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ジャンボーグAの最終回


楽しいクリスマスも終わり 東京は慌しい歳末風景に彩られていた
その東京に 想像を絶する奇怪な事件が起ころうとは──


夜の繁華街。大きな買物の荷物を抱えたナオキと和也。
傍らの玩具店。ジェット噴射で空を飛ぶロボットの玩具が展示されている。

和也「わぁ、格好いいなぁ!」
ナオキ「おい、和也。遅くなるから、行こうぜ」
和也「ちょっと見てこうよ。ね!」
ナオキ「お、おい、和也!」
和也「早くぅ! ねぇ、早くったら!」
ナオキ「早くしろよ」
和也「迷っちゃうなぁ〜、どれにしようかな?」

そのとき。突然、夜空の月が太陽のようにまぶしく輝き始め、地上は夜のはずが昼間のように明るくなる。

人々「あ、あれ!?」「何だ?」「何なのぉ!?」


トウキョウ
  最後の日


PAT(パット)基地。
村上隊長と隊員たちのもとに、都内各地の異変の連絡が次々に届いている。

隊員たち「隊長、都内の温度は摂氏40度近いそうです」「隊長、大阪からはきれいな満月が見えるそうです」「札幌、青森、秋田、すべて異常ありません」
村上「そうか……」

和也の母・茂子もいる。そこへナオキと和也が飛び込んで来る。

茂子「ナオキさん、和也!」
ナオキ「隊長、都心が大変な騒ぎですよ。月に何か、異変でもあったんですか?」
村上「うむ。東京以外の場所からは、きれいな満月が見られるそうだ」
ナオキ「そんな!?」
村上「熊井、安田! ハンターQで調べるんだ」

熊井と安田が、PAT戦闘機ハンターQで出撃する。

熊井たち「スタンバイOK!」「よぉし!」

地球を飛び立ったハンターQが、月へと接近。
月から地球目がけ、一筋の光線が放たれている。

熊井「安田!」
安田「あぁ!」
熊井「こちら熊井! 隊長、月面ポイント239の地点から、強力な光線が地球目がけて発射されています」
村上「何、光線が!? それで、地球上の目標は?」
熊井「東京です」
村上「そうか…… 熊井、発光物体の正体を突き止めろ」
熊井「了解!」

ハンターQが月面に接近。月面には光線の照射装置が仕掛けられている。

安田「熊井、あれだ!」
熊井「隊長、発見しました! 巨大な凹面鏡状の物体で、太陽光線を集めて東京目がけて発射しています」
ナオキ「太陽光線を!?」

野村「はい、こちらPAT本部。──えっ!?」
村上「どうした?」
野村「都内の気温が50度を超えて、あちこちで火災が起こっているそうです!」

地上では、高熱を浴びて炎上する建物が続出していた。

村上「これでわかったぞ。グロース星人め、とてつもない作戦で東京を焼き払うつもりらしい」
ナオキ「畜生……」
村上「ハンターQ、ハンターQ。ただちに攻撃を開始しろ!」
熊井「了解!」

ハンターQが照射装置を狙撃。
しかしグロース星総司令官デモンゴーネが現れ、ハンターQを攻撃する。
ハンターQが攻撃をかわし、反撃に移る。

デモンゴーネ「むぅっ、小癪な!」

ハンターQがデモンゴーネの攻撃を浴びてしまい、月面に不時着する。

熊井「こちら熊井! 月面ポイント240付近に不時着しました。左の翼をやられたために、飛び立つのは不可能です!」
村上「わかった。ハンターQの酸素は、あと12時間しかもたん…… 野村くん、一緒に来い!」
野村「はい!」

ナオキ (よぉし、俺も行くぞ!)

ナオキがジャンセスナに乗って飛び立つ。

ナオキ「ジャン・ファイト!」

ジャンセスナがジャンボーグA(エース)に変形し、月を目指す。


村上と野村の乗った戦闘機ジェットコンドルが、月面に接近。

野村「隊長、ハンターQです!」

熊井「ジェットコンドル!」
安田「待ってました!」
村上「熊井、安田! カプセルで脱出だ。行くぞ!」

しかし、そこへデモンゴーネが救出を阻む。

村上「くそぉ、これでは救出作戦も不可能だな」

そこへジャンボーグAが飛来。

村上「ジャンボーグA!」
ナオキ「デモンゴーネはこっちが引き受けたぜ!」

ジャンボーグAが月面に降り立ち、デモンゴーネに立ち向かう。

村上「熊井、安田、今のうちだ!」
熊井「はい、了解しました!」

熊井たちの乗ったカプセルがハンターQから射出され、それをジェットコンドルが受け止め、飛び去る。
ジャンボーグAのパンチ、キックが、次々にデモンゴーネに決まる。

ナオキ「どんなもんだ! くたばれ、デモンゴーネ!」

とどめを刺さんとするジャンボーグA
しかしデモンゴーネが合図を送ると、照射装置のまばゆい光がジャンボーグAの視界を直撃する。

ナオキ「うわぁ──っ!」

高熱に煽られたジャンボーグAが炎に包まれ、コクピットのナオキにも高熱が襲いかかる。

デモンゴーネ「アッハッハッハ!」

一転して防戦一方となったジャンボーグA。
デモンゴーネの攻撃に耐え切れず、崖下へと転落していく。
ジャンボーグAのコクピットに火花が飛び散り、ナオキも傷だらけになっている。

