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超人機メタルダーの最終回


海岸で、剣 流星が最後の戦いへの決意を固めている。
その胸に、宿敵・バルスキーとの戦いの記憶が蘇る。

(メタルダー『バルスキー!』)
(バルスキー『メタルダー……俺も、お前のように生きたかった……』)
(メタルダー『バルスキー!』)
(バルスキー『お前は誰にも利用されず、俺たちの分まで生き抜いてくれ……』)

流星が古賀竜夫の形見の短刀を抜く。

流星「僕は許さん……自分の欲望のために様々な命を創り、そして意のままに操り、死に追いこんだネロスを……命を弄んだネロスを絶対に許さない!」


大決戦! メタルダーよ永遠に


北八荒が仰木舞の自宅マンションにやって来る。

八行「舞ちゃーん!」
舞「八荒さん、早く!」
八荒「どうしたの!?」

舞の自宅の居間。舞の父・仰木信吾もいる。

八荒「流星からビデオテープ?」
舞「えぇ、いつの間にか玄関の前に」
仰木「見てみたまえ」

仰木がビデオを再生すると、画面に流星の姿が映り、語りかけてくる。

流星「舞さん、八荒。君たちがこのテープを見る頃、僕はきっとネロスに最後の戦いを挑んでいるだろう」
八荒「流星……」
流星「僕はどんなことになっても、必ずネロスを倒す。たとえ……僕自身が死んでも。それが、僕がこの世に生まれてきた使命だからだ。舞さん、八荒、君たちは僕のかけがえのない友人だ。超人機の僕を人間として扱ってくれ……戦い以外にも、愛や悲しみ、そして素晴らしい青春があることを教えてくれた。僕の記憶回路は、君たちとの楽しかった思い出で一杯だ」

舞の瞳に、次第に涙が滲む。
八荒は真剣な目で画面を見つめ続けている。

流星「僕はそんな君たちを、危険な目に合わせるわけにはいかないんだ。僕は君たちのことを忘れない……永遠に……ありがとう、舞さん、八荒」

テープが終わる。

八荒「流星……一人でネロスを倒すなんて、格好つけやがって……」
舞「流星さんが楽しい思い出でいっぱいなら、私たちだって同じようにいっぱい……」
八荒「流星が……それを青春と言うなら……俺にとっても、流星の存在そのものが青春なんだ!」
舞「八荒さん!」
八荒「……行こう!」
舞「パパ!」
仰木「舞。青春とは、ありのままの自分を太陽に晒し、悔いの残らないようにすることだ」
舞「パパ、ありがとう!」


流星の乗ったメタルチャージャーがネロスの本拠地を目指す。


地下。
ネロスの元に祭壇が築かれ、今までに倒されたヨロイ軍団員の首が並べられている。

ネロス「さあ来いメタルダー! 貴様に倒されていった部下を弔うため、密かに築いてあった怨霊渦巻く闇の世界に!」


山林の中、スプリンガーが流星に合流する。

流星「どうだ、スプリンガー」
スプリンガー「こっちだ」

メタルチャージャーから降りた流星が、スプリンガーの案内で森林の奥へ進む。

スプリンガー「あれを見ろ」

木々の中に、地下へ通ずるゲートが。

スプリンガー「ネロスと思われるクールギンの匂いは、あの奥まで続いている。危険だぞ……」
流星「わかってる」
スプリンガー「どうしても行くのか?」
流星「じゃあな、スプリンガー」

流星がゲートの中へ身を躍らせる。
中のスイッチを作動させると、ゲートが地底へと姿を消してしまう。


ネロス「フハハハハハ……来たか、メタルダー。いざ、ヨロイ軍団の亡者どもよ! 激闘士ジャムネ! 爆闘士ガラドー、ロビンケン! 行け!」

名前を呼ばれた団員たちの首が宙に浮き、迎撃に向かう……。


洞窟奥へと進む流星。
その前方に、人魂が浮かび上がり、ネロスの声が響く。

ネロス「メタルダー……」
流星 (ネロス……)
ネロス「貴様に倒されたヨロイ軍団の亡者どもが、地獄から貴様を迎えに来ておるわ」
流星「何ぃっ……!」
ネロス「フハハハハハ……地獄へ落ちろ、メタルダー!」

