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ちっちゃな雪使いシュガー 小説版



 水曜日。
 今日は楽器店(クレッシェンド)の店長がいない日。
 お母さんの形見のピアノを弾ける日だ。
 鍵盤の上を、私の指が踊るように動き回る。
 譜面台にはお母さんの楽譜。シュガーの書いた妖精の文字も、フィルのおかげできれいに消えている。
 天板の上では、リズムに合わせて三人の見習い季節使い――シュガー、ソルト、ペッパーが体を揺らしている。
「やっぱり、サガのお母さんのピアノはいいね。音がやさしいもの」
「そんなの分かるのかよ、シュガーに」
「ガサツなソルトとは違うよーだ」
「二人とも、ケンカするなら外でやってくださいね。音楽は静かに鑑賞するものですよ」
 シュガーとソルトのじゃれあいを、ペッパーがたしなめる。
 いつものやりとり。
 騒がしくて、楽しくて。
「こんなとこで遊んでないで、さっさと”きらめき”探しに行けよ」
「ソルトこそ! まだ見つけてないんでしょ」
「シュガーより先に見つけたらかわいそうだから、待っててやってるんだよ」
「うそばっかり! ”きらめき”が何だか分かってないくせに」
 シュガーがプゥっと頬を膨らませた。
 一人前の季節使いになるためには、人間界で”きらめき”を探さなければならない。
 でもね。
 あのとき、シュガーは魔法で雪を降らせたんだよ。
 ってことは、一人前の雪使い――自分でも知らないうちに”きらめき”を見つけたんじゃないのかな?
 結局、きらめきって何なんだろう?
 よく分からないけど、それはきっと素敵なものに違いない。
 だって……。
「ねぇ、サガ。私の方が絶対先に”きらめき”見つけるよね」
 私も素敵な”きらめき”を見つけたような気がするもの。
 ね、シュガー。


ende

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