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TRIGUN。

これまでのあらすじ。

”人間台風(ヒューマノイドタイフーン)”の異名をとるヴァッシュ・ザ・スタンピードは、凄腕のガンマンにして筋金入りの平和主義者。
だが、惑星中にとどろく悪名により行く先々でトラブルに巻き込まれる。
それでも旅する彼は自らの全てをかけ、ある一人の男の行方を追っていた・・・・・


そんなある日ヴァッシュは、身命をかけて追う仇「ナイブズ」の部下であるレガートの挑戦を受ける。
やがて襲ってきた刺客集団”GUNG-HO-GUNS”に狙われたヴァッシュは、レガートへの反撃を誓いさらなる旅に出た。


そして彼と同行者の保険協会コンビ(メリルとミリィ)は、途中行き合わせた巡回牧師と交流しながら、田舎町のジェネオラロックを訪れる。
だがそこはすでに、レガートとGUNG-HO-GUNSによる殺戮の舞台と化していた。

町の異常な雰囲気を察し調査するヴァッシュは、GUNG-HO-GUNSの一人であるドミニク・ザ・サイクロプスの襲撃を受け、
苦戦するもののかろうじて退けた・・・・・




#20 フィフス・ムーン




 (真っ暗な建物の中に立つ男。大きな十字架を背負っているのは、ヴァッシュ達と別れた巡回牧師のウルフウッドだ)

ウルフウッド「…ふう…」

 (一息ついた彼の周りには、仮面をつけた連中が転がっている)

ウルフウッド「…何やこいつら気味悪ゥ」
レガート「…これは失礼をした 不意の侵入者にはどうしても対応が悪くなっていかんな」

 (暗闇からレガートが現れる)

レガート「その十字架…待っていたよ 君がチャペルだね…?」
ウルフウッド「ドクロに拷問具… ワシあんたの事知っとるで…」



 (場面変わってこちらはヴァッシュとドミニク。ヴァッシュにやられたドミニクがのたうち回っている)

ヴァッシュ「………危ない所だった…!! 完全にやられたよ あんたの手札は『機動力』なんかじゃなかったんだ」

 (もがくドミニクの顔。右目の眼帯が割れ、異形の眼があらわになっている)

ヴァッシュ「催眠術(ヒュプノシス) おそらく知覚の連続へ強制的に空白(ブランク)を作るんだろう? 俺は一瞬にして術中に
落ちたって訳だ」
ドミニク「…くッ!!……どうやって…!! それを…!!」
ヴァッシュ「………指先の痛みさ さっきしこたま挟んだ指先の痛みが消えてたんだ」
ドミニク「………ばッ…馬鹿なッ…!!」(たった…!! たったそれだけの異和感から…無理矢理自分を引き戻したというの!?)

 (何か考え込むようなドミニク)

ヴァッシュ「………どうなる…?」
ドミニク「?」
ヴァッシュ「君はもう戦えない やっぱりレガートは殺しにくるのか?」
ドミニク「甘く見ないで頂戴」

 チリンチリン(GUNG-HO-GUNSが一枚ずつ持つ半分だけのコイン。魔人の証たるそれを投げ捨てるドミニク)

ドミニク「何ひとつあの方のお役に立てなかった上に お手まで煩わせる愚を私が犯すと思うの!?」
ヴァッシュ「!?何ッ!?」

 (柵から身を躍らせるドミニク。あわてて追いすがるヴァッシュだが間に合わない)
 ドタッ (傷が深いのか、意識を失い倒れこむヴァッシュ)



 (夜を迎えたジェネオラロック。コートを着て帽子を被った人物が歩いている)
 (レガートとGUNG-HO-GUNSたちが集結している教会らしき建物に場面が移る)

レガート「ドミニクがやられたか… まいいさ時間稼ぎにはなった」
ミッドバレイ「お聞かせ下さい 何故我々を召集なされたのか」
レガート「奴の『足止め』と『あの方』の身辺を警護するためだ」
ミッドバレイ「………」
レガート「詳しくは『ドクター』から説明がある …着いたようだ」

 (教会の扉を開けて入ってきたのは、町を歩いていたコートの人物)


ドクター「………ご苦労だったレガート」

 (教会を見渡すドクター。レガートとGUNG-HOそしてウルフウッドがいる)

ドクター「時間がない手短かに伝えよう… 今日 間もなくここでナイブズの肉体を再構成する」
 
(静かに話を聞くGUNG-HOたち)

ドクター「元の体はもう仕えないと判断した 危険な賭けではあるがプラントとの同調により彼を生まれ変わらせる
諸君らを呼んだのはその一切を障害なく進めるためだ 事態は我々にとっても未知の領域となる 
あらゆる状況に対してその能力を持って対処して欲しい…」


 (場面変わって。岩山に陣取るGUNG-HO-GUNS)

レガート「特にーーーーーヴァッシュ・ザ・スタンピード 奴は必ず動く」

 (レガートの言葉に驚いた顔をするドクター)

ドクター「…来ているのか…彼が… ナイブズがここを選ぶ理由が分かった… 同族どうし引きあうのだな…」


 (岩山の一角に立つウルフウッド。苛立ちを隠しきれないようだ)

ウルフウッド「何ちう巡りあわせや一体 これ以上またおぞましい血でワイの手を染めようちうんか神よ…」
      (一度転げ落ちたらどこまでも堕ちてゆけちうんか!)

