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ドラえもんの最終回(1972年版) 「ドラえもんがいなくなっちゃう!?」


1972年に雑誌『小学四年生』に掲載された作品です。てんとう虫コミックス6巻収録『さようならドラえもん』や、そのアニメ化作品『帰ってきたドラえもん』とは別物です。


のび太が家へ帰ってくる。

のび太「ドラえもん! また こまったことになったんだ。いつものように なんか出して ちょちょっとたすけてよ」

部屋の中から、声が聞こえる。

「どうしても?」
「どうしてもだ!」
「でも あとが心配で……」
「それがいけないんだよ」

のび太「お客さん?」

のび太が部屋に入ると、ドラえもんとセワシがいる。

のび太「セワシくん!! めずらしいな」
セワシ「やあ、おじいちゃん」
のび太「おじいちゃんとよぶの やめろってば」
セワシ「だって ぼくはきみのまごのまごだもん。じつはね、そろそろドラえもんを……」
ドラえもん「まった! ぼくから あとでいう」
セワシ「きっとだぜ」
ドラえもん「わかってる」

セワシが、机の引き出しの中へと帰る。

ドラえもん「……」
のび太「なにをいうの? どうしたんだい。ばかにしょんぼりとしちゃって」
ドラえもん「の、のび太くん!! じ、じつは……」
のび太「まって、ぼくの話をきいてよ。友だちと あしたサイクリングに行くことになったんだ」
ドラえもん「行けばいいじゃない」
のび太「じつは ぼく自転車に乗れないの。自転車はもってるけどさ。ころぶといたいから 物おきにしまいっぱなし。まさか、みんなにそんなこといえないからさ。よし行こうと やくそくしたんだ。なんとかしてよ」
ドラえもん「どうにもならないね! 自転車に乗れる機械なんて あるものか!!」
のび太「そ、そんな つめたいこというなよ」
ドラえもん「どうして そう人にばかりたよるんだっ! ぐずぐずいってるひまに、練習したらどうだっ!!
のび太「? ?」

わけもわからず、のび太が部屋を飛び出す。

のび太「へんなの。ばかにきげんが悪いや。だいじょうぶ。いざとなれば きっとなんとかしてくれるさ。いつもそうなんだ。練習なんかして けがでもしたらそんだよ」

ドラえもん「しようがないなあ…… まるっきり ぼくにたよってる。やっぱり これじゃだめだ。よし!! 心をおににして いおう!!

ドラえもんが部屋を飛び出し、のび太を追う。

ドラえもん「の、の、の、のび太くん!!
のび太「ドラえもん。ほら、おやつ」

のび太がドラ焼きを差し出す。

ドラえもん「どらやき!!」
のび太「きみ、すきだろ、ぼくのぶんも食べていいよ」
ドラえもん「わるいなあ」
のび太「いやいや、ふだんおせわになっているから、おやつぐらい。きみにはいつも たすけられてばかりいるからなあ。もし、この世にきみがいなかったらと思うと ぞっとするよ。とてもぼくなんか 生きていけないな。どうか これからもよろしく…… あれっ、いないや」

いつの間にか、ドラえもんはのび太の部屋に戻っている。

ドラえもん「と、とてもいえない、みらいの世界へ帰るなんて……」

そこへ再び、セワシが現れる。

セワシ「こまるなあ。じゃ、こうしよう……」


ウオ〜 ウオオ〜オ

のび太「なんだ なんだ」

のび太が部屋に駆け込むと、ドラえもんが大声を張り上げて暴れ回っている。

のび太「ドラえもん
ドラえもん「くるしい 死にそうだあ!!
のび太「どうしたんだ しっかりしろ
ドラえもん「ガオ〜 オ〜
セワシ「ああっ、まずい!! 機械にさびがでてる。空気が悪いせいだな、スモッグやら はい気ガスやら…… こわれかけてるよ」
のび太「エーッ! ドラえもん こわれちゃいやだ みらいへつれてって、なんとかなおしてやって」
セワシ「よし そうしよう」
ドラえもん「だけど ぼくがいっちゃったら こまるんじゃない?」
のび太「こまるにきまってらい。でもきみが元気になるためなら、どんながまんでもするよ」

大泣きするドラえもん。

ドラえもん「ウワーオ なんというやさしい そのことば。こわれそうというのは うそだ」
のび太「なに!? ひどいや みらいへ帰っちゃうなんて!! しかも うそまでついて」
ドラえもん「きみのためなんだ」
セワシ「わかってくれよ、おじいちゃん」
ドラえもん「のび太くんは ぼくにたよるくせがついちゃったろ」
セワシ「このままじゃ、ひとりではなんにもできない だめな人間になりそうで心配なんだ。自分の力でなんでもできる強い人になってほしいんだよ」

のび太「わかった。ほんとにそのとおりだと思う。やってみるよ。ぼくひとりで、自信はないけどがんばるよ」

大泣きのドラえもんとセワシが、机の引き出しの中へ帰って行き、のび太が涙を流しつつ見送る。

のび太「きみのこと わすれないよ
ドラえもん「ぼくだって…… ククク
セワシ「さようならあ


あくる日。

ああ、あぶない あぶない

自転車を練習しているのび太が、派手に転ぶ。

ママ「むりしないで やめたら?」
のび太「だ、だいじょうぶ…… イテテテ。ドラえもんと やくそくしたんだ」


未来の世界。
必死に練習しているのび太の様子を、ドラえもんとセワシがタイムテレビで見ている。

ドラえもん「がんばれ、がんばれ!
セワシ「『タイムテレビ』でおうえんしてるぞ!!


(終)
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