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闘将ダイモスの最終回


難攻不落を誇った小バームへ
ダイモスは遂に 攻め入ることに成功した
深手を負ったマルガレーテから 初めて
エリカの本心を聞かされた一矢は
エリカを助けようとしたが 時既に遅く
エリカはリヒテルと共に 崩れゆく神殿に飲まれ
ダイモスの前には 敵の最後のメカ戦士
コブラ獣が姿を現し 攻撃を開始したのであった



明日への驀進



小バームの地下の一室。
リヒテルが大僧正ヤホバと共に、気を失っている妹エリカに寄り添う。

エリカ「う……うぅ……」
ヤホバ「お気がつかれましたか、エリカ様」
エリカ「ここは……? ここはどこです? ……兄上!」
リヒテル「神殿の地下だ。余とお前はこの方の手引きによって、難を逃れたのだ」
ヤホバ「ヤホバと申します」
リヒテル「この方こそ、本当の大僧正であらせられる。また、余を地下牢から救ってくれ、オルバンを倒さんとする願いを聞き届けてくれたお方でもある」
ヤホバ「ご兄妹のお父上、亡きリオン大元帥には一方ならぬお世話に預かった身、今度はご恩返しでございます」
エリカ「……ダイモスは? ダイモスはどうなりました?」
リヒテル「……」

リヒテルは無言で、壁面のスクリーンにダイモスの戦いの模様を映し出す。
自分より遥かに上回る体躯のメカ戦士に、ダイモスが苦戦を強いられている。

エリカ「あぁっ……!?」
一矢「うぅっ……ぐわぁ……」
エリカ「兄上、お願い! 一矢を、一矢を助けてあげて!」
リヒテル「エリカ、まだわからぬのか!? 奴らは我らの味方ではない! 何千万人の地球人を殺した我々バーム星人を滅ぼすために来ているのだ! 奴らの敵はオルバンだけではない。バーム星人全体なのだ!」
エリカ「違います、兄上! 地球の人たちは私たちを救うために、そのためにここまで来て戦っているのです!」
リヒテル「くっ……くどい!」

リヒテルが壁面の装置を操作すると、通路への入口が現れる。

リヒテル「大僧正、これが作戦室への秘密の通路ですね?」
ヤホバ「はい」
リヒテル「オルバンめ……今度こそ逃しはせん!」


作戦室。大元帥オルバンの背後で物音がする。

オルバン「何事じゃ? この大事なときに」

衛兵を斬り倒し、リヒテルが現れる。

オルバン「リ、リヒテル!? 塔の下敷きとなったのではなかったのかぁ!?」
リヒテル「フフ……ダイモスが滅びた後はオルバン、次はお前だ!」


地表での戦い、ダイモスがメカ戦士の猛攻をはねのけ、反撃に転じる。

一矢「ダイモシャフト! とぅっ!」


オルバンがリヒテルのもとから逃げ惑う。リヒテルは衛兵たちを斬り倒しつつ、それを追う。

リヒテル「待てぃ!」


地表での戦い。

一矢「ファイヤーブリザ──ド!」「必殺・烈風正拳突きぃっ!!」

メカ戦士がダイモスの火炎竜巻に巻き上げられ、鉄拳で貫かれて大爆発。

一矢「博士、やりました!」
和泉「そうか! 我々も今、応急修理を終え、小バームへ接近中だ。強行着陸する! 一矢はオルバンを追え!」
一矢「了解!」


スペースダイモビックが小バームに接近。外装をぶち破る。
夕月京四郎、和泉ナナ、乗組員たち、協力者のバーム星人たちが上陸する。

京四郎「いいか、ぬかるな! 俺たちの目的は機械人間工場の破壊だ!」
一同「おぅ!」


依然、リヒテルは衛兵たちを切り倒しつつ、オルバンを追い詰める。

リヒテル「オルバン、逃れようとしてもそうはいかぬ! 覚悟っ!」「逃しはせぬぞ、オルバン!」

尚も逃げようとするオルバンの前に、竜崎一矢が立ち塞がる。

一矢「遂に巡り会えたな、オルバン! この時を待っていたぞ!」
オルバン「むぅっ……竜崎一矢!」
リヒテル「……!?」
一矢「お前のためにどれほど多くの地球人が、そしてバーム星人が殺されたか……俺がその怒りと悲しみを、お前にもたっぷりと味合わせてやる!」
リヒテル「竜崎一矢、オルバン諸共地獄へ行けぃ!」

