴様らに、S-1星の大義を語る資格など無い!」
マリン「……お前らにはあるというのか? 戦争ごっこに夢中のお前らには!?」
士官たち「何だと!?」「もう一辺言ってみろ」
ミラン「待て! 貴様、誰に向かってものを言ってるんだ?」

ミランが銃を抜く。

マリン「暴力ですべてが解決すると思っているのか!?」
ミラン「何ぃっ……!」

そこへミランの姉、親衛隊長ローザ・アフロディアが現れる。
若いながら、サングラスで視線を隠したその表情は冷徹そのもの。血気あふれる弟ミランとは対照的である。

アフロディア「おやめ!」
ミラン「ね、姉さん……だって、こいつは」
アフロディア「任務中は姉と呼ぶな。部下が失礼した」
マリン「あ、いや……」
ミラン「姉さ……いや、アフロディア隊長。こいつはレイガン研究所のマリンですよ?」
アフロディア「銃をしまえ。会議は終わった」

会議室の扉が開き、出席者たちがぞろぞろと退出し、続いてレイガン博士が沈んだ面持ちで現れる。

マリン「父さん!」
ミラン「くそぉ……」
アフロディア「よせ!」

レイガン博士に駆け寄るマリン。しかしマリンが殴られた拍子に床に落としたカードを、アフロディアは見逃していなかった……。


マリンとレイガン博士が、マリンのエアカーで帰途に着く。

レイガン「女の隊長?」
マリン「あぁ。眼鏡を外せばえらい美人だぜ、きっと」
レイガン「名前を言ってなかったか?」
マリン「……アフロディア、とかなんとか言ってたよ。やだなぁ、父さんも美人には興味があるのかい?」
レイガン「アフロディア……ガットラー親衛隊の隊長だ」
マリン「何だって?」


一方、ガットラーのもとにはミランと士官たちが集合している。

士官「我々はS-1星人のために、とうに命は捨てております!」
ミラン「今か今かと出動態勢を整えて、待っているのです」
ガットラー「君たちの気持ちはよくわかる。だがいずれ、我々の目的は達せられる。皇帝は5日の期限を切られた。あせるでない」
士官「その5日の間に、奴らの実験が成功したら?」
ミラン「奴らの思う通りにさせる気ですか!?」

そこへアフロディアが現れる。

アフロディア「口を慎みなさい。感情の高ぶりは思わぬミスを招きます」
ガットラー「相変わらずだな、アフロディア」
アフロディア「本日の検挙者17名、内6名が政治犯。あとは単なるテロリストですので、その場で処刑しました」
ガットラー「そちを親衛隊長にしてから、政治犯が増えたな」
アフロディア「褒められたのでしたら光栄です」
ミラン「隊長は、科学者たちを放っておけとおっしゃるのですか?」
ガットラー「血気盛んな若者の情熱は大事にしたいが……今、皇帝の命に背くわけにはいかん」
ミラン「し、しかし……」
アフロディア「もし、皇帝がいなくなれば?」
ガットラー「!?」
アフロディア「どうなります?」
ガットラー「うむ……ありえぬことだが、そうなればこの若者たちを止める理由は無くなる」
ミラン「で、でもそんなことをしたら、軍部は民衆の信頼を……」
アフロディア「もし、皇帝の死体のそばに、これが落ちていたら?」

そう言ってアフロディアが差し出したのは、マリンの落としたカード。

ミラン「こ、これは!?」
アフロディア「皇帝の警護はすべて、私の腹心の部下で固めてあります」
ガットラー「……ハハハハハ! 負けたよ、アフロディア。お前を敵にしなくて良かった……すべてそちに任す!」
アフロディア「明日の良き日を……総統閣下....
ガットラー「フッ……総統か……!」


