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●前回までのあらすじ

街に落下しつつある巨大隕石を止めるため、宇宙に赴いた光一。

梅子と姫子が見守る中、己の全身全霊を振り絞った念動力を発揮した彼は、見事に隕石を消滅させる。

その瞬間、梅子は光一がBクラスサイキッカーではなく、Aクラス”神の杖(サイコスタッフ)”であることに気がついたのだった。





光一「う・・・」

  (隕石を消滅させ力を使い切って気を失ったはずの光一。目が覚めたら部屋の布団で寝かされていた)

  むくっ(布団から体を起こす光一)

光一「生き・・・てる」

  (光一を見守る梅子)

光一「梅子・・・あれからどうなった? 隕石は?」
梅子「おはようございます光一様」
光一「は!? 光一様!?」
梅子「隕石は光一様のお力により消滅しました」

  (別人のように丁寧な態度で跪く梅子)

梅子「光一様はその直後に気を失い 丸1ヶ月お眠りになられてました」
光一「1ヶ月!? てことは・・・てかなぜ様をつける!?」
梅子「ヤディスの科学者のあの女によれば、光一様の志望校の後期日程は先日終わったとのこと」

  (唖然と話を聞く光一。思わず後方に倒れかける)

梅子「態度を改めたのは光一様の正体が判明したからです」
光一「正体ってなんだよ」「異世界の転生戦士だったのおれ?」

  (本気にしていない風の光一に対して、正座して真顔で答える梅子)

梅子「あなたはAクラスサイキッカー」「すなわちこの地の神です」





●最終話 普通の人




  くらっ(あまりのことに気が遠くなる光一)

梅子「しっかりしてください光一様」
光一「しっかりしろ梅子!!」

  (動揺する光一に対し梅子はあくまで真顔だ)

光一「おれが神!? バカ言うな」「おれは受験に失敗した・・・浪人生!! ただの・・・」「超能力浪人だッ!!」

  バッ(泣きながら念動力で飛び出していく光一。その様子を見つめる梅子)




  はー(ため息をつきながら柵に座り込んでいる光一)

梅子「光一様探しました」
光一「・・・・・・様はやめろ様は」

  (トランジットに乗って探しに来た梅子)

梅子「そうはいきません 今までの無礼ご容赦ください」
光一「・・・・・・」

  ふわっ(念動力で宙に浮く光一)

梅子「そ それで改めて我が星ルルイエに来ていただきたいと」
光一「言ったろ大学落ちたからって超能力部隊(サイコスタッフ)になんか入らねえって」
梅子「・・・本来サイコスタッフとはAクラス・・・神の振るう奇跡の力『神の杖』『超常精神の杖』のことを言います」
  「我が星の超能力部隊はその名にあやかっているまがいものです」
  「光一様のことは兵員としてではなく客神(まれがみ)としてお迎えしたいと・・・」
  「本物の『神の杖(サイコスタッフ)』として」
光一「行かねえって 普通にしゃべれ」
梅子「・・・・・・」

  (顔を曇らせる梅子)

梅子「申し訳ございません できません」「・・・それに光一様は大人しい態度の者がお好みだったのでは・・・」
光一「バカ!! おれが好きなのは無茶苦茶でアホだけど努力家のいつもの・・・」
梅子「うえっ!?」
光一「うっ!!」

  (咄嗟に顔を赤らめる二人。そこへ・・・)

姫子「甘酸っぱいですねー 青春ですねー」

  (まさしく甘酸っぱいムードの中に、いきなり立体映像で割り込んでくる姫荻姫子)

  (見ると、小型化したドップラーが立体映像を空中に投影している)

梅子「ドップラー!? いつの間に」
光一「先生・・・」
姫子「光一くん 18歳の誕生日おめでとうございます」
梅子「へっ!? そうなの?」
光一「えっ・・・今日か ども」
姫子「さて・・・そろそろ出生時間ですが」「3」「2」「1・・・」
  「ゼロ」


  (姫子が宣言した瞬間、光一が真下に落下していく・・・)


梅子「光一くん!?」
光一「なっ・・・」


  ガッ(トランジットの腕に掴まれて助かった光一)


光一「・・・・・・」
姫子「あらあら・・・まさかとは思ったけど・・・やはり・・・」
梅子「なに!? どういうこと!?」
姫子「・・・光一くんの『神の杖』は借り物だったんですよ」「それが正しく使用され、今、返却された」「つまり」
  「光一くんの超能力は消滅しました」
  「光一くんはもう 普通の人です」
梅子「う・・・うそ・・・」
姫子「たまにあるケースなんですよ」
  「Cクラスサイキッカーが自然災害などを抑えるためにBクラスの力を発揮し次の誕生日に能力を失うというは」
  「今回はそれがBからAと大規模だっただけです」

