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新・地獄少女の最終回


※ テレビシリーズ『地獄少女 三澪』とほぼ同じですが、ラストは異なります。


|第10話|


輪入道「真山 梓…… おめぇさんの親友を地獄に流した女が最初のターゲットとは 因果なもんだ……」
ゆずき「(秋恵…… わたしも…… 真山 梓を地獄に流してやりたいと思った ……まさか直接 自分の手で流すことになるなんて思ってもみなかったけど これで…… 秋恵の怨みを晴らすことができるよね……?) 依頼人は高杉憲久 秋恵のお父さんよ」


高杉家の夜。自室の高杉のもとに、突如、ゆずきが現れる。

ゆずき「高杉さん」
高杉「きみが…… 地獄少女!? ほんとうにいたのか……!! たのむ…… 怨みを晴らしてくれ!!」
ゆずき (……やっぱりわたしは みんなの記憶から消えてしまってるのね……)

ゆずきが藁人形を高杉に渡す。

ゆずき「あなたがほんとうに怨みを晴らしたいなら この赤い糸をひいてください そうすれば契約は成立 怨みの相手はすみやかに地獄へ流されます ただし……人を呪わば穴二つ あなたの魂も死後 地獄におちることになりますけど……」
高杉「地獄か…… 秋恵がいなくなってからの日々にくらべたら つらくはないさ…… 真山梓が殺したんじゃないかとしらべたが なにもでてこない 仕事までやめて さがしてさがして…… 地獄通信を知ったんだ そして思い出した…… 真山梓の胸に 契約の刻印があったことを!! あの女が秋恵を地獄に流した!! わるいのはわたしなのに!! わたしを流せばよかったのに……!! 法律は裁いてくれない だったらわたしが……」
ゆずき「(あの人も同じことをいってた…… 法律なんかじゃ晴らせない怨みや憎しみが この世界にはあふれてる そのために地獄少女(わたし)が必要なんだ) そうです あなたがさばくんです 秋恵のためにもあの女を……!!」

高杉が立ち上がる。

ゆずき「どこへ……?」
高杉「見届けてやる…… あの女が地獄へ流される瞬間を この目で……!!」
ゆずき「えぇ…… それがいいですね……」


真山梓の自宅アパート。高杉が窓を覗く。
寝たきりで意識のない父を、梓が必死に世話している。


夜の公園。ベンチに座り込む高杉と、ゆずき。

ゆずき「どうしたんですか? 高杉さん」
高杉「これ…… 返すよ」

高杉が藁人形を差し出す。

高杉「わたしにはできない……」
ゆずき「どうして!? あの女はあなたの娘を!!」
高杉「ああ 憎いよ!! ぜったいにゆるせない!! ……しかし…… 真山梓を流さなくても……」
ゆずき (え……?)
高杉「どうせ彼女は地獄におちる むくいは受けるんだ……」

高杉が去る。

ゆずき (どうして……?)
輪入道「なにがあったか知らねぇが 仕方ねぇ…… 帰るぞ」
ゆずき「(これじゃ……秋恵の怨みは晴らされないじゃない…… わるいことなんてしてないのに 真山梓に地獄に流されて…… 秋恵は……!!) わたしが流すわ」
輪入道「なにっ……!? それはゆるされねぇ…… 契約が成立してないのに流すなんてのは…… 地獄のおきてにそむくことになるぞ!!」
ゆずき「なんで!? このままじゃ 秋恵がかわいそう……!! 晴らせぬ怨みを晴らすために地獄少女がいるんじゃないの!? だからわたしが……」
輪入道「地獄少女に心はいらねぇ!! ……お嬢は心を殺して仕事をつづけてきたんだ…… あの日からずっと……」


──四百年以上まえ──

お嬢の村はたびたび飢饉におそわれ…… それをしずめるため七年に一度 村の少女を山神さまへとささげていた
お嬢も……いけにえにえらばれた一人だった
だが両親はお嬢を見殺しにすることができず おきてにそむき お嬢を山奥のほこらでかくまった
幼なじみの仙太郎のたすけもあって なんとかかくれて暮らしていたが
ある日村人に見つかってしまい 両親とともに生きうめにされた──

(あい『ゆるさない……!! こいつら全員……!!』)

そして…… 死後 怨霊となったお嬢は村を焼きつくした……


ゆずき「……あいも…… そんなひどい死にかたを……?」
輪入道「この世への強い怨みを持って死んだ魂が 地獄少女にえらばれるのだ お嬢は…… 四百年もの間 人の怨みを地獄へ流しつづけてきた 理不尽な怨みにも心を殺して……」
ゆずき (秋恵……!!)
骨女「これからはゆずき…… あんたがやるんだよ 契約が成立した相手を地獄へ流す…… それだけが地獄少女のつとめなんだよ いままでずっと見てきただろう?」
ゆずき「わっ わたしは…… (わたしやお母さんみたいに 世間に見捨てられて怨みを晴らせなかった人たちをたすけたかったのに 秋恵みたいになんの罪もない人を 地獄になんて流せない……) できない…… わたしには…… 心を殺して地獄に流すなんて できないよ
きくり「ゆずき…… それはゆるされないよ」

