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超合体魔術ロボ ギンガイザーの最終回


捨て身の
ファイヤークラッシャー
(後編)


サゾリオンの卑劣な罠にかかり ギンガイザーは爆発の危機に刻一刻と近づいてゆく
地球を魔の廃墟とする謎のエネルギーを秘めた大魔玉をサゾリオンに渡すまいと
決死の覚悟で守り抜いたギンガイザー しかし これこそ
サゾリオンの科学工場で作られたニセ大魔玉の 巧みな罠だったのだ


ギンガイザーがニセ大魔玉に見せかけた巨大時限爆弾を携え、無数の剣の体を貫かれたまま、マジックキャッスルへ帰還する。
コクピット内のゴローたち4人は皆、気を失っている。

所員A「これよりギンガイザーを貫いている時限爆破装置を抜き取る。コクピット内の4人を傷つけないよう、細心の注意を払って、やってくれ」

そこへ、過労で倒れていたはずの剛堂博士が現れる。

剛堂「待ちたまえ」
所員A「は、博士!?」
剛堂「緊急事態の場合は、すぐ私に連絡してくれんと困る」
所員A「そ、それはわかっていますが、しかしお体のほうが……」

倒れそうになる剛堂を、所員が支える。

所員A「あっ、危ない」
剛堂「ギンガイザーを透視モニターにかけてくれ。スイッチを」
所員B「透視光線第1スイッチ・オン。第2スイッチ、第3スイッチ」

スクリーンに、ギンガイザー内部の被害状況が映し出される。

剛堂 (ここにも時限爆弾装置が…… しかも、動かすと起爆装置が働くようになっている)

所員C「博士、時限爆破装置の起爆点がわかりました」
剛堂「どれぐらいだ?」
所員C「あと12分で爆発します」
剛堂「12分!?」
所員A「早く剣を抜かなければ!」
剛堂「いかん! あれを見たまえ」

スクリーンを示す剛堂博士。

剛堂「うっかりあの剣を引き抜いたら、瞬間に爆発するようセットされている」
所員A「爆発!?」
剛堂「サゾリオンのやりそうなことだ。でなきゃ、ギンガイザーがこの基地に収容されるのを、黙って放っておくようなことはせん。何としてでも防ぐ」
所員たち「しかし、剣を抜けば爆発、放っておいても12分後に爆発、どうすれば?」「博士!」
剛堂「まず、4人をコクピットから脱出させるんだ。マジックショックで起こせ!」
所員A「わかりました!」
剛堂「ゴロー、起きろ。目を覚ませ。ゴロー! ゴロー、起きろ、起きるんだ! 目を覚ませ! ゴロー、立つんだ! 立て、ゴロー!」


ゴローの夢の中。
夜の草原で、柔道着姿のゴローと父とが対峙している。

父「立つんだ、ゴロー! 立て! もう参ったのか? ゴロー、立て!」
ゴロー「……まだ参るもんか!」

父がゴローを投げ飛ばす。

ゴロー「畜生!」

再びゴローが父に挑み、取っ組み合う。

ゴロー「くっそぅ、負けるもんか!」
父「立て。ゴロー、忘れたか? 力だけが戦いではない。無だ。それでこそ、力は倍となって現れる」
ゴロー「……無?」
父「そうだ。当たり前のことを、戦いの最中では忘れがちだ。いかなる場合も冷静さを失うな」
ゴロー「無か」
父「そうだ!」
ゴロー「無だ! えぇい! たぁ!」

ゴローが一気に、父を投げ飛ばす。

父「ゴロー、忘れるな。無だ! 無は倍の力を引き出す。力ばかりが攻撃ではない」

父の姿が消えてゆく。

ゴロー「父さん? どこへ行くんだ? 待ってくれ! 待ってくれ、父さん! 父さん、待ってくれぇ!」

父を追うゴローの前に、サゾリオン兵士たちが現れる。

ゴロー「わぁぁ!!」



ゴローは 父を柔道の練習をしている夢を見ていた
幻の父とのそれは 幼いころの記憶なのか それとも 死の淵をさまよう恐ろしい悪夢なのか
それは ゴローにもわからなかった


