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電子戦隊デンジマンの最終回
 

ベーダー城。

ベーダー一族を乗っ取ったバンリキ魔王が、城内の玉座で横柄に振舞っている。

ヘドリアン女王の部下のミラーに酒を注がせ、同じくケラーに団扇で扇がせ、女王は隅で小さくなっている。

傍らで、バンリキモンスが退屈そうに寝そべり、女王をからかっている。

モンス「はァ〜なんかやれや」

女王「……」

魔王「おいケラー、踊りでも踊れや。……そうだ、ヘドリアンのおばさん」

女王「おばさん!? まッ……」

魔王「お前が踊れや」

ケラー「無礼者! 女王様に向かって何たる言い草!」

魔王目掛けてケラーがナイフを投げるが、モンスがたやすく尻尾で受け止める。

モンス「やれやれ」

魔王「ワハハハハ! このベーダー城はワシのもんじゃ。お前らは家来として置いてやってるんだぞ?」

女王「アハハハハ……」

魔王「何がおかしい?」

女王「帝王として振舞いたくば、電子戦隊を片付けてからにしてはどうじゃ?」

魔王「……そう言われて見ればその通りだ。さぁ、ベーダー城を動かせぇ!」

ベーダー城がビル街に出現する。

ベーダー城の迎撃のため、デンジマンを乗せたデンジタイガーが出動する。
 
ひびけ!
希望の鐘よ
 
レッド「ミサイル発射!」

デンジタイガーのミサイルがベーダー城に命中。

女王「デンジタイガーじゃ! デンジタイガーじゃ!」

魔王「オタオタしなさんな。おいモンス、行くぞ」

モンス「はい」

デンジタイガーとベーダー戦闘機の空中戦が続く。

その最中、魔王とモンスが地上に降り立つ。

魔王「モンス、ビッグになれ」

モンス「ビ──ッグ!」

モンスが巨大化する。

イエロー「見ろ、念力怪物だ!」

グリーン「気をつけろ、また念力で封じ込められるぞ」

レッド「そうはさせん。デンジファイター発進!」

デンジファイターが発進。ダイデンジンに変形し、地上に降り立つ。

モンス「来たな」

ブルー「デンジ剣で叩き斬ってやるぜ。ギタギタにな」

魔王「まぁ見てろ……」

レッド「デンジボール!」

ダイデンジンがデンジボールを放つ。

しかしデンジボールはモンスに命中することなく、ダイデンジンに跳ね返されてしまう。

ブルー「レッド、デンジ剣だ!」

レッド「よし、デンジ剣!」

ダイデンジンがデンジ剣を構える。

魔王「モンス、やれ!」

モンス「金縛り〜!」

モンスの放つ念力により、ダイデンジンは金縛りに遭い、剣を振るうことすらできない。

レッド「デンジ剣が効かないぞ!」

魔王「よし、念力コマ回し!」

モンスの念力により、ダイデンジンがコマのように回転し始める。

デンジマンたちはなす術もなく翻弄され続ける。

その様子を、ベーダー城でヘドリアン女王たちも見ている。

女王「頑張れ……頑張れ、ダイデンジン!」

その言葉に驚くミラー、ケラー。

女王「バンリキ魔王が憎い……ヘドラー将軍を死に追いやったのは魔王じゃ! 魔王とモンスじゃぁ!」

ダイデンジンのコクピット、計器類が狂い始める。

そしてダイデンジンのボディ各部が次々に爆発。

イエロー「大変だ、武器回路が焼き切れた!」

グリーン「第2回路に異常!」

ピンク「酸素ポンプ異常!」

ブルー「このままじゃ、バラバラにされちまうぞ!」

レッド「……仕方がない、引き返そう」

念力を振り切り、ダイデンジンが飛び去る。

モンス「ざっと、こんなもんさぁ!」

魔王「よし。モンス、戻れ!」

モンスが巨大化を解き、等身大の大きさに戻る。

魔王「モンス、よくやった。フフフフ……次は第2次作戦だ!」

ベーダー城に引き上げた魔王とモンス。

魔王「酒だ、酒だ、酒だ!」

ミラーが酒を注ぐ。

魔王「ダイデンジンは当分使いもんにはなんねぇよ。メカがメタメタのはずじゃ」

女王「デンジマンはまだ生きておるわ……」

魔王「そう慌てなさんな。これからモンスがゆっくりと料理するからよぉ。ハハハ……」

デンジランド。

青梅「何とかならないのか、アイシー!」

黄山「どうしたってんだよ、アイシー、おい!」

アイシー「回路がすべてやられている。回路の使用は全く不能だ」

赤城「どれぐらいかかる? 治るまでに」

青梅「アイシー、何とか修理してくれないか。あの念力怪物をなんとかやっつけなくちゃ」

アイシー「指令回路のスペアはない」

赤城「何だって!?」

アイシー「スペアはないのだ」

黄山「じゃあ、ダイデンジンはもう二度とダメなのか!?」

赤城「アイシー、修理方法はないのか!? どうなんだ!」

青梅「おい!?」

婦警の松尾千恵子、中井友子がパトカーで巡回している。

前方に、蛇行運転を繰り返す車。

友子「見て!」

千恵子「飲酒運転だわ」

パトカーが赤色灯を点し、追跡を始める。

千恵子「その前の車、止まりなさい! 停止しなさい! 停止しなさい、危険です! 止まりなさい、危険です!」

友子「あ!? ハンドルが、ハンドルが利かないわ!」

千恵子「え!?」

千恵子のパトカーがコントロールを失い、蛇行運転し始める。

その挙句、前の車にに激突してしまう。

事故現場へやってきた緑川。

緑川「そんなこと言ってぇ……居眠り運転かなんかしてたんだろう」

友子「ひどいわ!」

千恵子「信じてちょうだいよ! 本当にハンドルがひとりでに……」

緑川「ハンドルがひとりでに……!?」

千恵子「えぇ! 本当よ! ……あ? あれは何!」

空中にバンリキモンスが浮かんでいる。

緑川 (念力怪物だ……すると、この自動車事故も……)

