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超電磁マシーン ボルテスVの最終回


ボルテスVの協力を得た労奴軍は
今まさに ボアザン星を解放すべく
都へ進撃を開始していたのであった

戦意を失った貴族たちは 都ヘ都へと逃げ
今ここに 最後の決戦を迎えようとしていたのであった


ボアザン星を突き進むボルテスVと労奴軍。
剛健一たち兄弟の父、ボアザン星人ラ・ゴールこと剛博士の姿もある。
左近寺博士も自ら前線に赴き、指揮を執る。

左近寺「撃てぇ!」

攻撃から逃げ惑った末、黄金城へと逃げ込む貴族たち。数人の貴族が門の外へ取り残される。

「お、おい! 開けてくれ! 開けてくれよぉ! おい!」



崩れゆく邪悪の塔
!!



黄金城。皇帝ザンジバルのもとに、次々に被害状況が届く。

「第3防衛隊全滅! 第5防衛隊は降伏しました!」「ボルテスのために、第8戦車軍団は全滅です!」
「バリア制御装置の破損はひどく、使い物になりません!」「左前面に至近弾命中! 既にこの塔も敵の射程内に入りました!」

貴族たち「うぅ……」「も、もうダメだぁ……」
ザンジバル「むぅ、どいつもこいつも……よいか! 全力を尽くして、奴らの黄金城への侵入を食い止めろぉ! 何としてもだ!」


馬を駆るプリンス・ハイネルが、黄金城を見下ろす丘に辿り着く。

ハイネル「しまった! ボルテスめ、既に黄金城を攻撃しているのか!」

そこへリー・カザリーンの馬車が駆けつける。

ハイネル「カ、カザリーン!?」
カザリーン「ハイネル様、お待ち下さい! 黄金城へ行けば、ハイネル様のお命はございませぬ、無駄死にでございます!」
ハイネル「カザリーン……」
カザリーン「……」
ハイネル「……どけ。そこをどけ」
カザリーン「はっ……?」
ハイネル「余は死を恐れたりはせぬ。余はボアザン星の貴族だ! 命ある限り、最後までボアザン帝国を守る!」

カザリーンが、ハイネルを行かせまいとすがりつく。

ハイネル「えぇい、離せ!」
カザリーン「離しませぬ、離しませぬ! カザリーンは行かせませぬ!」
ハイネル「どけぃ! そこをどくのだ!」
カザリーン「離しませぬ! 行ってはなりませぬぅ!」
ハイネル「えぇい!」
カザリーン「きゃあっ!?」

力ずくでカザリーンをどかし、ハイネルが馬で走り去る。

ハイネル「許せ、カザリーン!」
カザリーン「ハイネル様ぁ──っ!!」

地面に投げ出されたカザリーンが、必死に馬車に戻る。

カザリーン「ハイネル様を……死なせては、なるものか!」


ボルテスVが遂に黄金城を突破する。

剛博士「みんな、ボルテスに続け!」


黄金城内。

兵士たち「黄金城正門がボルテスによって崩されました! もはや労奴たちの侵入を食い止める手だてはありません!」
ザンジバル「お……おぉ……」


城の中庭。
城から多くの貴族たちが駆け出し、労奴たちの前に跪く。

貴族たち「撃つなぁ!」「撃たないでくれぇ!」「殺さないでくれぇ!」「悪いのはザンバジル、ザンバジルだ」
労奴たち「こ……これが俺たちを支配してきた貴族たちの姿か……!?」


黄金城内。

兵士たち「第2、第5軍団全滅です!」「第3軍団の兵士たちが逃亡を始めました!」「既に城内のほとんどが占領され、もはやこの一角を残すのみとなりました!」
ザンジバル「ま……まずい……まずいなぁ……」