ゴロー「父さん…… 待ってくれ、父さん……」

ギンガイザーにショックが加えられ、ゴローが夢うつつの中、目を覚ます。

剛堂「スイッチを」
所員A「はっ」
剛堂「ゴロー、よく聞け。あと12分でギンガイザーは爆発する。そこから脱出しろ」
ゴロー「だ、ダメです! 動けません。体が自由にならないんです」

ギンガイザーに突き刺さった剣は、コクピットの中まで貫いており、ゴローたちは身動きができない。

剛堂「わかった。今、そっちへ行く」
ゴロー「博士、俺たちなら大丈夫です。それより、爆発物を取り去ってください!」
剛堂「しかし……」
所員A「そのほうがいいでしょう。ギンガイザーのコクピットはかなり破損していて、彼らを助け出すには時間がかかりすぎます。ギンガイザー強化マガジンをセットしながら、抜いてみましょう」
剛堂「強化マガジンか。今はそれよりほかに、方法はないだろうな。だが、ほかの剣はなんとか抜けても、心臓部のあの剣は無理だ。ヘタに抜くと致命傷になる」
所員A「マジックハンドと強化マガジンを準備しろ!」
剛堂「これより、時限爆破装置を取り外す。爆発は12分後に迫っている。慎重に、なおかつ迅速に処理するように。──始めてくれ」

格納庫の中でマジックハンドが、ギンガイザーへと伸びる。

剛堂「引け」

ニセ大魔玉が除去され、続いてマジックハンドが、ギンガイザーの顔面に突き刺さった剣をつかむ。

剛堂「引け」

ゆっくりと引き抜かれた剣が、次第に反応を始める。

所員「爆発するぞ!」

剣が爆発。爆風の衝撃が、ゴローや剛堂たちを襲う。

ゴロー「うわっ!」
剛堂たち「うぅっ!」

爆発は小規模で済んだものの、ギンガイザーの顔面には惨い傷跡が刻まれている。

剛堂「ゴロー、大丈夫か!?」
ゴロー「だ、大丈夫です。続けてください」
剛堂「よし、ギンガイザー強化マガジンをセットしろ」

ギンガイザーの傷跡を通じ、機体内部に強化装置が装填される。

剛堂「次、始め」

剣の除去が再開される。

所員「避けろ!」

再び、爆発の衝撃がゴローたちを襲う。


一方のサゾリオン帝国。カインダークたちは祝杯を挙げている。

サロメ「フフフ。今ごろギンガイザーどもは、死への恐怖と必死に戦いながら、もだえ苦しんでいることでしょうね」
カインダーク「計画通りにいけば、まもなく宿敵がこの世から消える。あれだけ苦しめておけば、我がサゾリオンの科学力を、イヤというほど思い知るだろうて」
ネクローマ「カインダーク様。今回のお膳立てはすべて、このネクローマが整えたことを、何とぞ心にお留め置きを」
ガバーラ「ネクローマの功績を称えて、乾杯!」

ガバーラが、酒をネクローマにひっかける。

ネクローナ「ヌヌヌ、ありがとうございます!」

お返しに、酒をガバーラにひっかける。

ガバーラ「な、何をする!?」
兵士「大変です、カインダーク様!」
カインダーク「どうした?」
兵士「爆発反応板が変です。予定時限より早く、しかも予定威力より数百分の一も弱い爆発が、次々と起こっています」
カインダーク「わかった。すぐそっちへ行く」

司令室に集うカインダークたち。

カインダーク「どういうことだ、ネクローマ?」
ガバーラ「どういうことだ、ネクローマ?」
ネクローマ「信じられません! あの剣を抜き取るなど、自殺行為!」
カインダーク「ギンガイザーは炸裂しておらぬというのか?」
ネクローマ「いえ。数々の小爆発で、かなり破損しているかと思われますが、しかし……」
カインダーク「剛堂にまたしても、してやられたというのか?」
ネクローマ「恐らく…… しかし、ギンガイザーの心臓部へ食い込ませたあの剣、あれだけは抜き取れないはず。その中に探知機を仕込ませてありますゆえ、蘇生獣にてヤツらにとどめを」
カインダーク「敵の基地がわかるというのか?」
ネクローマ「私めのやることに抜け目はありません。フフフ」
カインダーク「よし、さっそく蘇生獣を出せ! 出動だ!」
ネクローマ「ハハッ! トウカイリンリンソクチョウ、トウカイリンリンソクチョウ、サゾリオン帝国の暗黒に控えしサゾリカオスよ、今こそ沸き出でて、蘇生獣グモラガモラに命を与えたまえ!」

