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シャーマンキング〜恐山篇最終話〜

 

 

 

下北駅、葉が一通りの事を終え、帰路につく

葉:「ふう」

葉:「じゃあばあちゃん、送ってくれてありがとな、あとはオイラ一人で帰れるから」

葉のばあちゃん:「やれやれまだケガも直りきってはおらんというのに、まだ冬休みはあるんだろうが」

葉:「んーのんびりしてぇのはやまやまなんだけどなー」

葉:「でもオイラがいるとアンナが困るだろ、なんせあれから一週間一度も部屋から出てこなかったもんな」

葉のばあちゃん:「ハ・・・わかっとるではないか、もっともカオを出さんのはいつもの事だがね」

葉:「ハハ、言えてらあ」

葉のばあちゃん:「あのムスメは・・・・その感受性が並はずれて強いだけに、誰よりも神経質で臆病だ」

葉のばあちゃん:「だがそれも全ては本当の恐怖を知っておる故・・・・」

葉のばあちゃん:「いつかそれら全てをのりこえた時、あのムスメは何事にも動じぬ真の強さを得るだろう」

葉のばあちゃん:「それがいつになるかはわからんがお前と再び会う頃にはまた、変わってるかもおるかもしれん」

葉のばあちゃん:「ナンギなムスメだがその時はまた頼んだぞ、葉」

葉:「ああ」

葉:「じゃあ、電車来たから」

葉のばあちゃん:「おまち、お前に」

小さな小袋を差し出す

葉:「お年玉・・・じゃねえよなあ」

電車は駅を後にする、電車の中で一人、受け取った小袋

葉:「じゃあ一体何なんだ?」

アンナ:「あけてみれば?」

突然の声

葉:「ああ、そうするか」

すぐには気づかなかった

ピタリと止まる、葉

葉:「ん?」

恐る恐る顔を上げ、座席の脇にそっと視点を移す

葉:「・・・・」

アンナ:「おヒサシブリ」

葉:「アン・・・・!」

「パン!」と乾いた音が響く

葉の左頬に赤い手のひらの後

アンナ:「静かにして、車内で大声だしたらメイワクでしょ」

葉:「・・・・・はい?」

状況をいまいちつかみきれていない

葉:「っていうかなんでお前!?いやそれよかそのカッコ・・・・!」

以前の彼女とは格別ちがかった

古風な着物を来ていたが今は薄いジャケット

アンナ:「のりこえたの、あんたが鬼を倒したから」

アンナ:「今までどうしようもないと思ってた鬼をあんたが倒したから、だからあたしもなんとかなるって思うことにしたのよ」

アンナ:「あたしはもう二度とあんなみじめな思いをしたくない、この能力があろうがなかろうが関係ない」

アンナ:「強くありたい」

葉:「そ・・・そうか、そいつは良かったな(もう充分強えと思うけど)」

アンナ:「だから礼を言いに来たの」

アンナ:「ありがと

意外な一言に、時が止まったかのようにフリーズする、葉

アンナ:「あたし、次の駅で降りるから」

踏切の音がやけに響く、車内は無言

 

二人 無言のまま電車は次の駅へ走る

この時アンナが何を考えていたかはわからなかったけど でもアンナはこの一言だけのために見送りに来たんだ

いっこ前の駅から

 

葉:「(ばあちゃんの前じゃ、かっこ悪いからってわざわざそこまでせんでも・・・・・・・・)」

葉:「(でも、その意地っぱりなところが意外とかわいいんだよな)」

心の呟く、しかし

 

読まれていた

 

電車は止まり、駅のホームに立つ、アンナ

アンナ:「じゃあ約束守ってくれるの楽しみにしてるから」

アンナ:「裏切ったら多分許さない

 

涙の分かれ アンナには会うたびに泣かされた

 

両側の方に赤い手のひらの後、そして二人に流れる涙

アンナ:「さよなら」

電車はまた走りりはじめた

 

 

帰りの電車ばあちゃんからもらった小さなポチ袋を開けてみるとオイラあての手紙が入っていた

 

-----マタムネからの手紙-----

マタムネが大みそかの夜出がけに書きのこしてくれたものらしい

達筆なのかヘタなのかよくわからない字でほとんど読めなかったけど

青森へ来た時はいっしょだった向かい側のシート

でも今は誰もいないシートを見たら

少しこみあげた

そして手紙の最後には一枚の詩が書き添えてあった

 

 

恐山ル・ヴォワール

 

〜葉さんへ〜

お前さんを待つ

その人は                              

きっとさびしい思いなぞ

させはしない

少なくとも

少なくとも

 

お前さんの会う

その人は

きっとさびしい思いなぞ

させはしない

少なくとも

少なくとも

 

路上に

捨てくされ

やるせなさ

途上に

ふてくされ

やる気なし

愛は

出会い・別れ・

透けた布キレ

恐山ル・ヴォワール

 

 

〜アンナさんへ〜

黒い千羽鶴

その人は

じっとさびしい重い謎

かかえ夜

折れなくとも

折れなくとも

 

黒い千羽鶴

その人は

じっとさびしい重い謎

かかえ昼

折れなくとも折れなくとも

 

机上にふるまえど

ほころんで

無性にプロマイド

欲しくなり

愛は

出会い・別れ・

透けた布キレ

恐山ル・ヴォワール

 

 

〜小生へ〜

齢千余年

小生は

やっとさびしい思いから

はなれます

はかなくとも

はかなくとも

 

弱いこの心

小生は

やっとさびしい重い殻

はがれます

墓なくとも

墓なくとも

 

衆生に長らえど

せつなくて

賀正に出会えたら

うれしくて

愛は

出会い・別れ・

透けた布キレ

恐山ル・ヴォワール

 

不肖の身なれども

この度は

至上の喜びと

ちりぬるを

非情に思われど

気にはせぬ

微笑のひとつでも

くりゃりゃんせ

 

慕情にもならぬ

この詩も

以上をもちまして

終わります

頭上に輝くは

どの国ぞ

地蔵さまおわす

あそこかな

愛は

出会い・別れ・

透けた布キレ

恐山ル・ヴォワール

恐山オ ル・ヴォワール

 

 

小生 麻倉家に仕えること約千年

この度 葉さんの旅のお供に世界の股旅から戻ってまいった

ねこまたのマタムネと申す

好きなものはマタタビ

ではまた

 

 

 

voir (ヴォワール)・・・・会う 隠語として花嫁のヴェール

au revoir (オ・ルヴォワール)・・・・・さよなら

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