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鉄甲機ミカヅキの最終回
(日下統括官によるナレーション)
まるで光と影のように、酷似した2体の巨人。
彼らは一体、いかなる思惑のもとに造られたのだろうか。
光と影がひとつになり、形あるもの全ての崩壊が始まる。
恐れていた最悪の事態。
これは悪夢ではない。今、目の前にある現実なのだ──
六夜
ミカヅキがシンゲツの体内に取り込まれた。
ミカヅキ・シンゲツの融合体が宙に浮かび上がり、おびただしくその姿を変貌させてゆく。
融合体からミカヅキの手だけが飛び出し、岩動風雄を乗せた胎玉を解き放つ。
風雄だけでも脱出させたいというミカヅキの意志だろうか。
風雄「ミカヅキ──ッ!!」
胎玉が地面に着陸。
光が満ち、得体の知れない物体が出現する。
まるで、崩壊した家屋を寄せ集めたような巨大な塊。
トルパ「あれはイドム……!?」
AITブリッジ。
「世界線クロス、イドム出現」「シンゲツ、ミカヅキを吸収し、さらに変形中」
「岩動隊員、イドムの中へ消失、回線アウト」
トルパ「シンゲツとミカヅキが融合した以上、すべての物は破壊される定め!」
AITブリッジ。
日下「一体何が起こるというの……!?」
オペレーター「統括官!!」
シンゲツの胎玉が地表に降り、二宮ユキが現れる。
目の前にトルパが。
ユキ、まるで操られているかのようにフラフラとトルパに歩み寄る。
AITブリッジ。
日下「トリプルA発令、首相にホットラインを」
オペレーター「統括官、月が!」
ミカヅキ・シンゲツ融合体“シンゲツタワー”から大気圏外目掛けて光が放たれ、衛星軌道上の月が次第に地球へと引き寄せられる。
オペレーター「ブリッジより緊急通達、トリプルA発令」
日下「総員に告ぐ。AITの全兵力を挙げ、ミカヅキ・シンゲツ融合体を阻止する。コンバットジャイロ編隊、全機出撃! クルーステーションの3名は、二宮ユキの確保に向かって」
道路を走るライノスネイル。
車内には木場勇、金城正人、和泉沙織、そして火野アカネ。
アカネ「待ってろよ、ユキ!」
AIT本部。
風雄の母・岩動朋子が、スクリーンに映る家イドムの姿を見、驚く。
朋子「あれは……」
家イドムの中の世界。
風雄が目を覚ます。
そこは、和造りの家の廊下。
あちこちに、子供が絵を描いたような紙が散らばっている。
風雄「これは……これは、僕が描いた絵だ」
その先に、幼い少年。
まぎれもなく、5歳の頃の風雄自身である。
「あっかんべー」
5歳の風雄が、今の風雄をからかうように走り去る。
風雄「おい、おい待てよ!」
風雄が、もう1人の自分を追う。
目の前に襖。
風雄が手を触れると、襖が吹き飛び、巨大なカマキリが現れる。
傍らには、虫篭と虫取り網を抱えた5歳の風雄。
再び5歳の風雄が走り去る。
風雄「おい、待てよ!」
草原を歩くユキ。
木場たちがようやくユキに追いつく。
アカネ「ユキ──ッ!」
まったく気づかない様子のユキ。
トルパが現れる。
トルパ「無駄だ。この女の魂は既に私のものだ。」
夢遊病者のようにトルパに付き従うユキ。
トルパ「もうすぐ……もうすぐ余の世界、永遠の王国が蘇る。聞くがいい、この美しき……星の声を──っ!!」
木場、金城、沙織が一斉にタクティカルスーツを装着、銃を放つ。
しかしトルパの下僕・月影が出現、銃撃を防ぐ。
