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あしたのタマゴ 

・・・ STEP:1 ・・・



『恋する気持ち』と
『愛する気持ち』って
どう違うのだろうか…!?



とある高校…
階段を降りてくる一人の男子学生・勝矢真琴。
カバンを肩に担ぎ…かなりの美形!
「なんだ勝矢、もう帰るのか?」
窓から声を掛ける先生。
「うん帰る、じゃあな。」
「寄り道しないで真っ直ぐ帰れよー」
「うるせー」
…と、その時!
ズン!グラグラ… 激しい地震!?
「うわっ!!なんだ?地震か!?やべえぞ…この揺れ…」
慌てて階段の手すりにつかまる真琴。
シン……
「…あ…よかった、おさまっ…」
ふと真琴が見上げると、何とも気妙なモノが空中に浮いている?
大きなタマゴ?に耳と手足がついていて…
愛嬌のあるかわいらしい顔!?
それは、真琴の目の前で、くるん!と回転すると、
体より長い舌をベーッ!と出した。
カタまる勝矢…滝のような汗!
やがてそれは、くにゅんとつぶれたかと思うと…
フッ!と一瞬で消え去った。
「!?」 (な…なんだったんだ、今のは…?
お・ば・け…?
…み、見なかったことにしよう…)
真っ青…クラクラ…真琴はボー然と学校を後にした。
帰り、コンビニに寄った真琴。
そんな真琴のことを、遠くからじっと見ている一人の男がいる。
長身の…白いコートにサングラス…
真琴に輪をかけて…カッコイイっ!!
真琴が、雑誌スタンドで立ち読みしていると…
ガタガタガタ…グラッ!
「また地震か!?」
顔を上げる真琴…と、そこに!
さっきのタマゴ型の物体が、ニッコリ笑って浮いているっ!
「うわああっっ…ばけものーー!!
でたーーーーーっっ!!」
這って出口へ向かう真琴。
ドン!誰かにぶつかり、思わずその人にすがりつく…
「あ、ごめんなさい!今、そこにおばけがっっ…」
それはさっき、真琴をじっと見ていたサングラスの男だった。
その男は、電卓のようなモノを取り出すと、
そこから浮き出た映像と、真琴の顔を見比べ、
「良かった…」 と、ポツリ。
「?」
「勝矢真琴さんですね?」
「え?」
「お会いしたかった♪あなたに会える瞬間を、
どんなに待ち望んだか!」
その男は、そう言ってギュッと真琴を抱きしめた!
そして、耳元で…
「僕を助けてください。僕を救えるのは
あなただけなんです……あれ?」
抱きしめられたまま、真琴…石化!
「おかしいなぁ…20世紀の資料では、
感動の場面に抱き合うのは、お約束のはずなのに…」
男が、また電卓みたいなのを出して首をかしげていると、
ドン!真琴は、その男を突き飛ばし猛ダッシュ!
「あ!待ってくださいっっ!!」
そんなこと言われても、止まるわけがない。
(冗談じゃねぇ、変態と関わってたまるかっ!)
ドヒューン!と逃げる真琴を黙ってみている男…
サングラスをとると、思ったより若い。
「…失敗か、でも諦めないよ。僕のため…
そして、あなたのために――…」

真琴の家
「はあ、はあ、はあ…」
玄関に飛びこんで、真琴は一安心。
(なんて日なんだ今日は…変なモノ見るわ、変な奴にからまれるわ…
じしんにおばけにへんたい…)
ふと、廊下からダイニングキッチンをのぞき見ると、
母が、テーブルの上のラップのかかった料理の皿を見つめている。
(母さん…またぼうっとして…)
「…ただいま、母さん。」
「あ…お帰りなさい、早かったのね。
お茶でもいれようか?」
やさしく微笑んで立ち上がる母。
「…いいよ。」
「じゃあ、お母さん、ちょっと夕食の買い物に行って来るわね。」
「うん。」
母は、テーブルの上にあった料理を、ゴミ箱へ捨てる…
(親父はたぶん、今日も帰って来ない…)

〜 先日、聞いてしまった父と母の会話を思い出す真琴 〜
『…仕事忙しいの?』
『当たり前だろ』
『この間、会社に電話したら、
最近は定時であがってますって言ってたけど…』
『お前は俺を信用していないのか?
サラリーマンってえのはな、いろいろ忙しいんだよ!
お前が一戸建ての家が欲しいって言うから、
会社から遠いこの場所を選んだっていうのに…!
俺の身にもなってくれよ!』
『…そんなに怒鳴らなくてもいいのに…』
父の脱ぎ捨てた上着の匂いをそっと嗅ぐ母の姿…