 (青ざめたような顔になるウルフウッドだが、やがて冷静さ取り戻す)

ウルフウッド(…その通りやないか 今更何をいうとんねや…ワシは)

 (下を見るウルフウッド。町の人々が逃げ出している様子が見える)

ウルフウッド「こない時間から脱出の準備か… 夜の砂漠より頂上の教会に集まる化者どもの方が怖いんやな…ワカルで…
…あんじょう逃げや…取って喰うてまうで…」

 (そして時は来た・・・・・天使のような”プラント”の姿が浮かぶ中、ナイブズの再生が始まる)

ドクター「………来るぞ…!!」


 (場面変わってヴァッシュ。ベッドで寝ていた彼だったが、何かに憑かれたように飛び起きた)
 (あまりの迫力にびっくりする保険協会コンビ)

ミリィ「なっなななななな」
メリル「ヴァッヴァヴァヴァヴァヴァヴァ」
ヴァッシュ「・・・・・・お前・・・なのか・・・来るのか・・・ナイブズ」

 (プラントが動き、天使の羽のようなものが撒き散らされる。その光景を見て涙を流すレガート)
 (そしてついに、羽を撒き散らしながら裸体の男性が立ち上がった・・・・)

ヴァッシュ「ナ ア ア イ ブ ズ」

 (絶叫するヴァッシュ。左腕の義手もつけぬままベットから立ち上がろうとする)

メリル「ヴァッシュさん!! 駄目ですわそんな体でッ!! 立てないほど消耗してるんですわよ」
メリル「先輩 外が何か大パニックです!」
ヴァッシュ「今すぐ逃げてくれ…!! 何でもいいできるだけ遠くへ離れるんだ」
メリル「動かないでっていってるでしょう!? 聞こえてないんですの!?…」
ヴァッシュ「言う通りにしろッ!! 聞こえてないのはどっちだ!!」

 ばしッ(なおも叫ぶヴァッシュに思わず、その頬を引っ叩くメリル)

メリル「ぐっ ぐひっ ふええええええっ!!」
ミリィ「ああ〜〜〜っ 泣かした〜〜〜っ」

 (一瞬困ったような顔をするヴァッシュだが、すぐ真顔になり)

ヴァッシュ「………メリル それからミリィ!! よく…聞いてくれ!! 今までの比じゃない位の危い相手が今 そこに来ている
そいつと戦って最悪の事態になった場合 何が起こるか俺には分からない だけど・・・たぶん俺は一度奴と戦い…そしてその『結果』
だけは見ている!!」

 (ボロボロのコートを纏い、廃墟に立つヴァッシュの姿)

ヴァッシュ「全ては空白の彼方・・・ごっそりと抜け落ちた記憶の後 今の俺が放りだされたあの風景・・・」
メリル「・・・JULY? ロスト・・・ジュライ!?」

 バンッガチャ(メリルの声に答えず、ドアを勢いよく開けるヴァッシュ)

ヴァッシュ「分かったな 逃げてくれ ここが吹き飛んでも大丈夫なくらい遠くへ」

 (走っていくヴァッシュを呆然と見送る二人)

メリル(…行かせて…しまった どうして…? …私は不意をつかれたのかも知れない)

 (切なげな表情のメリル)

メリル(あの人が…はじめて私を名前で呼んだから)


 (群集が逃げ惑う中、ただ真っ直ぐに進むヴァッシュ。そして・・・・・)


 (岩山に到着したヴァッシュ。そこにはレガートとドクター、GUNG-HO-GUNS。そしてナイブズがいる・・・)

レガート「KILL HIM」

 (ヴァッシュ抹殺の指示を出すレガートだが・・・・・言い終わる前にナイブズによって押さえられる)

ナイブズ「誰が殺していいなんていった…!! このクズが…」
ヴァッシュ「ナ ア ア イ ブ ズ」

 (絶叫を上げながら右腕に持った銃を向けるヴァッシュ)

ナイブズ「・・・・・・・・・!! 何だそれは・・・ 何だというんだ あ!? お前は・・・また・・・!! 
     また俺に銃(そんなもの)を向けるのか!」
ヴァッシュ「お前は変わってない何ひとつ・・・!! 150年前と同じだ・・・!!」
ナイブズ「同じ言葉をそっくり返すぜ ヴァァッ・・・シュ!!」

 (鬼気迫る二人の対峙)

ウルフウッド(何やこの二人…この感じ… ホンマに人間とちゃうんか…?)