デンジランドに緑川の通信が届く。

赤城「何? 念力怪物が!?」

緑川「あぁ、呑気に遊んでるぜ。そう見える」

赤城「よし、これから出動する」

緑川「了解!」

青梅「今度こそ叩きのめしてやる」

赤城「さぁ、行こう!」

4人が出動しようとすると……。

アイシー「やめろ!」

赤城「やめろ!?」

アイシー「そうだ」

赤城「出動するなということか?」

黄山「じゃ、このままじっとしてろって言うのか!」

アイシー「待つことも戦略だ」

赤城「行こう!」

アイシー「ダメだ!」

アイシーの目が輝き、出入口にバリヤーが張られる。

赤城「アイシー……!」

アイシー「チャンスを待つのだ」

街のあちこちでバンリキモンスが念力を振るう。

建築物が爆発し、車が炎上し、人々が逃げ惑う。

ナレーション「バンリキモンスは社会を混乱に陥れて、デンジマンたちを無理やりに出動させるつもりなのだ」

デンジランドで手をこまねいている赤城たち。

緑川が戻ってくる。

緑川「おい、どうして出動しないんだ!? 滅茶苦茶だぞ、街は! おいレッド、どうしたんだ!……おい、青梅!」

青梅「アイシーに聞けよ……」

緑川「アイシー!?」

ベーダー城。

魔王「デンジマンの奴ら、怖気づいているんだ! モンス、やれ。構わねぇからそのまま続けろ!」

女王がミラーとケラーに目配せで合図する。

ミラーが酒瓶を魔王へ運ぶ。

魔王「デンジマンが出てくるまで続けろ! 続けるんだ!」

ミラー「魔王様、お酌致しましょう」

魔王「おぉ、よし。可愛い奴じゃ」

ミラーの酌に魔王が気を取られた隙に、女王が剣を抜く。

女王「ヘドラーの仇──っ!」

しかし、すんでのところで魔王は剣をかわす。

魔王「へドリアンめ……」

魔王が剣を投げる。

咄嗟にケラーが盾に変身し、女王をかばう。

剣が次々に盾に突き刺さる。

ケラー「ああぁぁ──っ!!」

ケラーが元の姿に戻り、息絶える。

女王「あぁ……ケラー…… ミラー! ケラーに続けて戦うのじゃ!」

ミラー「……」

女王「どうした、ミラー?」

ミラー「私は強いお方が好きでございます」

魔王に寄り添うミラー。

魔王「おぅ、ワハハハハ!」

女王「裏切りおったな、ミラー!」

突然、女王の足元の床が開き、女王が底へと落ちてゆく。

女王「わぁぁ──っ!」

魔王「ワハハハハハ!」

デンジランド。

バンリキ魔王からの通信が届く。

魔王「早く出て来い、腰抜けども!」

黄山「バンリキ魔王だ……!」

魔王「お前らが出て来ないから、見ろ。世の中はメチャメチャじゃ。ワシはな、お前らを早くやっつけて、のんびりしたいんじゃ」

赤城「アイシー……行かせてくれ、頼む!」

アイシー「ダメだ」

青梅「畜生……」

業を煮やした青梅が出入口に走るが、再びアイシーによりバリヤーが張られる。

青梅「アイシー!」

赤城「アイシー!」

ナレーション「被害はエスカレートするばかりであった」

赤城「デンジスパーク!!」

業を煮やした赤城がデンジレッドに変身。腰のデンジステッキを引き抜く。

レッド「アイシー、俺たちは行く。ドアを破壊させてもらう」

アイシー「どうしても行くのか、諸君」

レッド「よし、行くぞ!」

青梅「デンジスパーク!」

黄山「デンジスパーク!」

緑川「デンジスパーク!」

あきら「デンジスパーク!」

他の4人もデンジマンに変身する。

レッド「行くぞ!」

4人「おぅ!」

デンジマシーンとデンジバギーでデンジマンたちが出動する。

ナレーション「デンジ犬アイシーの制止を振り切って、電子戦隊は出動した。一体アイシーは何を考えているのであろうか」

