電人ザボーガーの最終回
恐竜軍団の恐るべき野望は すでに石油コンビナートを破壊し
着々と進行していた
大門豊は 恐竜軍団の攻撃に完全と立ち向かったが
ストロングザボーガーを作動させる最後のエネルギーを
メカアーミー・ギラリを倒すために 使い果たしてしまった
健が傷つき そして浩は瀕死の重傷を負って倒れてしまった
魔神・三つ首竜の攻撃を前に 大門豊の心は暗く 重かった
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病院。
ベッドの上で苦しんでいる浩を、大門、健、由起、中野が見守る。
やがて、浩が息を引き取る。
一同「浩くん!」「浩!」「浩くん!」
悲しみに暮れる一同。
大門が、自分の胸に埋め込まれているものと同じ電極回路を、医師に差し出す。
大門「先生…… これを使ってください。電極回路です。僕も父にこれを取り付けてもらって、助かりました。先生、お願いします! 浩くんを助けてください! 助からないかもしれない…… しかし、何もしないよりマシです! 先生、お願いします!」
医師「……わかりました。やってみましょう」
一方で恐竜軍団の暴挙は続き、工場地帯で巨大な恐竜が石油コンビナートを破壊していた。
恐竜軍団の本拠地・魔神山の魔神窟では、首領の魔神三ツ首が、その様子をほくそ笑んでいる。
三ツ首「暴れろ、暴れろぉ! 我ら恐竜軍団の世界も、もうすぐだ! 世界中の陸地を沈め、太平洋に我ら恐竜軍団の国を出現させるのだぁ! そして、悪魔ハットよ。ストロングザボーガー亡き後の大門など、一捻りだ。見つけ次第、即座に殺せ!」
病院の前。大門が、停めてあるマシーンザボーガーを見つめる。
大門「マシーンザボーガー…… お前はもう、ストロングザボーガーとして作動しないのか? 俺はこれから、三つ首竜とどう戦えばいいんだ? そして今、浩くんまでが……」
(どうした、豊!)
大門「お父さん……? お父さんの声だ」
(元気を出せ! お前らしくないぞ)
父の声は、ザボーガーの顔から響くように聞こえる。思わず大門は、ザボーガーに語りかける。
大門「お父さん……! お父さん。僕はもう、戦うことができません! お父さんの造ってくれたザボーガーはもう作動しなくなってしまった」
父 (豊。お前はいつから、そんな弱虫になったんだ?)
大門「でも、三つ首竜は……」
父 (聞きなさい、豊。私はザボーガーを、お前の兄弟として造ったのだ。たとえ弟が倒れたとしても、見捨ててはいけない。ザボーガーが作動しなくても、決して希望をなくしてはダメだ! そして、悪を憎む心を忘れるんじゃないぞ。豊、わかったな?)
大門「お父さん……!」
そこへ由起、健、中野がやって来る。
由起「大門さん」
大門「由起さん」
由起「浩くんの手術が始まったわ」
大門「……うまくいってくれるといいが」
中野「大門くん! 恐竜軍団は、いよいよとんでもないことを始めたぞ。石油コンビナートを破壊するなんて、海に石油が流れ出してえらい騒ぎだ!」
大門「中野さん。僕はこれから三つ首竜の基地へ行きます」
中野「で、でもザボーガーが!?」
大門「えぇ、わかってます。しかし…… ストロングザボーガーがなくても、ヤツらを倒さなければ! そして浩くんを…… 浩くんをあんな目に遭わせた恐竜軍団を許せない!」
由起「私も行きます!」
健「俺も行くよ! 浩のためにも」
中野「大門くんを1人で行かすわけにはいかない。もちろん、私も行く!」
大門「……ありがとう。しかし今度ばかりは、二度と帰れないかもしれない。それでもいいんですか!?」
一同が力強く頷き返す。
恐竜軍団との最後の決戦に 魔神山へ向かう大門たちは
その侵入を容易にするために ある方法を考えた
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魔神山へ向かうトラック。
大門と中野は作業員に変装して運転席に。由起と健は荷台に潜んでいる。
