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時空警察ヴェッカーシグナの最終回


宿敵・織田優生の拘束のため、春日さりあ、夏沢るり香、冬木玲菜たちヴェッカーシグナはディザイン社の主催するイベント「ギャザリング」に潜入捜査。
だが逆に、優生を崇める大勢の観客たちは、さりあたちを優生の敵と見なし、罵声を浴びせ始めた。


玲菜「な、何?」
るり香「これが狙いだったんですね……このイベントは、私たちをおびき出し、私たちをこの時代の人々の敵に祭り上げるための……!」
さりあ「レディ、エクスターナル・チェンジ」
るり香「さりあさん!?」
玲菜「今は自分の身を守ることだ、早く!」
3人「エクスターナル・チェンジ!」

戦闘形態エクスターナルフォームに換装する3人。
さりあはシグナサリー、るり香はシグナルリー、玲菜はシグナレナリーとなる。

優生「見たか!? これが我らに仇成す者、時空刑事だ!」

観客が一斉に壇上につめかけ、サリーたちに襲い掛かる。
やむを得ず応戦する3人だが、一般人相手では思うように戦えない。

サリー「何で……? この人たちは、私たちを」
レナリー「私たちは敵じゃない! やめろ!」
ルリー「やめて……さりあさん、玲菜さん! くっ、やめて!」
優生「フフフ……ハハハハハッ!」

大混乱の中、ステージの陰から新末雪人が飛び出す。

雪人「おい!」
サリー「え……?」
雪人「春日たちに触るな!」
サリー「新末くん!?」

一瞬静まった観客たちが、矛先を雪人にも向け、一斉に襲い掛かる。

雪人「さりあっ!」
サリー「新末くん、新末くん! 新末くぅん!」

観客たちに痛めつけられる雪人の姿を見ていた優生の顔が、次第に強張り始める。

優生「なぜだ……なぜこんなところで、お前のような存在が現れる!?」
雪人「うぅっ……くっ……」
優生「これも時間の自浄作用というものか……?」
雪人「さりあ……」
サリー「やめて……! 新末くん!」

ふらふらとステージ裏へ消えてゆく優生。

蛇塚「優生さま? 優生さま!」
レナリー「優生!? さりあ、るり香! しっかり!」



Phase.6 Side:B


傷を負った雪人をかばいつつ、さりあたちはどうにかステージ裏の通路まで逃げて来る。

雪人「時空刑事か……テレビのヒーローものみたいな話だけど、それが春日たちなら、何だか信じられる気がするね」
玲菜「さりあを守ってくれて、ありがと。君の登場で、少しは冷静になったみたいだよ」
さりあ「……」

さりあが照れ臭そうに頭をかく。

るり香「でもここからは、私たちの仕事です。あなたはここに残って下さい。……行きましょう」
さりあ「……」
雪人「大丈夫。行けよ」

さりあが頷き、るり香と玲菜と共に背を向ける。

雪人「春日のなりたいものって……これだったんだな」

さりあが足を止め、振り返る。

さりあ「そうだよ。これが私の目指す未来」
雪人「……格好いいな」


薄暗い会場の通路を進む3人。奥の暗がりの中から、折尾光四郎が現れる。

さりあ「あれ? 光四郎さん」
るり香「やっぱり来てくれたんですね」
さりあ「光四郎さん!」

光四郎に駆け寄るさりあ。だが光四郎の顔が次第に険しくなる。

さりあ「え……?」
玲菜「何?」

光四郎の背から節足動物のような8本の脚が伸び、さりあを捕らえる。

玲菜「さりあ!?」
るり香「光四郎さん、その姿は!?」
光四郎「光四郎ではない……私は、織田優生だ」
一同「……!?」
光四郎「いや、光四郎であり、織田優生であると言った方が正しいかな? 二つの人格はこれまで一つだった。だが、そんなことはもうどうでもいい」
さりあ「うぅっ……」
るり香「さりあさん!」
玲菜「このバカ光四郎! さりあを離せ!」

さりあを救おうとする玲菜とるり香を、光四郎はたやすく跳ね飛ばす。
そのとき疾風の如く時空特捜キリー・桐野かすみが駆けつけ、すばやくさりあを救う。

玲菜「キリー……!」
かすみ「折尾光四郎……いや、時空刑事オリオンのもう一つの人格だったお前は、一体この時代で何をするつもりだったんだ?」
玲菜「織田優生が……オリオンのもう一つの人格だって!?」
かすみ「私が時空特捜としてこの時代に来た本当の理由は、時空刑事オリオンを監視することだ。答えろ!」
光四郎「私の存在の必然を作るためだ」

