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●前回のあらすじ

自らの駄作を破壊するため旅を続ける元鍛冶屋のシェフ・ギィースに率いられた”皆殺しの旅団”は、
ライン川沿いの街道町ストラスブールに赴く。
そこでギィースは、生涯をかけて追う目標であるイングランドの鍛冶匠アッシュ・ストルツマンと再会。
彼から1000年の時を越える”夢の剣”づくりに誘われる。そこでギィースの出した答えは・・・・




○BATTLE ROYAL7 男の仕事




 (フランス北東部アルザス地方ミュールズの山奥に一人たたずむギィース)

ギィース(来てやったぞアッシュ・ストルツマン・・・俺に何を見せてくれる)


?「ひとりで行くですって?」

 (旅立ちの前、旅団の仲間達に別れを告げた時の様子を思い出すギィース)

ギィース「ああ個人的な用事だ・・・・一週間か一ヶ月か・・・はたまた一年か・・・俺にもわからん」
旅団員「私達はどうしたら・・・・・・・」
ギィース「アンドリュー様から戴いた金がまだある それとガスコーニュにある俺の生家にかつての
仕事で貯めこんだ死に金がある・・・それを皆で分け合ってくれ・・・」
カトリーヌ「シェフ殿・・・まさか・・・私達を捨てるつもりじゃ・・・」
ギィース「いつかは戻ってくるさ・・・それが一週間後かもしれない 心配するな」

 (馬を走らせるギィースの様子を伺うアンディ)

アンディ「まったく身勝手なシェフだぜ」

 (と、そこへ来たのは・・・)

ジャン「サリュ!!(よう)こんな所で何やってる?アンディ 隊を離れて単独行動か?」
アンディ「!!お・・・お前こそ何しに来やがった!!ジャン!!」
ジャン「アンドリュー様からの忠告でな・・・アッシュ・ストルツマンはイングランドの宮廷鍛冶匠だ・・・
何かあったらまずいからな・・・最後のご奉公さ・・・」


 (とある館にたどり着いたギィース。扉を開けるとアッシュが待っていた)

アッシュ「よく来てくださいました・・・お待ちしてましたよ では例の物をお見せしましょう」

 (そう言ってアッシュが取り出したものは四本の日本刀・・・・)

ギィース「これはレイピアか?」
アッシュ「No!東洋のソードだ 美しいであろう」「何本かを手に入れ 何本かを分解した・・・」

 (分解した剣をとりギィースに見せるアッシュ)

アッシュ「2枚の鉄を何度も折り返し鍛たれている・・・・3万5千もの層が細くて強い鉄剣の正体だ・・・」

 ヒュン(立ち上がり剣を振るうアッシュ。燭台が見事に斬られる)

アッシュ「東洋の職人の鍛錬が・・・我が国の最新板金技術を越えているのだ・・・世の中広いと
思わないか? ガスコンの鍛冶屋・・・」
ギィース「鉄を肉のように削ぎ落とす剣・・・・これが匠の業というものか・・・・」
アッシュ「この山では良い鉄が採れる・・・・・」

 (アッシュの言葉に微笑を浮かべ腕をまくるギィース)

ギィース「では!!さっそくやりましょうか!!」
アッシュ「ありがたい・・・2枚の鉄を折り返し鍛つのにお前の剛力が必要だ・・・だが命懸けだ・・・」

 (鍛冶場へ赴くアッシュとギィース。肌脱ぎになり燃え盛る炎の前に立つ)

アッシュ「異聞では火を3日は絶やさず 職人は眠らず命を落すこともよくあるそうだ・・・」

 (命懸けの仕事を始めるアッシュとギィース。その様子を冷ややかに見つめるアッシュの付き人)

付き人「天才といえども職人でしかないか・・・アッシュ・・・敵国に技術を伝えるとは 本国に報告
させて貰うぞ・・・」

 (伝書鳩を放つ付き人)
 (そんなことは知る由もなく仕事に熱中するアッシュとギィース)

「シェフとアッシュの鍛冶は3日間不眠不休で続き」

 (ハンマーを振るい鉄を折り曲げる二人)

「失敗しては」
「また3日不眠不休という」
「過酷なものであった」

 (極限の疲労でボロボロになっている二人。それでも仕事は終わらない)



 (一方、こちらはアンディとジャン。アッシュの館の外でテントを張っている)

アンディ「よく続くぜ・・・もう一ヶ月だ・・・」
ジャン「気は抜けないゼ 鉄の技術は国家機密だいずれアングルが動き出す」
アンディ「わかってる!!飯!!」

 (ジャンから受け取った食事を啜るアンディ)

アンディ「職人ってのは面白いな・・・周りのことなんか考えねェ 自分のやりたいことのために採算
度外視・・・命まで削り落とす・・・」
ジャン「バカだな・・・そういうバカに魅かれる俺達がいる・・・バカになりたいってな・・・・」



 (ちょうど同じ頃、街に残ったカトリーヌとジローは・・・)

ジロー「それは本当ですかカトリーヌのねェさん そりゃめでたい・・・」
カトリーヌ「皆には内緒だよ 今の時点で知ってるのはアンディとジローだけ・・・」

 (愛しげに下腹部をおさえるカトリーヌ)

カトリーヌ(ウィ・プルトワ・スラ ネ カンジェー)そう あなたにとっては遊びかもしれない
     (メ ムワ ジュヌ ジュバ)私には遊びじゃない
     (メ ジュセ ダヴァンス ク ジョレ ラ シャーンス)でも・・・私には前からわかってるの
     (カン ル ジョール ヴィヤンドラ)その日が来たら・・・



 (アッシュの鍛冶場。ついに仕事を終えたギィースとアッシュが疲労困憊している)