リヒテルがオルバン諸共、一矢に斬りかかる。

一矢「待て! 早まるな、リヒテル!」
リヒテル「問答無用! 死ねっ!」

その隙にオルバンが逃げ出す。

一矢「待てっ、オルバン!」


リヒテルにより小バーム内の奥部に追い詰められたオルバン。

オルバン「このわしが斬れるかな? 見ろ、リヒテル」

壁面スクリーンに、冷凍睡眠中のバーム星人たちが映し出される。

オルバン「貴様が命に代えがたく思っている冬眠中のバームの民だ。そしてこの装置が彼らの命を保つ生命維持装置。それ以上一歩でも近づけば、この生命維持装置を破壊するぞ! どうだ、リヒテル?」
リヒテル「卑怯なぁ……! 卑怯だぞ、オルバン!」
オルバン「刀を捨てぃ! それとも、この維持装置を破壊されたいか!?」
リヒテル「許せぬ! 許せぬ……くッ……自ら治めてきた民を、己が生き延びんがための道具に使おうとは……!」
オルバン「フフフ……」

わなわなと震えるリヒテルの手から、刀が落ちる。
すかさず衛兵たちが斬りかかる。
肩を斬られつつ、リヒテルが衛兵の1人を押さえる。

リヒテル「たとえこの身は宇宙の果てに朽ち果てんとも、お前だけは生かしてはおかぬぅっ!!」
オルバン「き、斬れ! 奴は手傷を負っている。もはや恐れることはない! 斬れぃ!」

そのとき、どこからか銃撃が閃いて衛兵の刀を飛ばす。
銃を抱えたエリカが、ヤホバと共に駆けつける。

エリカ「兄上、今です!」

刀を拾い上げるリヒテル。
オルバンがリヒテル目掛け、刀を振り降ろす。
だが一太刀早く、リヒテルの刀がオルバンの刀を払う。

リヒテル「バームの民と父の怨み、思い知れぃ!! だあぁぁ──っっ!!」

リヒテルの構えた渾身の刀が、遂にオルバンを貫く。

オルバン「があぁ……ぐぅ……くっ、ククッ、この愚か者めが……バーム十億の民の命を……これで助けたつもりか?」
リヒテル「何……?」
オルバン「痴れ者が……お前はたった今その手で、バームの民の命を死へ追いやったのだぞ……」
リヒテル「……!?」
オルバン「わしの死は……バーム十億の民の死……わしの命が止まった暁には、この小バームは地獄へ堕ちてゆく……」

壁面スクリーンに、小バーム内の機械に囲まれた一室が映し出される。

オルバン「見ろ、小バームの命ともいうべき動力コントロールルームを……このコンピューターは、わしの心臓の動きに合せてセットされている……」
リヒテル「はっ……!?」
オルバン「わしの心臓の動きが止まれば……コンピューターはそれを受信して、活動を開始する! さらばリヒテル、そしてエリカよ……心ゆくまで死の苦しみを、味わうがいい……」

オルバンが絶命。

小バームがロケット噴射を吹かし、木星圏へと加速を始める。

和泉「いかん! 小バームは真っ逆さまに、木星本体へ突っ込み始めた!」
乗組員「あのガスの海にですか!?」
和泉「その通り……木星の分厚い大気の中へ突入して、最後はガスの海の中で爆発する!」
カイロ「小バームハ・アト40分デ・木星ノ大気圏ニ・突入シマス」
乗組員たち「そんな……」「あと40分……?」
和泉「こちら和泉だ! 上陸メンバー全員に告げる! 小バームが木星に向かって、突進し始めた! 木星大気圏への突入は40分後。誰でも構わん、大至急、動力コントロールルームを押さえ、エンジンを切れ!」

京四郎「案内しろ」
バーム星人「はい!」

コントロールルームへ急ぐ京四郎たち上陸チーム。

バーム星人「あそこです。あそこがコントロールルームへ通じる入口です」
京四郎「よぉし、行くぜ! 敵はまだいるかもしれん。油断するな!」
一同「はい!」

上陸チーム一同が一斉にコントロールルーム目指して走り出す。
だが天井や壁面から迎撃システムが作動。レーザーの雨が一同を襲う。

京四郎「おわぁっ!」
ナナ「京四郎さん!?」

そこへ一矢が駆けつけ、銃で迎撃システムを撃ちつつ、レーザーを浴びた京四郎のもとへ急ぐ。

和泉「動力コントロール室への入口は、ここしかないのか!?」
バーム星人「はい、ここが唯一の出入口です」
和泉「オルバンめ……侵入を防ぐために、通路全体を要塞化してしまっている。あと20分か……」

上陸チーム一同が迎撃システムを牽制しつつ、負傷した京四郎たちを救い出す。
その模様がリヒテルたちの目の前でも、スクリーンに映し出されている。

リヒテル「これがオルバンの置き土産であったのか……! フフフ、地球人どもめ、奴らには満足であろう。望み通り小バームは宇宙の塵と消えてゆく」
エリカ「違います、兄上! 地球人たちはこの小バームを救おうとしているのです!」
リヒテル「愚か者め! 奴らがそのようなことをするものか。見ろ!」

スクリーンの中。一矢たち一同がコントロールルームに背を向け、走り去っていく。

リヒテル「一矢を真っ先に、地球人どもは怯えて引き上げてゆくわ。奴らはコントロールルームの攻撃を断念し、この小バームから逃げる気だ。これが奴らの正体! 『バームの民を救いに来た』とお前が言う、地球人どもの正体なのだ! わかったか、エリカ? フフフ……ハハハハ!」

