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ドラゴンクエスト 天空物語(幸宮チノ)
LAST STORY「天空物語」

(最終回に至るまでのあらすじ)
「ドラゴンクエスト5」の青年期後半に至るまでの頃の話。
主人公・テンとその双子の妹・ソラは行方不明になった両親(詳しくはゲーム本編で)を探すため、召使い・サンチョやグランバニア王の従妹・ドリスと共に探索の旅に出た。
途中、天空の勇者を探す魔法使いの青年・カデシュや海賊「スカルアロウ」のリーダー・オーゼルグも仲間に加わり、「キング・オブ・オーシャン」と呼ばれる秘宝・ストロスの杖を探すことになる。
そんな中でソラがカデシュを追う賞金稼ぎ・ヤグナーとオーゼルグの元部下・シャクバにさらわれるが無事助け出し、一行はカデシュの故郷・ストロスの廃墟に向かう。
ソラはストロスの杖を手に入れるが、追ってきたヤグナー・シャクバ達と最後の決戦となる。カデシュの犠牲により脱出する事になるが、時を同じくしてグランバニアに王の石像についての情報が飛び込んでくる。
オーゼルグたちに別れを告げ、テン・ソラ・サンチョは石像のある屋敷へと向かう。ソラがストロスの杖でグランバニア王(以下、「5主人公」とする)の石化を解き、ついに親子が再会を遂げる…

(本文)
 石化から解けた5主人公、テンとソラをぼんやりと見つめている。

そっと頬をなでられるような、あたたかな声と優しい瞳

5主人公「テン、ソラ…」
ソラ「お…」
テン「お父…さ…」
 テン、緊張して息を呑む。
 5主人公、一歩歩みだそうとするが、やはり8年間石化していたせいか盛大にずっこける。
サンチョ「ぼぼぼ、坊っちゃ〜〜ん!!坊っちゃ…しっかりしてくださぁあああ」
5主人公「あいたた…体が…うまく動かないや」
 5主人公、サンチョの方を見つめる。
5主人公「ああ、サンチョ…来てくれたんだね…」
 サンチョ、感極まって涙ぐむ。その時屋敷から屋敷の主人・ゼップスが出てくる。
ゼップス「う、うわああああ!!石像が、人間になったぞ…あわわわわ…」
サンチョ「こ、これは申し訳ありません驚かせて…」
ゼップス「ひイイイイ、悪霊退散悪霊退散」
 余程怖かったのか、一目散に逃げ出していく。
サンチョ「ああ…行ってしまわれましたな…」
 そんな彼らのやりとりを見守っていたテンとソラ。ソラはテンのマントを掴んでいる。
サンチョ「テン王子、ソラ王女、どうなさいました。お父上ですぞ。あれほど会いたかったお父上ですぞ。お二人とも何を緊張していらっしゃるのですか」

のどに、空気のかたまりがつまってるみたいに
ドキドキして何もできない
目の前にいるのはお父さん
どうしていいのかわから…

 テン、突然叫びだす。
テン「こ…「こんにちは」、あ…「あなたがぼくの」「お父さんですね」」

お父さんに会った時のあいさつ…

 回想シーン、再会の前の1シーンより。
ソラ(ねぇ…!お父さんに会った時のあいさつ、練習しておかないと)
テン(めんどくさーい)

 再び再会の場。テンがいきなりあいさつをしだしたので戸惑うも、ソラも練習していたとおりにあいさつをする。
ソラ「は、「はじめましてお父さん」「私ソラです」「この名前お父さんがつけて…」
テン「ぼく」
ソラ(えっ…テンのセリフまだここじゃ…)
テン「ぼく、ぼくっ…ぼく…ッ」
 突然練習どおりでないセリフを言ったテンに戸惑うソラだが、見るとテンは大粒の涙をこぼしていた。
テン「お父さんのこと、いっぱい、いっぱいさがしたんだよ…!!」
ソラ「テン…!!」
テン「いっぱ…いっぱいっ、さがし…っ、さみしか…っ、おとぉさん、おとぉさん、おとぉさぁぁあ」
 嗚咽をこらえる事もできず、その想いを伝えるテン。いつしかソラも堰をきったように泣き出していた。
テン・ソラ「うっ、ううぇ、うええええ」
 5主人公、テンとソラを優しく抱きしめる。
5主人公「テン、ソラ、ありがとう」
 テン、5主人公のマントをぎゅっと掴む。

ぜんぶぜんぶのあったかいものと、優しい吐息と、名前を呼ぶ声
体の内側がひっくり返るような、愛しさの中で
すべてぶちまけて泣いた
やっと、会えた

 いつしかテンとソラは笑顔になり、5主人公に甘え始める。
 サンチョも感無量な思いでその光景を見ており、いつの間にか戻ってきていたゼップスも首をかしげながらその光景を見ている。

