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時空戦士スピルバンの最終回


(ナレーション)

ギローチン皇帝は、時空のクレバスに自らを沈め、幽鬼となってグランナスカを襲った。
スピルバンは、クリンエネルギータンクからエネルギーを噴出させて、かろうじてギローチンを消滅させた。
その代りにグランナスカは、クリン星へ帰るエネルギーを失ってしまった。
ドクターバイオの、女王パンドラを救おうとする想いが、ワーラー城の特異な通路を開かせる結果となった。
スピルバン、ダイアナレディ、ヘレンレディの3人は、ワーラー城に突入した。
そしてそこで、守護神ワーラーと女王パンドラが、同じ人物である事実を目撃した。
さらにベン博士が……!



いま君は知る
   クリン星の秘密


ワーラー城の中。
女王パンドラ(= 守護神ワーラー)の攻撃がスピルバンたちを襲う。

パンドラ「スピルバン坊や、あなたの父ベン博士は、ドクターバイオとして我がワーラー帝国に尽してくれました。私に対する忠誠心も大変なもので、ついさっきまでドクターバイオだったのです。ところが……私を助けようとして、コントロールボックスに触れ、ワーラー光線を浴びてしまったのです。ひょんなことから、元通りの姿に戻ったというわけです。もう虫の息……ご臨終です」
ヘレン「お父様!?」
スピルバン「危ない、姉さん!」
ダイアナ「ヘレン!」

パンドラの攻撃に構わずベンに駆け寄ろうとするヘレンを、スピルバンとダイアナが制止する。

パンドラ「フフフ……」
ワーラー「パンドラよ……早くこやつらを片付けてしまえ……」
パンドラ「はぁい、ワーラー様。お任せ下さい。この者たちは間もなく、息絶えることでしょう……」
ヘレン「ヘレンカッター!!」

ヘレンの投げ付けたヘレンカッターを、パンドラはヘレン自身に跳ね返す。

スピルバン「姉さん!?」
パンドラ「フフフ、パンドォラ〜ッ、パンドォラ〜ッ」

パンドラの手にした杖から凄まじい波動が放たれ、3人を襲う。
スピルバンが果敢にパンドラに挑む。

ヘレン「スピルバン!」
パンドラ「パンドォラァ〜ッ!」

パンドラの体が2体に分身する。片方は戦闘機械人、片方は戦闘生命体。
再びスピルバンが挑むが、パンドラ機械人に跳ね返される。

ダイアナ「スピルバン!」

2体のパンドラがスピルバンたちを執拗に翻弄する。


そのとき、倒れていたベン博士の目が開く。

ベン (私はなぜ、こんなところにいるのだ……? ここは、ワーラー城の中!?)

パンドラがスピルバンたちを次第に追い詰める。

ベン (女王パンドラが戦闘機械人と生命体に分離し、スピルバンと戦っている……ダイアナとヘレンも戦っている……私は、どうしてそんなことを知っているのだ……? 私はクリン星にいた……)

脳裏に、自分がワーラー帝国に捕われてクリン星から連れ去られ、ドクターバイオに改造されてしまったときの光景が蘇る。

ベン (そうだ! あの日、デスゼロウ将軍が私の家へ乱入してきたのだ! 私はクリン星からさらわれ、改造されてしまったのだ。ドクターバイオに!)

そして、ワーラー帝国のドクターバイオとして自分がスピルバンを苦しめてきたこと……

ベン (憶えている……何もかも……私は悪魔にされてしまったのだ! そして息子スピルバンを苦しめ続けた……何て恐ろしいことを! おぉ神よ、罪深き私をお許し下さい!)


パンドラ「ホホホ、そろそろフィニッシュと参りましょう。パンドラァ〜パンドォラ〜」

パンドラ機械人とパンドラ生命体が合体、パンドラ生命機械人となる。

パンドラ「私に逆らった者は1人残らず、この世から消えました。あなた方も例外ではありません!」

指先から触手が伸び、スピルバンたちに巻きつく。
触手をつたってエネルギーが閃き、不気味な音が響く。

パンドラ「その音は、私のエネルギーでハイテククリスタルスーツを溶かしている音です」
スピルバン「うぅっ、電子頭脳がぁっ!」
ダイアナ「力が抜ける! エネルギーが……」
ヘレン「目が……霞む!」
スピルバン「頑張るんだ! ここで負けたら、今までの努力が水の泡だ! ワーラーを倒すまでは……倒すまではぁっ!!」」