死力を振りしぼり、ジャンボーグAが空へと飛び立つ。

デモンゴーネ「アッハッハッハ! これでジャンボーグAは二度と戦えまい。残るはジャンボーグ9(ナイン)ただ1人。アッハッハッハ!」


PAT基地の喫茶室。

和也「ナオキさん、遅いね」

茂子と和也が待ちわびているところへ、傷だらけのナオキが転がり込んで来る。

茂子たち「どうしたの、ナオキさん!?」「ナオキさん!」「しっかりして、ナオキさん」


月が西の空に沈み 東京には束の間の冬空が戻って来た


東京の人々は惨状から逃れ、次々に郊外へと避難を始めていた。


PAT基地。

野村「──はい、わかりました。隊長、正午現在の都心の気温は、3度だそうです」
村上「そうか…… しかし、あと数時間すれば、東の空に満月がのぼる」
安田「すると、今度こそ東京は焼き払われる…… 隊長。何か、何か打つ手はないんですか!?」
熊井「ムリを言うな。ジャンボーグAさえ勝てなかった相手に、勝てるわけないだろう!」
安田「くそぉっ!」
村上「安田! いいか、みんな。あきらめるのはまだ早い! たとえ勝ち目がなくても、命を賭して戦うのがPAT魂だ!」
一同「……」
村上「野村くん、安田、熊井!」
熊井「隊長…… わかりました。やりましょう!」
野村「こうなったら、特攻作戦だわ!」
村上「うむ、その意気だ。みんな、俺に命をくれ!」

一同が力強く頷く。

村上「頼むぞ!」


PATの医務室。
ベッドの上で、ナオキがようやく意識を取り戻す。彼を看護している茂子。
そこへ和也が飛び込んでくる。

茂子「どうしたの?」
和也「村上さんたち、死ぬ気でもう一度、月へ行くらしいよ!」
ナオキ・茂子「え……!?」
和也「畜生、どうしてジャンボーグ9は空を飛べないんだ!? 9が月へ行けたら、PATは死なずに済むのに! 畜生!」
ナオキ (和也の言うとおりだ。9さえ、空を飛べたら…… 9さえ……)

和也とともに玩具屋で見た、ジェット噴射で空を飛ぶロボットの玩具──

ナオキ (そうだ! いい手があるぞ。PAT基地には、観測用の大型宇宙ロケットがある。あのロケットを使えば、月まで飛べるかも。──いや、待てナオキ。月まで飛べても、帰りはどうなる? 9は自力で地球へ戻ることができないぞ。ということは、つまり、俺は永久に…… なぁに、生きて帰れなくたっていい。デモンゴーネのヤツをやっつけて、兄貴の仇を討つためなら、喜んで死んでやる! 喜んで!)

ナオキがベッドから飛び起きて、服を着替え始める。

茂子「ナオキさん!? ダメよ、ムリしちゃ」
ナオキ「大丈夫だよ、義姉(ねえ)さん。これしきのケガ、どうってことないよ」
和也「ナオキさん、どこ行くの?」
ナオキ「決まってるだろ? トイレだよ、トイレ」

ナオキ (義姉さん、どうかいつまでも、お元気で…… 和也、しっかり勉強して、兄貴に負けない立派なPAT隊員になれよ! いいな!)


