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ドラゴンクエスト〜プリンセスアリーナ
Level:30(最終回) 想いの果てに

(最終回に至るまでのあらすじ)
「ドラゴンクエスト4」の2章をベースにしたもう一つのアリーナ姫一行の物語。(大まかな物語の流れは同じなのでオリジナルの部分を中心に説明)
サントハイムの姫と偽っていた少女・メイを助ける際に、黄金の腕輪を人攫いに渡したアリーナだが、そこに一人の若者が現れ黄金の腕輪を奪い取る。
彼の名はアルマー。アリーナの従兄に当たるが、エルフの血を継いでいたため父の死後王位を継げずにサントハイムを出奔していたが、今はデスピサロの配下としてアリーナたちの前に立ちはだかっていたのだ。
また、魔族の女性・フェイミンもさえずりの塔以降、アリーナたちの前に立ちはだかってくるが、クリフトとの交流の中でその心に変化が生じ始めていたのだ。
サントハイム王の声を取り戻した後、旅の戦士・ライアンとの出会いもそこそこに、アリーナたちはエンドールへ向かおうとするが、その旅の最中でいくつか、黄金の腕輪の真の力を解放させる宝石を手に入れた。
そして、呪いの宿にてフェイミンが3度襲い掛かってくる。進化の秘法で強化されたフェイミンとの戦いと、その隙を突いて襲い掛かるさしものアリーナたちも全滅の危機に陥る。
魔族の新兵器「土偶門番大魔道砲」の照準が向けられようとする最中、心を取り戻したフェイミンが3人を庇い、また死に際にそれを呪文で暴走させ危機を救う。
フェイミンのことを想い、これ以上宝石の犠牲者を出さないことを誓う3人。
エンドールへ向かう最中、アリーナたちはエルフの里から逃げてきたハーフエルフの少女・ビビアンと出会う。自分を逃がしてくれた「お兄ちゃん」を助け出すため、強い人を探していたビビアンと共にエルフの里に向かうアリーナたち。
その頃、エルフの里にはエンドールの兵士が攻め込んでいた。その混乱の最中、エルフの里長の元にたどり着いたアリーナたちは、「お兄ちゃん」がアルマーであることに気付く。
アルマーは里長をそそのかし、里長はドラゴラムで竜に変化して襲い掛かってきた。