人魂が舞い、流星を威嚇する。

ネロス「死ぬのはお前だ!」
流星「ネロス……!」

怒りを込め、流星が立ち上がる。

流星「怒るっ!!」

ナレーション「剣流星の体内に秘められていた全エネルギーが、感情の高まりと共に頂点に達したとき、彼は超人機メタルダーに瞬転する」

メタルダーとなった流星。
襲い掛かってきたヨロイ軍団員の首が、壁面に炸裂。
火花が舞い、メタルダーの回路にも火花が飛ぶ。

瞬間、メタルダーの周囲の風景が地上の世界と化す。
首だけだった団員たちが生前の姿となり、次々にメタルダーに襲い掛かる。

ネロス「雄闘ウォッガー、バーロック、行け」
メタルダー「うわぁっ! 今のは一体……?」
ネロス「一瞬の閃光に包まれたとき、貴様のメカは混乱を起こし、お前は亡きヨロイ軍団員の怨念の世界に引きずり込まれるのだ」

団員たちの首が次々に襲い掛かり、メタルダーは怨念の世界で翻弄される。

ネロス「暴魂チューボ、ヒドーマン!」「豪将タグスロン! 豪将タグスキー!」


苦戦しながも、遂にメタルダーはネロスが鎮座している間に辿り着く。

ネロス「メタルダー! よくぞここまで来た」
メタルダー「ネロス!」
ネロス「そろそろとどめを刺してやる」

最後に待ち受ける敵は、死んだ筈の鎧聖クールギンである。

メタルダー「クールギン!」

立ち向かうメタルダー。
だがその攻撃はことごとく、クールギンの体をすり抜けてしまう。

メタルダー「まるで幻……」

メタルダーの両目のエレクトロアイが、クールギンの実体である人魂を見切る。

メタルダー「あれだ、あの火を何とかしなければ」

古賀博士の形見の短刀を抜くメタルダー。
メタルダー、クールギンが同時に剣を放つ。
メタルダーの短刀がクールギンの中の人魂を突き、クールギンが消滅する。
しかし、クールギンの剣もメタルダーの肩を割っていた。
メタルダーががっくりと膝をつく。

ネロス「フハハハハハ……」
メタルダー「ネロス!」


バイクで流星を追う八荒と舞。
山林に乗り捨てられているメタルチャージャーに気づく。

八荒「メタルチャージャーだ! 流星はこの辺にいるに違いない、探そう」
舞「うん。流星さーん!」


地底。
ネロスの超能力がメタルダーを襲う。
メタルダーはネロスに触れることもできずに翻弄され続ける。

ネロス「いいザマだな、メタルダー」


山林で舞と八荒が流星を探し続ける。

八荒「どこにいるんだ流星は」

犬の声が響く。

八荒「スプリンガーだ! スプリンガー!」
スプリンガー「八荒!」
舞「スプリンガー!」
八荒「スプリンガー、流星はどこにいるんだ」
スプリンガー「ここにあったゲートに入って消えたままだ」
舞「……どうする?」
八荒「探そう……」


地底。
既に大ダメージを負っているメタルダーは、反撃もままならない。
ネロスの伸ばす触手が容赦なく襲いかかり、遂にメタルダーの腹部が貫かれる。
ベルトから火花が飛び散り、煙を噴き始める。

メタルダー「う……いかん……超重力制御システムが破壊された……」
ネロス「超重力制御システムが壊れた以上、お前は動けん」
メタルダー「何ぃ!」
ネロス「動けば、制御されない超重力エネルギーは増大し続け、お前の体は砕け散る!」
メタルダー「たとえ、僕の体が砕け散っても……」
ネロス「黙れ! それでは余を倒すどころか、この地球まで吹き飛ばしてしまうぞ!」
メタルダー「僕が地球を吹き飛ばす……?」
ネロス「メタルダー、そんなことがお前にできるのか?」
メタルダー「ネロス……!」
ネロス「余は勝った! メタルダーを倒し、古賀博士に勝った! 余は新たなるネロス帝国を創り、世界を征服し、地球を我が手に握る!」
メタルダー「どうすればいい……どうすればネロスを倒し、地球を守ることができるんだ……?」
ネロス「さあメタルダー、超重力エネルギー装置を破壊してやろう」
メタルダー「何!?」
ネロス「超重力エネルギー装置を破壊すれば、お前の命も地球も救われる」
メタルダー「だが、破壊すれば超人機としてのパワーも失い、剣流星にも戻れない……」
ネロス「たとえ剣流星には戻れなくても、余が新ネロス帝国・戦闘ロボット軍団凱聖として作り直してやろう」
メタルダー「ネロス……!」

とどめを刺さんとするネロス。
絶体絶命のメタルダーの脳裏に、舞と八荒の声が響く。

(八荒『負けるな、メタルダー!』)
(舞『頑張って!』)

