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首相官邸。
バルセロナオリンピックで二階級金メダルを達成した猪熊 柔が国民栄誉賞を受けることになり、その授賞式が行われている。受賞の瞬間に松田耕作が到着し、加賀邦子に突き飛ばされた松田は首相と柔の前に飛び出してしまう。
花園富士子「松田さん!!」
猪熊滋悟郎「何のマネぢゃ、日刊エヴリー!!」
加賀「言っちゃえ、耕作!! 新聞もテレビもみんな見てる目の前で、思いっきり告白しちゃえー!!」

柔と松田、狼狽しながらも見つめ合う。

柔「ま・・・・松田さん・・・・・・・」
松田「や・・・・・やぁ・・・・・・・おめ・・・・・おめでとう・・・・・」

松田、何か言いたげ。
松田「あ・・・・・あの・・・・・・」
柔「は・・・・はい・・・・・・」

本阿弥さやか「何の用ですの、あの場違いでむさ苦しい松田さんは。」
風祭進之介「う・・・・・・・・・や・・・・・やな予感が・・・・・」
松田「あの・・・・・」
加賀「言っちゃえーーー!!」

松田、ようやく口を開く。
「お・・・・・俺、今・・・・・もう・・・・・成田空港に行かなくちゃ・・・ならなくて・・・・・・その・・・・」
加賀「バカーーーーー!! 何ではっきりドーーーーンと言わないのよォーーー!!」
さやか「取り押さえた方がよろしいのではありませんこと?」
風祭が我に返る。
「は!! そ・・・そうです!! 暴漢です!! 取り押さえて、引っくくって、追い出さなくては!!」

周囲の関係者たちが松田に飛びかかろうとする。
「暴漢だー!」「首相、あぶない!」「取り押さえろー!!」
報道関係の他社の記者たちも松田を押さえようとする。
「てめえ日刊エヴリー、またスタンドプレーか!」
「猪熊 柔報道ではいつも出し抜きやがって、もう黙っちゃねえぞー!!」

猪熊滋悟郎「なんぢゃなんぢゃ!! 文句のある奴はかかってこい!!」
柔の母「お養父さんがいくと、よけいややこしくなりますー!!」

柔にインタビューしようとする記者もいて授賞式会場は大混乱。
柔は記者たちをすり抜け、松田も人混みの足下から抜け出してきて互いに手を差し伸べる。
柔「アメリカ行きの飛行機、何時出発ですか!?」
松田「え・・・ああ・・・二時発!!」
柔「大変、急がないと!!」

また関係者たちが松田を取り押さえようと突進してくる。
柔と松田、互いに手を取って会場を逃げ出す。
花園&富士子が笑顔で見送る。

加賀「行っちゃえー!!」

首相官邸前。鴨田が車で待っているが、車を移動するように言われて弁解中。
そこに松田と柔が走ってくる。

鴨田「あ!!松田さ・・・い!? な・・・なんで柔ちゃんまでーー!?」
二人「わけはともかく急いで!!」

二人を乗せて車は発車する。
松田「ハァ・・・ハァ・・・え・・・えらいことしちまった!!国民栄誉賞の晴れの舞台をメチャクチャにしちまって・・・」
鴨田「メチャクチャ・・・?なにやったんですか、松田さん!」
柔「大丈夫・・・きっと大丈夫だと思います。おじいちゃんがいるから・・・」

首相官邸。
「猪熊選手は?」「猪熊 柔はどこだー!?」
首相のボディガードが首相にのしかかっている。「首相、ご無事で!?」
首相「お前が重い・・・・!」
「よこせ。」と猪熊滋悟郎。「国民栄誉賞はわしがいただいとく!」
賞状を受け取る。
滋悟郎「さーて記者ども!!記者会見場に移動ぢゃーー!!」
記者「えー?でも柔さんがいませんよォ。」
滋悟郎「バカタレ!!柔なんぞおらんでも、滅法面白い記者会見になるわい、わしさえおればな!!」