城の裏。数人の貴族が密かに脱出を試みている。

貴族たち「誰もいないぞ、この秘密の通路は気づかれていないらしい」

そこへ裏門から、ハイネルが駆けつける。

貴族「ハ、ハイネル!?」
ハイネル「そなたたちは城を見捨て、何処へ行かれる気か!?」
貴族「フン、今さら戦っても無駄なことよ。負け戦に命など賭けられんわい」
ハイネル「何ぃっ!? それでも貴族かぁっ! 恥を知れ!」
貴族たち「ハイネル、お前とて地球からおめおめ逃げおったではないか? 偉そうにわめくな!」「そうだ、そうだ。この戦いは終わったのだ。城内に残っているのは、せいぜいザンバジルぐらいのものよ」
ハイネル「えぇい、卑怯者ども! ここから逃げ出す者は、余がボアザンの名で斬る!」

剣を抜くハイネル。しかし貴族の1人が、密かに陰から銃でハイネルを狙う。
そこへハイネルを追ってきたカザリーンが。

カザリーン「あ、危ない! ハイネル様ぁ!」

咄嗟にカザリーンがハイネルの盾となり、ハイネルを狙った銃弾に貫かれる。

ハイネル「あぁっ……!? カザリ──ン!!」

そのまま倒れるカザリーン。貴族たちが逃げて行く。
カザリーンを抱き起こすハイネル。

ハイネル「しっかりしろ、カザリーン!」
カザリーン「初めて……初めて抱いて下さいましたわね……カザリーンは嬉しゅうございます……」
ハイネル「カザリーン、しっかりするのだ!」
カザリーン「わ……私は……私はいつまでも、こうしていたい……」
ハイネル「カザリーン……」
カザリーン「嬉しゅうございます、ハイネル様……」

カザリーンが息絶える。

ハイネル「はっ……! カ、カザリーン……? カザリ──ン!! カザリーン……余は死なぬぞ! ボルテスを倒すまでは死なぬぞ! 余はボルテスを倒す!」


城の中庭。健一たちと剛博士が、遂に再会を遂げる。

健一たち「お父さ──ん!」
剛博士「おぉっ……」
日吉「お父さぁん!」

涙をあふれさせつつ、日吉が真っ先に父の胸へ飛び込み、健一と大次郎も続く。

健一・大次郎「お父さん!」
剛博士「健一……大次郎……日吉!」
日吉「やっと会えたぁ! お父さんにやっと会えたんだね!」
大次郎「そうたい! ここに、ここにお父さんはいるたい!」
健一「お父さぁん!」

剛博士も涙を浮かべつつ、息子たちを抱きしめる。
めぐみがもらい泣きの涙を拭う。

一平「良かったぜ……本当に……」
めぐみ「え、えぇ……」
左近寺「健一、大次郎、日吉……うんとお父さんに甘えろ。うんとな!」


その様子を、城から見下ろすハイネル。

ハイネル「健一……!」


黄金城目掛け、降伏を迫る労奴軍の声が響く。

「ザンバジル、降伏しろ! 既に黄金城は包囲した! 戦いは終わったのだ。お前の支配する時代は終わったのだ!」


城内に祀られた巨大な神像を見下ろすハイネル。

ハイネル「我がボアザンの守護神ゴードルよ! 答えてくれ……私はどうすれば良いのだ!? このボアザン帝国が、角の無い虫ケラどもに踏みにじられていくのを、黙って見ていろというのか?」

守護神ゴードル像の右手に、灯火が燃え盛っている。

ハイネル「『国を愛する者は、守護神ゴードルの燃え盛る炎に身を投ずるならば、そのとき守護神ゴードルは国難を救ってくれる』との昔からの言い伝え。私はその言い伝え通り、この身をゴードル様の聖火に捧げる覚悟! たとえこの身が炎に焼かれようとも、国を救うためなら命を捧げよう! ……ボアザン帝国に栄光あれぇぇ──っっ!!」

