●前回までのあらすじ
雷仁飛(レイ レンフェイ)に誘拐されたチカを救出すべく、彼のビルに乗り込んだ光たち。
仲間達の協力を得た光は、ついに父の仇である毒手の使い手・雷仁飛を倒し、チカの救出に成功する。
そして、いよいよ陳(チェン)老師が地球を訪れる日がやってきた・・・
●SABER CATS FOREVER
(光が住むマンションの一室。中では光がスーツを着ている)
鳳岩(フォンイェン)「珍しいかっこしてんなァ」
(天井裏から顔を出す鳳岩。ジャンプして降りてくる)
鳳岩「お出迎えだな、いよいよ」
光「チカはどうしてる!?」
鳳岩「どうって・・・まあぼっとしてるよ。生まれて初めて父上に会えるんだ。どう迎えるか考えてるんだろ」
ピッピッ、トゥルル(テレビ電話をかける光。チカを画像が映る)
光「やあ、そっちへ行ってもいいかい!? 話したいことがある」
鳳岩「なんだなんだ話って!?」
光「老師方が来られる前にけじめをつけておきたいんだ」「これまでのいきさつをな」
チン…(受話器を置く光。怪訝な顔でそれを見ている鳳岩)
(チカの部屋。スーツを着た光がチカの前に立っている)
光「長い間つきまとって、不愉快な思いをさせた」「申しわけない」
チカ「な・・・なによ急に改まって!?」
光「イェン老師の言いつけだった」
チカ「!?」
光「陳老師とともに地球に行くまでキミを守れと」
チカ「・・・・・・そう・・・」
(表情を曇らせるチカ)
チカ「良かったわね!?」「あなたは見事にやりとげたわ!! 胸を張って老師に会える!!」
光「見事なもんか!!」
(首を振って否定する光)
光「キミを危ない目にあわせた!!」「キミの母上や鳳岩、怒麻先生、マサイアス」「キミも含めてみんなの助けがなかったら
とてもーーー」「ボディガード失格さ」
チカ「・・・・・・・・・」「ねえーーーーパパを迎えるのどんな服がいいかしら!?」
(衣装箱を開けるチカ)
チカ「これんなんかどう!?」「それともこっちかしら!?」
(取り出した服を光に見せるチカ)
光「きれいだ」「まるで・・・いや・・・」「キミはキミだ」「たとえようもないよ」
(わずかに頬を赤らめながら話す光)
チカ「・・・・・・」
(涙を流すチカ)
光「!? どうした!?」
チカ「うれしくない・・・うれしくないよ、ちっともォ!」「何もかも『お仕事』だったの!? 老師の言いつけ!?」
「そうよね!! でなきゃ見ず知らずのあなたが、あたしみたいな娘のために体を張るなんて・・・・・・」
光「チカ・・・」
(光に肘鉄を食らわそうとするチカ)
チカ「バカだったわ。夢を見たのよあたし」「たわいない夢を・・・」
(涙を流しながら話すチカに対し光は・・・)
光「オレも・・・・・・確かに最初は『お仕事』だった。イェン老師に命じられて地球(ここ)に来てーーーー」
「でも少しずつキミとの時間が積もるにつれて、オレも『夢』を見るようになった」
チカ「嘘よ!!」
光「初めは『夢』だと思ってた。だけどただの『夢』ではないと、ある時オレは気がついた」
「仁飛ビルに行ったのはオレが行きたかったからだ。キミのそばにいたかったからだ」
「キミと会えてうれしかった」「そして今もーーー」
(涙がとまらないチカ)
光「今でもオレはうれしいよ」
(光の言葉に声を上げて涙を流すチカ。彼女を胸に抱く光)
(時が流れ、朝日が照らす。チカにスーツの上着をかぶせてやっている光)
チカ「お別れねもうすぐ・・・」「そんな気がするの。なんとなく」「あなたの老師とパパが来て、でもすぐにどこか遠くへ
いっちゃうような・・・」
光「・・・・・・・・・恐ろしい人だなキミは」
チカ「え!?」
光「たいした勘だ。名賞金稼ぎ(ハントレス)と言われるわけがやっとわかったよ」
チカ「まぁ!! あんなにマヌケなのにって言うんでしょ!?」
イェン「陳は」「最後の話をしに行くね」
光「最後の話!?」
(光が地球に来る前、イェン老師と歩いている)
イェン「妻と娘によ」
光「?」
イェン「彼、八卦門(パーコァメン)の老師見つけたよ。入門もね」「でもその老師高齢。あとどれくらい生きるかわからない。
学ぶ時間、残り少ない人」
(さらに回想。イェン老師と陳老師が話している)
陳「これが最後の機会だなあ」
イェン「そうね」「あの老師亡くなれば八卦門の真伝もともに無くなる」
陳「妻や娘に会えるのも」
イェン「?」
陳「ボクにはわかるんだ。これが最後の機会だと」「木綿子も智華もずいぶん待たせた。このまま老師の元へ行ったなら、
出てきた時は遅過ぎる」
イェン「欲ばりねあなた。八卦掌(パーコァチャン)も妻も娘もみな欲しいか」
陳「笑うかい!?」
イェン「いや・・・」「家族は大切よ。武術(ウーシュウ)するにも家族はとても大切よ」「今からでも遅くない」
「たとえダメでも、行くのいい思います」