ベーダー城。

バンリキ魔王の腕の剣から、バンリキモンスの尻尾へとエネルギーが充填される。

その様子を、物陰からミラーが見ている。

魔王「今度こそとどめを刺すんだ。いいな!」

ミラー「モンスの尻尾に念力発信器が……?」

ベーダー一族が暴れ回っている現場にデンジマンが到着する。

モンス「来たな。行くぞ!」

レッド「デンジレッド!」

ブルー「デンジブルー!」

イエロー「デンジイエロー!」

グリーン「デンジグリーン!」

ピンク「デンジピンク!」

レッド「見よ、電磁戦隊」

5人「デンジマン!!」

デンジマン最後の戦いが始まった。戦闘員ダストラーたちを、デンジマンがデンジパンチで一掃する。
 
これまで厳しい戦いを潜り抜けた5人にダストラーなど敵ではなかった。

モンス「念力痺れ固め!」

モンスの振るう念力により、デンジマンたちの動きが封じられてしまう。

モンス「逆コマ返し!」「小枝飛ばし!」

念力攻撃の前に、デンジマンはモンスに触れることすらできず翻弄され続ける。

ベーダー城。

牢獄のヘドリアン女王が囚われの身となっている。

そこへミラーが現れる。

ミラー「女王様、女王様」

女王「おぉ、ミラー」

ミラー「探り出しました」

女王「弱点を探ったと申すか?」

ミラー「はい、モンスの弱点は尻尾です。尻尾が生命です」

女王「尻尾か……よし。水晶玉になれ」

ミラー「はっ!」

ミラーが水晶玉に変身。女王が念を込める。

女王「バンリキモンスの弱点は〜尻尾〜」

デンジランドに、女王の言葉が届く。

女王「弱点は尻尾〜」

アイシー「弱点は尻尾?」

デンジランドからデンジタイガーが出撃する。

アイシーの目が光り、コックピット内が反応する。

デンジタイガーがモンスに攻撃する。

ブルー「おぉ、デンジタイガーだ!」

ピンク「きっと修理したのよ、アイシーが」

レッド「あいつの動きを封じておいてくれ」

ブルーたち「よし!」

レッドが単身、デンジタイガーに乗り込む。

レッド「デンジファイター発進!」

デンジタイガーからデンジファイターが出動。

ダイデンジンに変形し、地上に降り立つ。

ブルー「搭乗せよ!」

3人「おぅ!」

モンス「ビ──ッグ!」

バンリキモンスが巨大化。

デンジマンたちもダイデンジンに乗り込む。

レッド「配置につけ」

ブルー「OK!!」

イエロー「すべて正常だ」

ブルー「よし! アイシーの奴、いいとこあるぜ」

レッド「あぁ」

モンスの念力攻撃。ダイデンジンの動きが再び封じられる。

イエロー「念力縛りだ! 早く脱出しなくては」

モンスの攻撃にダイデンジンが苦戦する。

レッド「操縦不能だ……どうすればいいんだ!」

そのとき、どこからともなくアイシーの言葉が響く。

「尻尾だ! 尻尾を狙え!」

レッド「アイシー!? 尻尾だな!」

ダイデンジンがデンジ剣を大地に突き立てる。

大地を伝ってエネルギーが迸り、モンスの尻尾に命中。

モンスが苦しみ出し、念力攻撃が解ける。

ブルー「今だ!」

レッド「よし! 電子満月斬り!!」

エネルギーを込めたデンジ剣が一閃。

モンスが真っ二つになり、大爆発してしまった。

ピンク「やったわ!」

グリーン「やった!」

イエロー「ついに倒したぞ!」

ベーダー城。

魔王「おぉっ、モンスが!? 一体誰が……むぅっ、さては!?」

牢屋。

女王「バンリキモンスが倒れた。痛快じゃぁ〜アハハハ!」

牢屋の壁をぶち破り、魔王が現れる。

魔王「お前だな、モンスの弱点を教えたのはぁ! うわああ――っ!!」