蘇生獣グモラガモラが完成。カインダークたちの乗った司令船や円盤群とともに飛び立つ。

ネクローマ「蘇生獣グモラガモラよ、敵の基地を探知せよ! ──おぉ、反応を始めたぞ。カインダーク様、敵の基地を発見しました!」
カインダーク「場所は?」


一方のマジックキャッスル。
ギンガイザーに突き刺さった剣は順調に除去されたものの、心臓部に残った巨大な1本のみが残っている。

「頭部、修復完了! コンピューター強化マガジン、セット完了!」
「第1関節手足、修復完了! コンピューター強化マガジン、セット完了!」
「後背部破損部は、すべて完了!」

剛堂「ゴロー、ミチ、三太、トラジロー。みんな、大丈夫か?」
ゴロー「大丈夫です」
ミチ「でも、頭が少しフラフラするわ」
トラジロー「もう、死ぬかと思ったよ」
三太「しゃあけど、まだどでかいヤツが心臓部に残ったまんまねんやろ? このままやったら、棺桶に片足突っ込んでるのと同じやないかいな」
ゴロー「博士、爆発まであとどれぐらいですか?」
剛堂「あと7分だ」
ゴロー「それまで、この剣が抜けなかったら…… どうするんですか?」
剛堂「地下の爆破処理工場に収納する」
三太「爆破処理工場!? イヤや! ギンガイザーが吹っ飛ぶなんて、そんなんイヤや!」
剛堂「みんな、コクピットから出るんだ! 取りあえず処理工場へ収納する」
所員「あっ! 博士、大変です! サゾリオンらしき軍団が、こっちへ向かって来ます!」
剛堂「何!?」
所員C「博士、ギンガイザーの胸に残っている剣が、異常反応を始めました!」
剛堂「しまった……」
所員A「博士、これは一体?」
剛堂「ヤツらめ、探知機までセットしておったのか!」
所員たち「博士、どうします?」「このままだと、あと2分でこちらまで来ます」「敵は新しい司令船を先頭に、小型円盤約百機。ものすごい数です」「博士、指示を!」
剛堂「(この基地を発見されるわけにはいかん。何としてでも防ぐ) 妨害電波を出せ!」

マジックキャッスルから妨害電波が放たれる。

ネクローマ「おぉ? ヤツらめ、妨害電波を出してきたな」
カインダーク「ということは、敵の基地は間近ということか」
ネクローマ「グモラガモラよ、行けぃ!」

ギンガイザーの胸に突き立った剣が爆破反応を始め、ゴローたちを苦しめる。

ゴロー「うわぁぁ!」
剛堂「ゴロー!?」
所員たち「博士、爆発まであと5分です!」「博士、サゾリオンはあと1分でこちらに来ます!」「は、博士。どうします?」

突然の大音響。見ると、ギンガイザーがジェット噴射で上昇を始めている。

剛堂「ゴ、ゴロー、やめろ! ゴロー、やめろ! やめるんだ。止まれ!」
ゴロー「(俺は行く。サゾリオンのヤツらに好きなようにはさせない) 俺たちは死ぬかもしれない。どうせ数分の命なら、サゾリオンを道連れにしてやるんだ! みんな…… 俺と一緒に行くよな?」
三太「俺は行くでぃ! 地獄の底まで一緒に行ったるわい!」
トラジロー「俺もだ、ゴロー! 俺たちゃ名誉ある、ギンガイザーの隊員だ!」
ミチ「そうよ、私だって怖くはないわ! サゾリオンの恐怖から地球を救えるなら!」
ゴロー「サゾリオンの一片たりとも、残すんじゃないぞ!」

