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戦国魔神ゴーショーグンの最終回


てしなきたび
最終回


ビムラーエネルギーが その破壊力を失うまであと10時間
最後の戦いを前に 両者は静かに待機していた


グッドサンダー内のファザー・ルーム。
立体映像の真田博士が、息子の真田ケン太に語りかける。

真田「ケン太、私の遺言もこれが最後だ。明日、お前が13歳になり、ビムラーが第四段階を迎えた時、お前は宇宙の意志ビッグソウルから、宇宙に羽ばたき、他の宇宙生命と共に生きる資格を与えられる」
ケン太「資格……?」
真田「いいか? その資格を受けるか否かは、お前が決めることだ。私もビッグソウルも、お前に何の強制もしない」
ケン太「僕が選べるの?」
真田「選ぶのはお前。そしてお前は、地球のソウルの代表として、地球の生命が宇宙に羽ばたくべきか否かを決めるのだ」
ケン太「僕、僕……答えは決まってる!」


ビムラー炉の前に現れたケン太を、OVAが迎える。

OVA「ケン太君、夕食です。みんなが待ってますよ」
ケン太「OVA……僕、明日になったら……」
OVA「何も言わないで。時が来れば、子供は親の元から巣立っていきます……」
ケン太「OVA……」
OVA「ケン太君のやりたいようにやるのが、一番いいんです」
ケン太「うん。ありがとう……母さん」
OVA「い、今、なんて……?」
ケン太「母さん、ありがとう……へへ、OVAに一度、こう言ってみたかったんだ!」
OVA「……」
ケン太「あ? あらら? ねぇ、どうしたの? OVA」
OVA「いえ、何でもありません……さぁ、最後の夜ですよ。みんながお待ちかねです」
ケン太「うん!」
OVA「行きなさい、早く……」
ケン太「はぁい!」

ケン太が駆け去ってゆく。

OVA「母さん……? 私が、母さん……?」


キリー・ギャグレーが自室でタイプを叩いている。

キリー「俺には何もなかった……あ〜あ、何もないまま終わっちまうのか……『キリー・ギャグレー自叙伝 ブロンクスの狼 THE END』……はぁ、終わった」


射撃練習室。
北条真吾が1人、光線銃を撃ち続けている。


ファザー「緊急連絡! 緊急連絡! レミーの部屋で異常な高温をキャッチ!」

真吾とキリーがレミー島田の部屋へ駆けつける。
扉が開く。もうもうと煙があふれる。

真吾・キリー「レミー!?」

煙が薄れ、その中にレミーの姿。

キリー「レミー、大丈夫か!?」

コンロの上でフライパンが煙をあげている。

レミー「ハンバーグ、焦がしちゃったぁ」
真吾・キリー「ハンバーグぅ!?」
真吾「こんな時間に料理かよ!?」
レミー「みんなのお弁当なのよ。戦いが長引くと、おなかすくでしょ?」

呆気にとられた真吾とキリーが顔を見合わせる。

キリー「お前、黒焦げのハンバーグって好き?」
真吾「いやぁ、俺はミディアムじゃないと……」
レミー「いいのよ、無理に食べてくれなくても……ただね、今日1日ぐらい女らしく過ごそうと思っただけよ……」
真吾「レミー……食べるよ! 黒焦げだろうが何だろうが」
キリー「ちょっとちょっとぉ、お前はミディアムしか駄目なんだろう? レミーちゃん、ハンバーグなら僕に任して下さい!」
真吾「キリー、お前はレアだろうが!」
キリー「何だよ、たまには俺だってよく焼いたのが……!」
レミー「やめなさいっ! 2人とも!!」

言い合っていた真吾たちが、レミーの一喝でピタリと動きをとめる。

レミー「ありがとう……キリー、真吾」

真吾たちの前に、黒焦げのハンバーグの皿が差し出される。

レミー「はいっ!」
真吾「それにしても、ダイナミックな焦げ方……」
キリー「いただきまぁ……す」

2人がフォークで黒焦げハンバーグをとりわけ、意を決して口に放り込む。
レミーに背を向け、苦痛に顔を歪める。

真吾「お……」
キリー「おいし……い……」


ケン太が自室のベッドに寝転がり、天井を見上げる。

ケン太 (旅立ち、宇宙の果て……僕は行くぞ!)


