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sh15uya(シブヤフィフティーン)の最終回 (漫画版)


エマと共にシブヤを出る約束を交わしたツヨシに、ケンゴはシブヤの正体を明かす。
問題を抱えた少年少女たちの精神治療のために作られた仮想世界、それがシブヤだった。そしてエマこそが、シブヤのシステムの最初の被験者だった……


突如として無人となってしまったシブヤの街。
上空の飛行船から、数え切れないほど大群のピースが舞い降りて来る。

エマ「こんな…… こんな事って……」

頭上に現れるエスコート。

エマ「そうね 戦うしかないのよね」

エスコートを装着。マージした姿のエマが無数のピースに立ち向かう。


Sh15uya Face.04


タトゥーショップ・KOYA。

ケンゴにより店の奥の空間に招かれたツヨシは、現実世界の一部の光景を見せられる。
白衣姿の人物たち。彼らの囲む機械仕掛けのカプセルの中に、少女の姿。

ツヨシ「これは……」
ケンゴ「さて……さっきの話のつつきだ えーと……」
ツヨシ「エマが実験の一号だったって……」
ケンゴ「そうそう 実験って言うからにはデータを取るため負荷をかける 負荷をかければ当然問題が発生する 大抵はそういう問題は予想されるもんだが…… だが…… システムを構成したスタッフの誰も想像しなかった事故が起きたんだ」
ツヨシ「……」


「どういう事だ システム波長にエマの信号が見えるぞ!」
「侵入を止められません」
「じわじわと同化していきます」
「ありえん……こんな事が…… エマが……システムを吸収している!? エマとシステムとの回線をふさげ! エマを戻せなくなるぞ!」
「でも急停止をかければ肉体のダメージが」
「システムと同化してしまったら永遠にエマは失われる」


ケンゴ「結局 メインシステムを吸収される事はまぬがれたものの エマは肉体にダメージを負い ここから出られなくなってしまった……」
ツヨシ「それじゃ……エマは……この街から出る事はできないんスか?」
ケンゴ「…… 肉体的治療は既に済んでいる だが問題は中身だ システムとエマは…… 今や鎖の様な物でつながれてしまっている……だが本人は恐らく無意識だろう」
ツヨシ「何か……方法があるでしょ!? そこまで原因がわかってるなら……!! !? ちょっとまてよ ひょっとして……その方法っていうのは…… エマと似た能力だから……オレを……
ケンゴ「そうだ……オマエにはエマをここから連れ出して欲しかった……」
ツヨシ「ちょっとまって下さい そこまでわかってるならなぜ自分でエマを連れ出さなかったんスか!? オレをここに呼ぶ前に! いや……ココの事をそんなに知ってて……オレを呼べもする それどころか…… あなただってエマの様にシステムに適応して自分を保ってるのに……!」
ケンゴ「できるなら……そうしたかったな……だがオレに出来たのは オマエをこの『シブヤ』へ連れて来ること…… それだけで精一杯だったんだよ……!」

突如、空間に亀裂が走る。

ケンゴ「ツヨシ!!

空間を砕いてピースが現れ、ケンゴがツヨシをかばう。

ケンゴ「くそっ……」
ツヨシ「ピース!!
ケンゴ「もうここも侵入されちまったか…… 仕方ない…… ここを出るぞ!」

その空間から飛び出すツヨシとケンゴ。

ツヨシ「うわっ ケンゴさん平気っすか?」

倒れ込んだケンゴに触れるツヨシ。

ツヨシ「!? ケンゴさん……そういう事だったんスね…… あなたは…… あなたはプログラムなんですね だから……」
ケンゴ「その通りだ…… オレがエマを連れて出れない理由はそれだ しかし……驚くほど覚醒が早まってるな オレに触れた時……わかったのか?」
ツヨシ「ええ……頭の中に流れてくる感じで」
ケンゴ「今のオマエならここのプロテクトも外せるだろう…… あとは…… !?」

無数のピースが現れる。ツヨシたちの顔に緊張が走る。
だがそこへエマが現れ、ピースたちを倒す。

エマ「ツヨシには手を出させないわ……」
ツヨシ「エマ!
ケンゴ「……」

ピースたちと戦いを繰り広げるエマ。
だがエマの力をもってしても、ピースは次から次へと襲って来る。

エマ「キリが無いわ」

ピースの攻撃でエマが体勢を崩す。

ツヨシ「うぐっ

そこへピースたちが一斉に襲いかかる。
だがツヨシがエマの前に立ち塞がる。

ツヨシ「今度こそ…… 邪魔をさせるか……! オレはエマを連れてここから出ると 約束したんだ!!

