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ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章
LEVEL:86(最終話) 奇跡

(最終話に至るまでのあらすじ)
かつて大魔王ゾーマを倒した勇者ロトことアレルの子供・ローランとカーメンはそれぞれ竜の女王の城とバラモス城の跡に自分たちの国を建国した。
それから100年の後、そのうちの一つ、カーメンにて。王子アルスが誕生するが、生まれたその日に王と王妃はかつて精霊ルビスにより封じられた異魔神率いる魔王軍により異世界に飛ばされ、アルスは剣士ルナフレアと老神官タルキンに連れられ辛くも城を脱出する。
そして10年間仙人の隠れ里で過ごしていたが、そこの結界が破れたことを機に旅立つこととなる。
旅の中で様々な出来事を通じ、アルスは勇者として成長していく。
親代わりとして育ててくれたルナフレア、タルキンの死。
かつてアレルと共に戦った3人のケンオウの力を受け継ぐものたち(剣王キラ、拳王ヤオ、賢王ポロン)との出会い。
魔王軍の魔王たち、獣王グノン、冥王ゴルゴナとの死闘。
そして同じロトの血を引きながら、呪われた名「ジャガン」により魔人王となったジャガンとの対決、もう1人のロトの子孫であるアステアとの邂逅。
ローラン城でジャガンとの宿命の戦いに決着をつけ、彼の本当の名前「アラン」とロトの血の宿命を取り戻させることになる。
その頃、異魔神に利用されていたことに気付いた魔王軍の魔王の1人、竜王は真実を異魔神に尋ねにいった所、異魔神に利用されていたことに気付き、その過ちを悔いるようにアステアと和解した。
その時、ついに実体を得た異魔神が復活する。かつてムー帝国を滅ぼし、高密度魔法言語を駆使して国を一瞬にして滅ぼす異魔神との戦いを前に、アルスは3人のケンオウたちに去るように告げ、アラン・アステアと共に戦いの場に赴く。
ケンオウたちはそれぞれの故郷に戻るが、気持ちはすでに戦う決意と共にあった。
キラ・ヤオ・ポロンの3人は最終決戦地である世界樹の森に、アルスを助けるために戻ってくる。そしてアルスたちの戦いに共感した義勇兵も世界中から世界樹の森に集結する。
ポロンはかつての賢王である大賢者カダルさえ編み出せなかった、命と引き換えの極大魔法・マダンテを放とうとするが…

(本文)
 異魔神の力によりできた地割れを前にして。アルス・アラン・アステアはキラ・ヤオ・ポロンを助けるために走っている。
アルス「ハア、ハア、ハア」
 地割れの前に立つ3人。
アルス「ちくしょう、どこまで続いているんだ…この亀裂は!!」
アステア「しかたない…一か八か…向こう側まで跳んでみよう」
アラン「ああ…多少だがさっきよりは幅がせまくなってる…」
アルス(待っててくれ、キラ!!ヤオ!!ポロン!!死ぬなよ…絶対死ぬなよ!!)
 一方、キラとヤオはポロンがマダンテを唱えるまでの時間稼ぎとして異魔神に向かっていく。ポロンはマダンテのための魔力を集めている。