翌朝。

グッドサンダーとドクーガの最終決戦を前に、決戦場となる湖畔には、大勢の群衆が集まっている。

ケルナグール「な、なんだ、この騒ぎはぁ!?」
カットナル「忌々しい奴らめぇ、野次馬ども!」
ブンドル「ま、観客は多いほど、ショーは盛り上がる……」

空には報道ヘリコプターが飛び交っている。

「いよいよ、地球の運命を決める日がやって参りました。ご覧下さい。彼らは世界中からこの地に集まってきたのです。それぞれの思い入れは違っても、心は同じであります。ゴーショーグンよ、諸悪の根源ドクーガを打ち破ってくれ! この声は身の危険もかえりみず、この地に集った我々、そしてこの放送を見る全世界の人々の声であります!」

集まった人々の中には、これまでのエピソードで登場した人々の姿もある。
ドクーガから脱走したケルーナの姿もある。

空の彼方から現れるドクーガの戦闘機の編隊。
カットナル艦。カットナルが傍らにカラスをはべらせている。
ブンドル艦。赤薔薇を握るブンドルの手から鮮血が滴る。

地上。ライフルを手にしたスナイパーたちの行列が闊歩する。
野次馬をかき分けるように、ケルナグールの戦車隊が現れる。

ケルナグール「どけどけぇ、野次馬ども! 踏み潰すぞ!」


グッドサンダー。
三大メカのコクピットで出撃を待つ真吾たち。傍らにはランチボックスが。

レミー「ビムラー第四段階まで、あと3分59秒……そろそろ出番ね」
真吾「了解、お弁当つきのハイキングだ」
キリー「せめて、弁当食うまで死ぬなよ、お二人さん」

真吾のキングアロー、キリーのジャックナイト、レミーのクイーンローズが発進。
群衆は否がおうにも盛り上がり、歓声が上がる。

レミー「なんかウケてるわよ!?」
キリー「真吾、客が多いからってあがんなよ」
真吾「大丈夫大丈夫! 俺はこういうほうがノルんだよね。よぉし最後だ! 少し派手にキメるぜ! ゴーショーグン・ゴ──ッ!!」

グッドサンダーからゴーショーグンが出撃。
3大メカが右脚へ、左脚へ、そして胸部へと収容され、合身が完了する。
群集から歓声が上がり、くす球が割れ、花火が上がる。

レミー「バッチリ1分! あと35秒ね」
真吾「OK! 戦闘用意!」


グッドサンダー、ファザー・ルーム。

ファザー「あと30秒」
ケン太「OVA……新しい僕が生まれるのを、そこで見ててね」
OVA「ケン太君……気をつけてね」
ケン太「ありがとう、OVA」

司令室にサバラスが鎮座している。

ファザー「あと20秒」
サバラス「ファザー。20秒後に、司令室を敵の基地内に瞬間移動させろ。いいな?」
ファザー「了解! 10、9、8……」

ドクーガ秘密基地。
ネオネロス皇帝が目を閉じ、静かに鎮座している。

マザー「7、6、5……」

ファザー「4、3、2、1、0」

グッドサンダー。
ケン太の姿がビムラー炉の中へ吸い込まれる。

サバラスを乗せた司令室が消える。


ドクーガ秘密基地。

グッドサンダーの司令室が瞬間移動で出現し、サバラスがネオネロス目掛けてバズーカ砲を構える。

サバラス「ネオネロス、ドクーガの時代は終わった!」
ネオネロス「まだ終わったわけではない。わしの切り札を見ろ!」

スクリーンに世界各地の核基地、無数のミサイルが映し出される。

マザー「世界各地に点在する核基地に設置された中性子爆弾、3億メガトン相当。同時に爆発すれば、地球は完全に滅亡します」
サバラス「今さら悪あがきはせぬことだな。地球のソウルは誕生した」
ネオネロス「ケン太とかいう少年か? だが、そのソウルにはお前がなる筈だった。この地球と人類を一万年に渡って陰で支配してきた、この私が生み出したお前がな」
サバラス「私にその資格はない。貴様が宇宙へ進出するための道具として、私は試験管の中で悪の申し子として作り出された。こんな私を宇宙は受け入れる筈がない」
ネオネロス「知っていたのか……!? お前は自分の生まれを」
サバラス「悪の申し子として無理矢理生み出された私は、貴様を倒すことで貴様から解放される。それが私の生きる道だ!」
ネオネロス「わしは地球と共に生きてきた。この地球を他人に委ねる訳にはいかぬ。地球はわしのものだ、誰にも渡さぬ! 渡すぐらいなら破壊した方がよい!」
サバラス「そうはいかん!」

