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悪魔くんの第1話 (1989年アニメ版)


満月の夜。
うっそうとした木々が立ち並び、カラスの鳴き声が不気味に響く。

とある洞窟の奥。

「エロイムエッサイム── エロイムエッサイム── 我は求め訴えたり──」
「エロイムエッサイム── エロイムエッサイム── 我は求め訴えたり──」

「出て来い、メフィスト!」

地面に描かれた魔法陣に向かって呪文を唱える、主人公・埋れ木真吾、通称・悪魔くん。
魔法陣には、何も起こらない。

「また失敗かぁ…… はぁ……」

そう思った次の瞬間、地面が揺れ始める。

「あ!?」

地面が妖しい光に包まれ、煙が吹き出し始める。

「や……やったぁ! 遂にメフィストを呼び出したぞ!」

光と煙が大きく立ち昇り、その中から三つ首の巨大な怪犬が現れる。

「誰だぁ! 俺を呼び出したのはぁ!」
「け、ケルベロス!?」
「お前かぁっ!」
「わぁ、待ってくれぇ! 僕はメフィストを呼び出したかったんだよぉ! うわぁ!」」

必死に逃げ惑う悪魔くん。ケルベロスの巨大な足が迫り、鋭い爪が悪魔くんを捕える。
脂汗を滲ませる悪魔くんの体目がけ、爪の先端が迫る……。

「わああぁぁ──っっ!?」


あわやと思った次の瞬間、そこは自室のベッドの中。

「ゆ……夢だったのか……」


 魔界の
見えない学校!!


小学生たちの行き交う通学路。

悪魔くんが横断歩道の途中で足を止め、考え込む。
そこへ、親友の貧太がやって来る。

貧太「お──い、悪魔くぅん!」
悪魔くん「やぁ、貧太くん」
貧太「どうしたんだ? こんなところでボーっとしていちゃ、危ないじゃないか」

信号が変わり、周囲の車がクラクションを鳴らす。慌てて2人が横断歩道を渡りきる。

悪魔くん「はぁ…… ありがとう」
貧太「悪魔くん、今日もやるんだろ?」
悪魔くん「あぁ、いつもの時間にね」
貧太「今度こそ悪魔を呼び出せるといいな」
悪魔くん「シッ、情報屋に聞かれたらまずい!」

そこへカメラマン気取りの級友、通称・情報屋が顔を出す。

情報屋「ほほぅ〜、何を聞かれたらまずいって?」
貧太「しまった!」
悪魔くん「べ、別に」
情報屋「地獄耳の情報屋を嘗めちゃいけないぜ。特ダネ求めて西東、いつか俺のスクープ写真を、写真週刊誌のトップに載せてみせらぁ!」
悪魔くん「おい、キリヒトくんだぞ。ほっといていいのか?」
情報屋「何? おぉい、キリヒトくん!」

同じく級友のキリヒトを見つけ、情報屋が飛んで行く。その隙に悪魔くんたちは走り去る。

情報屋「キーリヒットくん♪ 月曜日の算数のテスト、どんな問題が出るんでしょうねぇ?」
キリヒト「情報屋くん、いいですか? どんな問題が出ても困らないようにするのが、勉強なのです」
情報屋「ぬ?」
キリヒト「楽しみですね、どんな問題が出るか…… アハ、アハ……」