地上に設けられたレイガン研究所。
マリンが所員たちと共に、放射能濾過循環システムの研究に打ち込んでいる。

別室でデスクに向かって頭を悩ませているレイガン博士。
そこへマリンが駆け込んで来る。

マリン「父さん!」
レイガン「おぉ、マリン」
マリン「三号機の安定炉が、70%を越した!」
レイガン「何、有効指数は!?」
マリン「99.9%!」
レイガン「ほ、本当か、マリン!?」
マリン「あぁ!」


マリンや所員たちと共に、レイガンが研究中のシステムの稼動に目を見張る。

レイガン「うむ、成功だ! 循環機能、濾過機能、共に完璧だ!」


皇帝トリノミアス三世の寝室。
突如、ドアを開けてアフロディアや親衛隊が入り込んで来る。

トリノミアス「何事だ!? ……お、お前はガットラーの親衛隊長!」

アフロディアが銃を抜く。

トリノミアス「何の真似だ!? 余を撃てば……」

彼の言い分が終わる前に、アフロディアが微塵のためらいもなく、皇帝トリノミアスを撃ち抜く。
悲鳴を上げる暇もなく、亡骸となって転がる皇帝。
アフロディアが彼のそばにカードを投げ捨てる──それはマリンの身分証。


防護服に身を固めたマリンが、研究所の外で、放射能に汚染された光景を見渡す。

マリン (これがS-1星の海と空……俺の産まれるずっと前、まだ放射能に汚染されていない頃の海や空って、一体どんなだったんだろう……)

彼の背後で突如、研究所から爆炎が上がる。


研究所内。
ミランや士官たちが所内に入り込み、銃で機器や設備を破壊して回っている。
レイガン博士と所員の1人が、自らを盾として研究中のシステムを守っている。

所員「や、やめてくれ……これだけは!」
レイガン「君たちはS-1星を見捨てるつもりか!? 皇帝に歯向かうのと同じことだ!」
ミラン「皇帝は暗殺された! 犯人はこの研究所の者だ」
レイガン「な、何だと!? そんなバカな!」
ミラン「これでもか?」

ミランがマリンの身分証を示す。

レイガン「おぉっ!?」
ミラン「皇帝の亡骸のそばに落ちていたものだ」
レイガン「そ、それはマリンの……」
ミラン「とぼけるなっ!」

身分証に手を伸ばそうとするレイガン博士を、ミランが蹴りつけ、殴り飛ばす。

レイガン「ぐわぁ……」
ミラン「皇帝暗殺の首謀者として、貴様らを処刑する!」
所員「そんなバカな……!?」
レイガン「……S-1星がどうなってもいいのか?」
ミラン「S-1星のために貴様らを処刑するのだ」
レイガン「くっ……!」
ミラン「このS-1星と共に死ね! それがお前たちの本望だろう!」
マリン「待てっ!」

そこへ駆けつけたマリンが、ミランを蹴り飛ばし、奪ったライフル銃で士官たちを殴り飛ばす。

マリン「父さん! 大丈夫かい、父さん!?」
レイガン「あ、あぁ……何とかな」
マリン「ほら、しっかりして」

マリンと所員がレイガン博士を抱え起こす。
そのとき、ミランが床にこぼれた銃に手を伸ばす。

所員「あ、危ないっ!」
マリン「はっ!?」

ミランの銃が火を吹く。咄嗟にレイガン博士をかばった所員を、銃撃が射抜く。
逆上したマリンが、そばにあった機械片をミランへ投げつける。
鋭い機械片が、ミランの喉に突き刺さる。