ベン「このままではスピルバンが危ない……ヘレンも、ダイアナも……」

城内の別室にベンがやって来る。机の上に、いくつものカプセルが置かれている。

ベン「これは全人類を死滅させることのできるウィルス菌だ。最新兵器として開発されたものだ。これを使えば、もしや!」

そのとき物陰から、ギローチンに協力していた喋るハムスター・ポスが現れる。

ポス「見ーちゃった、見ーちゃった、スピルバンを助けるつもりだな?」
ベン「何!?」
ポス「そうはさせない!」

ベンの首筋にポスが飛びつき、首に噛み付く。

ベン「うぅっ! やめろっ! うぅ……」

苦しみながらも、やっとの思いでベンがポスを引き剥がす。

ポス「ヘヘッ、毒が回ったぞ! お前こそお陀仏だ!」
ベン「うぅっ……」

ベンが力を振り絞り、ポスを近くの容器の中に放り込み、すかさずウィルス菌の試験管の中味を注ぎ込む。

ポス「くっ、苦しいぃ……」

たちまち、ポスがハムスターの姿から、奇怪な生命体の姿となって力尽きる。

ベン「バイオ生命体だったのか……」


パンドラ「ワーラー帝国は不滅です。未来永劫、悪は栄え続けるのです!」
スピルバン「倒れてたまるか……ここでっ!!」

ベンが現れる。

スピルバン「父さん!?」
バンドラ「おや、ドクターバイオ? まだ生きていたの?」
ベン「私はドクターバイオではない、私はベンだ! スピルバンや、ヘレンの父親だ!!」
パンドラ「それで、助けたいと言うの? この3人を」
ベン「そうだぁっ!!」

パンドラの手から触手が伸び、ベンの首を締め付ける。

スピルバン「父さん!!」
ヘレン「お父様!!」

ベンが拳を振り上げる。その手に注射器が。
パンドラの触手を握り締め、注射器を突き刺す。

パンドラ「うぅ!? 何をしたの、その注射!?」
ベン「ウ……ウィルス菌、だぁ!!」
パンドラ「うぅわぁぁ……っ!!」

苦痛に喘ぐパンドラ。
スピルバンたちが次々に、触手の戒めから解かれる。

ダイアナ「博士!!」
スピルバン「父さん!!」

ベンは依然、触手に締め付けられている。

ベン「許してくれ……スピルバン、ヘレン、ダイアナ……私は、償っても償いきれない罪を重ねてしまった……だから、私がこうなるもの当然なのだ……良かった、お前たちに逢えて……最期に、父親らしいことを……してあげたか……」
パンドラ「死ねぇ……!!」