きくりの額に第3の眼が開き、背からクモの脚が伸び、クモの巣が広がってゆずきを捕える。

ゆずき「うっ……!!」
骨女「きくり!?」
輪入道「くっ…… 地獄のクモがうごきだしたか……!!」
きくり「地獄少女にならぬというなら おまえは地獄へおちてもらう そして新たな地獄少女をさがすまでよ

きくりのクモの脚が、ゆずきの体に食い込む。

ゆずき「きゃあああっ
きくり「地獄のひみつを知った以上…… お前は永遠に地獄をさまようのだ

そこへ、消えたはずの閻魔あいが現れる。

あい「ゆずきを はなしなさい」
ゆずき (あい……!?)」
輪入道「お嬢……!? どうしてもどってきた!?」
あい「……みんな ゆずきを」
一目連「おうっ!!」

一同が、ゆずきを救い出す。

きくり「あい……!? どういうつもりだ!? おまえの役目はおわった…… 手をだすな!!
ゆずき「あい……」
あい「ごめんなさい…… わたし…… ……ずっと見てきたけど やっぱり あなたはやさしすぎる あなたの母親も…… やさしくて強い人だったわ」
ゆずき「えっ…… (お母さんのこと知ってるの?)」
あい「あなたの母親も辻乃橋を地獄へ流そうとした だけど……」


ゆずきの母「ごめんなさい 返します 辻乃橋を地獄へ流しても 夫は帰ってこないし…… 地獄におちたら 二度と夫に会えなくなるから わたしは自分の力でゆずきを守ります」


ゆずき (お母さん……!!)
あい「そして…… 秋恵の父親も糸を引かなかった…… 地獄にかかわることで はじめて大切なことに気づく人だっている 人が存在するかぎり地獄はありつづける……」
ゆずき「(やっぱり…… わたしが地獄少女をやるしかない) わたしっ……!!」

あい「わたしが地獄少女をつづけるわ」

ゆずき (あい!?)
きくり「一度やめたのに ふたたびもどってくるのなら おまえは永遠に職務からのがれられない
あい「……ええ だから ゆずきを解放してあげて」
きくり「そうか……」

周囲一面に、一斉に彼岸花が咲き乱れる。

ゆずき「ここは……?」

あい「……自由になりなさい ゆずき」
ゆずき「自由……に……?」
あい「そうよ」

ゆずきの体が、徐々に消えていく。

ゆずき「いやっ……!! (体が消えていく……!!)」
あい「ゆずき だいじょうぶよ」

怯えるゆずきを、あいが優しく抱く。


だれも たすけてくれなかった
人は弱い
自分を守るために 見て見ぬフリをする

だけど…… 悲しいことばかりじゃなかった


あいの記憶が、ゆずきの中に次々に流れ込んでくる。
理不尽な迫害を受け、生きながらにして埋められ、そして人々に抱いた深い怨み。
そして、幼馴染みの仙太郎との思い出。


ゆずき「わたしたち…… つらい思い たくさんしたけど あいには彼氏がいたんだね それだけは ちょっぴりうらやましいな」

ゆずきの足が、体が消え、首だけが残る。

ゆずき「ありがとう…… あい……

そして、ゆずきの首も消え去る。


あいが川面に1人立ち尽くす。

ゆずき「…… 生まれかわったら どうか 幸せに……」


骨女「ホント バカだよ…… せっかく楽になれたってのに」
きくり「そーだぞ バカあい!! つぎの地獄少女はきくりでいいじゃないかぁ──!!」
骨女「このバカ!!」

あい「……仕事だよ 新たな依頼者が待ってる」


梓の部屋。位牌と遺骨が置かれている。


辻乃橋家。

梓の父に重傷を負わせた辻乃橋巧の前に、喪服姿の梓が現れる。

梓「辻乃橋 巧さんですね? 父が死んだら こうするつもりだったのよ……」

包丁を握りしめる梓。

梓「高杉署長のつぎは あんたが罪をつぐなう番よ!!」
巧「うわあぁぁっ

しかし包丁が突き刺さる寸前、巧の姿が消え去る。

梓「……え……? 消え……た……?」

物陰から現れる高杉。

梓「高杉署長……!?」
高杉「……わたしが辻乃橋を野ばなしにしたせいで 秋恵は…… だからせめて 自分の手で始末をつけたかった ……それに」

その手から、赤い糸が垂れ落ちる。胸元には地獄流しの証、地獄の刻印。

高杉「これでわたしも 秋恵のところにいけるよ きみは残りの人生を せいいっぱい生きなさい」

高杉が力ない笑いを残し、去って行く。
梓の手から包丁が落ちる。がっくりと地面に座り込む梓。

その後ろ姿を、あいたちが見つめている。


あい「いくよ


★★ おわり ★★
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