キリヒトが去って行く。

情報屋「何がアハ、アハだ! あぁ、あいつらがいない? うーん、あいつら何か匂うんだよなぁ」


悪魔くんが自宅に帰って来る。

悪魔くん「ただいまぁ!」

台所で昼食の支度をしている母コハル、それを手伝う妹のエツ子。

エツ子「あら、お兄ちゃん?」
コハル「落ち着きがないんだから、もう」

帰るなり悪魔くんは自室で、悪魔のことを記した古本とにらめっこ。

悪魔くん「悪魔界のスーパースター、メフィストかぁ…… 魔法陣の書き方も間違ってないはずなんだけどなぁ……」

ページをめくる。魔法陣が描かれているが、ページが破れて魔法陣の一部が欠けている。

悪魔くん「やはり、この破れた部分に謎が隠れてるようだ」

ノックの音。

悪魔くん「どうぞ」
エツ子「お昼の時間よ、お兄ちゃん」
悪魔くん「今はそれどころじゃないんだよぉ」
エツ子「あ、そ」「お父さん! ご飯ですよ!」

漫画家の父・茂が仕事を切り上げ、仕事場から出て来る。

茂「はぁい! よっこらしょっと、さぁ、ご飯ご飯っと!」

悪魔くん「もう一度タロットカードで占ってみよう」

茂、コハル、エツ子は昼食中。

コハル「お父さん、少しは真吾に言ってやって下さいよ。勉強もろくにしないで、悪魔だか何だか変なものに夢中になって……」
茂「あの年頃で何かに夢中になるのは大切さ。父さんも小学校の頃は漫画に夢中だった。エツ子はどうだ?」
エツ子「そんな暇があったら勉強するわ! そしてしっかり教養を身につけて、お金持ちと結婚するの!」

悪魔くん「アウルディアライムルハルラ── 『金貨の8』か…… よし、数字を8に変えてみよう!」


家を飛び出した悪魔くんが、家の裏の墓地を駆け抜ける。

悪魔くん「お邪魔しまぁす! ごめんなさぁい!」

古寺の脇を横切り、竹林を駆け抜け、洞窟の中へ。
暗がりの中、2つの目が光る。

悪魔くん「わぁ!?」
貧太「待っていたよ、悪魔くん」
悪魔くん「貧太くんかぁ……」
貧太「さぁ、早く今日の実験を始めよう!」
悪魔くん「うん!」

地面に描かれている魔法陣の一部の数字を「8」に書き換える。

貧太「今度こそ、うまく呼び出せるといいな」
悪魔くん「うん…… さぁ、下がって。いよいよ124回目の実験だ。出て来いメフィスト! エロイムエッサイム── エロイムエッサイム── 我は求め訴えたり──」

貧太「──ダメかぁ……」
悪魔くん「いや!」

地面がかすかに揺れ始める。悪魔くんの額に汗がにじむ。

魔法陣の中心、土がもりあがっていく。

貧太「悪魔くん、あれを!」
悪魔くん「メフィストォ……!?」

土の中から顔を出したのは、1匹のモグラ。

悪魔くん「また失敗かぁ……」


その帰り道。

貧太「そう、しょげるなよ」
悪魔くん「うん…… まぁ、ケルベロスが出て来なかったのは不幸中の幸いだったよ」
貧太「じゃあ、僕はこれで。昼ごはんがまだなんで!」
悪魔くん「じゃあ、また」


商店街の、とある電気店。

展示品のテレビの前、小学生ほどの背丈の客がいる。
目深にかぶった帽子とだぶだぶのコートで全身を覆い、体は両目しか見えていない。

店員「なんだか気味の悪い子供だなぁ……」

テレビ番組に見入るその客にのもとへ、店員がやって来る。

「エッヘン! あぁ、そこの少年、商売の邪魔なんだがね」

客はチラリと店員を一瞥しただけで、またテレビを見続ける。
ムッとした店員が、テレビを消す。客は構わずにテレビをつける。

「こらぁ!」

客はじっと店員を睨みつける。

「う!? そういう目はやめなさい!」

店員がその客の帽子を取り上げる。

「そういう目…… ありゃ!?」


たちまち電気店の前に、大勢の人だかりができる。

「なんだ、これ? 気色悪いなぁ……」「何何?」「生きてるの?」「宇宙人だぞ!」

帽子を取られたその客の素顔が、露わになっている。
顔に2つの目だけでなく、正面にも後ろにも、いくつもの目を持つ、小さな悪魔である。
あれこれ言い合う野次馬たちに、迷惑そうな顔の小悪魔。

「静かにしてほしいモ──ン!」

無数の目がピカッと光る。

「あ……あら?」「あらら?」
「えーと…… この少年が、どうかしましたっけ?」「何だよ?」「何で集まってたんだ?」
「あんな子、珍しくもない」「目がたくさんあるだけじゃないか」「もう、行こ行こ」

野次馬たちが興味を失った様子で、去って行く。
そこへ悪魔くんが通りかかる。

悪魔くん「あぁぁっ!? き、君もしかして…… 百目? 悪魔辞典で見たことがあるぞ!」

その小悪魔が、ニッコリと笑う。

「僕、百目だモン!」

悪魔くん「ほ、本物だぁ……!
百目「お兄ちゃん、僕、迷子になっちゃったんだモン」
悪魔くん「じゃあ、うちにおいでよ!」
百目「本当かモン?」
悪魔くん「もっちろん! さぁ行こう、百目!」
百目「うん、ついて行くモン!」