3人が剣を抜いて突撃する。
金城と沙織が月影に、木場がトルパに斬りかかる。
その間にアカネが、ユキのもとへ駆け寄る。
アカネ「おいユキ、しっかりしろ! 逃げるんだ!」
ユキ、不意にアカネを睨み付け、その首を締め上げる。
アカネ「ユキ……お、おまえ……!?」
必死にアカネがユキの手を振り解く。
ユキの手に剣が出現。
アカネ「あ……あ……!?」
剣が振り下ろされる。
咄嗟にアカネが月光鍋をかざすが、鍋が真っ二つに斬り裂かれる。
沙織「社長!?」
金城「危ない!」
沙織がアカネとユキの間に割って入り、ユキの剣を食い止める。
アカネ「沙織さん!?」
沙織「逃げて!!」
コンバットジャイロ編隊がシンゲツタワーへ銃撃を加える。
シンゲツタワーから光が放たれ、ジャイロが次々に撃ち落とされる。
AIT本部からウルティマ砲が放たれる。
しかし、ウルティマ砲の直撃を食らっても、シンゲツタワーはビクともしない。
シンゲツタワーの攻撃が地表に降り注ぎ、街で人々が逃げ惑う。
その中にデート中の土肥原邦夫とキャバクラ嬢・レイカの姿も。
レイカ「わあぁ、いや〜ん! 何がどうなってるのよぉ!」
土肥原「こっちだ!」
レイカの腕をつかみ、土肥原が駆け出す。
レイカ「痛ぁい! 引っ張んないでよぉ!」
土肥原「早くしろ! こっちだ!」
シンゲツタワーの攻撃で、あちこちに次々に火の手が上がる。
土肥原たちが地下への階段を駆け下りる。
土肥原「こっちだ!」
レイカ「キャーッ!!」
階段入り口に瓦礫が降り注ぐ。
家イドムの中をさまよう風雄。
風雄「懐かしい……ここはどこだろう? どこかで見たような感じがする……昔、僕が住んでいた家と同じ匂いだ。もしかして……そうか! ここは……この家は、ここは僕のイドムだ!」
いつしか風雄が、5歳の頃の姿となっている。
風雄「あれぇ?」
目の前に、小さな家。
風雄が中を覗き込む。
中では現在の年齢の小さな風雄が、粘土細工でミカヅキを作っている。
巨大な眼が家を覗き込んでいるのに気づいて驚き、その眼を突く。
風雄「痛て! 痛ってぇ〜……」
家を覗いていた風雄が、元の年齢の姿に戻っている。
家の中の風雄は、5歳の姿となり、粘土のミカヅキを何度も叩いている。
そして家の外の風雄に向かって舌を出し、どこかへ走り去る。
風雄「待てぇ!」
土肥原が目を覚ます。
地下に逃げ込んだものの、瓦礫が落ちてきて気を失っていたようだ。
土肥原「ん……い、痛……レイカ? おい、レイカ、レイカ、おい!」
気絶しているレイカを、土肥原が助け起こす。
やがてレイカが気づく。
土肥原「あぁ……良かったぁ……」
レイカ「きゃぁ、痴漢っ!」
ノースリーブから突き出た腕を土肥原がつかんでいるのに気づいたレイカが、土肥原の頬に平手打ちを見舞う。
レイカ「最っ低ー! ドサクサにまぎれて、やらしい〜!」
土肥原「アホ! そんな状況ちゃうやろ、これ! こんまにもう……あた! 腰打った……くそぉ〜!」
AITブリッジ。
日下「月接近による各地の影響は?」
オペレーター「それが、まったく……」「すべての探索波、月面を素通りします」「月の質量、推定ゼロ」
日下「……どういうこと?」
オペレーター「わかりません……ただ、まるでこの世には存在していないかのような……」
日下「なんですって……?」
木場たちとトルパたちの戦いが続く。