メタルダー「八荒、舞さん、僕は戦う! 戦ってネロスを倒す!」

メタルダーが立ち上がる。

ネロス「おぉ!? 馬鹿な、死にたいのかメタルダー!?」
メタルダー「ネロス、覚悟!!」

ネロスがクールギンの剣を投げる。
メタルダーがそれをかわし、短刀をネロスの胸に突き立てる。

メタルダー「レーザーアーム!!」

メタルダーの腕に超重力エネルギーが光と化して迸る。
渾身の力を込めたレーザーアームが、ネロスの首を断つ。


洞窟内が大爆発。


地面が大きく揺れる。

八荒「わぁっ、舞ちゃん!」

大地が震え、岩や砂が転がる中、八荒が必死に舞をかばう。
やがて、揺れが止まる。

八荒「舞ちゃん、大丈夫か?」
舞「大丈夫よ」
八荒「舞ちゃん……」

八荒が指差す先、クールギンの剣が地面に突き立っている。
そしてその傍らに、メタルダーが倒れている。

八荒「メタルダー!」
舞「メタルダー!?」

八荒たちが駆け寄り、メタルダーを助け起こす。

八荒「メタルダー、大丈夫か!?」
メタルダー「2人とも……来てくれたのか……」
八荒「当たり前じゃないか!」
舞「心配で、待ってなんかいられないじゃない!」
メタルダー「ありがとう……」
八荒「で、ネロスは?」
メタルダー「倒した……」
八荒「……やったぁ!」
舞「やったわ!」
八荒「メタルダー、流石だよ!」
スプリンガー「いかん、超重力制御システムが破壊されている」

メタルダーのベルトが煙を噴き、ランプが激しく点滅している。

舞「スプリンガー、早くメタルダーを直してあげて」
スプリンガー「もう遅い……」
メタルダー「そうだ……スプリンガーの、言う通りだ……僕は、ベルトの点滅が始まり……点滅が消えると爆発し……地球を吹き飛ばしてしまう……」

舞と八荒の表情が一気に凍りつく。

メタルダー「それを止めるには……僕のエネルギー装置を破壊するしか……方法はない……」
舞「でも……そんなことをしたらメタルダー、あなたはどうなるの?」
メタルダー「超人機としての能力を失い……もう……剣流星には戻れない」
八荒「流星に戻れないって……どういうことだ?」
メタルダー「死ぬことになる……ただの、ロボットになる……」
舞・八荒「……!?」
メタルダー「しかし、それしか……地球を救う方法はないんだ……八荒、頼む! クールギンの剣で、僕の超重力エネルギー装置を……破壊してくれ!」
八荒「……できない……できないよ……俺にそんなこと、できるわけないじゃないか!」
メタルダー「頼む! 君がエネルギー装置を破壊しないで……地球が吹き飛ぶことになったら……僕は何のためにネロスと戦った? 何のために……生まれてきたんだ?」
八荒「勝手なこと言うなよぉ! な、何で流星を死なせなきゃいけないんだよ!? そんなことできないよぉ!」
メタルダー「八荒……早く頼む! 八荒!」

八荒が岩にしがみつき、涙をこぼす。

メタルダー「君と僕の友情の証に……頼む」
八荒「そんなのが……本当の友情の証なのかよぉ!?」

迷いを振り切るように、八荒が泣きながら剣を手にする。
舞がしがみつく。

舞「八荒さぁん!」

八荒が舞を振りほどき、メタルダー目掛けて剣を振り上げる。
舞がメタルダーをかばう。

舞「やめて、八荒さん、お願い!」
八荒「どいてくれ、舞ちゃん!」
舞「いやぁっ!! やめてぇ、嫌だぁっ!」
八荒「どいてくれ舞ちゃん!」
舞「嫌だぁっ!!」
八荒「何のためにメタルダーはネロスを倒したんだよぉ! 俺たちを……俺たちの地球を救うためじゃないか!」
メタルダー「舞さん……分かってくれ……」

メタルダーの顔に一瞬、流星の笑顔が重なる。


八荒「流星ぇぇ──っっ!!」


絶叫と共に振り下ろされた剣が、メタルダーのベルトを貫く。
ベルトから超重力エネルギーが四散し、周囲が光に満ちる。


辺りが闇に包まれる。
闇の向こうに、メタルダーとスプリンガーの姿が浮かび上がる。

舞「メタルダー!」

メタルダーが、剣流星の声で語りかける。

メタルダー「ありがとう、八荒、舞さん。剣流星に戻れない僕は、もう君たちの社会には帰れないんだ。僕は……いつまでも君たちのことを忘れない」
八荒「メタルダー……」

メタルダーが闇の彼方へと消えてゆく。


八荒「メタルダ──っ!!」


メタルダー「僕は生まれてきて良かった……八荒、舞さん。君たちに会えて、嬉しかった。君たちの永遠の幸せを祈る。そして僕は……いつか必ず蘇る! いつも遠くから、君たちのことを見守っているよ……」


おわり
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