ギィース「終わりました・・・」
アッシュ「ああ・・・この鉄を生んでくれた山に感謝せねば・・・山にあいさつしてくる・・来るかい?」
ギィース「立つ気力もありません・・・ここで休みます・・・どうぞ行ってください・・・」

 (だがその時、アングル兵はすぐ間近に迫っていた)

アングル兵「2版に分かれろ・・・1班は工房の破壊・・・残りはアッシュの抹殺だ・・・かかれ!」

 (無数の火矢が放たれる。その様子に気づいたジャンとアンディ)

ジャン「来た!!」

 (たちまち炎に包まれる館。現場に急ぐアンディとジャン)

ジャン「いくぞアンディ!!」
アンディ「うるせェ 指示するんじゃねェ!!」

 (アングル兵の前に立ちはだかるジャン)

ジャン「ここからは一人として通さねェ 氷のジャンがお相手しよう」「行けアンディ!!」
アングル兵「殲滅せよ!!」

 (ジャンに後方を任せ、アングル兵に向けて突っ込むアンディ)

アンディ「俺の道をふさぐ奴は死ぬぜェ!!」

 (両手に持った鎌を振るい、身軽に宙を舞ってアングル兵を蹴散らすアンディ)

アンディ「シェフ殿!!どこだ!!返事してくれ!!」「シェフ殿!!」

 (燃え盛る館を駆けずり回るアンディ。だが煙に巻かれてしまう)

アンディ「ちっ!!ゴホッ!!ゴホ」

 ズンッ!(焼けた柱がアンディに倒れこむ)

アンディ(・・・・ここまでか ジャン・・・ジロー・・・カトリーヌ・・・シェフ・・・・)

 (だが倒れこんだ柱を誰かが受け止める。ギィースだ。右手に剣を持っている)

ギィース「ソリュ(よォ)」
アンディ「シェ・・・シェフ殿!!」
ギィース「話は後だアンディ・・・これを」

 (右手に持った剣をアンディに託すギィース)

アンディ「これは・・・完成したんですね・・・シェフ殿も早く!!ここは もう」

 ダン!(支えていた柱を投げ捨てるギィース)

ギィース「山に師がまだいる・・・男の命懸けの仕事を成し遂げた奴だ・・・置いては行けない・・・」
アンディ「駄目だ!!火元から山へ強い風が吹いている!!もう間に合わねェ カトリーヌの腹にはガキ
がいる・・・帰るんだシェフ!!」

 (アンディの言葉に驚いたようなギィース。だが・・・・)

ギィース「職人のひとりとして・・・匠の仕事を一秒でも長く手伝いたい・・・・」

 (燃え盛る炎の中、何かを決意したようなギィース)

ギィース「カトリーヌに伝えてほしい・・・勝手を許して欲しいと」「子の名は男ならアッシュ・・・
女ならカトリーヌ」「皆に・・・よろしく言っといてくれアンディ・・・」
アンディ「そんな勝手許さねェ・・・シェフ殿ーーーーーーーーー」



 (旅団に入った時のことを思い出すアンディ)
 (ナイフ投げの技を磨いている)

アンディ「何見てんだてめェ!」

 (木にもたれながらその様子を見ていたギィース)

ギィース「今度入った傭兵は手先が器用だと思ってな」「きっと戦争が終わっても・・・その才能があれば
生きていける」
アンディ「あっ?どういう意味だ? 『殺し以外』出来ねェって馬鹿にしてるつもりか鍛冶屋!!」

 (青筋を浮かべて怒るアンディ)

アンディ「『隊長(シェフ)殺し』は得意なんだ なめた口利くんじゃねェ」
ギィース「違うさ・・・アンディ・・・単純に・・・・誉めてるんだ・・・アンディ・・・・
俺は不器用だが・・・お前は腕の良い職人になれる・・・・
アンディ「ケッ」



アンディ(悔しかった事 良い人間でありたいと思ってたのになれなかった事)

 (自分を玩具にした変態領主を殺したアンディ)

アンディ(辛かった事 殺さなければ生きていけなかった事)

 (鬼のような形相で敵を殺したアンディ)

アンディ(生きてて一番嬉しかった事 生まれて初めて人に誉められた事)

 (剣を抱え大粒の涙を流すアンディ)

アンディ(血のニオイじゃなくて日向のニオイの意味が今になってわかるなんて)
    (ごめんな・・・シェフ・・・)


 (燃え盛る炎に囲まれたギィースとアッシュ。もはや逃げ場はない)

ギィース「身を焦がす炎・・・鉄の気分だな」
アッシュ「何故来た?・・・・・物好きめ」
ギィース「一言・・・礼に来た 生まれて初めて悔いの無い仕事をさせて貰えた事に」
アッシュ「すまなかったな・・・付き合わさせてしまって・・・私も一言だけ・・・」



「メルスィ・・・」



 (炎の中から剣を抱えて生還したアンディ。岩に横たわるジャンの側へ行く)

ジャン「・・・・シェフ殿は・・・・」
アンディ「シェフは・・・・シェフはここに・・・・・」

 (涙を流しながら自らが抱える剣を示すアンディ・・・・・)


「この旅団を知るものは幸せである」
「初代シェフ・ギィースの話はここまで・・・・・・」

 (ジャンに肩を貸し剣を背負って歩くアンディ)

「だが物語りは」
「サビない剣の如く輝き続けるのである」

 (馬車で旅を続ける皆殺しの旅団)

「2代目シェフ・アッシュが活躍の刻を迎えるまで」
「これより十数年の時を要します故」

 (御者を務めるジロー。その隣には赤ん坊を抱いたカトリーヌが)


「続きはまたの講釈で」

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