トルパ「ミカヅキとシンゲツが融け合うとき、それはひとつの声となる。聞こえるか、この星の声が。月を呼び、再びひとつに融け合わんとする母なる地球の声が」
トルパの攻撃でタクティカルスーツが裂け、火花が吹き出す。
木場たちが次第に劣勢に追い込まれる。
トルパ「二つの星は融け合って実体を失い、原初の姿へと帰る。それをきっかけに全て物体は無へ帰する! この美しい声を聞くがいい! 余はこの声を一日千秋の想いで待ったのだ! 今こそ、失われたガイラの国が甦る!!」
地下で土肥原が瓦礫を堀り続け、地上への脱出を試みている。
土肥原「よし、もう少しだ」
シンゲツの攻撃の余波でさらに大量の瓦礫が降り、またもや退路が断たれてしまう。
土肥原「畜生ー! 畜生、この野郎ーっ! ……へっ……ま、若いねぇちゃんとくたばれるだけでも、マシか……ヘヘッ、最期の一杯だ……」
ポケット瓶を取り出し、土肥原が飲み始める。
不意にレイカが土肥原をにらみ付け、瓶を取り上げる。
レイカ「ちょっとぉ……バカ言ってんじゃないわよ。死ぬんだったら1人で死んでよね!」
入口に積もった瓦礫を、レイカが細腕で必死にどけ始める。
レイカ「私はまだ……やりたいことが、山ほどあるんだからぁ! ハァ、ハァ、あんたみたいなジジィはそれでいいかもしれないけどさぁ、チヤホヤだってされたいし、いい男、くさるほどつかまえたいし! ハァ、ハァ、やっと自分の店が持てそうだってのにぃ……こんなところで死んでたまるもんですかぁっ!!」
呆気にとられてレイカを見つめる土肥原。
土肥原「……ハ?……ハハッ……ハハハハ、そうだよなぁ! まったくだよぉ! 俺の仕事は、生きてる奴らを助けることだったよなぁ。ただ戦うだけじゃなくて……よぉし!」
AIT本部。 スクリーンに映ったイドムを見つめる朋子。
朋子「風緒はやはりあの中に……」
家イドムの中。
風雄の目の前に、父・岩動哲朗の姿。
風雄「父さん……」
哲朗は、泣いている5歳の風雄を慰めている。
哲朗「また、いじめられたのか」
風雄「うん」
哲朗「人はなぁ、風雄……弱いところがあっても、ちっとも恥ずかしいことじゃないんだぞ。むしろ、そっちの方がいいかもしれない。人の痛みがわかるからなぁ……」
哲朗と5歳の風雄の姿が、現在の風雄の目の前から消失する。
風雄「あ!? 父さぁーん!!」
AITブリッジ。
オペレーター「ウルティマ砲、弾丸20%」「ブロックFおよびGに直撃、火災発生」「本部機能、40%ダウンしています」
イドムの中の世界。
真っ暗な空間へと投げ出された風雄。
目の前に梯子がそそり立っている。
AITブリッジに朋子の声が。
朋子「日下さん……」
日下「……申し訳ありません! 今となっては岩動隊員、いえ、風雄くんを救出するのは不可能です」
朋子「日下さん……風雄も今、あの中で戦っているわ。あの子は哲朗さんが、父が生きていると信じているわ」
日下「……?」
朋子「かつて一緒に暮らした場所で、もう一度あの人に会うために、風雄はあのイドムを生み出したのよ」
風雄の背後に、無数の怪物が出現する。
風雄は慌てて、その梯子を昇り始める。
朋子「信じて待ちましょう……私たちは」
怪物の1体が風雄に追いすがり、その足をつかむ。
朋子「あの子はきっと帰って来ます! 自分自身の力で……!」
日下「直撃箇所の鎮火を急げ! 最後まで諦めるな!」
木場の渾身の剣が、月影の仮面を叩き割る。
そのとき、地面に伸びた月影の影に、火花が飛び散る。