女王「アハハハ! 思い知ったか、バンリキ魔王!」

魔王が女王目掛けて槍を振るう。

応戦する女王だが、怒り心頭の魔王に圧倒される。

そのとき、ミラーの化けた水晶玉から稲妻のような閃光が轟く。

魔王「あぁ〜っ、目が、目が見えぬぅ〜っ!」

閃光で目を潰された魔王、出鱈目に槍を振り回す。

その槍が水晶玉に当たる。

ミラー「きゃぁ─っ!」

女王「ミ、ミラ〜っ!!」

ミラーが元の姿に戻り、倒れる。

魔王「目が、目が見えぬ〜目が〜」

女王「ミラー、しっかりするのじゃ、ミラー! ミラ〜……」

目が見えなくなった魔王、錯乱して地上に迷い出る。

そこへデンジマンたちが現れる。

魔王「目が〜っ、うぉ〜目が〜っ!」

レッド「デンジブーメランだ!」

4人「おぅ!」

デンジマン5人のデンジステッキが合体してデンジブーメランとなる。

5人「デンジブーメラン!」

デンジブーメランが火を吹きつつ、魔王目掛けて飛来。

5人「シュパァッ!」

魔王にブーメランが炸裂。

バンキリ魔王が大爆発してしまった。

5人「やったぁ!」

レッド「残るはヘドリアン女王ただ1人!」

ベーダー城にデンジマンが乗り込んでくる。

臆することなく玉座に就いている女王の姿。

レッド「ヘドリアン女王!」

すると、その姿が消える。

レッド「幻だ!?」

再び女王が現れる。

女王「ヘドラー将軍が死に……ミラー、ケラーも死に……私は1人ぼっち……だが、勝ったと思うなよデンジマン……私には暫くの休息が必要なだけじゃ……また会おう、さらばじゃ……」

再び女王が消え、城が崩壊し始める。

ブルー「脱出だ!」

脱出するデンジマンたち。

ベーダー城が大爆発してしまった。

ベーダー一族が最期を遂げた。

ナレーション「ベーダー一族が滅び、街に平和が戻った。デンジマンたちがデンジランドに帰還する」

デンジマンがデンジランドに帰ってくる。

レッド「勝ったぞ、アイシー!」

グリーン「やったぞ、アイシー!」

イエロー「アイシー!」

ピンク「アイシー!」

ブルー「ごめんよアイシー、さんざん悪口言っちゃってよ。アイシー!」

グリーン「あれ? アイシーの奴、どこ行っちまったんだ?」

レッド「……もしかしてアイシーは……イエロー、メカをチェックしてくれ」

イエロー「OK!」

デンジイエローがスクリーンを操作。

ダイデンジンの内部回路が映し出される。

そして、その回路の中にアイシーの姿が……。

レッド「アイシー……」

ブルー「アイシー……」

ナレーション「デンジ犬アイシーは、破壊されたダイデンジンロボの電子頭脳の代わりに、自分がメカの一部となったのである」

レッド「アイシー!!」

サッカー場。

看板に「アイシー賞記念サッカー」の字が描かれている。

ナレーション「ベーダー一族との長い、厳しい戦いが終わり、デンジマンたちに安息のときが訪れた。デンジマンたちは、デンジ犬アイシーの名を長く称えるために、アイシー杯争奪戦を開いたのである」

赤城のシュートがゴールに命中。

歓声を飛ばす応援席。

その中央、優勝トロフィーにアイシーの顔が刻まれている。

ナレーション「赤城一平、青梅大五郎、黄山 順、緑川達也、桃井あきら。この5人の若者の胸の中に今、希望の鐘が高らかに鳴り響く。さようなら、デンジマン。さようなら、ダイデンジン。さようなら、デンジ犬アイシー。彼らの後を継いで、美しい地球を守るのは……そう、君たちだ!!」
 
おわり
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