悪魔くんの自宅。情報屋が玄関先を訪れている。

情報屋「そうですかぁ、どうも。」
エツ子「どういたしまして」
情報屋「昼ごはんも食べずに出かけるとは、油断したぜ…… あ!」

悪魔くんが百目を連れて帰って来る。

悪魔くん「あ!」
情報屋「何連れてんだ、あいつ!?」
悪魔くん「まずいや!」
情報屋「あぁ、待てぇ!」
百目「どうしたんだモン?」
悪魔くん「厄介な奴に見つかっちゃったんだよ!」

悪魔くんが百目を連れて逃げ出すが、情報屋が素早く回り込む。

情報屋「このバケモノを写せば写真週刊誌に載ること間違いなし!」
悪魔くん「やめてくれよ、情報屋ぁ!」
情報屋「やめられるかよぉ!」

突っかかる悪魔くんを、情報屋が突き飛ばす。

悪魔くん「痛ぁ……」
百目「いじめっ子はダメだモン!」

百目がコートを脱ぎ去る。体にも四肢にも、いくつもの目。
情報屋がカメラを構える。
百目が全身の目から閃光を放ち、情報屋の目を強烈な光が直撃。

情報屋「真っ白けのけ──!?」

さらに百目の全身から、無数の目玉が飛び出す。

情報屋「わ!? わぁっ!?」

逃げ出す情報屋を、目玉が追いかける。
無数の目玉を浴び、情報屋が倒れる。
驚く悪魔くん。百目のもとに目玉たちが戻ってくる。

悪魔くん「あぁ……!?」
百目「大丈夫だモン、気絶してるだけだモン! フフフ!」


悪魔くんは百目を家に連れ帰り、家族に懇願する。

悪魔くん「うちに置いてあげていいでしょ、一生のお願い!」
コハル「だって悪魔なんでしょ?」
茂「タロも死んでしまったし、番犬代わりに置いてみたらどうかな?」
悪魔くん「本当!?」
コハル「お父さん! 悪魔を飼ってるなんてことがご近所に知れたら、どうするんですか!?」
茂「いや…… だって、真吾が一生のお願いだって」
コハル「いつだってそういうんですよ! あなただってパチンコに行くときはいつもそう言うじゃ……」
茂「あぁ、仕事仕事、仕事しなきゃ! 仕事仕事、仕事だよ」

話をそらして退散する茂。

悪魔くん「本当の本当に一生のお願い!」
コハル「言い出したら聞かないんだから…… ただし、犬小屋ね」

家の庭の犬小屋に入れられた百目。悪魔くんが、家を訪れた貧太と一緒に覗き込む。

悪魔くん「ねぇ、悪魔の世界ってのはどこにあるの?」
百目「僕、知らないモン」
悪魔くん「うーん…… じゃあさぁ、魔法陣の書き方について教えてくれないかなぁ? 僕たち、魔法陣で悪魔界のスーパースター・メフィストを呼び出そうとして、何度も努力したけどダメなんだ」
百目「知らないモン……」
悪魔くん「うーん……」
貧太「悪魔くん、慌てることはないよ。ゆっくり聞けばいいじゃないか」
百目「!? 悪魔くん、っていうのかモン?」
悪魔くん「あだ名だけどね」
貧太「僕が付けたのさ。彼は悪魔のことに詳しいからね」
百目「ふぅ〜ん……」
悪魔くん「それがどうかしたかい?」
百目「おやすみだモン……」
悪魔くん「……?」


その夜。百目が悪魔くんを、夜の町に連れ出す。

悪魔くん「こんな時間に、一体どこへ行こうっていうんだい?」
百目「いいところだモン」

どことなく奇妙な雰囲気の漂う夜道。
突如、目の前に不気味な形の扉が現れる。

百目「ついて来るモン!」

百目とともに、悪魔くんがその扉を通る。
薄暗い通路を通り抜け、やがて、薄明るい草原に出る。

古代神殿のような遺跡が立ち並ぶ中、城のような奇妙な建物がそびえ立っている。

悪魔くん「なんだぁ!?」
百目「やったぁ! やっぱり、あれが見えるモン?」
悪魔くん「うん……」
百目「あれは、僕たちの『見えない学校』だモン!」
悪魔くん「見えない学校……?」
百目「悪魔くんには見えるけど、普通の人には見えないんだモン」

