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回想── 検死解剖室のベッドに寝かされている富江の遺体。 胸から下は布で覆われているものの、肩口、首もとは無惨な切り傷が無数に刻まれている。 太田が解剖の準備を始める。 (太田『犯人が特定できていない場合、俺たちがまずすべきことは、遺体を調べて殺人犯の痕跡を見つけ出すことだ』) 太田がメスを手にする。 が……死んでいた筈の富江が目を覚まし、上体を起こす。 目を見張る太田。メスが床に落ちる。 妖しく笑いかける富江。 (太田『担当の同僚がたまたま席を外していたから、あの光景を目撃したのは俺1人だった。自分の目が信じられなかった。富江は、間違いなく死んでいた筈なんだ……』) 解剖室の扉が開き、真っ暗な廊下を、富江が腕で這いながらどこかへと逃げてゆく。 解剖室では太田が、血の滴る左目を押さえ、うめき声を漏らしている。 (太田『そして富江は、俺の目を刺して、忽然と姿を消してしまった……』) |
川 上 富 江 |
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アナザフェイス |