(本文)
 里長の館を破壊し、里長は竜に変化する。
クリフト「うわっ!」
ブライ「ド…ドラゴラムじゃ…!」
クリフト「アリーナ様…」
 アルマー、単身走り去ろうとする。ビビアンはそれに懸命に追いすがろうとする。
クリフト「アルマー……様!?」
アリーナ「待って、アルマー!」
 しかし、竜となった里長が行く手を阻む。
アリーナ「うっ!?」
 里長が吐いた炎で、周りは炎に包まれる。それでも懸命にアルマーを追うビビアン。
ビビアン「待ってお兄ちゃん、あたい助けに来たのに…どうして!?」
アルマー「よけいなことを…!ここにはお前の居場所はないのだ!!だから逃がしてやったものを…ついてくるな!!」
ビビアン「きゃ!」
 アルマー、追いすがるビビアンを突き放す。しかしクリフト、アルマーに追いつく。
アルマー「ちっ…クリフトォ!」
クリフト「正体を現せ…アルマー!!」
 クリフトが振るう剣を杖で受け止めるアルマー。
アルマー「フ…いい瞳だ…やっと俺を敵に思うようになったか…」
クリフト「アリーナ様はまだあなたのことを信じています…きっと…帰ってくると…心の底で…だけど私はあなたを許さない!!」
 クリフト、決意を込めた瞳でアルマーを見定める。
クリフト「…許せない……!うおおお!!」
 クリフト、剣を振るうも、アルマーの杖の前に受け止められる。
アルマー「ちい!」
 クリフトとアルマーのつばぜり合いが始まる。
 一方、里長と対峙するアリーナ。
里長「死ねェ、人間め!!」
 里長の吐く炎をかわすアリーナ。
アリーナ「どうして!?」
 里長の身体に拳を叩き込む。
里長「グオ!!」
アリーナ「どうしてエンドールと戦うの!?」
里長「やつらめ、エルフの魔力と武器を、対魔族との戦争に使いたいなどとぬかしよった。要求を飲まねば、攻め落とすと!」
アリーナ「…そういうこと、もう!どうしてエルフも人間も、共存しようとしないのよ!」
里長「共存だと!?汚らわしい!きさまらのような下等動物と、共存など不可能!」
 再びクリフトとアルマーに視点は移る。
クリフト「…あなたも…そう言われて、サントハイムから追い出されたはず。…なぜ」
アルマー「なぜ同じあやまちを繰り返すか知りたいか?クリフトよ、お前にわかるのか?常に何かに支えられ…主君に使えることのみを生きがいとし…己の考えまでも神の言いなりになってきたお前に…孤独に生きることの意味が…理解できるのか…?わかるまい!」
 アルマーが唱えた呪文で、クリフトは吹き飛ばされる。
クリフト「だけど…!」
里長「フン!共存…か。昔…人間の国へ落ちていった我が娘も、そのようなことを言っていたわ。そう、たしか…その国の名は…サントハイム」
 里長の嘲笑するような声に、全員の動きが凍りついたように止まる。
アリーナ「そんな…」
クリフト(サントハイムに来たエルフ……まさか…)
アリーナ(まさか…アルマーの…)
アルマー「…お前の娘…だったのか…フン……なるほど…な」
 アルマー、魔族としての姿に変わり、剣を抜き放つや否や、里長の首を切り落とす。
里長「ぐっ!?ぐわあああ!?裏切った…ナァ、きさまァ…!」
アルマー「お前の娘…今どこにいる…?」
里長「しっしし…死んだ!死んだァ!」
アルマー「いや…生きている。お前の娘は故郷へ帰ったはずだ。この…エルフの里へな!」
里長「どっ…どうするつもりだ…!?」
アルマー「…殺す…!」
里長「え!?」
アルマー「この手で…殺す…!」
 アルマーの目は、憎しみの炎を宿していた。
里長「そ…そうか…残念じゃったのう。あ…あのバカな娘は、ワシが成敗してくれたわ!やつめ…サントハイムの妃などになりよって、人間と共存しろとぬかしたわ。汚らわしい!あやつはエルフ族の恥じゃ…野蛮…」
 里長が最後まで言い終わることなく、アルマーの剣は里長に止めを刺していた。

 アルマーの回想。病床のアルマーの父と、彼に話しかける幼い日のアルマー。
アルマー「父上…父上、しっかり…!」
アルマーの父「アルマー……お前の母上は生きている…ワシらをおいて…故郷へ…帰ってしまった…じゃ…よ…」
 アルマーの父の目に、涙が浮かぶ。

 再びアルマーの回想。両親の墓前に佇むアルマー。
アルマー「母上…なぜ僕を捨てたの…?父上は…僕をおいていってしまったのに…みんなは…みんなは僕を王と認めてくれないんだ…僕は…僕はこんなにみんなのことを…愛して…」
 アルマーの目から涙がこぼれる。