百目が悪魔くんを、その「見えない学校」なる建物の中へ招く。

百目「ここだモン」
悪魔くん「ここは……?」

無数の本棚に立ち並ぶ、薄暗い一室。
多くの本の積み重なった机の下から、顔が見えないほどの白髪とひげをたくわえた老人が現れる。

老人「おや、君の名は……?」
悪魔くん「埋れ木真吾です」
老人「ふむ…… 2351人目の候補生じゃな」
悪魔くん「お、お爺さんは誰……」
老人「ふむ…… エロイムエッサイム」
悪魔くん「我は求め訴えたり?」
老人「!?」

老人が慌てた様子で、机の片隅から小箱を取り出す。
箱を開くと、中にはオカリナのような笛。
老人が震える手で、それを悪魔くんに差し出すと、笛が淡い光を放ち始める。

老人「おぉっ……! ソロモンの笛が、反応しておる!」
悪魔くん「……!?」
老人「遂に、遂に巡り会えたぞぉ! 1万人に1人現れるという『悪魔くん』にぃぃ──っっ!!」

声高らかに叫ぶ老人。百目も歓喜に目を潤ませている。

老人「百目、でかした! 特別賞をあげよう」
百目「えぇ! わぁい! やったやったぁ! やったモーン!」
悪魔くん「あなたは一体、誰なんですか?」
老人「わしの名はファウスト博士。見えない学校の校長じゃ」
悪魔くん「ファウスト博士って…… 確か、300年前に悪魔を呼び出し、八つ裂きにされたっていう、あの?」
老人「それはわしの親父じゃ」
悪魔くん「え? じゃあ……」
老人「うむ。わしはファウスト博士2世じゃ。ようこそ悪魔くん! わしゃ長いこと君を捜し求めておった」
悪魔くん「はぁ?」
老人「さぁ、こっちへ来なさい。君の仲間を紹介しよう」
悪魔くん「仲間……?」