もう、ずっと離れないよ

 to be continued DRAGON QUEST 5

 …そして時は流れて、平和になった世界のグランバニア城。
 中庭でミニデーモンのミニモン(何故かこの漫画では女の子)がさくらんぼを食べながら寝そべっている。
ミニモン「は―――、平和な昼下がり。今日みたいな日は忙しかった怒涛の日々のコトなんかも、いい思い出に感じちゃうからフシギねー。アフーン、有閑ミニモンちゃん」
 しかしミニモンが食べようとしていたさくらんぼに舌を伸ばすものがいた。
ミニモン「!!ちょっと、それアタシのよ」
 見るとそこにはベビーパンサーがいて、ミニモンを無邪気に見つめていた。
ミニモン「赤んぼだからってヨーシャしないわよ。アンタ、チロル!?ボロンゴ!?プックル!?おんなじようなカオして、んっとにまぎらわしいのよ」
 ミニモンが後ろを向いている間に、ベビーパンサーたちはさくらんぼをあっという間に平らげてしまう。
ミニモン「って何やってんのよ、このクソガキ―――!!」
 ベビーパンサーたち、一目散に逃げていく。空っぽになった器を見つめたミニモン、
ミニモン「アタシのけだるい昼下がりが〜〜セレブな時間がああ〜…」
??「どうしたのミニモン、がっくりして…」
ミニモン「ソラちゃま〜聞いて、ヒドいのよう〜〜」
 見るとそこには、成長して髪を伸ばしたソラがいた。
ソラ「ミニモンはまたいつもそう言って…」
ミニモン「今日のはホンっトひどいの!!ゲレゲレ呼び出しの刑よ!!」 
ソラ「今日は静かにしてないとダメよ。さっきまで中庭で昼寝してたじゃない」
ミニモン「昼寝じゃないわよー、ソラちゃまったらわかってないったら!!」
 ミニモン、怒りを鎮めて言う。
ミニモン「今こうしてね、みんなでいられるようになるまでの大変だったコト、思い出してたのよ」
ソラ「―――…そうね…大変…だったね」
 ふと浮かんでいく数々の光景。
 親子3人で戦いを切り抜けた思い出、大神殿でビアンカ(注)を助け出したこと、そして親子4人で挑んだ最終決戦。
ソラ「だけど、今はみんな一緒。毎日が、あの時ずっとほしかったもので満たされてる」
ミニモン「ソラちゃまったらポエマーなんだからァ」
??「心に思ったコトを口にするのは大切なコトよー」
ソラ「ドリス」
 振り向くとそこには、やはり成長したドリスがいた。
ドリス「落ちつかない?まだ少しかかるかな。ま、のんびり待とうよ」
ソラ「別に落ち着かないわけじゃないわ。ミニモンが騒いでたから…」
 ミニモン、怒りがぶり返してきたらしく、
ミニモン「騒いでないわヨ!!あの仔犬どもがアタシの―――!!!」
ドリス「ハイハイ、わかったわかった」
 一方天空の武具が安置されている部屋。成長したテンがスライムのスラリンと一緒に、何かを願っていた。
テン「よしっと、これで大丈夫。行こ、スラリン」
 スラリン、「ピキー」と鳴いてそれに応える。
 バルコニーからよじ登って廊下に姿を現すテン。サンチョがそれに気付く。
テン「ほっ」
サンチョ「テン王子!!またそのような所から…ここを何階だとお思いですか!!ちゃんと階段で…」
テン「わかってる、わかってるって。で…まだ?」
サンチョ「こういうものはそんなにすぐには…あせらず待ちましょう」
テン「別にあせってはないよ。今、天空の武具にお祈りしてきた。だから聞いただけだよ」
サンチョ「ホウ、そうでしたか。ならばきっと安心でしょうな」
 テン、サンチョが手に持っていた書簡筒に気付く。
テン「サンチョ、手紙?」
サンチョ「あぁ、ハイ」
テン「ずいぶんきれいな書簡筒だね。あれ…それってラインハットの紋だ」
サンチョ「え…ええ」
 サンチョ、わざとらしく目をそらし口笛を吹く。
テン「―――…何?」
サンチョ「あァイエ、なんでも…」
テン「スラリン」
 言うや否や、スラリンがサンチョの手から書簡筒を咥えて奪う。
サンチョ「おァ、かっ…返してくだされ〜〜!!!ソレは直接ご本人にと…」
テン「んじゃぼくが渡してくるからさ。なんだ、ソラにじゃん」
 テン、ソラたちの元に駆け寄っていく。サンチョも年のためか、些細な運動にも関らず息が上がるが、
サンチョ「テ、テン王子ィィ、返…返…」
ドリス「テン」
ソラ「騒がしくしちゃダメよ、テン」
テン「あー、うんうん。ホラ、ソラに手紙。ラインハットのコリンズから」
 テン、書簡筒をソラに渡す。
テン「なんだよーコリンズ、またソラだけに手紙かー。ぼくには一度もくれないんだもんな」
ソラ「テンからもお手紙しないからでしょ」
テン「アハハ、そりゃそっか。ソラはコリンズとずいぶん仲がいいんだなー」
ソラ「―――…そんなことないわ、フツーよ」
 見るとソラの顔が真っ赤である。テンは女心に鈍いのかその機微に気付かず首をかしげる。
ソラ「―――テンのばか」
テン「?…なんだよ」
??「王子〜〜〜〜王女〜〜〜!!」
 その声と共に、髭も伸びたグランバニア兵士・ピピンが駆け寄ってくる。
 城に響き渡る赤ん坊の泣き声。
 テンとソラ、そしてスラリンは仲間モンスターたち(あの旅からさらに増えた)の見守る中、その部屋を目指して走り出す。

たくさんの出会いと別れと、たくさんの命の道のり
ぼくたちの歩く世界
見守るあまたの「あなた」の歩く世界
紡ぐ、たて糸とよこ糸で織りあがる物語

 部屋の中には5主人公と、ビアンカが生まれたばかりの赤ん坊を抱いて待っていた。テンとソラも自然と満面の笑顔を浮かべる。

この、果てしない天空の下で
命はつながり続ける

天空物語 完

(注)この漫画はビアンカが妻です(7巻掲載の外伝「メモリーズ」参照)。しかしフローラも5、6巻で友情出演していたり(6巻扉絵も必見?)してます。

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