バズーカが火を吹く。


グッドサンダー。

ファザー「ビムラー、第四段階完成」

ビムラー炉から、青白い光に包まれたケン太がゆっくりと現れる。

OVA「ケン太君、ケン太君なのね!?」
ケン太「OVA、話は後にして。メカを助けに行かなくちゃ!」

ケン太が光に包まれ、飛び去る。


ドクーガ基地。
バズーカを浴びても、ネオネロスは平然としている。

サバラス「おぉ!?」
ネオネロス「フフフ……」

サバラスが再びバズーカを撃つが、砲弾はネオネロスの体を素通りしてしまう。

ネオネロス「人間と共に一万年を生きてきた私だ。武器では倒せぬ!」
マザー「ビムラーの破壊力消滅。ビムラー第四段階に入った模様」
ネオネロス「時は来た!」


ブンドル「ラスト・バトル! 攻撃開始!!」

ドクーガ軍団がゴーショーグンに迫る。

真吾「おいでなすったぜ。攻撃開始……ん!?」

真吾のいるキングアローのコクピットに、青白い光が満ちる。

真吾「あぁっ……!?」
レミー「どうしたの、真吾!?」
真吾の声「ケン太……!?」
キリー「ケン太? 真吾、何のことだ!?」
真吾「ケン太、どうしてここに……?」

光の中からケン太の声が響く。

ケン太「これ以上、メカは壊せない……ゴーショーグン、ゴーフラッシャーを!」

ゴーショーグンの全身から、これまでのゴーフラッシャーとは全く異なる膨大な閃光が放たれる。
光を浴びたドクーガのメカたちが、ピタリと動きを止める
そして空中の戦闘機群、艦艇が、次々に地上へと降りて行く。

ケン太「メカが叫んでいる……『戦いたくない、同じメカ同士戦うくらいなら、死んだ方がましだ』って」
真吾「ケン太……?」
ケン太「でもみんな、戦いたくないからって、死ぬことはないよ。誰もみんなに命令することはできないんだ。君たちは、自分の気持ちで戦いをやめればいいんだ」

地上。スナイパー、コマンダーたちが次々に銃を捨て、その場に座り込む。
戦車も砲身を下げる。

ケン太「さあ、やめよう。もうこれ以上戦うのは……メカ同士で傷つけ合うのはよそうよ」

ブンドル艦もカットナル艦も、幹部らの意に反し、ゆっくりと地上へ降りてゆく。
薔薇を手にしたまま、苦笑するブンドル。

ブンドル「もはやこれまでか……だが、何という呆気なさ。せめて最後の名曲は……」

ブンドルがコクピットのカセットデッキのスイッチを押す。
デッキが出鱈目に動き出し、飛び出したテープの山がブンドルに浴びせられる。

ブンドル「テープまで逆らうとは……しかし、いくらハートを持ったとて所詮不粋なメカ……私の美学までは分からぬと見えるな……フフフ……」


ドクーガ基地。

マザー「味方メカ部隊、戦闘拒否。いかなる操縦法をもってしても動きません」
ネオネロス「許さん。機械であろうと人間であろうと、わしに逆らうものは許さん! サバラス、わしの本当の力を見せてやる」

ネオネロスの体が赤く燃え上がり、巨大な火の玉となる。
ドクーガ基地の建物を突き破り、火の玉と化したネオネロスが空中へと飛び上がる。
ネオネロスから次々に矢のように炎が撃ち出され、戦闘を放棄した自軍のメカたちを砕いてゆく。

ケン太「よせ! 戦う気のないものをなぜ壊すんだ!?」
ネオネロス「わしに背くものは許さん!」
ケン太「ドクーガの好きにはさせない! 真吾、レミー、キリー、ゴーショーグンから離れて! あとは僕がやる」
真吾「いきなり離れろと言ったって……」
ケン太「早くぅ!」

真吾たちの意に反し、ゴーショーグンの体内からキングアローら3大メカが射出される。

ケン太「さあ、みんな。これが、みんなを破壊へ追いつめたドクーガの正体だ。いくぞ、みんな!」

地上のスナイパーたちが拳を宙に掲げ、戦車たちが砲身を上空へと向ける。
メカ群から光が放たれ、ゴーショーグンへと注がれてゆく。

ケン太「ドクーガ! 消えろ! この星から消えろ!!」

ゴーショーグンがメカたちのソウルを浴び、ネオネロスへ突撃。
ソウルの光が、ネオネロスを包んでゆく。

ネオネロスの赤い炎が次々に掻き消え、遂にネオネロスが完全に消滅──


ドクーガ基地。
壁が崩れ落ちてゆく。 スクリーン上に、世界各地のミサイル発射の様子が映し出される。

サバラス「中性子爆弾が!?」
マザー「ドクーガの滅亡と中性子爆弾の発射は同時セット。もう誰にも止められません」
ネオネロス「わしの滅びる時、それは地球の滅びる時だぁ!!」
ケン太「地球は滅びない。ゴーショーグン、ゴーフラッシャー!!」

ゴーショーグンがゴーフラッシャーを放つ。
無数のゴーフラッシャーが巨大な光と化し、地球全体を包まんばかりに上空を駆け抜けてゆく。
空を行くミサイル群が、光に包まれ、ひとつ残らず消えてゆく。


