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鳥人戦隊ジェットマン 最終回

―はばたけ!鳥人よ―


登場人物
竜(レッドフォーク)・香(ホワイトスワン)・アコ(ブルースワロー)・雷太(イエローオール)・凱(ブラックコンドル)
小田切長官(女性)
悪の組織バイラム幹部…ラディゲ・トランザ・グレイ・マリア
(最終回までに、グレイとマリアは死亡。トランザは内部抗争に敗れ廃人同様にされ、身元不明の患者として病院に収容されている。なお、マリアは、実は竜の元恋人リエで、竜と共にジェットマンの一員になるはずだったが、ジェットマンが組織される折、ジゲンのひずみに吸い込まれ記憶も消され、いつのまにかバイラムの大幹部になっていた。最後の最後に記憶を取り戻し、死ぬ間際 竜の為、ラディゲの背中に剣で一撃を加えて、「もう一度、竜といっしょにやり直したい…、竜…。」と言い残してこの世を去る。

―本編―

巨大獣ラゲム(巨大化したラディゲの本当の姿)との最後の戦いで、苦戦を強いられたジェットマンたちだが、巨大化したせいで、マリアから受けた背中の傷も大きくなったため、そこを集中的に攻撃、最後に竜は、自分だけが機上したロボットでラゲムを羽交い絞めにし、他のメンバーの乗るロボットにバードニックセイバー(ジェットマンの剣、無論ロボット用)で自分ごと貫くように指示する。竜の命がけの言動に、凱は迷ったあげく
「お前の命、俺が預かった!!」
と、バードニックセイバーで、ラゲムの背中から竜のロボットごと、貫いた!
激しい爆発と共に、火花が飛び散る。
「ぐわぁ!わぁ…!」
ラゲムの口から おびただしい量の血が噴き出す。
「これで、このラディゲを倒したつもりだろうが、俺の魂は、ウラジゲンから永遠に貴様達を呪い続けるだろう!!」
次の瞬間、ラゲムと、竜の乗ったロボットが折り重なるようにして倒れ、粉々に大破した。
「りゅーーーーーう!!」
叫ぶ仲間たち。

海、波打ちぎわの岩場。
ロボットの爆発から辛くも逃れたのか、あるいは、爆風で飛ばされたのか、竜が変身した姿で落ちてきて、岩場にたたきつけられる。そこへ、竜の名を口々に叫びながら、仲間たちが捜しに来る。
仰向けに倒れた竜の変身が、苦しがるたびにとけていき、その苦しむ声を聞きつけて、仲間たちが駆けつけた。
「竜!」
前々から、竜に思いを寄せていた香が、竜を抱き起こし、頭を自分の膝の上にのせる。
「竜!竜!竜…!」
何度も名前を呼んで、竜の身体を揺さぶる香。心配そうに周りを取り囲む、アコ、雷太、長官、そして凱。
「か、香…、みんな…。」
意識が戻り、香と仲間たちを見る竜。
「このぉ!いっぺん地獄に落ちやがれ!」
凱はそう言って、竜の胸倉をぐいっとつかんで、拳を突きつけてみせた。安心して、笑うみんな。
「勝ったのか?俺たち…」
「あぁ…!」
竜の問いかけにみんながうなづいた時、岩場の崖を転がり落ちる銀色の何か…。
それは、ラディゲの帽子だった…。戦いの終わりを噛み締めるみんな。
凱と雷太に支えられ立ち上がった竜に、香が言った。
「終わったのよ、竜…。何もかも…。」
「ちがうわ!」
長官がそれをさえぎるように言った。
「これから、始まるのよ!私達の…いえ、人類の平和な日々が…!」
海を見つめる6人、それぞれの顔に、穏やかな微笑が浮かんでいた。