ミラン「ぐわあっ! あ……」

ミランが倒れ、動かなくなる。
レイガン博士が、ミランに撃たれた所員を抱き起こす。

レイガン「マリン! ……死んでる」
マリン「えぇっ……?」

人を殺めてしまったことに呆然となるマリン。そこへアフロディアが現れる。

アフロディア「そこまでだ! 動くな!」

マリンたちに銃を向けつつ、アフロディアのもう一方の手がミランの手首に伸びる。
脈で死を悟ったか、それまで冷徹だったアフロディアの表情が歪む。

アフロディア「誰がやった!?」
マリン「……」
アフロディア「たった1人の弟を……よくも!」
マリン「うっ……」
アフロディア「許さぁん!!」

あわやと思われたとき、天井から瓦礫が降り注ぎ、マリンたちとアフロディアの間を閉ざす……。


亡き皇帝トリノミアス三世に替り、総統の座に就いたガットラー。
多くの民衆を前に、彼が演説の場に出ている。

ガットラー「同志諸君!! 我々は科学者たちの虚栄と欺瞞に振り回され、尊い犠牲を払ってきた! しかし今、彼らは偽りの仮面を脱いだ! 我々は今から二万光年の旅に出る! 我々の血を子孫に残すため、美しい星を求めて出発するのだ!!」
人々「ガットラー総統、ばんざ──い!!」


レイガン研究所。
崩れ落ちた瓦礫をのけ、マリンが父レイガン博士を救い出す。

マリン「父さん、しっかり!」
レイガン「う、うぅ……逃げろ……パルサ、バーンで……ガットラーは、皇帝を殺して……その座に就いた……放射能濾過、循環システムなど……もう、何の役にも立たん……早く……逃げるんだ、マリン……もう、この研究所には……うぅっ!」
マリン「父さぁん!?」
レイガン「地下へ……地下工場へ……」
マリン「パルサバーンだね、わかった! さぁ、しっかり!」

マリンがレイガン博士を抱え、研究所を去る。
次々に瓦礫が崩れ落ち、放射能濾過循環システムが炎に包まれる。


S-1星の大地を裂き、大勢の住民を乗せた超巨大宇宙船、要塞空母が離陸する。


レイガン博士を抱えたまま、マリンが地下工場への通路を歩く。

マリン「しっかりして、父さん……父さん、着いた!」
レイガン「おぉ……」

目の前に見える地下工場への入口。ドアが開く。
しかし背後から2人を狙った兵士の銃が、レイガン博士の背を射抜く。

レイガン「ぐわぁぁっ!」
マリン「はっ!?」

すかさずマリンが銃を抜き、兵士を仕留める。

マリン「父さん、しっかり!」
レイガン「マ……マリン……」
マリン「さぁ、早く逃げよう!」

何を思ったか、レイガン博士が力任せにマリンを、ドア向こうの地下工場内に投げ飛ばす。

マリン「父さん!?」

レイガン博士が手動でドアを閉じる。

マリン「父さぁん!!」

ドアが閉ざされる。マリンが拳をドアに叩きつける。

マリン「何するんだ、父さぁん!? 開けてくれぇ!!」
レイガン「マリン……」
マリン「父さぁん!!」
レイガン「よく聞け……マリン……わしはもう助からん……お前ひとりで行け……」
マリン「嫌だぁ!! 父さん、開けてくれぇ!!」
レイガン「宇宙には美しい星が、数限りなくある……ガットラーの思う通りにはさせてはならぬ……」
マリン「父さん……?」

レイガン博士の目から、涙がこぼれ落ちる。

レイガン「もう一度……青い……青い空が見たかったなぁ、マリン……」

マリンの目からも涙があふれ出る。

レイガン「行け……元気でな……マリン……」

レイガン博士の体が沈む。
ドア越しに、ドサッ、という音がマリンの耳に届く。

マリン「はっ……父さああぁぁ──ん!!」

もうレイガン博士の声は聞こえない。

マリン「父さん……うぅっ……」

マリンの目から、とめどなく涙が溢れ続ける。

(レイガン『ガットラーの思う通りにはさせてはならぬ……』)