  どさっ(トランジットの上に放り出された光一)

光一「てて・・・ふー・・・」
  「そうか」

  (どこか晴れやかな様子の光一)

光一「だってさ梅子 もう様とかやめろよ」
梅子「・・・ご・・・ごめん・・・」
光一「じゃおれ飛べなくなっちまったからこのまま送ってくれよ」
梅子「あ・・・なっ・・・なんで? なんでそんな」「へっ・・・平然としていられるのよ!?」
  「なんでもできる無敵の力だったのに それを一瞬で失っちゃったのになんでそんな普通なの!?」
光一「何言ってんだ あんな無闇なバカ力 隕石止めるくらいしか使い道なかったろ」「おれはこれで納得できたし満足だ」
  「だから いいんだよこれで」

  (トランジットに乗って家路に着く光一・・・・)




  (光一の高校。卒業式が開かれている)

校長?「えー卒業おめでとうございます」「みさんはこれから社会の・・・」



  ぽーん(卒業証書の入った筒が投げられる)

鈴木「帰りゲーセン行こうぜー」
光一「最後までそれかよ そういやお前大学は?」
鈴木「受かったよ東大」
光一「へ・・・へぇ おめでとう・・・ゲームばっかしてたくせに・・・」
鈴木「おうよ」

  (ろくに勉強もせずに大学合格した天才に動揺が隠せない光一)

姫子「光一くん卒業おめでとうございます」
光一「先生」
姫子「梅子さんはどうしました?」
光一「あいつなら・・・」
  「昨日の晩飯の後 ルルイエに帰りました」「もう地球(ここ)には仕事がないから・・・って」
姫子「あら・・・あっさりしたものですね」「私はてっきり梅子さんは光一くんのことが好きなんだと・・・」
光一「それはないですよ」
  「・・・先生はどうするんですか おれの監視はもう意味がないでしょう」
姫子「地球に残りますよ。基地もせっかく作りましたから他の研究を続けます」
  「あ 一応言っておきますが基地のことを口外したら、不慮の事故にあいますよ」
光一「・・・・・・」

  (先に言っていた鈴木が光一に呼びかけた)

鈴木「光一ー」
光一「別に言いやしませんよ」


  (鈴木といっしょに歩く光一)
  (ゲームセンター前で鈴木と別れ、ひとり家路に着く光一)

  (例の柵の前まで来た光一。大きく息を吸って・・・・)





光一「梅子ーーーーーーーー!! 好きだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」





  (宇宙へ届けとばかりに大声を張り上げる光一)

光一「・・・・・・」「あースッキリした」


  (帰ろうとする光一。ふと横を見るとそこには顔を赤くした梅子が・・・・・)


  (同じく顔を赤らめあんぐりと口をあける光一)


光一「何でここに居ごふッ!!」
梅子「名指しで絶叫告白するなーーーーーーーーーッ!!」

  ドゴォ(梅子の蹴りを腹に食らい悶絶する光一)

光一「ごふっ・・・なん・・・で」
梅子「わっ・・・忘れものよ」
光一「?」
梅子「無敵の念動力を持ってたくせに 神様だったくせに それを失っても変わらない」
  「・・・そんな心の強さがきっと光一くんの最強の超能力なんだわ」
  「私も・・・自分で自分を誇れるようにもっと努力して いつかルルイエで一番偉い人になってみせるわ」
  「・・・今は帰らなきゃいけないけど 私用で恒星間航行できるくらい出世するにはどのくらいかかるかわからないけど」
  「それまで私のこと忘れないように呪いをかけに戻ってきたの」
光一「呪い!?」
梅子「うん それが忘れもの」

  (あからさまに怯えている光一に対し梅子は・・・)

「じゃ またね」



  (光一の視界を片手で塞ぎ、そっと口づけする梅子)

  (光一が再び目を開けたときには、すでに梅子の姿はなく・・・・・・)





  ミーンミーン(セミがやかましく鳴いている。もう夏のようだ)

  (光一の父が交番で仕事をしている)

父「おう光一 また図書館で勉強か」「一時は神様にまで出世したというのにその謙虚さ感心感心」
光一「言ってろ親父 今はただの浪人生だ」
父「そうだな じゃ地道に頑張れよ」
光一「ああ 地道に頑張るよ」

  (父と別れ図書館へ歩いていく光一)


光一(超能力があった頃は人と違う自分に優越感を感じることはなかった)

  (でも今はひとつだけある 人と違うところを自分で気に入っている)

  (宇宙人に惚れた男)

  (・・・なんて60億人に1人くらいなもんだろう)

  (超能力なんかなくても いつだっておれはおれってだけで特別な気分になれた)




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