胸に剣を突き立てたまま、ギンガイザーが空へ飛び立つ。

所員A「博士! 強化マガジンを働かせて、新・超常スマッシュを使用させましょう。そうすれば」
剛堂「いかん。今それを使えば、爆破反応を起こして木っ端微塵になる。あの剣さえ、時限爆弾さえ取り除けたら……」

ネクローマ「カインダーク様、あれを!」
カインダーク「どうした?」

サゾリオンの編隊に立ち向かってくるギンガイザー。

カインダーク「敵ながら、あっぱれだ。ギンガイザー! 死を覚悟で最期の戦いに挑んでくるとはな」

ゴロー「みんな、よく聞いてくれ。爆発まであと4分弱しかない。蘇生獣に構うな! その後ろの司令船を狙うんだ! 行くぞ!」

しかし蘇生獣グモラガモラが巨大な爪を振るい、ギンガイザーを捕らえる。

ゴロー「しまった! 脱出しろ!」

ギンガイザーが必死に脱出を試みるものの、強力な爪から逃げることができない。

ゴロー「ダメか!?」
三太「兄貴! 早ぅせんと、爆発の時間が来よるで!」

ネクローマ「いいぞ、グモラ! そのままヤツを逃がすな! やがてギンガイザーは爆発する! お前はサゾリオンの反映のための布石となって、ギンガイザーとともに名誉ある戦死を遂げるのだぁ!」

ゴロー「もう一度パワーアップして、脱出するぞ!」

一同は懸命にノズルをふかすものの、やはり脱出できない。

ゴロー「く、くそぉ!」

(父『ゴロー、忘れたか? 無だ! 力だけが戦いではない! 無だ!』)

ゴロー「はっ…… みんな、パワーダウンしろ! エネルギーをゼロにするんだ!」
三太「何やてぇ!?」
ミチ「ゴロー、気でも違ったの!?」
トラジロー「どういうつもりだ!?」
ゴロー「いいから、ゼロに落とせ! 早くしろ!」
トラジロー「う、わかった!」

ギンガイザーが噴射を止める。
反動で胸に刺さった巨大な剣が抜け、グモラガモラに突き刺さり、大爆発。

所員たち「おぉっ、剣が取れた!」「奇跡だ!」

ガバーラ「突撃だ! 戦いとは突撃あるのみだ。突撃ぃ!」
ネクローマ「行け、グモラガモラ! 体当たりしろ!」

半壊状態のグモラガモラが、円盤群とともに総攻撃。

ゴロー「うわぁぁっ!!」
剛堂「ゴロー、みんなもよく聞け。正面にあるスイッチを押すんだ。そして、新・超常スマッシュに入れ!」
ゴロー「新・超常スマッシュ?」
剛堂「そうだ。早く正面のグリーンのスイッチを押せ!」
ゴロー「これか?」
剛堂「新しい掛け声は『ファイヤークラッシャー』だ」
ゴローたち「ファイヤークラッシャー、ゴー!!」

ギンガイザーがグモラガモラを引き剥がして飛び立ち、炎に包まれる。

コクピットが高熱化し、ゴローたちは必死に耐える。
炎のかたまりと化したギンガイザーが宙を舞い、その熱波を浴び、円盤群が次々に爆発してゆく。
あまりに壮絶な光景を、カインダークは息をのんで見つめている。

カインダーク「残念ながら、我々はギンガイザーのいる限り、地球をこの手にするのは無理だ。(剛堂、お前はいい部下を持ったな…… 作戦を立て直して、いつか再び挑戦するぞ) 引き上げぃ!」

司令船が飛び去り、蘇生獣グモラガモラもギンガイザーの攻撃で大爆発。


ゴロー「はっ…… 俺たちは生きてる。生きてるぞ! みんな、見ろ!」

戦いが終わり、ギンガイザーの目の前には青空が広がっている。


壮絶な戦いは今 終わった
サゾリオンの魔の手から 不死鳥のように甦ったギンガイザーを目の前にして
カインダークは深い敗北感を味わった

しかし サゾリオンは新たな作戦をもって いつの日か再び攻撃してくるだろう
負けるなギンガイザー 君たちがいる限り 地球の平和は続くのだ


(終)
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