光四郎の姿が次第に、織田優生に変わる。

優生「私は……オリオンの中に発生した、ただの人格などではない! 存在するんだ! そう……歴史の中に、生体的な必然を組み込めば、私の存在は、誰も疑うことができない事実となる!」
かすみ「そのための……有効種計画か」
優生「そうだ。そのためのディザインだ」
かすみ「より良い未来などと!」
優生「だが……あんなところに、私のオリジナルが迷い込むことがあるなどとは!?」
るり香「オリジナル?」
優生「新末雪人。あれは、オリオンへと続く血脈。即ち、私が存在するための必然の一つだ」
さりあ「新末くんが、光四郎さんの……祖先?」


一方で加藤洋輔は車を飛ばし、ギャザリング会場を目指していた。
だがその前に、黒服の男たちが大勢立ちふさがる。

洋輔「早速お出迎えか。だが、お前たちの相手をしている暇はない!」

洋輔は車を止めるや、車から飛び降り、次々に男たちを蹴散らしていく。
今までの昼行灯ぶりとは別人のような大立ち回りで、瞬く間に敵陣が一掃される。

そこへ秋葉えみりが駆け寄る。

えみり「マスター!」
洋輔「さりあたちは!?」
えみり「中です。優生が!」
洋輔「わかってる!」


さりあたちは優生に挑むものの、優生は難なく攻撃を跳ね飛ばす。
優生の手がさりあの首を捕え、締め上げる。

さりあ「うぅ……う……」
優生「フン、可愛い声を出す!」
玲菜「さりあを離せぇ!」

さりあを救おうとする玲菜。だが優生の拳が玲菜の腹に、容赦なく何度も叩き込まれる。

玲菜「くっ……さ、さりあを離せ……」
優生「脆弱な……そう、時間の流れの中では、時空刑事と言えどもこれほどまでも脆弱!」

優生がさりあと玲菜を投げ飛ばす。

さりあ「玲菜……大丈夫?」
玲菜「はぁ、はぁ……バカなのに、面倒臭い奴なのに……あんたは何でかほっとけない……」

息を切らしながら、玲菜がさりあに笑顔を見せる。

玲菜「私らは友達だ。いくつになっても、どんな未来になっても……いつまでも、一番の友達だ!」
さりあ「うん……!」

さりあも笑顔を返す。

優生「戯れるな、小娘ども! ここまで成れば、私の必然はもう完成したも同然! オリジンさえも、貴様らヴェッカー同様、喰らい尽くしてくれるわぁ!」

優生が獣人体・鬼蜘蛛に変身する。

鬼蜘蛛「聞こえるか!? 人々はお前たちではなく、この私を求めている! 正義はどっちだ? 時間に縛られたお前たちか? 時間の変革者たるこの私か?」

そのとき──

「正義は、未来を紡ぐ人それぞれにある!」

通路の奥の暗がりの中から、洋輔が現れる。

洋輔「誰か個人の手の中にあるものではない! 我々のできることは、その正義に味方することだけだ!」
さりあ「マスター!?」
洋輔「光四郎! 取り込まれるな、目を覚ませ!」
鬼蜘蛛「私は織田優生だ! 折尾光四郎など、既に喰らい尽くしてくれたわ!」
洋輔「答えろ光四郎、いやオリオン! お前は……お前はそんなに弱い男ではなかったはずだ! かつて、時の亡者にまで落ちぶれようとしていた私を救ってくれたのは、お前ではなかったのか? オリオン! 今度は俺の番だ……今度は俺が!」」
光四郎 (マスター……この俺を、た、倒してくれ……狂った時間の流れごと……織田優生ごと、この俺を葬り去ってくれぇ!)
さりあ「そんなぁ!?」
洋輔「わかった……わかったよ、光四郎!」

洋輔の両腕に、赤い稲妻がほとばしる。

洋輔「アルティメイション!!」

真紅の強化服クロノスーツを身にまとい、洋輔は時空刑事エクスヴァーンへと変身する。

エクスヴァーン「時空刑事エクスヴァーン!!」
鬼蜘蛛「貴様ぁ……!」
エクスヴァーン「光四郎、行くぞ!」

鬼蜘蛛に挑むエクスヴァーン。2人の拳と蹴りが、激しくぶつかり合う。
鬼蜘蛛が剣を抜く。エクスヴァーンも剣を構える。
激しい鍔迫り合いで、火花が飛び散る。
エクスヴァーンの2本の剣が合体し、双身刀と化す。