炎の中へと身を投げるハイネル。
火で焼かれるかと思ったハイネルの体は、そのまま椅子に運ばれ、どこかの通路へと運ばれて行く。

ハイネル「こ……これは!?」

気がついたとき、ハイネルは計器類の並んだコクピットと思しき場所に位置していた。

ハイネル「はっ……ゴードル像とは、巨大なメカロボットだったのか!」

どこからか声が響く。

謎の声「ボアザンの勇気ある若者、神像ゴードルはこの椅子に座る者の命令通り、敵を倒すであろう……」
ハイネル「おぉ、言い伝えは嘘ではなかった……本当だったのだ!」

ゴードルが立ち上がり、石像の外装が剥がれ落ち、巨大ロボットとしての外観が姿を現す。

労奴「あぁっ、神像ゴードルが甦ったぁ!?」
健一「みんな、出撃だ!」
一同「おぅ!」

ボルテスチームがボルテスVで出撃する。

神剣を振るうゴードルを、ボルテスも天空剣で迎え撃つ。
両者の実力はほとんど互角。
だが一瞬の隙を突き、ボルテスの天空剣がゴードルの胴を裂く。

ハイネル「ぐわぁ!?」
健一「超──電磁……!」
ハイネル「そうはさせぬ!」

ゴードルが口から火を吐き、ボルテスに浴びせかける。

健一「うわぁ、おわぁぁ──っ!」

高熱に怯むボルテス。ゴードルの神剣がボルテスの胴を抉る。

健一「う……うぅっ……」
ハイネル「死ねぇぇ──ぃっ!!」

剣を構えてゴードルが突進。
だが、すんでのところでボルテスはそれをかわし、ゴードルの胸に天空剣を尽き立てる。
そのまま倒れてゆくボルテスとゴードル。城が砕け、火の手が上がる。
健一がコクピットから脱出。

ハイネル「健一っっ!」

投げつけられた剣を、健一が受け止める。
燃え盛る城の炎を背に立つハイネル。

健一「ハ……ハイネル!? 生きていたのかぁ!」
ハイネル「この時を待っていたぞ! 勝負だ、健一!」
健一「ハイネル、既に戦いは終わったんだ!」
ハイネル「終わってはおらぬ! 宇宙で最も優れた人種、角を頭に頂くボアザン貴族の戦いは、最後の1人まで続くのだ!」
健一「それが間違っているんだ、ハイネル! 角のある者も無い者も、みんな同じなんだぁ!」
ハイネル「言うなぁ! 健一、命はもらったぁっ!」

剣を抜いて斬りかかるハイネル。やむを得ず迎え撃つ健一。

剛博士「健一ぃ!」

激しい鍔迫り合いの末、両者の剣が互いの肩を裂く。

2人「だあぁ──っっ!!」

気合と共に剣を振りかざす2人。
剣身が折れ、勢い余って2人ともそのまま地面へ倒れてゆく。

ハイネル「はぁ、はぁ……」
健一「くっ……ハ、ハイネル……もう戦いは終わったんだ! 今さら俺たちが戦って何になるんだ!?」
ハイネル「ほざくなぁっ!」

ハイネルが立ち上がり、懐から短剣を抜く。

剛博士「はっ……あの短剣は!? ハイネル、教えてくれ! その……その短剣は誰に貰ったものだ!?」
ハイネル「誰でもいい! 貴様には関係ない!」
剛博士「違う! その短剣は……その短剣は、私が妻のロザリアに託した、形見の短剣!」
ハイネル「何を言うか! これは亡き母上の唯一の形見!」
剛博士「はっ……!? (ロザリア……お前が命と引き換えに産み落とした子供というのは、このハイネルのことだったのか……! 何という皮肉な運命だ……) ハイネル、お前の母というのは、私の妻ロザリアのこと……健一たちとお前は、兄弟なのだ!」
ハイネル「何を言うか!?」
健一「お、お父さん!?」
剛博士「私があの短剣を見間違うものか! その剣の柄を見るんだ! 私たちがボアザンの平和を祈って記した鳩の模様があるはず」