中野「我ながら見事な変身ぶりだ。ハハハ」
後方からパトカーが追って来る。
大門「おっ! 中野さん、お願いしますよ」
パトカーがトラックを止め、警官が近づいて来る。
大門「何でしょうか?」
警官「ちょっと、中を調べさせてもらいます」
中野「あっ、ちょっとちょっと! いいんだ、いいんだ。私はこういう者だ」
中野が警察手帳を示す。
警官「あ! 失礼しました」
中野「どうも、ご苦労さん。さぁ、やって」
大門「へい!」
警官が去る。
中野「へへっ。こういうときこそ、私のありがたさがよくわかるだろ?」
トラックが走り去る。
それを見送る警官の姿が、恐竜軍団の戦闘員・竜マンの姿に変わる。
大門 (いよいよ三つ首竜の本陣も近い。どうやらここまで無事に来た…… 浩くん、君もがんばるんだ! 俺もやるぞ! 最後の希望に向かって)
中野「着いたぞ!」
山中の林の中でトラックが停まり、一同が徒歩でさらに奥地を目指す。
大門「中野さん。あれが三つ首竜基地の入口です。健、いよいよ戦闘開始だ」
「アッハッハッハ! アッハッハッハ!」
高笑いととともに、恐竜軍団の王女メザが現れる。
メザ「私たちの目をごまかせると思ったら、大間違いだ」
メザの合図で、竜マンたちが出現。大門たちは何とか応戦する。しかしさらに、軍団の科学者・悪魔ハットが現れる。
悪魔ハット「メザ、あとは俺に任せろ。とどめだ、ドゲラ!」
メカアーミー・ドゲラが登場。竜マンたちを退けた大門たちも、メカアーミーの強力な攻撃の前には手も足も出ない。
大門「健、ストロングだ!」
健「しかし大門さん、ストロングになったって動かないよ!」
大門「万が一、動くかもしれない。それに賭けてみるんだ。健、行くぞ!」
悪魔ハット「ハハハ、ムダなことだ! ストロングザボーガーになっても、動けはしまい!」
大門がマシーンザボーガーに、健がマシーンバッハに乗り込む。
大門「行くぞぉ!」
健「OK!」
大門「チェンジ・ストロングザボーガー!」
マシーンザボーガーとマシーンバッハが合体し、ストロングザボーガーとなって地に降り立つ。
大門「ザボーガー・ジェットブーメラン!」「ザボーガー・ロケットチェーンパンチ!」
しかし、ストロングザボーガーは大門の指示にまったく応えない。
大門「ダメだ、作動しない……」
健「絶望だ……」
悪魔ハット「ハハハ。どうした、大門? ストロングザボーガーは言うことを聞かないようだな。ドゲラー!」
ドゲラーの2つの首が分離し、大門と健に噛みつく。
大門たち「うわぁ、うわぁ!」
悪魔ハット「絞めろ! 絞め殺せぇ!」
大門「畜生、ダメか……」
(豊、希望を捨てるな。 そして、悪を憎む心を忘れるんじゃないぞ。わかったな?)
薄れつつある門の意識の中に、これまでの戦いの記憶や、病院でがんばっている浩の姿がよぎる。
(怒れ、豊! 怒りだ、怒りの電流だ!)
次第にかすんでいく大門の視界の中で、自分たちをあざ笑う悪魔ハットとメザの姿。
大門の瞳に炎が燃え上がり、それに呼応してストロングザボーガーが動き出す。
大門「やった! ストロングザボーガーが作動したぞ! ストロングザボーガー・ジェットブーメラン!」
ストロングザボーガーのジェットブーメランが、ドゲラを斬り裂く。
大門「いいぞ! ロケットチェーンパンチ!」「ストロングバズーカファイヤー!」
連続攻撃を浴び、ドゲラが爆発四散。
大門「やった!」
病院。手術を終えた浩が、意識を取り戻す。
浩「あれっ、大門さんたちは?」
医師「じきに帰って来るよ。しかし、奇跡だ…… 奇跡としか考えられない」
そして魔神窟。大門たちがついに、魔神三つ首たちのもとへ辿り着く。
三つ首「ドーラゴ──ン! 大門め、やって来おったな!」
メザ「おのれ、大門!」
悪魔ハット「三つ首様の餌食になれ! 貴様も貴様も、貴様もだ!」
三つ首「ドーラゴ──ン!」
大門「おのれ、三つ首め! ザボーガー・ジェットブーメラン!」
ストロングザボーガーがジェットブーメランを放つが、三つ首はそれをはね返す。