金城「あ……あれは!?」
月影の猛攻が木場を追い詰める。
木場の手から剣がこぼれる。
月影が止めを刺そうとしたとき──突然、月影が苦しみ始め、剣を落とす。
その背中から、刃が突き出ている。
正人が、地面の月影の影に、深々と剣を突き刺している。
咄嗟に木場が月影の剣を拾い、月影を一刀両断に斬り捨てる。
木場「正人!!」
沙織を追い詰めるユキを、アカネが必死に抑える。
アカネ「よせ、ユキ、こら!」
ユキがアカネを振りほどき、沙織を吹き飛ばす。
アカネ「沙織さん!!」
沙織「いいから……逃げて!」
倒れた沙織の剣をアカネが拾い、必死にユキに立ち向かう。
アカネ「ユ、ユキ……やめろ!」
家イドムの中。
怪物たちが風雄に襲い掛かる。
風雄「助けてぇ!」
梯子の上に5歳の風雄が立ち、襲われている風雄を傍観している。
風雄「助けてぇ!」
5歳の風雄がゆっくりと後ずさりする。
風雄「助けてぇ! 助けてくれぇ!」
梯子の上の5歳の風雄が、現在の姿へと変わる。
風雄「助けてぇ! 助けてくれぇ! わぁ、助けてぇ!」
(どうしよう……僕が助けを呼んでいる……どうしよう、どうしよう……)
襲われている風雄が、遂に梯子から落ちる。
梯子の上の風雄が、咄嗟に手を伸ばす。
2つの手が触れ合った瞬間、周囲が光に包まれる。
和作りの部屋。
現在の風雄と、5歳の風雄が手を取り合っている。
5歳の風雄が笑顔で手を振る。
そして、5歳の風雄が消え去り、家イドムが次々に崩壊してゆく──
風雄の目の前に浮かぶ風景。
田んぼに囲まれたあぜ道。
そしてその道の彼方に──父、岩動哲朗の姿が。
AIT本部。
隊員たち「ここは危険です、総員退避!」「急いで下さい!」「行きましょう、早く!」
襲撃でAITブリッジが揺れ、日下が気を失う。
目を覚ましたとき──オペレーター3人が自分を取り巻き、心配そうに見つめている。
オペレーター「ニゲテ……ユキコ……」
日下「あなたたち……」
AIが作り出したバーチャル映像に過ぎないはずのオペレーターが、日下を助けのだ。
オペレーターたちがAIの姿に戻り、バーチャル映像のブリッジが解除される。
杖をつきつつ、日下がブリッジを立ち去る。
廊下を走る隊員たち。朋子も隊員の案内で避難している。
攻撃で廊下が揺れ、朋子が転倒しそうになり、駆けつけた日下が支える。
日下「岩動さん!」
隊員「統括官! 危ないです、逃げましょう!」
家イドムの中。
哲朗「風雄」
風雄「父さん!!」
哲朗のもとに駆け寄る風雄。
抱きつこうとした瞬間、風雄が哲朗の体をすり抜けてしまう。
風雄「あれぇ……?」
哲朗「風雄……」
風雄「父さん……?」
哲朗「ここはお前のいるところとは別の世界なんだ……父さんたちは“アストラル界”と呼んでいた。お前の住んでいる世界と、ミカヅキがいた世界の狭間にある世界だ」
哲朗が身をかがめ、視線を風雄に合わせる。
哲朗「ここへ来てるのは、お前の体じゃない。気持ちだけなんだよ」
風雄「そんな……やっと会えたのに……」
哲朗「何度も帰る方法を探したよ……でも見つからなかった」
風雄「もう会えないの? ずっとずっと会えないの? 僕は父さんに会ったら、一杯話したいことがあって、沢山聞きたいことがあって……それでも!?」
不意に哲朗が風雄を睨む。
哲朗「会いに来い!」
風雄「え……!?」
哲朗「そう思うなら、お前の力で会いに来るんだ!」
泣きじゃくっている風雄。