一矢たちが去った先から、次第に轟音が響く。

エリカ「あぁっ……! 兄上、トランザーです! トランザーが!」

一矢の運転するトランザーが轟音を上げつつ、コントロールルームへの通路を驀進する。

エリカ「兄上、これが地球人の真実の姿です! 逃げようと思えば逃げ出せるものを、一矢はこの小バームを救おうとしているのです!」
リヒテル「バカな……奴が? 奴が小バーム十億の民を助けようというのか!?」

迎撃システムが作動。
レーザーの雨が降り注ぎ、トランザーの装甲が砕け、タイヤが裂ける。
コクピットのフロントガラスも砕け、無数のガラスの破片が一矢に浴びせられる。

一矢「ぐわぁ!」

遂にトランザーのコクピットが大爆発。

一矢「うわぁ──!!」

煙を吹いて動作不能となったトランザーから、一矢が投げ出される。
なおも一矢は単身、拳銃で迎撃システムを牽制しつつ、コントロールルームを目指す。
容赦なく降り注ぐレーザー。一矢の体が抉られ、血が吹き出し、ヘルメットが飛ぶ。

エリカ「あぁっ……!?」
一矢「うわぁ──!!」

倒れる一矢。なおも床を這い、コントロールルームを目指す。

一矢「ぐっ……く、くそぉ……っ! もう少し……も、もう少しだぁ……くっ、もう……少……」

しかし、コントロールルームへの扉を目前にして、遂に一矢が力尽きる。

エリカ「か……一矢……」

そのとき。
トランザーの後ろから飛び立った影が、一矢のもとへ降り立つ。
かすかに目を開く一矢。

一矢「リヒテ……ル……」

一矢を厳しい目で見下ろすリヒテルが、一矢の下へひざまずく。

リヒテル「エリカを……」
一矢「……」

リヒテル「エリカをお前に託す」

リヒテルが銃を構え、扉へと駆け出す。
迎撃システムが作動。
レーザーを浴びたリヒテルが体を抉られ、翼がちぎれる。

リヒテル「ぐわぁ!」
エリカ「あぁっ……兄上!!」

拳銃をレーザーで砕かれ、丸腰となったリヒテルに尚もレーザーが降り注ぐ。
それでもなお、リヒテルは扉を目指す。

リヒテル「竜崎一矢よ! あまたる勇者の中でも、一際秀でたる勇者! お前の勇気ある行為を無駄にはせぬ! 汝の未来と、バーム星十億の民に、常しえの栄えあれぇ──っっ!!」

リヒテルの体が扉の向こうへ消える……


和泉「いよいよ大気圏突入だ。この時点から小バームは、一気に木星の中へ突っ込んでいく!」

木星へと落下してゆく小バーム。
あわやというとき、ロケット噴射が停止。逆噴射が作動し、小バームは次第に木星圏から離脱してゆく。

和泉「ふぅ……」
バーム星人「やったぞ! 小バームは助かったぞ!」

そのとき、小バームから1機の小型宇宙船が飛び立つ。
中にはボロボロになったリヒテルが。

和泉「リヒテル! おい、どうしたのだ!? リヒテル! 戻れ、戻るのだ、リヒテル!」
一矢「は……博士……」
和泉「一矢、リヒテルが小バームから飛び出した! 木星に突っ込む気らしい!」
一矢「リ、リヒテル……リヒテル! 聞こえるか、リヒテル! 戻ってくれ……戦いは終わったんだ! バーム十億の民は救われたんだ! 戻ってくれ、リヒテル!」
エリカ「兄上、お願い! 戻って、戻って下さい! 兄上!」

リヒテル「さらば、エリカ……さらば、竜崎一矢よ……バーム十億を助けてくれた地球人に許しを請うには、余はあまりにも多くの地球人を殺し過ぎた……余は自らの手で、自らを裁く……! さらばだ……」

一矢「リヒテルウウゥゥ──ッッ!!」


一矢たちがどうすることもできないまま、リヒテルの宇宙船が木星へと消えてゆく。

木星表面に火柱が上がり、そして消える……。


小バーム内のコントロールルーム通路。

ダイモビック乗組員たちによって救い出された一矢を、エリカが迎える。

傷だらけの一矢が担架に乗せられる。エリカが優しく髪を撫でる。
一矢が力なく差し出す手に、エリカがそっと手を合せる。

一矢「エリ……カ……」

エリカ「一矢……!」


この物語は ここで終りを告げる

愛と平和のために命を賭けた 一矢とエリカの情熱は
バーム星人と地球人の未来に 新しい時代をもたらした
それがどのようなものであるかは
この物語を支援してくれた人たちの想像に任せることにしたい

ただ言えることは 長い試練を乗り越えた2人がいる限り
地球人とバーム星人は 平和な共存社会を目指し
手を取り合って前進して行くに違いないということである


おわり
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