大門「ロケットチェーンパンチ!」
しかし三つ首はまたしても攻撃をはね返し、パンチはストロングザボーガー自身に叩きつけられる。
悪魔ハット「フフフフフ……」
大門「立て、ザボーガー!」
立ち上がるストロングザボーガー。しかし三つ首の吐く毒液を浴び、苦しみ始める。
大門「ザボーガー、ファイト──!」
さらに、三つ首の吐き出す毒ガスが大門たちを襲う。
悪魔ハット「いくら喚いても、三つ首様に勝てるわけがないわ! ワハハハハハ!」
大門「クッ…… ザボーガー、ストロングバズーカファイヤー!!」
必死に撃ちだしたストロングバズーカファイヤーが、三つ首の顔面に炸裂。
大門「やった!」
三つ首「ドーラゴーン…… ドーラ……ゴ──ン……!」
三つ首が火を吐き、ストロングザボーガーが炎に包まれて倒れる。
悪魔ハット「ワハハハハ、ざま見ろ!」
大門「ザボーガー、立て…… 怒りの電流だぁ!!」
ストロングザボーガーの胸に電気がほとばしり、力強く立ち上がる。
大門「ストロングザボーガー、行けぇ!」
ストロングザボーガーが三つ首の前と進み出、じりじりと近づいて行く。。
悪魔ハットも王女メザも、そのあまりの気迫に圧倒される。
ストロングザボーガーが2人をはね飛ばす。支柱が折れ、悪魔ハットが下敷きとなる。
悪魔は後「うわぁぁ──っ!」
三つ首「ド……ラ……ゴ……ォォ──ン!」
メザ「三つ首様! 三つ首様ぁぁ!」
大門「ザボーガー、バズーカファイヤーを撃ち続けるんだぁ!!」
ストロングザボーガーが三つ首目がけ、ストロングバズーカファイヤーを連射。
砲弾をあびる三つ首。
しかしストロングザボーガー自体も攻撃の連発でオーバーヒートし、火を吹き出す。
大門「はっ…… ザボーガー!?」
三つ首がストロングザボーガーもろとも大爆発。
悪魔ハットとメザの上に瓦礫が降り注ぐ。
健「ザボーガー!?」
大門「ザボーガーは自爆したんだ! 早く脱出するんだ! さぁ、早く!」
メザ「最早これまで! 三つ首様もろともぉ──!」
悪魔ハット「我ら恐竜軍団の、死に様を見ろぉぉ──!!」
悪魔ハットが壁面のスイッチを入れると、基地内の各所が次々に爆発。
魔神窟がどんどん崩壊していく中、大門たちは地上への通路を急ぐ。
大門「急げ! 急ぐんだぁ!!」
ようやく地上へ出た大門たち。
大門「伏せろ!」
彼らの背後で、魔神窟が大爆発。恐竜軍団の野望は潰えた。
長く苦しい戦いは終わった
何度逃げ出そうと思ったことか しかし大門は踏みとどまった
そしてついに勝利を掴んだ 素晴しい友達とともに
父の遺した偉大な発明・電人ザボーガーを失ったが 大門の心に悔いはなかった
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何日か後。平和に戻った地上の世界。
大門たちにも、別れのときがやって来ていた。
大門「由起さん、お元気で」
由起「大門さん。私は、父の遺した研究を続けます。二度とこんな恐ろしいことが起こらないように」
浩「ねぇ、健兄さんはどうするんだい?」
健「え? ……もし、由起さんさえ良かったら、お手伝いしようと思って!」
中野「さぁ由起さん、どうします?」
由起「…… ありがとう、健ちゃん」
健「えっ、本当!? 感激ぃ!」
一同「あっはっはっは!」
由起「じゃあ健ちゃん、行きましょう」
一同「さようなら!」「さようなら!」「元気でね!」
健と由起が大きく手を振り、駆け去っていく。
浩「でも、ザボーガーがなくなっちゃったんで、寂しいな」
大門「うん…… しかたがないさ」
中野「浩くんのお父さん、帰って来るぞ」
浩「えっ、本当!? いつ?」
中野「1週間後だ」
大門「浩くん、良かったなぁ! ハハハ!」
浩「うん!」
中野「ところで大門くん。秘密刑事の仕事、山ほど残ってるぞ」
大門「えぇ」
中野「君は私の助手なんだから、しっかり頼むよ! さぁ、行くぞぉ──!」
大門「え!? あっ、中野さぁん! ねぇ、ちょっと待ってくださいよぉぉ!」
おわり