哲朗「今はまだ無理かもしれない。でも風雄が一生懸命探し続ければ、その方法が見つかるはずだ!」
風雄、泣きながら必死に頷く。
哲朗「たとえそれが何年かかろうと、お前が皺くちゃのお爺さんになっていたとしても、俺はお前を抱きしめてやる!」
風雄の涙で濡れた頬を、哲朗の手がやさしく撫でる。
哲朗「風雄は、父さんの……」
風雄「父さぁ──ん!!」
イドムの中の世界から、風雄が吹き飛ばされてゆく。
ユキの剣がアカネの剣を弾き飛ばす。
アカネめがけて剣が突きつけられる。
アカネ「ユキ……ユキ……やめ……ろ……」
家イドムが崩壊する。
イドムから飛び出す風雄。
風雄「ミカヅキ──ッ!!」
風雄が胎玉に包まれる。
シンゲツタワーが2つの光球へと変貌。地面に落下する。
ミカヅキとシンゲツの融合が解けたと同時に、ユキが気を失い、倒れる。
そしてその体から、ユキに取り付いていたガイラの神官ザメの魂が抜けてゆく。
地に落ちた光球からミカヅキ、シンゲツが現れる。
トルパ「バ、バカな、シンゲツが!?」
ミカヅキの額に、風雄を乗せた胎玉が吸い込まれる。
風雄「戦え、ミカヅキ──ッ!!」
アカネ「木場さ──ん!」
トルパの攻撃が木場、金城、沙織に炸裂。
スーツのヘルメットが砕け、素顔が露わになる。
トルパ「死ねぇい!!」
3人目掛けてトルパがとどめを刺そうとした、そのとき。
どこからともなく飛来した剣が、トルパの体に突き刺さる。
その剣に、ザメの姿が浮かび上がる。
トルパ「ザメェッ!! う……うぅっ……」
トルパが倒れて息絶え、そして消滅──
木場「社長」
アカネ「木場さん……」
意識を取り戻したユキをアカネが抱え、3人のもとへ駆け寄る。
崩れ落ちそうになるユキを、沙織が支える。
沙織「大丈夫!?」
ユキ「私……?」
アカネ「みんな、ミカヅキと一緒に戦おうよ! シンゲツを倒すんだ!!」
木場「……よぉし!」
土肥原たちのいる地下。
遂に瓦礫を突き破り、地上への突破口が開かれる。
土肥原「やぁっ!!」
レイカ「や……やった……! ゴホッ」
再び地下が揺れ、巨大な瓦礫が土肥原たち目掛けて落ちてくる。
必死に土肥原が頭上の瓦礫を支える。
レイカ「キャァッ! 土肥原さん!?」
土肥原「い……行……けぇっ!!」
レイカ「ど、土肥原さぁん!」
土肥原「クッッ……い、いいから……行け!!」
レイカ「う……う、うん!」
泣きそうな顔でレイカが頷く。
四つんばいで這って地上へと逃れるレイカのヒップを、土肥原が見つめる。
土肥原「へ、ヘヘっ……いいケツしてやがんなぁ」
瓦礫が崩れ落ちる──
ミカヅキとシンゲツの戦いが再開。
風雄「叩け!!」
シンゲツを追い込むミカヅキ。
しかしシンゲツは、更に醜悪な姿──シンゲツビーストへと変貌し、ミカヅキに猛攻を加える。
風雄「わぁ──っ!!」
そのとき、空の彼方から飛来する影。
飛行能力を持つ最新の月光機、月光五号機である。
コクピットにはアカネとユキが。
アカネ「助けに来たぜ、ミカヅキ!」
風雄「あ、アカネさん!」
さらに月光弐号機、参号機、四号機も現れ、次々に加勢する。
弐号機のコクピットには沙織、参号機には金城、四号機には木場が。
一同「風雄くん!」
風雄「みんな……ミカヅキ! みんなと一緒に戦おう!!」
月光機軍団がシンゲツに立ち向かう。
木場「攻撃ポイントを一箇所に集中させよう!」
風雄「行けぇ──!」
月光機軍団の砲撃がシンゲツに響く。