ファウスト博士と名乗るその老人が、悪魔くんたちを広間に招く。

ファウスト「さぁみんな、悪魔くんに挨拶するのじゃ! 学者からじゃ」
声「はい!」

暗がりの中から、毛むくじゃらにギョロ目の悪魔が現れる。

「ヨナルデ・パズトーリ、通称・学者。ファウスト博士の一番弟子。魔界の知識はお任せあれ!」

続いて、内気な少女と言った風貌。

「あのぉ…… 私、幽子……」

人間と変わらないかと思いきや、頭の中から無数の幽霊が飛び出して歌い出す。

「うちの幽──子さんは恥しがり屋──♪」

ファウスト「続いて家獣のバウ」

ひときわ巨体の悪魔が現れる。

「バウ──!」

ファウスト「みんなを乗せて移動することができるんじゃ」

一陣の風を巻き起こし、背に翼を背負った美女が舞い降りる。

「鳥乙女ナスカ、よろしく」

最後に、コウモリのようなネコのような悪魔が、お調子者めいた笑みを浮かべて現れる。

「ヘッヘッヘ! こんちまた結構なお天気で。あっしはこうもり猫というケチなもんで、よろしくね! あ、どうも! ヨイショ! あ、ドッコイショ!」

ファウスト「悪魔くん、君の使命は悪い悪魔によって人間にもたらされる様々な不幸をなくし、人間界に幸せな永遠の楽園、極楽を作り出すことなのじゃ」
悪魔くん「えぇっ……?」
ファウスト「ユダヤの預言書に書かれている『悪魔くん』のことについては、知っとるかね?」
悪魔くん「聞いたことはあります。1万年に1人、地上に現れ、魔界より悪魔を呼び出し、その力を使って大いなる幸せをもたらす…… あ、ぼ、僕は学校では『悪魔くん』と呼ばれてますが、あくまであだ名で……」
ファウスト「いや、君なら『悪魔くん』になることができるのじゃ。ソロモンの笛がそう認めたのじゃからな」
悪魔くん「え……?」
ファウスト「実は、わしもかつて『悪魔くん』になるために努力したのじゃ。だがわしは、選ばれた人間ではなかった…… そこで、わしは真に『悪魔くん』の星を背負った人間を捜し出し、その悪魔くんを助ける、善なる悪魔を要請する計画をたて、実行に移したのじゃ。ここに集まっている者たちは、いわば悪魔の道を踏み外した者でな、人間に近い心の持ち主ばかりなのじゃ」
悪魔くん「そうだったんですか……」
ファウスト「毒をもって毒を制すというように、悪魔は悪魔の力で抑えるしかない。悪魔くん、君はこの悪魔たちと共に、人間界を永遠の楽園にするために戦わねばならぬ」
悪魔くん「しかし…… そんなことが僕に……」
ファウスト「できる!! わしの教えに従い、この見えない学校でそのための知識を身につけるのじゃ。よいな、悪魔くん!?」
悪魔くん「……わかりました。頑張ってみます!」

一同が拍手を送る。

ファウスト「では、すぐに授業を始めるぞ」
悪魔くん「はい!」


ファウスト博士による授業が始まる。

ファウスト「さぁて、何から教えようかな?」
悪魔くん「ファウスト博士、教えて欲しいことがあるんです」
ファウスト「ふむ?」
悪魔くん「124回も実験してるのに、メフィストを呼び出せないんです。どうすればいいんでしょう?」
ファウスト「ほう、メフィスト? ではまず、その方法を教えるとしよう」

その様子を物陰で、こうもり猫が窺っている。

こうもり猫「ヘッ、人間のためになんぞ働けるか!」


一室で実践が始まる。
床に描いた魔法陣に向かう、悪魔くん。

悪魔くん「(125回目…… 今度こそ!) エロイムエッサイム── エロイムエッサイム── 我は求め訴えたり!」

たちまち魔法陣の上に突風が巻き起こり、煙が立ち昇り、煙が人の形となってゆく。

悪魔くん「やったぁ!!」

煙の中から、シルクハットとタキシード姿の悪魔、メフィストが現れる。

悪魔くん「遂にメフィストを呼び出したぞ!」
メフィスト「君か? わしを呼んだのは」
悪魔くん「そうです! 125回目にして、やっとあなたを呼び出すことに成功したので……」

メフィストがどっかりと座り込んで、腰をさする。

メフィスト「ここは魔界ではないか! 魔界で呼び出すなら魔法陣なぞ使わんでも、電話1本くれれば済むものを…… アタタ!」
悪魔くん「すみません……」
メフィスト「何の用か知らんが、あいにくわしはご覧の通り腰が痛くてな。代りに息子の2世に頼むが良い。じゃあな」
悪魔くん「あ! ま、待ってよぉ!」

メフィストが床に溶け込むように、消えてゆく。
慌てて悪魔くんが駆け寄ろうとすると、突然、魔法陣から稲妻が立ち昇る。

悪魔くん「わぁ!?」

魔法陣から現れたのは、メフィストと同じシルクハットにタキシード姿の、悪魔くんと同年齢ほどに見える少年の悪魔。

悪魔くん「君は……?」
相手「フフン、なるほど、お前が悪魔くんとかいう奴だな?」
悪魔くん「そ……そうだけど?」
相手「へぇ、なるほど。こうもり猫の言っていた通りだな。悪賢そうな顔した奴だ。フフフ……」

相手の悪魔が手にした杖をかざす。ひとりでに、悪魔くんの体が宙に浮く。

悪魔くん「わ、わ、わぁ!?」
相手「お前のような奴は、このメフィスト2世様が懲らしめてやる」
悪魔くん「え!? 君がメフィスト2世!?」
相手「今頃気づいても遅いぞ! それぇ!」

悪魔くんの体が目に見えない力で、振り回される。

悪魔くん「わぁ!? ちょ、ちょっと待って! なんでこんなことする…… わぁっ!?」
メフィスト2世「俺様が何も知らないとでも思ったのか?」
悪魔くん「えぇ……?」
メフィスト2世「人間の分際で魔界を乗っ取ろうとは、とんでもない奴だ」
悪魔くん「えぇっ!? 魔界を乗っ取るぅ!?」
メフィスト2世「このまま、八つ裂きにしてやろうか?」
悪魔くん「えぇっ……!?」


(続く)
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