(親父は母さんのこと、本当に愛しているのか?
あんな気の抜けた母さんなんか、見たくない…)
ベッドにカバンを放り投げ、寝転ぶ真琴。
(ずっと好きでいるって、そんなに難しいのか?
俺にはそれが、できるんだろうか…)
真琴の頭に浮かぶ、髪の長い一人の女子生徒…
すると…!
カタカタカタ…グラッ!
揺れる部屋…本棚からバラバラ本が落ちてくる!!
「また地震か!?」
真琴は飛び起きて、夢中で階段を駆け下りた。
ちょうど買い物に出ようとしていた母が、
「どうしたの?真琴。」
驚いたように真琴を見た。
「地震!母さん、地震っ!!」
「地震?何言ってるの?揺れてないわよ。」
「…あれ、本当だ。」
頭をかきながら、部屋へ戻る真琴。
しかし、部屋のドアを閉めた瞬間…!
ぐら…ガタガタ…ズン!ガタガタ!!
「揺れてるじゃないか――…!
そんなバカな…!俺の部屋だけ!?なんでっっ!?」
枕で頭を覆い、うずくまる真琴…ちょっと涙目。
「俺、弱いんだよ、こーいうのっっっ!!
おさまってくれー!!」
その時、天井に不思議な渦巻きが出現!
そこから…ズボッ!っと、さっきのタマゴのようなモノが出てきて、
真琴の上に、ドスッ!と落っこちた。 「うわっ!」
シュウウ… タマゴから湯気のようなものが立ちのぼり、
その揺らめきの中から現れたのは…?
「おじいさんー…」
「お…俺のおじいさんは、3年前に亡くなりましたっっ。
なむあみだぶつなむあみだぶつ…」
真琴は、頭を隠してお念仏。
「そうじゃなくて…真琴おじいさん。」
「真琴…?」
頭を上げて、ふと考える真琴。
「…って俺かあ!?失礼だなっっ、俺はまだ17…」
ガバッと起き上がって、その声のする方を見てみると!
「ぎいやあああ!お前はさっきの…っ!?へんたいっ」
目の前に立っていたのは…そう、さっきのコートにサングラスの
あのイイ男だった。(サングラスはもうしていなかった)
「てめえ、人の家に勝手に入りやがって、
何しに来たんだ!?」
すると、その男はニッコリ笑って…
「僕は、あなたに逢いに来たんですよ、おじいさん。」
と言って、顔を真琴の顔にぐっと近づけた。
思わず顔を背ける真琴。
「だから、俺のどこがおじいさんな…え?」
男は、真琴の両肩にガシッと手を掛け、
真琴の左頬にチュッ!
サーッと青くなる真琴。
男は、お構いなしに、右頬にもチュッ!
いよいよ真っ青になって、泡を吹く真琴…
それを見て、男は電卓のようなモノを投げつけ、
「また違うじゃないかっ!一度ならまだしも二度まで…
この不良品め!」
「この変態やろーーーっっ!!」
涙を振り飛ばしながら、ゲンコツで殴ろうとする真琴。
「ふざけやがって!!力ずくで追い出してやる!!」
「落ち着いて僕の話を聞いてください!」
「うるさいっっっ!ここから出て行けっっ!!」
真琴は、男を無理やり外へ出そうとしたが、
「いやです!!僕を助けてください!!
おじいさんの力が必要なんですっっ!!」
逆に、真琴につかみかかる男。
「助けて欲しいのは、俺だよ!!」
「おじいさん!!」
「おじいさんって言うなっっ!!」
もみ合って、ベッドへ倒れこむ二人。
そこへ…!!
バン!! 「真琴ーいるー?」
ノックもなしに部屋に入ってきたのは…
幼なじみの桃香だった。
ベッドに抱き合うようにして倒れている二人のオトコ…?
(なぜかそのコマには、薔薇の花が散りばめられている…)
一瞬カタまり…無言で部屋を出てゆく桃香。
パタン…
二人のオトコの後頭に、汗っっ!!
しかし、すぐ再び入ってきた桃香。
「真琴…あんた、そういう趣味があったの?」
「ちっがーーーーーうっっ!!」
すると桃香は、コートの男に近づき
「大丈夫、大丈夫!顔がいいからオールオッケー!」
ニッコリ、バッチリマーク!
「じゃ、続きはごゆっくり♪」
二人のオトコ…目がテン。
「も…桃香!ちょっと待て、変な誤解したまま、
俺を置いていくなーーーっっ!」
桃香はクスッと笑って振り返る。
「冗談よ、お客さんがいたなんて知らなかったから、
失礼しちゃったわね。いい男ね♪紹介して。」
二人の前に座る桃香。
「あたしは、城石桃香。真琴の幼なじみよ、あなたは?」
「僕の名前は祐介…勝矢祐介です。」
「勝矢?俺と同じ名字だな。」
「親せき?」
「未来の日本から、タイムマシンに乗ってきました。」
にこやかに答える祐介。
「はあ?」
「もしかして、真琴のムスコだったりして。」
「いいえ、孫です。」
「えーーっっ、本当に!?すっごいっっ!」
桃香は、大興奮!!
「んな訳ねぇだろっっ!!」
こちらは、怒って大興奮の真琴。
「信じてくださいよ、おじいさーん。」
「だから、おじいさんって言うなっっ。」
桃香は、祐介の顔を見つめ…
「私はあなたの話、信じてあげるわ。
そういう話キライじゃないしね。
それにあなた…どことなく、真琴に似てるもの。」
と、微笑んだ。
「あ…ありがとう。」
優しい顔になる祐介…
「で?タイムマシンはどこなの?」
「あそこに。」
祐介の指差す窓の方を見ると、
窓枠いっぱいに広がった、さっきのタマゴ型の物体が、
可愛らしい顔で笑っている!
ぶっ飛ぶ真琴。
「おじいさん、助けて欲しいんです。」
「だから…おじいさんて言うな。」
「父を…無実の罪で捕まった――あなたの息子を!」
祐介は、真剣な眼差しで訴えた。
(むす…こ…だって?俺に…?)