あけぼの重工の面々を乗せたトラックが駆けつけ、月光機の戦いに歓声を贈る。
「行けー!」「社長ー!」
「社長! 皆様に愛されて80年、あけぼの重工の晴れ姿!」
シンゲツの猛攻がミカヅキと月光機軍団に浴びせられる。
月光機のコクピットに火花が飛び散り、ミカヅキもピンチに陥る。
別の方向から砲撃が轟く。
月光初号機が現れる。中には血と泥にまみれた土肥原が。
土肥原「何が何でも生き延びる、それが俺の新しい生き方よぉ! クゥ〜ッ、なんておいしい役なんだぁ、ハハハァッ!」
シンゲツの攻撃が初号機に炸裂。
そのとき、シンゲツと初号機の間に、AIT演習ロボが割って入る。
演習ロボの中では、日下統括官自らが操縦桿を握っている。
土居原「なぁにぃ? 一番おいしいじゃぁん!」
月光機と演習ロボの援護を受け、ミカヅキがシンゲツに突進する。
右拳のパンチが炸裂。
だがシンゲツは、ミカヅキの右腕を引きちぎってしまう。
風雄「ミカヅキ……ミカヅキ……ミカヅキ……」
風雄のひときわ強い想念が、言霊にこもってゆく。
風雄「ミカヅキィィ──ッッ!!」
木場たちも一斉にミカヅキの名を呼ぶ。
一同「ミカヅキィィ──ッッ!!」
木場たちの声が言霊と化し、ミカヅキから迸った言霊に融合。
言霊が巨大な剣と化してミカヅキの手に握られる。
ミカヅキ「ゼオ……!!」
ミカヅキの剣がシンゲツを貫く。
そしてミカヅキの渾身のパンチが、遂にシンゲツを砕く。
シンゲツが光と化して上空へと上って行き……そして、消滅する。
ミカヅキは勝利したのだ。
あけぼの重工の面々が沸き返り、万歳三唱を始める。
月光機の中の木場たちも、安堵の笑みを漏らす。
地上に降りる風雄。
ミカヅキの雄姿を、微笑んで見上げる。
「風雄!」
風雄を迎えるAIT隊員たち、そしてアカネやあけぼの重工の面々。
人垣を掻き分け、風雄に歩み寄る朋子。
そのとき、アストラル界の妖精・ルナがミカヅキの元に舞い降り、そして消える。
同時にミカヅキの姿が揺らぎ、次第に虚空へと消えてゆく。
慌てて風雄がミカヅキのもとへ走る。
風雄「そんなぁ、待ってよ!」
ミカヅキが、優しい仕草で左手を風雄に差し出す。
その仕草に、父・哲朗が風雄の頬をなでる姿がだぶる。
ミカヅキの中に、風雄は父の面影を見る。
次第にミカヅキが消えてゆく。
風雄「ミカヅキ──ッ、行くな──っ! 行くな──っ! ミカヅキィィ──ッ!!」
その言葉の届くことなく、ミカヅキが完全に消滅する。
両手を地に付き、涙をこぼす風雄。
朋子が歩み寄る。
風雄「ミカヅキ……」
朋子「行っちゃったね……」
風雄「うん……」
2人が、ミカヅキの消えた空を見上げる。
風雄「ねぇ母さん、僕いつか、父さんのいるあの世界へ行ってくるよ」
朋子「え?」
風雄「父さんが言ってたんだ。自分の力で……会いに来いって」
朋子が風雄の方を抱く。
朋子「そう、父さんらしいね……いいよ。母さんも応援する。風雄が父さんに会いに行くのなら」
風雄「違うよ! 僕は……父さんに会いに行くんじゃない」
朋子「え……?」
風雄が朋子を、強い視線で見上げる。
風雄「僕がそこに行くのは、父さんを連れて帰るためだよ!」
我が子の力強い言葉に、朋子が微笑む。
朋子「そう……じゃ、母さんも会えるね」
アカネ「風雄!!」
一同が風雄のもとに駆け寄る。
風雄「みんなぁっ!」
一同の歓声の中に、風雄が飲み込まれてゆく──
終