PAT観測室。
隊員たちがロケットの発射準備をしているところへ、ナオキが殴りかかる。

「うわぁ!」「なんだ!?」「やめたまえ!」

隊員たちを気絶させ、ナオキ自らが発射に取りかかる。

ナオキ「発射まであと5分だ。急がなくちゃ」

ナオキがジャンカーZに乗り込み、発車。

ナオキ「頼むぜ、9! うまくやってくれよ! ジャン・ファイト! ツーダッシュ!」

ジャンカーZがジャンボーグ9に変形。PAT基地からロケットが発射される。

ナオキ「今だ!」

ジャンボーグ9がロケット目がけて大ジャンプ。
腰から伸びたベルトが、ロケットに巻きつく。

ナオキ「やった!」

ロケットと一体となったジャンボーグ9が、大気圏を離脱する。


月を目指すPAT機のファイティングスターとジェットコンドル。
ジャンボーグ9のロケットがそれを追い越して行く。

野村「あっ! 隊長、見てください!」
村上「ジャンボーグ9……」

ナオキ「さよなら、PAT。あとは任せてくれ。さよなら…… 東京じゃそろそろ、月がのぼる時間だ」


地球上では月が昇り、太陽のように輝く月により再び家々が燃え始める。


デモンゴーネ「あと1時間足らずで、東京は火の海さ! アッハッハッハ! ──はっ、ジャンボーグ9!?」

ジャンボーグ9が飛来。
ロケットから分離して月面上に降り立ち、ロケットはそのまま月面に激突して爆発してしまう。

ナオキ「デモンゴーネめ、今度こそ息の根を止めてやる!」
デモンゴーネ「うぬぅっ! それはこっちの言うセリフさ! 覚悟をし!」

ジャンボーグ9の怪力攻撃が次々に決まる。
しかし、デモンゴーネも反撃に移る。

デモンゴーネ「ハハハ! 光れ、焼け!」

またしても太陽光照射装置の熱光線が、ジャンボーグ9を直撃する。

ナオキ「うぁっ! くそぉ。しっかりしろ、ナオキ! どうせ捨てた命じゃないか。戦え! 怯むな、ナオキ! ──クロスショット!!」

ジャンボーグ9の放った必殺のカッター光線で、照射装置が砕け散る。

デモンゴーネ「おのれぇ! ジャンボーグ9よ、お前のお陰で私の全生命を賭けた作戦は失敗した! もはや私には、お前と刺し違えて死ぬしか、道はない! さぁ、潔く死んでもらうぞ!」
ナオキ「いいとも! どうせ俺も、生きては地球に帰れないんだ! 喜んで相手になってやらぁ!」

デモンゴーネが剣を抜いて斬りかかる。
迎え撃つジャンボーグ9だが、月面の岩場に足を取られ、転倒してしまう。

デモンゴーネ「ジャンボーグ9よ、とどめだぁ!」

ジャンボーグ9目がけ、デモンゴーネが剣を振り上げる。
傍らには照射装置の残骸。とっさにジャンボーグ9が鏡面の破片を手にし、渾身の力でデモンゴーネの体に突き立てる。

デモンゴーネ「ぐわぁぁっっ! デーモーン! デーモ──ン…… デ……モ……ン……」

倒れるデモンゴーネ。不気味な体液を体から吹き出し、液化して消滅する。
ついにジャンボーグ9は、グロース星総司令官デモンゴーネを打ち倒した。


ナオキ「義姉さん、和也。俺はもう、二度と地球には帰れないんだ。俺は決して悲しくないぜ。こうして地球を見ながら、死んでいけるんだもん…… 悲しくなんか、ハハッ、あるもんか」

強がりつつも、ナオキの目には涙が光っている。空に浮かぶ地球を眺めつつ『月の砂漠』を歌い始める。
地球の姿にだぶる、茂子と和也の笑顔。2人と過ごした思い出、PATの面々の思い出……

突然の衝撃音。

ナオキ「──PATだ!」

PAT機の放ったワイヤーが、ジャンボーグ9に肩に撃ち込まれていた。
そのままPAT機がジャンボーグ9を牽引し、月面を飛び立つ。

村上「よぉし! 熊井、このまま地球へ戻るぞ!」
熊井「OK! 9さんよ、今度という今度は、お前さんの捨て身の戦法には頭が下がるぜ。お礼に地球まで連れてってやるからな!」

ナオキ「ありがとう、PAT。ありがとう……!」


地上。PAT基地を飛び出す茂子と和也。

和也「ママ、ジャンボーグ9が帰って来るよ。ほら!」

ジャンボーグ9がPAT機から分離。

ナオキ「クイックリターン!」

ジャンボーグ9がジャンカーZに変形して、着陸。
ナオキは無事、地球上への生還を果たした。


年が明け、正月。
PAT喫茶室ではナオキ、茂子、和也による餅つきが行われている。

「よいしょっ!」「よいしょっ!」「ほらっ!」「よいしょっ!」

そこへPAT隊員たちもやって来て、餅つきに加わる。

「おっ、やってる、やってる!」「よぉし、いくぞぉ!」「ほぉら、よいしょっ!」


こうして 地球には再び平和が戻り ナオキたちは楽しいお正月を迎えようといていた
だが 果たしてグロース星人は 地球侵略の野望を捨てたのだろうか──?


グロース星の地表。
これまで敗れ去っていったグロース星人4人の、4つの墓標が突き立っている。


「我々は、いつか必ず地球を手に入れてみせる。必ず、必ず……!」


(終)
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