じいちゃん…悔いのない最期を…迎えられそうだぜ…

 キラの幻魔剣が、ヤオの武術が異魔神に炸裂する。

マダンテ、その威力は絶大なるがゆえに
一歩まちがえれば命と引き換えねばならない
瞬間的に全ての魔法力を消費する極大呪文だ…

 2人の攻撃を受けても、異魔神は余裕の笑みを浮かべている。そして与えた傷も回復していく。
キラ(なぜだ!!なぜ幻魔剣が効かない!!)
ヤオ(だめだわ…どんなにダメージを与えてもすぐに回復していく!!)
 そしてまた一方、導師タオが戦いの様子を見ながら思う。
タオ(幻の月が奴に与える生長促進のエネルギーが…幻魔剣の傷を塞ぎ続けておるのじゃ…もはや月を破壊するしか異魔神の奴を倒す方法はないのか…)
タオ(いや…幻の月は人々の魂が結晶化したものじゃ…ならば昇天魔法ニフラーヤを使えば、魂を昇華させ月そのものを消すことができるのでは…考えるよりまず…実践せよ!!…か)
 タオは空へと飛ぶ。
 一方、再び異魔神との戦いの場にて。キラがポロンの方を振り向き、言う。
キラ「まだか!?ポロン!!」
ポロン「もうちょっとだ!!」
その時、極大五芒星のエネルギーが完成する。
ポロン「よし!!できた!!!一夜漬けにしちゃ上出来だぜ!!」
 一方、空に飛んだタオ。昇天魔法ニフラーヤで幻の月を消していく。
タオ「はあ、はあ、はあ…思ったより骨の折れる仕事じゃ…」
タオ「月ひとつあたり5千人ほどの魂じゃろうか…ニフラーヤは魔法力消費そのものは少ないが5千人分ともなると…ちと手強い…ティーエからもらったこのお札で何とか魔法力を回復しつつやっと一つ潰したが…よくて後一つ…それ以上は体力的にも限界じゃ…」
 そして、異魔神との戦いの場に視点は戻る。
 キラの幻魔剣が、異魔神の足を切り裂く。
異魔神「ウオッ」
 その隙を突いてキラが突進してくる。
異魔神「何!?」
キラ「ウオオォ」
 しかしキラは異魔神の右腕に自分の愛剣であるはやぶさの剣を突き立てる。
 そしてヤオは異魔神の左腕を体全体で固め、異魔神の動きを止める。
キラ「今だポロン!!そいつを放て!!」
ポロン「バ…バカいうなよ!!お前らまでまきぞえを食うぞ!!」
キラ「かまわねえ!!」
キラの装備している意志を持つ鎧・ブラックシーザーもその牙を異魔神の腕に突き立てる。
キラ「俺たちができるのはここまでだ!悔いはねえ!!!」
 ポロン、一瞬涙ぐむが、すぐに迷いを振り払う。
ポロン(そうだよな…ここに来て何かを引きずってるわけはねェよな!!運がよけりゃあの世で会おうぜ!!)
ポロン「極大五芒星!!マダンテ!!!」
 暴走した魔力が異魔神とキラ、ヤオを包む。キラもヤオもその表情は満足げだった。そしてその魔力が強大な爆発となる。呆然とそれを見つめるアルス。
ポロン「や…やったぜ…じいちゃん!!」
 そしてポロンもまた力尽きる。爆発が収まった後には巨大なクレーターができる。
アルス「遅かったか!!」
 しかし、アルスの目に映ったのは、大ダメージを負いながらもまだ生きている異魔神の姿であった。
異魔神「くそ…なんて技だ……」
 傷の治癒が遅いことに気付く異魔神、ふと空を見る。4つあった幻の月は2つにまで減っていた。
異魔神「月が…後の二つはどうした!?」
タオ「ニフラーヤ!!」
 気付くとタオがニフラーヤで幻の月を消していた。
異魔神「あのおいぼれめ…どうりで回復が遅いと…」
 異魔神は衝撃波を放つ。
タオ「しまっ…」
 幻の月ごとタオを吹き飛ばす。
異魔神「月がひとつふたつ減ったようだが、もうそんなことは関係ない…余はもう充分に楽しんだ…そろそろこのくだらぬ戦いを終わらせる時が来たようだ」
異魔神(りゅうせい…)
 異魔神の高密度魔法言語により、流星雨が辺り一帯に降り注ごうとしていた。
 アルスは義勇軍の者達に向かい叫ぶ。
アルス「みんな、逃げろオオ!!」
 その時、流星雨が辺り一帯に降り注ぐ。その衝撃波にアルス・アラン・アステアも巻き込まれる。
 義勇兵達も一部は無事だったようだが…
義勇兵A「大丈夫か…みんな…」
義勇兵B「何人かは…無事です。それより…」
義勇兵A「! 勇者様…」
 異魔神もゆっくりと起き上がってくる。
異魔神「思い知ったか…」
 しかしその時、アルスが立ち上がる。傷を負いレプリカのロトの鎧も壊れたが、その瞳はまだ勇気を失っていない。
