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あずまんが大王

〜 テレビ 第1話 こども高校生 〜


朝、満開の桜並木の下…
登校してくる高校生たち。
その中に混じって、画面の下の方に時々映る小さな女の子。


自転車をかっ飛ばす女が一人。
必死にペダルをこぎながら、腕時計に目をやる。
「うわっ!もうこんな時間!!」
一層スピードをあげて、車道の隙間…公園の前…。
そして、住宅地にさしかかった時だった。
「あ??」
自転車を降りて道の脇に寄せ、ペダルの辺りを見ると、
自転車のチェーンがぶら〜んと垂れ下がっている。
「あれぇ?どうしちゃったの…?」
ペダルを回してみても、チェーンは動かない。
「もう、何よコレ!!」
そこへ、男子高校生が、やはり慌てて自転車をこいでやって来た。
「やっべー、遅刻、遅刻!…ん?」
女に気づく高校生。
「ゆかり先生、どうしたんですか?」
女は、その高校生の通う学校の先生だったのだ。
しかしゆかり先生は、高校生に気づいた様子はなく…
「ああん、もう!イライラするわね。新学期初日から遅刻なんかしたら、
またあの教頭の小言が延々と…」
「ゆかり先生?」
「『谷崎さん、これで何回目の遅刻ですかぁ?
このままじゃ生徒達に示しがつきませんよ。
皆さん、多感な時期なんですからねぇ』って、
何が多感よ、ふざけんじゃないわよ!ったくもうっ!!」
「ゆかり先生っ!」
「ああ、もう、思い出したらハラ立ってきた!
くそ、くそ、くそくそくそ…うぎゃ〜っっ!!」
立ち上がって、自転車を蹴り始めるゆかり先生。
「先生!」
高校生は仕方なく自転車を降りて、
先生に近づき、後から羽交い絞め。
「先生!壊れちゃいますよ!先生っ!」
「このっ!このっ!このっ!アタタタタタ…!」
なおも蹴りまくる先生。
「センセイっっ!!!」

「なんだ、チェーンが外れただけじゃないですか。
これならすぐに…」
高校生は、先生の自転車を見てやりながら隠れてニッコリ!
(ラッキ〜!先生と一緒なら遅刻も大目に見て…)
「ねぇ先生、今日の…!だぁ!!」
高校生が振り返った時、ゆかり先生は…
その高校生の自転車にまたがって猛ダッシュ!!
「だぁ〜っ!!オレの自転車〜〜っ!!!」


♪キンコンカンコン…♪
始業のベルにのって、
校舎の前を飛んでいく黄色い不思議な生き物??

廊下、壁に手を付き、肩で息をするゆかり先生。
「はぁはぁはぁ…間に合った…くっそ〜っチェーンのヤツ…
今に見てなさいよ…」
ゆかり先生、怖い顔…!
ガラガラガラ… 「おっはよ〜♪」
さっきとはうって変わった作り笑顔で、教室に入る先生。
「はぁい!みなさ〜ん!!」
教壇でくるりとターン…そして黒板に 『谷崎ゆかり』と書き、
「はぁ〜い!私が3組の担任の谷崎です!
わからないことは何でも聞いてねぇ〜!!」
ノリノリでご挨拶。
すると、一人の男子が立ち上がり 「あ、あのう…先生…」
何か発言しようとしたが…
「ああ…ダメダメ!ダメだってばぁ!!
スリーサイズは、ヒ・ミ・ツ・よっ!
でもぉ、スタイルが良くないから言うのが恥ずかしいってわけじゃないのよ。
こう言うのもなんだけど、けっこう大したモンよぉ〜!
あはぁっ!もう、何言わせんのよっ!
いやだなぁ…このぉ、おしゃまさんっ!」
先生は、すっかり自分の世界に入り込んでいる様子。
「いえ…あのう…先生のクラスは隣です…」
その言葉に、先生は幽体化… チーン!
「ここ、4組…」
ヒュ〜… そのまま風に飛ばされてゆく先生。

ゆかり先生はすっかり落ち込んで、
どんよりとしたまま、隣のクラスへ入っていった。
ガラガラガラガラ…
顔を上げる滝野 智(通称 とも)、
メガネを直して先生を見る水原 暦(通称 よみ)、
全く興味なし…といったカンジの榊さん、
大きな瞳で先生をみつめる、かおりん…
ゆかり先生は、うつむいたまま教壇まで歩き、
「はぁい…今日から3組の担任になった谷崎よ。よろしく…」
テンション低〜くご挨拶。
…と、先生を教壇で待っていた一人の女子??
かなり小さい。
先生は、その女子の髪をキューっと引っぱって…
「あぁ、そうだ…早速だけど、転入生を紹介します。
美浜 ちよちゃんです。」
「美浜ちよです!よろしくお願いします!」
かわいらしくペコリと頭を下げるちよちゃん。
「ちよちゃんは10歳だけど、とっても優秀なので、
高校に編入してきました。」
「お〜〜〜っ!!」
教室中から沸き上がる、感嘆の声。
「ガキのくせに勉強できるからって、いじめないでくださいね。」
どよ〜〜〜ん…
先生の言葉に、今度は真っ青によどむ教室…
頬を赤らめ、はにかんだようにみんなを見るちよちゃんに、
「ちよちゃん、ファイト!」
「応援するぞ〜!」
クラスメートの声援が飛んだ。
「はいっ!!」
ニッコリ微笑む、かわいいちよちゃん。


〜 第1話 おわり 〜

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