 ふと気が付くと、先ほどエルフに撃退されたエンドールの兵士たちが再び攻めかかって来ていた。
エンドール兵A「死ねェ、エルフどもォ」
エルフA「な…なんだ…」
エルフB「エンドールだ、エンドールが攻めてきたぞ!」
アリーナ「このままじゃ…エルフが滅ぼされちゃうわ!」
ブライ「姫様!」
アリーナ「やめ…」
アルマー「バギクロス」
 バギクロスによって巻き起こされた風がアリーナの行く手を阻む。
アリーナ「きゃっ…」
 アルマー、憎悪に満ちた目で人間・エルフたちを見ている。
アルマー「虫ケラどもめ…消えてしまえ!」
 そういうや否や、アルマーが進化の秘法の力で怪物の姿へと変わっていく。
アリーナ「アルマー!!」
 怪物と化したアルマー、人間・エルフの区別なく襲い掛かり、次々と彼らを血祭りにあげていく。
エンドール兵B「うわああ!魔物だあ」
エンドール兵C「ぎゃああ」
 人間・エルフ共にアルマーの殺戮に恐怖を覚え、混乱に陥っている。
エルフC「里長が殺されたあ、どうしたらいいんだ…」
商人「こ…殺さないでくれぇ!!」
 次々と人間・エルフを殺していくアルマー。
クリフト「ビビアン、ここは危ない、逃げるんだ!」
ビビアン「う…ううん…逃げない。あたい…もう、逃げたく…ない…」
 涙ぐみながらも決意するビビアン。
 一方アリーナは、アルマーの前に立ちはだかる。
アリーナ「やあっ!」
 しかしアルマーの魔力により、アリーナは火傷を負う。
アリーナ「うっ…」
クリフト「なっ…!?なんて強い魔力なんだ…アリーナ様、腕輪に触れてはなりません!!」
アルマー「はああっ」
 アルマーが振るう剣が、アリーナのわき腹を斬りつける。
アリーナ「あうっ!」
クリフト「アリーナ様!ベホマ!」
 たちまちのうちにアリーナの傷が全快する。
 そして、アリーナの拳がアルマーをしたたかに撃つ。
アルマー「ぐおっ!」
アリーナ「やああ、はあ!!」
 アリーナの膝蹴りがアルマーに痛撃を与える。しかしアルマーも剣を振り上げ、
アルマー「アリーナァ!!」
 しかし、剣が振られようとする刹那、その剣は地に落ちる。
アルマー「うっ…ぐわあああ!」
 アルマーの右腕に付けられた「黄金の腕輪」からの魔力により、アルマーの腕も溶け始めていた。
アリーナ「アルマー!?腕輪をはずして!」
クリフト「いけませんアリーナ様!あの腕輪にはすでにいくつかの宝石が埋め込まれています…魔力のケタが違うのです!触れたらアリーナ様まで」
アリーナ「だけどこのままじゃ…」
クリフト「だめです!」
 アルマー、姿が変容しながらも不敵に笑う。
アルマー「クッ…クククク…強く…なったな、アリーナ…だがどんな力をもってしてももう俺は止められん…」
アリーナ「黄金の腕輪で進化して…そんなになってまで…何をしようっていうの!?」
アルマー「フッ…進化…?そんなことはどうでもいい。魔族の野望もエルフのたわ言も、最初からどうでもよかった」

国を捨てた時から…俺は…世界にただ独りになったのだと気付いた…
いや最初から…独りだったのだと…

 アルマーの姿がまたも変容し、水状の姿になっていく。
アルマー「グアアア」
アリーナ「アルマー!」
アルマー「覚えておけ…!独りで生きていくことが、この世のさだめ…独りで生きられぬ者などに…生きる価値はない!」
 アルマーの姿が水と化し、生き残っていた人間・エルフたちを飲み込んでいく。
エルフA「ぎゃあああ」
 あっという間に飲まれ、跡形をも失くす人間・エルフたち。
クリフト「アリーナ様!?」
 アリーナ、臆する事もなくアルマーの元へと駆け寄っていく。
アリーナ「うっ…」
 そして魔力の暴走を食い止められず沈みかけるアルマーを引きずり出す。
アルマー「アリー……ナ…!?」
アリーナ「あたし…一人ぼっちになっても、自力で立ち上がってみせる!だって…」
 アリーナ、アルマーの腕から黄金の腕輪を外す。
 それとともにアルマーの姿も掻き消えるように消えていく。
 その時のアルマーの眼は、どこか悲しく、優しげな視線をみせていた。
アリーナ「みんなが、いるから…」
 その言葉と共に黄金の腕輪が地面に落ち、付けられていた宝石のいくつかも外れる。
アリーナ「ずっとアルマーの近くに…いたんだよあたし…」
 ブライもクリフトも、神妙な気持ちでその言葉を聞いていた。
 ビビアン、アルマーの遺した杖を手に取り、
ビビアン「きっと…お兄ちゃんも、そう思ってたと思う…だからあたいに人間の国に行けって…アリーナのお姉ちゃんの所に行けって…言いたかったんじゃないかな。ね……お兄ちゃん」
アリーナ「ビビアン…一緒に来る…?」
ビビアン「あたい…必ず、一人で生きていけるようになりたい…お姉ちゃんたちと…一緒に!」
 アリーナ、ビビアンの手をとる。
 気付くと森は夕暮れに包まれ始めていた。
アリーナ「さあ!エンドールへ出発よォ!」

(fin)

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