エクスヴァーン「ダブルシャイニングロッド!」

鬼蜘蛛目掛け、エクスヴァーンが突進。

さりあ「何よ、やめて! あれは光四郎さんなんだよ!」

剣同士のぶつかり合いの末、エクスヴァーンのシャイニングロッドが鬼蜘蛛の胴を貫く。

鬼蜘蛛「うぉぉ……!」
るり香「やめて!」
玲菜「やめて……光四郎がぁ!」

エクスヴァーン「エクスヴァーンブレイク!!」

振りかざされたシャイニングロッドが、一刃のもとに鬼蜘蛛に炸裂。

鬼蜘蛛「グァァ──ッッ!?」
さりあたち「嫌ぁぁ──っ!」
エクスヴァーン「まだだ! まだ終わっていないぞ」
鬼蜘蛛「や……や……やめろぉ……」

苦悶の声をあげつつ、鬼蜘蛛の体が青い炎のように燃え上がり、その体から次第に光四郎の体が浮かび上がる。
鬼蜘蛛から分離した光四郎が、その場に倒れる。
光四郎が分離した後の鬼蜘蛛が、文字通り巨大な蜘蛛の化物へと姿を変えてゆく。

かすみ「あれが人体改造の末路……織田優生の最期の姿」
鬼蜘蛛「この優生の存在を……歴史の必然にぃぃっ!」
エクスヴァーン「シグナたちよ、エクスターナル・チェンジだ!」
さりあ「え!?」
エクスヴァーン「チャンスは一度だけだ。やるぞ!」
さりあ「……行くよ」
一同「エクスターナル・チェンジ!」

4人がエクスターナルフォームに変身する。

サリー「シグナサリー!」
レナリー「シグナレナリー!」
ルリー「シグナルリー!」
キリー「時空特捜キリー!」

エクスヴァーン「グランミラー!」

支援メカ・グランミラーがエクスヴァーンのもとに飛来。

エクスヴァーン「キャノン・フォーメーション!」

グランミラーが2連装キャノン砲に変形。エクスヴァーンとシグナたちがそれを構える。

エクスヴァーン「行くぞ、シグナたち!」
一同「はい!」
エクスヴァーン「グランミラーキャノン!」
一同「ファイヤ──ッ!!」

グランミラーの放った光弾が鬼蜘蛛に炸裂。

鬼蜘蛛「グワァァ──ッッ!?」

鬼蜘蛛の姿に一瞬、優生の顔が浮かび上がり、そして──大爆発。


戦いが終わり、さりあたちがヘルメットを脱いで素顔を晒す。
倒れている折尾光四郎=オリオンのもとに、エクスヴァーンが歩み寄る。

オリオン「はぁ、はぁ……マスター……」
エクスヴァーン「光四郎……!」

エクスヴァーンの差し出した手を、オリオンが握り返す。
2人の交わす握手を見て、さりあたち4人にもようやく笑顔が戻る。


後日。

街角に佇む、さりあと雪人。

雪人「ヴェッカーには……なれないの?」
さりあ「私には無理だったんだよ、やっぱり。未来に戻って、また一からやり直すよ」

雪人が包帯だらけの自分の拳を見つめる。

さりあ「うん。結果がどうであっても、私はまた何度でも頑張るんだ!」
雪人「春日にはもう……占いは必要ないんだね」

雪人が歩道橋の淵に立つ。
ずっと愛用していたタロットカードを取り出すと、意を決して歩道橋の上からばら撒く。

さりあ「あ……」

カードが風に乗って散らばってゆく。

さりあ「新末くん……」
雪人「俺も頑張るよ! 俺の中に流れるオリオンの血が、優生なんかを生み出さないために。春日と一緒、俺も何度でも頑張るんだ!」
さりあ「ありがと、新末くん」


ヴェッカーシグナ研修最終日


建物の屋上。さりあと雪人が青空を眺めている。


雪人がさりあに手を差し出し、握手を求める。
さりあがその手を握り返そうとするが……かすみが現れたのに気づき、慌てて手を引っ込める。

かすみ「サリー、緊急指令だ」
さりあ「き、緊急指令!? で、でも……」

玲菜と光四郎が駆けてくる。

玲菜「行くよサリー、任務だ!」
さりあ「ちょっと待って玲菜、私ヴェッカーには……」
かすみ「だから、ヴェッカーじゃなくて時空特捜。私と同じ特別捜査官だ」

るり香とえみりも、嬉しそうに駆けつける。

玲菜「私より格上の特別捜査官なんて、さりあの癖に生意気だけど」
さりあ「え……!? じくーとくそぉ!?」

事態を飲み込んださりあが元気に駆け出し、皆に向かって笑顔で敬礼を決める。


さりあ「時空特捜サリー、現場へ急行します!」
一同「SIG!」


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