成田空港。鴨田が松田と柔を降ろし、駐車場へ向かう。

柔「早く!!」
松田「おお!!」
二人はチェックインカウンターへ。柔が手続きをする。
柔「あの搭乗手続きを・・・・え!?もう搭乗はじまってる!?お願いです、ちょっと待ってもらえませんか!?」
何とか手続きを済ませ、松田に搭乗券を渡す。
柔「はい!!これが搭乗券と、預けたスーツケースの半券!!」
松田「ありがとう、さすが旅行代理店勤務だ、素早いや!!」
柔「そんなことより早く!! 32番ゲートです!!」
松田「・・・それじゃ!」
柔に手を上げ、ゲートに歩き出すが、足を止める。
松田「・・・・柔さん。」
柔「はい。」
松田「俺、アメリカ行っちゃうけど、柔さんも四年後アトランタ行くよな!!」
柔「はい。」
松田「絶対だぞ!!」
柔「絶対に!!」

松田、Vサインを出したまま下りエスカレーターを降りていく。柔もVサインを返し、やがて松田の手が見えなくなる。
アナウンス「サウスイースト航空、708便ホノルル行きのお客様は、28番ゲートへお進みください。」

松田が去り、柔に急に孤独感がこみ上げる。柔の頬を涙がつたう。
柔「松田さん・・・・・・」
あふれる涙を拭う柔。すると・・・・・
「は! は!!」
息を弾ませ、下りのエスカレーターを駆け上ってくる者がいる。驚く柔。
松田が姿を現す。息を切らしてエスカレーターを降りる。

松田「俺・・・ハァ・・・ハァ・・・俺・・・」
柔を見つめる。
松田「・・・君が好きだ。」

涙を浮かべ、松田の元へ駆け寄る柔。松田も走り寄る。
柔「あたしも・・・・」

二人、しっかり抱き合う。
松田&柔「ずっと好きだった!!」
(注:アニメだとこの最後のセリフは柔が言っていますが、原作だと二人で言っているように受け取れます)

別れを惜しんで抱き合っている二人を、空港の他の人たちが微笑んで見ている。




朝、猪熊家。柔が自分の弁当を作っている。
柔「やっぱり梅干し入れないと色目が寂しいかな。」
滋悟郎「なんじゃい、ここんとこ朝稽古も早々に切り上げて、弁当作りなどしおって!!」
柔「だってお昼代けっこう高くつくんだもん、倹約しなくちゃ。」
滋悟郎、弁当からおかずをつまみ食いする。
柔「あー、あたしのお弁当の玉子焼きー!!」
滋悟郎「倹約じゃとォ、さてはまたチャラチャラした服でも買ってディスコ通いか。」
柔「ちがうもん、旅行の費用ためるんだもん。」
滋悟郎「旅費ィ?ははーん、お前さんも玉緒さんの後を追って、虎滋郎のいるパリに行ってうまいカタツムリでもたらふく食おうという算段ぢゃな。」
柔「ねー、お母さん、今頃久しぶりに夫婦水入らずで素敵なパリを満喫してるわ。あたしも行きたいけど、パリじゃありません。」
滋悟郎「モヘンジョダロでも行く気か?」
柔「アメリカです。」
滋悟郎「アメリカー!? アメリカなんぞ自分で金ためて行かんでも、四年後のアトランタ五輪でいやでも行くことになるではないか!!」

弁当を持って出かけようとする柔。

柔「四年間も待てないの、すぐにでも行きたいの。・・・・いっけない、早く行かないと会社遅刻しちゃう!!」
出て行く柔。

滋悟郎「待てィ柔ァ!!・・・そうやって遊び呆けとると、アトランタ五輪で金メダルなんぞ夢のまた夢ぢゃぞ!!」

朗らかに会社に向かう柔。

滋悟郎「おいこら柔!!・・・・・柔ァ!!」

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