 これまで超然としていた異魔神の表情にはじめて驚きが見える。
義勇兵C「生きてるぞオォ!!」
義勇兵D「早く回復呪文を!!」
義勇兵E「呪文はずっと送り続けています!!」
 義勇兵達の回復呪文がアルスの傷を瞬く間に癒す。
アルス「形勢逆転だ…お前にはもう頼りの月がない」
異魔神「なるほど…だが…お前一人に何ができる…」
アルス「できるさ!まだ一つだけ残ってる…」
異魔神「何!?」
アルス「ミナデイン!!」
 そう言い、アルスは王者の剣を天に掲げる。
異魔神「何をするかと思いきや…ミナデインとはな…月がなくなったとはいえ、それだけの人数では余を倒す威力はあるまいに…」
 しかし、アルスの剣の上に高まっていく魔法力。
異魔神「な…なんだと…」
義勇兵F「違う…私たちだけの魔法力じゃない…」
義勇兵G「どんどん増えるぞ!!」
義勇兵H「誰だ!!」
??「アルス〜」
 アルスがふと振り向くと、そこにはアリアハン王、5代目ルイーダ、マムルとアスリーンの兄妹、2人の祖母のチノンばあさんがいた。
アルス「アリアハン王!!ルイーダに、マムルとアスリーン、チノンばあさん!!」
 その時、カーメンの元騎士団長・ボルゴイ(ルナフレアの父)も義勇兵達を率いて駆けつける。
ボルゴイ「アルス殿!!遅くなって申し訳ない。只今カーメン城より参上つかまつった!!」
アルス「その声は…ボルゴイさん!!」
ボルゴイ「さあ、者ども、勇者どのに魔法力を!!」
義勇兵I「はっ!!!」
 その声と共に世界中から集まった義勇兵達がいっせいにアルスと異魔神の戦いの場を囲み、アルスのミナデインに力を与える。
アルス「みんな…の思いを…すべての怒りを…この一撃に託す!!!」
 かつてアリアハンでの激戦の時、獣王グノンにとどめを刺したのもミナデインであったが、その時をはるかに凌ぐ魔法力が集結する。
 世界中の人々の心がひとつになった瞬間である。
 自分を取り囲む義勇兵達、そして自分を見据えるアルスの勇気を秘めた眼差しに、異魔神は恐怖を覚える。
異魔神(な…なんだ今のは…恐怖……恐怖心というものなのか!?あ…ありえん!!ありえんことだ!!)
アルス「これで終わりだ!!」
 アルスは剣にミナデインの魔法力をのせ、異魔神めがけて突進していく。
アルス「くらえええ!!!」
 異魔神もその気迫に恐怖を感じる。
異魔神「ウワアアァ」
アルス「ウオオオオ」
 アルスの叫びと共に、ミナデインの魔法力が異魔神に炸裂する。そして王者の剣は折れるが、異魔神の頭を真っ二つに叩き割る。
アルス(剣が…)
 異魔神の胸元から聖核(セイントコア)が出てくる。
異魔神「みごと…だ…勇者よ…」
 異魔神、その場にどう、と倒れる。聖核から異魔神の声が聞こえる。
異魔神(思えばこれが余の望みだったのかも知れぬ…余が本当に願ったのは自らの崩壊…そして…破滅…)
 アルスの心に、異魔神への怒りが湧き上がってくる。
アルス「ふ…ふざけるなァァ!!!!」
 アルスの拳が、異魔神の聖核を粉々に叩き砕く。
アルス「ふざけるな…」
 戦いで倒れた仲間たちのことを思い、膝をつくアルス。
 とその時、破れた錬金術師ムラクのお札から一つの種が出てくる。
 それは異魔神の聖核の破片にたどり着き、光を放つ。
アルス「!」
 その種からは芽が出て双葉になり、瞬く間に生長し始める。
アルス「わっ」
 生長は止まる事を知らず、瞬く間に巨木へと成長を遂げる。
 それは世界樹となった。かつて冥王ゴルゴナによって枯らされた世界樹の新しい樹に…
義勇軍A「世界樹が……」
義勇軍B「復活…した…」
 そして光と共に、世界樹に花が咲き始める。やがてその花びらは人々の元に降り注ぐ。義勇兵達もその光景を驚きの表情で見ていたが…
義勇兵C「花だ…」
義勇兵D「世界樹の花ビラだ!!!」
 世界樹の花びらはあたり一面に舞い、この戦いで死んだ者たちを復活させてゆく。
 コロポックル(ジパングの北、エッゾに住む精霊たち)やリルパ(リリパット。アランの母フレイアの世話をしていた)たち、心正しい魔物たちもその光景を見つめていた。
 キラたちの到着前に戦っていたジパングの女王イヨと、刀鍛治リハクの弟子イズナがまず生き返った。イヨに抱きつき喜ぶイズナ。
 そしてマダンテのエネルギーに巻き込まれた、キラとヤオも生き返った。