『父さん!』
『あとのことは頼むよ、祐介。』
『父さん!父さん…!!』
連行される祐介の父(真琴の息子?)

「父は、門倉物産という会社で、
タイムマシンの開発プロジェクト担当をしていました。
そのタイムマシンを、社長である門倉修造が、
顧客に無料でレンタルしてしまったんです。」
「無料でレンタル?客にとってはうれしいことなんじゃないの?」
桃香が言った。
「ええ、そのタイムマシンが完成品でしたら…」
「え?」
「レンタルされたものは、まだ試作段階のものでした…
片道のみの――
移動時間しか可能ではないものを…
そのことを、顧客は知りません。」
「片道のみって…」
そこまで言って、桃香と同時に立ち上がる真琴。
「戻れないってことじゃないか!!」
ものすごい事に気付き、一緒に叫ぶ二人。
「ひどーーーーいっっ!」
「なんて野郎だ!!」
そして、罵詈雑言の嵐っ!
「許せない!!お客さん達はどうなるのよ!」
「俺の息子は…?息子はどうなる!?」
と、思わず言っちゃった真琴。
「あら、あなた信じる気になったの?」
すかさずツッこむ桃香。
「あ…いや…はっきりとはまだ…でも…
俺の息子が逮捕されたなんて、
冗談でもいい気持ちしないぜ。
それに―…
冗談でも俺に息子が出来て父親になるってことは…
もちろん母親…なんかもいる訳だろうし…」
ちょっと赤くなって真琴がそう言うと、祐介はにっこり。
「ああ、おばあさんのことですね。」
「わああああ!!いい!!言わなくていいっっ!
何も言うな!!」
さらに真っ赤になって、慌てふためく真琴。
「あら、私、知りたいかも。」
それに比べて、冷静な桃香。
「知りたくないっっ!!俺は知りたくない!!
絶対、知りたくない…ううう…」
な、何もそこまで…桃香、祐介、たらーっ…
「知らない方がいいんだ…うん―…」
「ヘンな真琴…」
桃香、祐介、目がテンになる。
「私は強力するわ。あなたの父親であり、真琴の息子でもある人の
無実を証明しましょう。美少女探偵、桃香誕生!
名推理で事件解決よ。おもしろそうだしねーワクワク!」
今度は、一人張り切りまくる桃香。
「証明するっていったって、どうするんだよっっ!」
「あたってくだける!!」
「何が名推理じゃ…くだけちまえ!」
そこで祐介が、大まかなプランを話す。
「行方不明になっている顧客達を探し出します。
裁判で彼らが証言してくれれば、
父の無実は証明されます。」
「捜すってどうやって?タイムマシンは使えないんだろ?」
「それは大丈夫です、僕のだけは♪」
ニッコリ微笑む祐介。
「じゃあ、私、タイムマシンに乗れるのっっ!?」
桃香はワクワク!そして、こう付け足した。
「ねえ、綾子にも協力してもらいましょうよ。」
それを聞いて、ドキッ!とする真琴。
「綾子…?」
祐介が、ちょっと気になる尋ね方をした。
「私と真琴の幼なじみ、真琴の片想いの相手よ。」
「んなこと、教えるなっっ!!
第一、彼女をあぶない目にあわせられっかっっ!
だめだ、だめだ、だめだ〜」
「あら、てれちゃって♪」
そんな二人を、祐介は黙って見ていたが…
やがて、こんなことを言い出した。
「いいところ見せるチャンスじゃないですか。
人助けして感謝される少年、
それを見て感動する少女、
彼は彼女を命がけで守り、どんな苦難をも乗り越え、
そして、恋が芽生え始める…」
真琴、真っ赤…
「…それ、ちょっといいかも…♪」
「(ちょろい!)よーし、そうと決まったら、
集合して打ち合わせしましょう!」
「はっ!ちょっと待て、俺はまだ…!!」
まんまとのせられてしまったことに気付く真琴。
だが…もう遅い!
「楽しみだね〜♪真琴ー!
探偵って一度やってみたかったのよねー♪」
桃香はもうノリノリ。
「よろしく!おじいさん。」
真琴は、あまりにも爽やかにそう言う祐介をにらんだ。
「ぐ……だ、だから………
おじいさんって、言うな…」


・・・ STEP:1 おわり ・・・

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