イェン「陳は準備に時間かかる」「その間あなた、陳の代わりに娘守る」「明白馬(わかったか)!?」
光「是老師(はいせんせい)!!」
チカ「欲ばりだわ本当に。十何年もほったらかしといて、今になってどちらも欲しいだなんて」
光「かけがえのないものだから。どちらもね」「大切なものは失くして気がつく」
(雷仁飛に殺された父のことを思い出す光)
光「失くなる前に気がつけば何だってする。オレはそれを笑えないよ」
チカ「笑わないわ。あたしも」「それで!? 結局パパは何しに来るの!?」
光「挨拶・・・かな・・・・・・」
チカ「挨拶!!それだけ!?」
光「陳老師の最後の挨拶さ」「でも本心はーーー」「いっしょに行って欲しいんだ」「自分からはけっしておっしゃらないだろう」
「十何年もほっておいて、言えた義理じゃないからな」「でも本心はいっしょに行って欲しいんだ」
チカ「その・・・・・・パー・・・ナントカの老師の星へ!?」「ダメよ、そんなのォ!!」「あのママが何て言うと思う!?」
光「想像はつくよーーー」
光とチカ「「冗談じゃないよォ!!」」
木綿子「冗談じゃないよォ!!」
(こちらは木綿子の移動式中華料理屋。光とチカの想像通りのセリフで怒鳴っている)
(店のカウンターには、客に混じって座っている陳老師が)
木綿子「いったいどのツラ下げてあたしん所に来たのかね!?」
陳「何とでも言ってくれ。すべてキミの言うとおりだ」
木綿子「いや・・・だからその・・・」
客「よォよォおっさん」
(陳の隣の席の客が文句をつける)
客「ママやだっつってんだろォ!! 帰れよ!!」
イェン「あなたなにね?」
客「!?」
(いきなり客の後ろからぬっと現れるイェン老師)
イェン「ほああっ!!」
木綿子「ちょっと!! お客さんに何すんのさ!!」
陳「乱暴はいけないよ、イェンくん」
バシッ(何やら乱闘が始まったらしい店内。その外では光と鳳岩がテーブルを囲んでいる)
鳳岩「貸し切りになんなかったのかよ!? せめて老師のお帰り日くらい」
光「太々(タイタイ)がいやだとおっしゃるんだ、仕方なかろう」
鳳岩「・・・・・・・・・」
ワーワー(乱闘が治まる様子が無い店内)
鳳岩「うれしそうだな」
光「そうか!?」「チカは言うに及ばず太々も」「あれでけっこう楽しそうだ」
(店の窓から大乱闘の様子が見える)
光「家族はいい・・・」
鳳岩(そうか・・・おめえは・・・そうだったな・・・)
光「おい!! 陳老師も動いたぞ!!」
鳳岩「ばび!?」
ぶっ(飲みかけのスープを吹き出す鳳岩)
光「見ろよ、ありゃあ八卦腿だ!!」
鳳岩「どれ!?どれ!?」
(さらにヒートアップしている店内のよそに、拳法技の話題で盛り上がる光と鳳岩)
(そしてこちらは宇宙。卵型の宇宙船に乗っているのは陳老師とイェン老師)
(宇宙船の窓から外を見ている二人)
イェン「来なかったね、やはり」
陳「ふふ・・・いいのさ」「脈はある」「『赤縄子(あかいいと)』は切れてない」
イェン「・・・・・・」
陳「いや・・・もう一組増えたかな?」
イェン「?」
トントン、バタッ(ドアがノックされ、光が入ってくる)
光「老師。お探しのタバコ、船首のデューティーフリーにありました」
イェン「ごくろう」
光「最初の跳航は30分後。乗り換えの第八分岐点(ジャンクション)には9時間後に到着予定です」
陳「その売店、月面産のサラトガは?」
光「メンソールでなければ」
陳「すまないが1カートン」
光「是老師(はいせんせい)」
(陳から金を受け取り部屋を出て行く光)
イェン「もう一本はあの男ね」
陳「そうだ」「別れぎわの智華を見たろう。『君子于役』のありさまだった」
(「君子于役」とは労役のために遠くへ行かされる夫を想う妻の詩である)
(まさにその詩のように、光にすがって涙を流しているチカ)
陳「八卦掌の郷里にキミはいつまでとどまる気だ!?」
イェン「すぐ帰る。まずは表敬訪問ね」
陳「あの子も時々帰してやれよ」
イェン「あなたそれどの意味の!?」
陳「地球にやってようすを見させてやってくれ」「若い『縄子』は切れやすい。ボクと木綿子の二の舞は・・・」
イェン「まあスクネならまちがいないよ」
陳「そんな顔だ」
チャッ(光がタバコを買って帰ってきた)
陳「一服したら一眠り」「両儀掌の夢でも見るか」
(光からタバコを受け取る陳老師)
(宇宙船は果てしのない宇宙を飛び続けている・・・・)
(さらに場面変わって、こちらはどこかの都会)
?「真歩ちゃーんっ」「そろそろパパをお迎えに行く時間よーっ」
真歩「はあーーーいっ」
(真歩と呼ばれた女の子の母親らしき女性に連れられて部屋を出て行く)
真歩「ロビン、マリアン、おるしゅよろしくねーーー」
(真歩にそう言われたのは、チカが飼っていた剣歯猫のロビンと白い猫。そして子猫たち)
(部屋の壁にはたくさんの写真が貼ってある)
(光とチカの結婚式や、親しい人たちの写真が・・・・)
再 見