 (対峙を続けるナイブズ。ふと悲しげな表情になって)

ナイブズ「…また…増えてるんじゃないか? 傷… 何故お前はそこから何も学べないんだ?」
ヴァッシュ「お前が殺し傷つけてきた人数に比べればはるかに少ないさ お前という厄災が犯した罪に比べればな」
ナイブズ「だからその右腕で 俺を消そうってのか?」
ヴァッシュ「?」
ナイブズ「使い方が分かったのか? お前自身の”A・ARM(エィンジェルアーム)”」

 (何のことだか分からないヴァッシュ)

ナイブズ「…なるほどな 記憶障害を起こしているのか 確かにあれだけの負荷だ 影響が出ない方がおかしい」

 (ヴァッシュの右腕を見るナイブズ)

ナイブズ「…その腕は…そんな不細工な銃を操るための器具じゃない そいつはな こう使うんだよ」

 (岩山を降りていくナイブズ)

ドクター「・・・・・・!! おいナイブズ」
ヴァッシュ(誰だ…あの人は 見たことがある 待てまてまてまて!! 何かが…浮かび上がろうとしてる!! 
何か…とてつもなく…おぞましい何かが…)

 (はっとするヴァッシュ。ナイブズがすぐそこまで近づいていた)

ヴァッシュ「!!」
ナイブズ「なぁヴァッシュ お前さっき俺のこと厄災っていったよな… まあ人類から見ればそうなのかも知れない だけどな…
それを言ったらお前も 同じなんだぜ…!!」

 (自分の手をヴァッシュの顔面に押し付けるナイブズ。その瞬間・・・・!!)
ばりばがんっ (右腕が膨れ上がり変形していく)キアアアアアアアアアアアアア
 (ヴァッシュの右手は、天使のような造形を持った巨大銃になっていた!!)

ドクター「・・・・・・・・・!! いかん!! 逃げるんだ!! 全員離脱しろーッ」

 (後ろからヴァッシュを押さえつけ、絶叫するナイブズ)

ナイブズ「どうだ!! どうだヴァッシュ これがお前の力・・・俺達が持つ本来の力だ」

 (押さえられたヴァッシュは声も出せない)
 
ナイブズ「そうだ・・・ジュライを消滅させたのもこの力さ・・・・・・・・・決別させてやる 力を溜めろ!!」

 (その声と同時に、エネルギーチャージが開始される)

ナイブズ「この銃で地上を薙ぎ払い くだらん感傷ごと人類を・・・消しつくせヴァーッシュ」

 (凄まじいエネルギーが発射される直前、巨大化した腕から小さな銃を持った腕が出現した)

ナイブズ「?!な・・・!? お前・・・まさか・・・」

 (銃で自らの足を撃つヴァッシュ。貫通した弾がナイブズをも傷つける)

ナイブズ「ぐあああああああああああ」
 
 (その隙に、巨大銃の銃口を天に向けるヴァッシュ)

ナイブズ「おおおおおおおおおおお」

ヴァッシュ(レム・・・・・・レム・・・・・・ボクハ ボクタチハ ウマレテキテハ イケナカッタノカモ シレナイ)

 (ついに発射された巨大銃。天に向かって飛ぶエネルギーは、ジェネオラロックを巻き込みながら月に命中する)

ゴアドドドドド(凄まじい衝撃で揺れ動くジェオラロック)

ミリィ「きゃあ先輩ッ!! つ・・・月が・・・」

 (月に大穴が出現していく。その様子を見ているウルフウッド)

ウルフウッド「・・・・・・冗談キツイわ 何者なんやおんどれら・・・!! ・・・その姿・・・この力・・・!!
人類に審判を下す神の使いとでもいいたいんか・・・!?・・・・・・・答えろッ!! ヴァッシュ・ザ・スタンピイイイド」

 (ウルフウッドの絶叫に答える者はなく・・・・・・)



「星にーーーーまたひとつ伝説が穿たれた」

 (ボロボロになったジェネオラロック。大穴を空けた月)

「人々はただ寄り添う そうしていなければ 圧し潰されそうな”跡”だった」

 (変わり果てた町を見る避難民)

「誰かがつぶやいた『悪魔は実在した』と その言葉は小さな波になり しかし確実に星中に届くだろう」
「その体に災害(カラミティ)を宿した優しい死神ーー手に持つ大鎌(デスサイズ)はいつの日か我々を一片の赦しなく薙ぎ払うのだろうか」

 (瓦礫の山の上に立つウルフウッド。離れたところにメリルとミリィがいる)

「男の行方は杳として知れず ヴァッシュ・ザ・スタンピードの足跡はこのあと2年の間、歴史から掻き消える事となるーーーー」

 (砂地の真ん中に引っかかっているヴァッシュのコート。その様はまるで墓標のようだ・・・・)


TURN TO THE MAXIMUM!!

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