ツヨシの繰り出した素拳が砲弾の如く、ピースを粉々に砕く。
さらにツヨシが腕をなぎ払うと、無数のピースが次々に砕け散る。
その戦いに目を見張るエマ。

ケンゴ「これがツヨシの力だ 今やツヨシにはシブヤの法則など何の意味ももたない ピースをねじふせる事なんて造作もない事だ……」

マージしたエマですら苦戦したピースの大群を、ツヨシは圧倒的な力で次々に倒していく。

ケンゴ「だが……この世界を終わらせる事は ツヨシだけでは無理なんだ その事にツヨシも気付く頃だ……」
エマ「それって……どういう事?」

無数のピースが一掃される。

ツヨシ「どういう事なんスか
エマ「ツヨシ……」
ツヨシ「ケンゴさん……これも……知ってたんスか!? ピースも誰もかれも皆……エマじゃないか!!

エマが呆然となる。

ケンゴ「……」
エマ「それ……どういう……」
ツヨシ「ピースの消し方がわかった時……そのコアが見えたんだ…… ピースを形成しているのはプログラムだったけど……コアは……人の一部…… 心の一部だったんだ…… そして……それはエマ……君だって……わかった…… つまり……この世界には エマとオレしか存在してないんですね……
ケンゴ「ああ…… ピースだけじゃなく……アサギや……ほかの人間全て……オレやオマエを除く者 全てがエマなんだ」

エマ「何を……言ってるの?」
ケンゴ「エマ……君は実験によってこの世界に立った初めての人間…… そして……システムと同化してしまったためにシブヤに置き去りにされた唯一の人間 たった一人でシブヤに居る事に耐えられなくなり シブヤシステムの持つ人格を与える機能を使って 自分を切り分け 町の住民とした さらに自分の存在理由として……ピースを狩る能力を自分自身につけ加えた……」
エマ「うそよ……」
ケンゴ「エマ…… 本当は君が一番知ってる事だろう?」
エマ「やめてよ…… やめてえぇ──!!

エマが閃光に包まれる。

ツヨシ「エマァ! だめだ! エマ!」
エマ「来ないで!!

強烈な衝撃がツヨシを吹き飛ばす。エマが光の中へと消えて行く。

ケンゴ「ツヨシ……エマを……救ってやれ!」
ツヨシ「ケンゴさん! でも……どうすれば……」
ケンゴ「エマはきっと……システムの中核へ分離されている自分の所へと向っている……」
ツヨシ「そこへ閉じこもってしまうんスか?」
ケンゴ「いや……システムの崩壊はもう始まっている オマエが目覚めた時からな……」
ツヨシ「じゃあ このままじゃ……エマも!」
ケンゴ「そうだ このまま帰ったとしても エマの心はバラバラのままになってしまう だから一刻も早くエマの所へ行くんだ」

次第にケンゴの体が消え始める。

ツヨシ「ケ……ケンゴさん」
ケンゴ「オレの事ならいいから……始めから覚悟の上だ…… オレはそのためにここへ生み出されたプログラムだからな…… いいか! ぜってーだぞ エマの鎖を切って……二人で現実へ戻れ……」
ツヨシ「ケンゴさん……ありがとう……」
ケンゴ「んなハズカシーこと 面と向って言うなよ」

ツヨシ「エマ…… 今 行くからな……!!


そう……
私……本当はわかってた……

私は……戻れないんじゃない……戻りたくなかったの
あの人のいう通り……
私は……自分だけの世界にこもってしまっただけ……

さっきツヨシにふられた時……思い出してしまった……
私がとじこめていた現実での記憶……
私が犯した罪……

こんな私を……ツヨシに……
知られたくない……


どこかの空間。

座り込んでいるエマの背後から、声がする。

そうよ…… こんな私が現実へ戻っても結局 居場所なんてないのよ

エマが振り向くと、そこにはもう1人の、黒い髪のエマが立っている。

黒エマ「私の居場所はここだけなのよ……わかるでしょ? 私なら
エマ「私……が……もう一人……」
黒エマ「私が犯した罪は 決して消えないのよ 本当の私を知れば……ツヨシは決して私を受け入れてはくれない 外へ出たって私の事を許してはくれないね 私の未来はここにしか存在しないのよ…… 私なら……私を許せる 私なら私を受け入れてあげられる この世界なら 私は私を守ることができるわ……
エマ「そうだ…… 私は……結局 一人なんだ…… (こんな私は……ツヨシと一緒に出る資格なんて……)」

黒いエマが、エマを抱きしめる。

エマ (さよなら……ツヨシ……)


ツヨシ「一緒に変化を起こすって約束したろ エマ!