3年後…。

〜田舎〜
雷太が畑を耕している。一度は香に憧れを抱いたことのある雷太も、今は幼馴染のさっちゃんといっしょに
畑仕事をしているらしい。
「あぁ、暑い暑い…」
麦藁帽子をとって汗をぬぐう雷太。そこへ、さっちゃんが手を振りながらやって来る。
「雷ちゃ〜ん!お昼よ!」
「あっ、さっちゃん!今日のお昼、何?」
「今日は、おにぎり!」
「どれどれ…。うわ〜、うまそう〜!」
おにぎりをほおばる雷太。
「う、うまい!」
「おいしい?あー良かった!」
さっちゃんがにっこり微笑んだ時、傍らにある電話が鳴った。
「(急いでおにぎりを飲み込んで)もしもし、大石ですが…。どちら様ですか?」

〜某TV局ロビー〜
公衆電話で、着飾ったアコが電話をしている。ジェットマン当時高校生だったアコだが、どうやら、アイドル歌手になったらしい。
アコ「誰だか わかる?」
雷太「アコさん?!」
アコ「うふふふっ…。ねえ、聞いた?香のこと?」
雷太「聞きました、聞きました!もう、びっくりしちゃってさぁ」
アコ「そうなの、びっくりでしょ!とりあえずさぁ…」
そこへ、アコのマネージャーが慌てて来て
「アコさん!アコさん!本番ですよ!新曲の発表ですからね!頑張ってくださいよ!」
と、まくし立てる。
アコ「(マネージャーに)はいはい!(雷太に)で、とりあえずね、あたしもさっちゃんも待ち合わせして、みんなで行こうよ!じゃあね!」
マネージャーにせかされ、慌しく電話を切るアコ。

〜教会〜
ウエディングドレスを着た香、横にアコと雷太とさっちゃんがいる。
「うわぁ〜、きれい!ね、さっちゃん!」
「うん!」
雷太とさっちゃんが香を見てうなづき合う。
「ほんと!めちゃめちゃきれいだよ!香…。」
ドレスのレースの形を整えてやりながらアコが言った。にっこり微笑む香。
「幸せそうな顔しちゃって…!この、この、この!」
アコが、香のほっぺたをちょっとつねった。
「…ありがとう…。」
本当に幸せそうに香は、もう一度微笑んで見せた。
その時、小田切長官が、やって来て、
「そろそろ時間よ!香お嬢様!」
と、お嬢様育ちの香に、ふざけて声をかける。
「はい!」

式が、始まった。新郎のもとへ、長官に手を引かれ、バージンロードを歩く香。
やがて、神父の前にたどり着くと、新郎の顔がアップに…。
それは、竜だ。
座席に、アコや雷太たちが座っている。
「それにしても、凱のやつ、遅いなぁ…。なにやってんだろ?」
「ほんと!こんな時くらいちゃんと来ればいいのにね。」
(実は、ジェットマン時代、凱も、香が好きだった。竜のことしか見えない香に何度も業を煮やし、「惚れるなら、俺に惚れろ!」と絶叫した凱。竜も、凱の気持ちを知っていたし、リエへの思いも断ち切れなかったため、香のことを受け止めてやれず…、よく、二人はつかみ合いの喧嘩をしていた。)

〜街の花屋〜
凱が、真っ赤な薔薇の花束を買っている。
「ありがとう…。今日はめでたい日なんだ、親友が結婚する…。」
花束を受け取り、店の外に出ると、若い男が、花を見ていた客のハンドバッグをひったくって走り去る。
「泥棒〜!」
その声に、花束を持ったまま追いかける凱。
「待ちやがれ!!」
公園のあたりでやっと追いつくと、後ろからひったくりの襟首をつかみ、足を蹴飛ばしてころばせ、ハンドバッグを取り上げて、それで2〜3発頭を「こぉら!こぉら!」と叩いた。
「ったく、めでたい日にケチつけやがって!くだらねえまねするんじゃねぇ!わかったか?!」
凱はそう言って、もう一度頭を張り飛ばすと、花束を担ぐようにして歩き出した。
と、その時、ひったくりは、胸からナイフを取り出し、
「ウワァァァァァァ〜!」
と叫びながら、凱に向かって突進!振り向いた凱の腹部にナイフが深く突き刺さった。
薔薇の花束が、地面に落ちる。
ひったくりの肩をつかんで投げ飛ばす凱、傷を抑えてうずくまる。
ひったくりは、血だらけのナイフを見て怖くなったのか、ナイフを投げ捨て、なにやら叫びながら走り去った。