月面、ジッターの月面基地。
ジッターが35身合体メカ・ゴッドネロスの建造に勤しんでいる。

ジッター「何がゴーショーグンめ、何が真田だ! わしこそが、キング・オブ・メカなのだ!」

アラームが鳴る。

アナウンス「中性子ミサイル接近! 瞬間移動したものと思われます」

スクリーンに、地球から瞬間移動してきたミサイル群が映し出される。

ジッター「何!? あぁ……ど、どうしてこんなところに!?」

ミサイル群が次々に月面へ突き刺さる。
だが……爆発はしない。

ジッター「な……なぜ生きとる? なぜわしは生きとるの!?」
アナウンス「中性子爆弾、全弾不発。中性子反応ゼロ」
ジッター「全弾不発!? 嘘じゃ! 科学的根拠がない! わしは信じないぞぉ!」


地上。

真吾らグッドサンダー・チームの面々が見守る中、ゴーショーグンから、光に包まれたケン太がゆっくりと降りてくる。

ケン太「北斗七星の向こう……何もない宇宙の果てで、誰かが僕を呼んでるんだ。OVA……僕、行くよ。広い世界を、この目で見たいんだ!」
OVA「ケン太君……風邪をひかないようにね」
レミー「ケン太君、サンキュー! 本当に楽しい三年間だったわ」
真吾「誰もお前を止めやしない。ケン太、がんばれよ」
キリー「ケン太、どっかでカワイ子ちゃんに逢ったら、よろしく言っといてくれよ」
ケン太「みんな、元気で……でも僕、さよならは言わない。あっ、ほら! 僕と一緒に行く、地球の仲間がやって来るよ」


湖畔を取り巻く山々の彼方から、無数の光が飛来してくる。

ケン太「海と話せた人たち……風と話せた人たち……」

あちこちの大自然の中から、次々に光たちが飛来する。

ケン太「森と話せた人たち……雲と、雨と、花、野原、川、岩、そして……地球にある、すべてのもの!」

地球上各地から飛来したソウルたちと共に、ケン太が空高く上昇してゆく。

ケン太「僕らは飛べる……どこまでだって!!」

ケン太がゴーショーグンの中へ吸い込まれる。
まるで門が開くかのように、青空が真っ二つに割れ、その間から宇宙空間が覗く。
ゴーショーグンとソウルたちが、宇宙空間へと昇ってゆく。

OVA「見ましたか……見てくれましたか! あの子の飛ぶ姿を! 私たちが……私たちが育てたんですね!」
サバラス「あぁ……!」

サバラスが満足げに微笑み、頷く。

ドクーガ三幹部も、ケン太とソウルたちの飛翔を見上げている。
歓喜に満ちた顔のブンドル。

ブンドル「何という飛翔……! 美について百万言の形容詞を並び立てたとて、あの姿を讃美しきれるものではない。だが私は敢えて言おう。ただ一言、これこそ正に……“美しい”!!」


二つに割れていた空が閉じ、青空が広がる。


レミー「終わったのね……」
真吾「何も終わっちゃいないさ」

真吾の傍らにはアラーシャが。

レミー「あら?」

キリー「何も変わっちゃいないさ、俺たちは……」

キリーの隣にはイザベルが。

レミー「あらら……?」

呆気にとられるレミーに、赤薔薇が差し出される。
そこには、薔薇を手にしたブンドルが。

ブンドル「君はしなやかで且つ健気だ……」
レミー「……あ〜ぁ、1年経ったらどうなっちゃってるのかしらね、私たち……」


ゴーショーグンが飛翔する宇宙空間をバックに、登場人物の顔写真が次々に映し出され、ナレーションで後日談が語られる。



ゼニガスキー・ジッター

中性子爆弾以上の最終兵器の研究に没頭
一度も部屋から姿を見せず


OVA

メカとしては世界最初の保育園々長として活躍


ヤッター・ラ・ケルナグール

フライドチキン及び牛丼の世界シンジケートのボスとして
妻と共に君臨


キリー・ギャグレー

自叙伝出版するも売れず
ケルナグールフライドチキン・ブロンクス支店前に
ホットドッグスタンド開店


スーグニ・カットナル

アメリア大統領就任


北条真吾

現在無職
某ホテル・バスルームで石鹸に滑って転び骨折
入院中


レオナルド・メディチ・ブンドル

わずか3ヶ月で宇宙美学論を確立
以後 暗闇に消える


レミー島田

アフリカの動物公園の保護官として
動物相手に活躍中
結婚の見込み……まるでなし


サバラス

グッドサンダー基地と共に行方不明――




SEE YOU AGAIN‥‥
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