(ツヨシ『変化を起こすためにシブヤを出よう……エマ』)

エマ「ツヨシ……」
ツヨシ「エマ……オレはエマに会って 初めて自分を変えたいと思った……!
黒エマ「ツヨシ……やめろ……私をまどわすな
ツヨシ「オレも……現実では自分のカラにこもりっきりだった 誰からも必要とされず……親からも見捨てられて…… でも……エマ……君はオレを必要としてくれた

エマの閉じこもった空間を、ツヨシが必死にこじ開ける。

ツヨシ「何度ピースに殺されて……違うオレになっても…… 必ず戻ってくると俺を信じてくれた! オレにはそう思ってくれる人が エマが必要なんだ! 自分を変えられると……そう思わせてくれる人がいるかぎり…… オレ達の居場所なんてなくならない! オレ達の未来はこんなオリの中には無いんだ!! エマ!

エマの空間にツヨシが飛び込んで来る。

黒エマ「うるさい!

黒いエマがマージしてツヨシに矛先を向ける。

黒エマ「何がわかるオマエに オマエに…… 私が守れるというのか? 私を守れるのは……私しかいない!!

ツヨシ目掛けて突進する黒いエマを、マージしたエマが捕えて投げ飛ばす。

エマ「あなたが欲しいのはツヨシの心じゃないでしょう……」
黒エマ「今さら誰を信じようというの!
エマ「シブヤのシステムを吸収してしまった時」
黒エマ「何をしてももう遅いのよ!
エマ「自分の都合のいいように……自分の嫌な部分をシステムにおしつけてしまった…… 心の暗闇の部分…… それで生まれ変わった気でいたの……」
黒エマ「明るい未来なんて来ないわ!!
エマ「でも……それは間違い…… だから……」
黒エマ「私はそんなもの信じない!

黒いエマがエマ目掛けて攻撃を繰り出す。
だがエマは攻撃を避けるどころか、黒いエマを抱きとめる。

エマ「私はあなた あなたは私 あなたは私を……私の未来を否定したけど…… 私は 私を否定するあなたも 私の未来も受け入れるわ…… 全ての私を認めた上で……私を変えてみせる……」

穏やかな表情で、エマが黒いエマを抱きしめる。

エマ「明るい未来だけじゃないのはわかってる……泣いたり……悩んだり……後悔したり……辛い事がいっぱいある事も…… でもいい事も同じくらいあるはず……私は大切な人と……一緒にそんな未来を見てみたいの


ツヨシ「出よう……エマ…… オレ達の未来はこんな場所におさまるほど……ちっぽけじゃない……」

手を取り合うツヨシとエマ。

ツヨシ「だから……戻ろう……
エマ「うん ツヨシ……


ケンゴ「やったな……ツヨシ…… あとは最後のシアゲだな…… ツヨシの因子をシブヤの全てに……」


光が弾け、シブヤの世界を包んでゆく。


現実世界、どこかの部屋。
ケンゴがツヨシに見せた、白衣姿の男の1人が、モニター類に目を見張っている。
画面には無数の「ERROR」の表示。

「これは……どういう事だ……シブヤが……私のシステムが……」
「いえ……これでいい……と思いませんか? 教授」

教授と呼ばれた男の背後には、白衣姿のケンゴ。

教授「まさかオマエが……そうなんだな……」
ケンゴ「まあ 否定はしませんがね 私はあくまで手を貸しただけですよ 彼らに」

教授「…… 貴様! 自分が何をしたのか わかっているのか!?
ケンゴ「あなたこそ 自分が何をしていたのかわかっているんですか? 私達は……あの子達の未来を閉ざそうとしているんですよ?」
教授「システムの制約がきかない二人の事かね? だったら……」
ケンゴ「あの二人だけじゃない……ここの子達全員です…… いや 未来の子供達かもしれない 仮想空間であえて争わせ 行きすぎた事があればピースに処分される…… 死のトラウマを与えて犯罪を未然に防ぐ 聞こえはいいかもしれないが これは単なる恐怖政治だ」
教授「それはあの子達を更正させるのに必要な手段なのだ」
ケンゴ「本当にそうでしょうか? あの子達が大人になった時……彼らは子供達にどんな事を教えてやれるのでしょう? 子供達の育つ環境は大人達がつくるもの…… あの子達にとって一番多感なこの時期に効率だけを求めて恐怖で更正を計るよりも…… 時間がかかってももっと大切なものを与えてやる事が……一番なんじゃないでしょうか?」

教授「だからといってすべてのシブヤを 消すなど……キサマにそんな権利が!?」
ケンゴ「システムを造ったあなたならわかるでしょう エマやツヨシはシステムの制約がきかない……そしてツヨシはそれを破る力がある……だがそれ以上に ツヨシの因子は人へ感染するんですよ…… 遅かれ早かれ同じ事になったのは確かです」
教授「バカな……
ケンゴ「原因なんてわからないし そんなこと今となってはどうでもよい事です 一番 大事なことは……二人が自分を変えようと動いた事 そして……それはシブヤというシステムによるものではなく……人と人とのつながりによるものだったという事です


陽射しの照らす桜並木の下。

学生服姿のツヨシとエマが出逢い、手と手を取り合う。


おかえり……

ただいま


Sh15uya end
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