触手を伝って凄まじいエネルギーが迸り、ベンが倒れる。

スピルバン「父さぁぁ──ん!!」
ベン「スピル……バン……ヘレン……ダ……ダイアナ……!」

ベンの姿が消滅する。

スピルバン「父さぁん!!」
ヘレン「お父様ぁっ!!」
パンドラ「ぐぁぁっ! 苦しいぃっ!」

ベン博士が打ち込んだウィルス菌が、パンドラ生命機械人の体に回って、細胞を滅ぼしていた


スピルバン「俺の怒りは……今、爆発っ!!」

スピルバンの剣から2本の剣身が伸び、剣身が光を纏う。

スピルバン「ツインブレード!!」

苦痛に喘ぐパンドラに、スピルバンが斬りかかる。

スピルバン「アーク・インパルス!!」

必殺剣が炸裂。


大爆発──


爆発の跡に残ったのは、パンドラの体の一部、ヒトデ状の残骸。

ダイアナ「ヒトデだったのね……女王パンドラの正体は」
スピルバン「やたら水を欲しがった……」

ヘレンが、傍らに落ちている万年筆に気づき、拾い上げる。

ヘレン「お父様のものよ……!」
スピルバン「これが……父さん……」

そのとき、轟音とともに城が揺れだす。
周囲で次々に爆発が起きる。

スピルバン「姉さん、ダイアナ、脱出だ!」

城が次々に崩壊してゆく。


間一髪、脱出して地上のダムの上に降り立ったスピルバンたち。

上空のワーラー城が爆発し、炎に包まれて墜落してくる。
墜落した城から奇怪なエネルギーが放たれる。
スピルバンたちがエネルギーの包まれ、周囲が光と化す──


砂漠。

結晶の解けて元の姿となったスピルバン、ダイアナ、ヘレンが倒れている。
やがてスピルバンが目覚め、周囲の光景に驚く。

スピルバン「……ここは、どこだ!? 姉さん、姉さん! ダイアナ、ダイアナ! おい! 姉さん、しっかり!」

ダイアナとヘレンも意識を取り戻す。
2人とも、周囲の光景に驚く。

ヘレン「ダムの上にいたんでしょう? 私たち」
ダイアナ「あ……見て、あれ!」

ダイアナが指す方向、砂漠のかなたに、地球のものとは思えない未来的な都市群が。

ヘレン「あれはシティ……クリン星のシティよ」
ダイアナ「クリン星ですって!?」
スピルバン「そりゃ間違いだ。そんな筈ないよ……」
ヘレン「そうよ。私、見たことあるもの……小さい頃、行ったことあるもの!」
スピルバン「……グランナスカにはエネルギーがなかった。俺たちは地球を離れることは出来なかった筈だ」
ダイアナ「えぇ、そうよ」
ヘレン「……夢を見ているのかしら……匂いがするのよ、クリン星の匂い……ここはクリン星よ、絶対……!」

半信半疑で、スピルバンがシティの方へ駆け出す。
ダイアナとヘレンも後を追う。
スピルバンが何かを見つけ、立ち止まる。

ワーラー城の残骸。

スピルバン「ワーラー城だ!」
ダイアナ「ここは……地球なんだわ」
スピルバン「あぁ、地球に間違いない」
ヘレン「地球であり……クリン星なのよ」

笑い声。

彼方から談笑しながら歩いてくる3人の人影。

ダイアナ「マ……ママだわ!? 私のママ……」
ヘレン「お父様もいる……お母様もいる……!」
スピルバン「どうなってるんだ……どうして地球に父さんと母さんがいるんだ……?」

ふと、スピルバンがベンの万年筆を取り出す。

スピルバン「そうか……地球はクリン星だったんだ」
ダイアナ「地球がクリン星!?」
スピルバン「あぁ。見ろ、この万年筆を。これは父さんが、バイオテクノロジーの研究で、受賞したときに貰ったものだ。年月日が刻み込まれている。
ヘレン「クリン星暦、1万2000年……」
ダイアナ「私たちは、1万年昔の地球に行って戦ってたのね……ワーラー帝国と……」
スピルバン「そして……1万年未来のクリン星に帰って来たんだ……!」
ヘレン「地球の、未来の姿が……クリン星だったのね」
スピルバン「あぁ」
ヘレン「ワーラー城には、時空を操る装置があったわ。それが作動して、私たちは1万年未来に戻ってしまったのね」
スピルバン「そうだよ……きっとそうだよ!」
ヘレン「すると……あそこにいる人たちは!」
スピルバン「父さん……父さん!」

ベンたちのもとへ駆け出すスピルバンたち。
ベンたちの方も、スピルバンたちに気づく。


スピルバン「父さん……スピルバンです」
ベン「スピルバン……?」
ヘレン「ヘレンです」
ダイアナ「ママ……私、ダイアナよ!」

スピルバンが、ベンの万年筆を差し出す。
ヘレンがペンダントの中を開く。中には、幼い頃の親子の写真が。

ベン「ス……スピルバン!」
ベン夫人「ヘレン!」
ダイアナの母「ダイアナ……!?」

皆が抱き合う。

ダイアナ「ママァ!」
ヘレン「お母様……!!」



スピルバン、ダイアナ、ヘレンの3人は、1万年昔の地球に行って
ワーラー帝国と戦い、それを倒した。
ワーラー城の時空装置が働いて、1万年後の地球へ、
いや、1万年後の地球はクリン星と呼ばれていたのだ。
つまりスピルバンたちは、故郷のクリン星に戻ったことになる。
それも、ワーラー帝国に襲撃される前のクリン星へ。
だから、父も母も元気でいるのだ。

え? またワーラーに襲われるかって? いや、その心配はないと思うよ。
何しろ、ワーラー帝国はとっくの昔に、滅ぼされてしまったんだからね。

スピルバンも、ダイアナも、ヘレンも、もう戦うことはないだろう。
クリン星に永遠の平和が訪れたのだから。

さようなら、地球。

こんにちは、地球──



おわり
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