STAFF
 STUDIO2B MAMORU SUGIURA
 HITOSHI TOYAMA
 SEI ITOH
 
 一方海底では、本来の姿に戻り異魔神に猛攻を加えた海王2世・シーザリオンも生き返った。海の長老もそれに気付く。

 &
 KOUICHI KUBOTA
 SUSUMU ABE
 KATSUMI AIZAWA
 TAKAYUKI YAJIMA
 MASAMI SAITO
MONSTERS DESIGNER
 AKIRA TORIYAMA

 そして再び世界樹の森。マダンテを放ち倒れたポロンも、流星雨の衝撃波で倒れたアラン、アステアも生き返っていた。

EDITORIAL STAFF
 YOSHIHIRO HOSAKA
 YOICHI SHIN
 MITSUHIRO WATANABE
 ATSUSHI KITAMURA

 世界樹の花びらが舞うのを見つめている、ムラク、ギラン(キラの養父)、ファン(ヤオの祖父)。
 ボルゴイもかつて魔王軍との戦いで光を失った目が再び見えるようになったことに驚いている。
 アリアハン王、マムルとアスリーン、ルイーダ、チノンばあさんも世界樹の花びらが舞うのを見つめていた。

WRITTEN
 CHIAKI KAWAMATA
 JUNJI KOYANAGI

 気がつくとアルスは世界樹の根本にいた。アステアがアルスに抱きついてくる。それを見つめるアラン、そしてキラ・ヤオ・ポロン。

ART DIRECTER
 KAMUI FUJIWARA

 天上から光が差す。

SUPER VISOR
 YUJI HORII

 そこに浮かび上がったのは精霊ルビスの姿であった。ひょっとしたら今世界樹の花びらが舞い、異魔神との戦いで倒れた者たちが甦ったのも、精霊ルビスが与えた奇跡だったのかもしれない。
 タオの魂も1万2千年の時を経て天に帰ろうとしている。かつてムー帝国の太陽王として君臨していたが、弟ゴルゴナが異魔神を復活させて以来その贖罪のために長い時を生き、その罪がやっと許されるときが来たのだ…
 精霊ルビスの元に1人の妖精の姿が見える。それはアルスと共に旅を続けた妖精ティーエに似ていた。
 そして天を舞う不死鳥ラーミア。浮かび上がるロトの紋章のしるし。


ENIX

 最後は、光指す世界樹の近くにアルスの姿が浮かび上がる。

地上に、永遠の平安を

(ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章・完)

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