父の言葉を思い出し、マリンが涙の満ちた目で地下工場内を見渡す。
そこにあったのはレイガン博士の建造した宇宙船、パルサバーンであった。


S-1星を離れて行く要塞空母。

遅れて出発したアフロディアの小型機が空母にドッキング。艦橋のガットラーのもとへアフロディアが現れる。

ガットラー「おぉっ、来たか! 待っていたぞ」
アフロディア「レイガン研究所で手間取りました。ミランが……死にました」
ガットラー「む……そうか。お前の弟の死を無駄にはすまい……」
アフロディア「マリン・レイガンに殺されたのです! たったひとりだけの肉親でした……」
ガットラー「マリンは、仕留めたのか?」
アフロディア「そ、それは……出発の時刻さえ迫っていなければ、必ずやこの手で、とどめを刺していました!」
ガットラー「そうか……だが奴もいずれS-1星と運命を共にするのだ。忘れよう。我々には未来がある」
アフロディア「……」
ガットラー「わしは、総統という名の権力の座に着いた。もちろん、民衆はわしに従っている」

眼下に広がるS-1星の光景。

ガットラー「あの赤く汚れた星にはもう、何の未練もない……皆、お前のお陰だ。礼を言うぞ」
アフロディア「……」
ガットラー「アフロディア。これより全軍の戦闘指揮権を、お前に委ねる」
アフロディア「全軍の戦闘指揮権……女の私に!?」
ガットラー「わしはお前を信じる。お前の能力をな。アフロディア司令長官、今お前は全S-1星人の運命を握ったのだ」
アフロディア「……命に代えても総統のため、S-1星人のため!」
ガットラー「可愛い奴……」

突如、警報が鳴り響く。

空母乗員「総統! 正体不明の宇宙船が接近して来ます!」
ガットラー「何だと!?」

S-1星を飛び立ったパルサバーンが、艦橋のスクリーンに映し出される。コクピットで操縦桿を握っているのは、マリン。

アフロディア「マリンっ!?」

マリンの姿を見るや、アフロディアが艦橋から駆け出す。

ガットラー「どこへ行く!?」
アフロディア「弟の仇はこの手で討ちます! お許しを!」
ガットラー「司令長官就任早々、命令違反か……ハハッ、何て奴だ」
空母乗員「あと3分で、ワープ開始です!」


アフロディアが小型機で要塞空母から出撃する。

ガットラー「アフロディア、聞こえるか!? 2分以内に戻れ! 1分30秒後にはワープだ!」

その言葉に耳を塞ぐかのように、アフロディアが通信機のスイッチを切る。

アフロディア (ミラン! お前の仇はこの手で……必ず取る!)

パルサバーンのコクピット、スクリーン上に警報が響く。

マリン「いかん!」

アフロディア機の放ったビームを、すかさずパルサバーンがかわす。
続けざまにアフロディア機がビームを放つ。

マリン「くそぉ!」

マリンが操縦桿をきり、ビームを避け続ける。

空母乗員「ワープまで、あと1分!」

パルサバーンのコクピット、ターゲットスコープがアフロディア機を捉える。

マリン「今だ!」

パルサバーンがビームを放つが、アフロディア機もまたそれをかわす。

空母乗員「あと30秒!」

父を失ったマリン、弟を失ったアフロディア、睨みあったまま両機が近づいていく。

空母乗員「ワープ開始!」

閃光と共に、要塞空母が宇宙空間から掻き消える。

そしてそれと共に、パルサバーンとアフロディア機が交差しようという寸前、両機とも宇宙空間から姿を消す──


そして現在。

月面に不時着したパルサバーン。コクピットのマリンは一向に目を覚まさない。

空から飛来した1機の宇宙船が、次第にパルサバーンへと近づいていく。


地球防衛組織のブルーフィクサー重攻撃機、バルディプライズ……


この日 地球歴2100年

ワープによって生じた次元嵐に巻きこまれた
マリン・レイガンは 時間と空間の歪みを通り抜け
いつの間にか 太陽系に辿り着いていたのだ


(続く)
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