恐る恐る、ハイネルが短剣の柄に目をやる。
そこには剛博士の言う通り、鳩の模様が。

ハイネル「あぁっ……!?」

驚きのあまり、ハイネルの手から短剣がこぼれ落ちる。

健一「あぁ……鳩の印!?」
ハイネル「ああぁぁ──っ!? 何ということだ……何のための戦いだ……兄弟同士が血で血を洗う戦いをしてきたというのか……!? あぁっ……」
健一「に……兄さん……?」
ハイネル「嘘だああぁぁ──っっ!!」

そこへザンジバルが現れる。小脇に溢れんばかりの財宝を抱え、右手には小型爆弾を握っている。

ザンジバル「ワ──ハッハッハァ!!」
剛博士「ザンバジル!?」
ザンジバル「寄るな、寄るなぁ! この財宝は誰にも渡さぬ! ち、近寄ると爆弾で吹き飛ばすぞぉ!」
ハイネル「お、伯父上! おやめ下さい! 最後まで、最後までボアザン星の王であることをお忘れめさるなぁ!」
ザンジバル「そ、そうだぁ! ハイネルだ、悪いのはハイネルだ。地球征服の作戦もすべて、あのハイネルがやったことだ。あのハイネルだぁ!」
ハイネル「何……!?」
ザンジバル「殺すなら、ハイネルを殺せぇ!」
ハイネル「うぅ……余は、こんなウジ虫のために戦っていたのか……死ねぃ!」

ハイネルの投げつけた短剣が、ザンジバルの胸に突き刺さる。

ザンジバル「あぁ……」

ザンジバルの手から爆弾が床に落ちる。
爆弾が爆発──!

ハイネル「健一──!」

咄嗟にハイネルが、爆風から健一をかばう。
だが爆発の衝撃で床が大きく砕け、2人を引き離してゆく。

一平たち「健一──!」
健一「に、兄さぁ──ん! 兄さぁぁ──ん! 兄──さぁぁ──ん!」
大次郎・日吉「兄さぁぁ──ん!」

床の亀裂の向こう、城から立ち昇る炎の中にハイネルが立ち尽くす。

健一「兄さぁぁ──ん!」

自分を兄と呼ぶ健一たちに、ハイネルは虚しい表情のまま、ゆっくりと首を横に振る。

剛博士「ハイネルぅ──!!」
ハイネル「お……お父さん……」

ハイネルの目に、初めて涙が光る。

瓦礫の山が降り注ぎ、ハイネルが炎の中へと消えていく……


健一「兄さああぁぁ──ん!!」


この日 長いボアザン星の暗黒時代は
終りを告げた
新しい時代へと 人々の力強い
復興の日々が 始まったのだった

そして 別れの日は来た


日吉「お父さん……どうしても一緒に地球へは、帰ってくれないの?」
剛博士「日吉……健一、大次郎……わかってくれ。父さんには、このボアザン星を地球と同じように立派な星にする務めがある」

涙ぐむ日吉を、健一と大次郎が元気づける。

健一「なぁ日吉、いつだってボアザン星に来たければ来るさ。ボルテスには、ワープ装置だってセットされているんだ」
大次郎「そうたい! それに俺たちには、地球を守る任務があるたい!」」

剛博士と左近寺博士が、固い握手を交わす。

剛博士「地球のことは、よろしく頼む!」
左近寺「うむ……!」


ボルテスチームがボルテスVに、左近寺がソーラーファルコンに乗り込む。

左近寺「地球へ向かう!」

ボアザン星の空高く飛び立って行くボルテスVとソーラーファルコン。
それを見送るボアザン星人たち、そして剛博士。

剛博士「子供たちよ……父や母や兄弟を愛するように、人間同士が宇宙を越えて本当に愛し合えるならば、そして、地上のあらゆる動物や植物、山や海を愛することができるならば、宇宙はいつまでも平和だ……!」


(終)
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