〜教会〜
竜と香が誓いを立てている。神父の言葉に、決意新たに
「誓います!」と、竜。
幸せをかみしめるように
「誓います!」と、香。

教会へ続く石の階段を、左手に薔薇の花束を持ち、右手で腹部を押さえながら、凱がよろよろと登っている。

式が終わり、竜と香が、ライスシャワーや紙ふぶきで、みんなに祝福されている。
教会の庭園で、胴上げされる竜。
「この、幸せ者!」
「やったなぁ!」
「よし!、向こうで、写真撮ろうぜ!」
仲間たちが、香の方へ行く。と、竜がふと見ると、少し離れたベンチに 凱が座って竜を見ているのに気付く。
左手をちょっと上げて竜に微笑む凱。
竜は、駆け寄って、凱の隣に腰掛けた。
「凱…。来てくれたんだな。ありがとう…。」
「あぁ…。」
「どうした?顔色がわるいぞ…?ちょっと待ってろ!」
そう言って、立ち上がろうとした竜の腕をつかんで
「なあに…。例によって二日酔いさ…。」
と言って、竜をもう一度座らせる凱。
(そうか…)というようにちょっと笑う竜。
並んで座る2人の上に、ぬけるような青空が広がっている。
「あぁ…。空が目に沁みやがる…。きれいな空だ…。」
空を見上げて凱が言った。
「あぁ、俺たちが守ってきた青空だ。」
「…あぁ…。」
そこへ、アコが
「竜!凱!写真撮ってあげるね!」
と、カメラを構えて声をかけた。
「はい!チーズ!」
の声に、突然、思い切り自分の方へ竜の肩を引き寄せる凱。驚く竜。
「竜〜!凱〜!早くこいよ〜!」
雷太が呼んでいる。
微笑む竜と凱…。
「…ありがとう…、竜…。」
凱の、らしくない言葉に、ちょっと不思議そうな表情を浮かべた竜だったが、
「あぁ!」
と、笑ってうなづいた。
やがて、竜はみんなで写真をとるからと、仲間に引っ張られてゆく。
アコが、凱が来ていないことに気付き
「あれ?凱は?」
と、竜にたずねるた。
「疲れてるみたいだな…。少しそっとしといてやろう。」
竜の言葉に、凱の方を心配そうに見る香。
ベンチで、煙草を持った左手を、軽く上げて香に答える凱。
香は、安心したように、そして、飛び切りの笑顔を、凱に見せるのだった。
〜ここから、スローモーション〜
みんなと戯れる竜と香。さっちゃんにネクタイを直してもらい、はにかむ雷太。ふざけてかぶっていた帽子を取られ、笑うアコ。香からブーケを受け取り、喜んで花の匂いを嗅ぐ小田切長官…。
ベンチで、その様子を煙草を吸いながら見ていた凱…、やがて、その目を閉じ、煙草を持っていた左手が力なく下がり…、同時に、頭もがくっと傾く……。

みんなに囲まれて笑っていた竜、ふと誰かに呼ばれたように遠くを見ると、木の陰からリエ(マリア)が、真っ白なワンピースを着て現れ、竜に向かって(これで、いいのよ、幸せにね…)とでも言うように、笑ってうなづき消えてゆく。
それを見て、竜は、微笑んでうなずき返す。
アコを先頭に、駆け出すみんな…。

 ― END ―

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