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死神くん 最終回 『死神失格の巻』

大量の紙を投げつけられる死神。
死神「わっぷ!!
主任 なんですか?
これはいったい」
主任「見てのとおりじゃ
おまえが今まで書いた始末書の山
そして霊界からの警告書じゃ〜〜い!!」
死神「警告書・・・?」
主任「おまえがいつも規則にしたがわず
自分勝手に仕事しているからこんなことになるんじゃ!!
見張り役のおまえがついていながら何をやってんだよ!!」
カア助「だって〜〜っ」
(カア助―死神がちゃんと仕事しているかどうかを
霊界に報告する監視役のカラス。コミックス10巻から登場。)
カア助「こいつはわがままで自分勝手で
おれのいうことぜんぜんきかないんですよ
感情的になるし人間のカタもつし
主任もわかっているでしょう?」
主任「とにかく警告書がきたからには
規則どおりに仕事しろ!!
今度大きな規則違反をしたら
この仕事をやめてもらうことになる」
死神「へ」
カア助「クビですか?そりゃあいい!!
死神がクビになったらどうなるんです?
他の仕事につくんですか」
主任「消えてもらうだけだよ
われわれには『死』というものがない
死神が死神でなくなる時・・・
もうこの世にはいなくなる・・・・・・
消滅だよ」
驚く死神。
主任「そら今回の仕事だ 規則を守れよ」

仕事先に向かう死神とカア助。
カア助「ハッハッハッ〜〜ッ
おめえとのつきあいもそろそろ終わりだな〜〜っ 楽になるぜ」
死神「おれ 時どき思うんだ
おれ この仕事むいてないんじゃないかなァって・・・・・・」
一瞬の沈黙。
カア助「ちゃんと仕事しろよ」

どこかのビルの屋上。ヘルメットにサングラスの見るからに怪しい男が
液晶テレビで何かの中継を見ながら銃を組み立てている。
中継のリポーター「さあもうすぐ平和の使者リンダ・グローバーがやってきます!!
リンダ・グローバーは重い病気であと数年の命と医者に宣告されたのです
そして各国の首相・大統領に平和をうったえる手紙を送りつづけてきました
その彼女の気持ちがつうじ 多くの支援者をえて世界各国をまわり
軍縮や核兵器削減に多大な影響をあたえています
すでに世界26か国をまわり 平和をうったえつづけてまいりました
いま全世界で平和ブームがたかまっておりますが これもすべて彼女
リンダ・グローバーのおかげなのです!
あと5分で彼女の乗った飛行機が到着する予定です」
怪しい男がサングラスをはずしながらしゃべりだす。
男「ここのポイントを見つけるのに苦労したぜ
空港周辺は警備が厳重で近づけない
ボディーガードがいつもついてるし
移動中の車は防弾ガラスになっているだろうしな・・・
チャンスは・・・ 飛行機のハッチから女がおりてくるとき」
双眼鏡をのぞく男。ビルの間からかろうじて空港が見える。
死神「彼女に死を宣告したのは3年前だったな」
突然男の背後に現れる死神。
死神を銃で撃つ男。だが弾は死神の体を通りぬけてしまう。
男「な・・・」
さらに銃を撃つ男。
死神「やめろ おれは人間じゃない
さわぎが大きくなったらこまるだろ」
男「何者だ」
名刺を渡す死神。
男「死神・・・?
おれを殺しにきたってわけか?」
死神「ちがうよ
おまえ殺し屋だな
リンダ・グローバーを殺しにきたんだろ」
カア助「かくしてもムダだぜ」
死神「リンダの命はあと2年あるんだ
今ここで死んでもらっちゃこまるんだよ」
男「おれの仕事をジャマしにきたというわけか」
死神「そうだ」
男「おれはプロだ うけた仕事はやりとげる ジャマするな」
死神「おれだってプロだ 自分の仕事はやりとおす」
にらみ合う死神と男。
死神「おまえに仕事を依頼したやつがどんなやつなのか知っているのか?」
男「金さえもらえばおれはだれからでも仕事をうける
どんなやつからでもな」
死神「おまえに仕事を依頼したのは
兵器を密造密売している秘密組織だ!!
やつらは彼女がジャマなんだ
世界が平和になったら自分たちの兵器が売れないからな!!
わかってんのか!?」
男「わかっているさ
もうかる商売なんだろうな たんまり金をくれるぜ
はりきって仕事しないとな」
死神「リンダは今殺さなくてもあと2年で死ぬんだよ」
男「今日殺せと依頼をうけた
今日殺す!」
死神「やめろ・・・」
死神が男に手を出そうとするが、カア助がそれをさえぎる。
カア助「就業規則第48条
必要以上に人間の体にふれてはならない
就業規則第35条
死生と関係ない人間に対し必要以上に会話をしてはならぬ
同様に姿を見せてはならぬ」
死神「うるさいな」
カア助「オイ わかってんだろ?
規則にしたがって仕事をしろよ」
男「いいこというな
そのカラスのいうとおりだ」
死神「必要とあれば姿を見せるし人間の体にもふれる!」
カア助「オイオイ」
死神「おまえの仕事もジャマしてみせる!」
空港に飛行機が到着する。銃を構える男。
男「やめろ おまえにおれの仕事をジャマすることはできん」
カア助「そんなことはない
規則内であればいろいろできる たとえば・・・」
死神「おれは死神だ
おまえを殺すこともできるんだぜ!!」
カア助「そんな規則はね〜〜っ!!」
男「おれはこんな時のために保険をかけてある」
死神「保険!?」
男「プロだからな 仕事を実行するためには手段をえらばない
高い保険料をはらうんだ
おれの魂が保険料だ」
悪魔「おれの出番のようだな」
(悪魔―契約すると3つの願いをかなえてくれるが
3つ目の願いがかなうと魂をとられてしまう。2つ目までは何もとられない。)
死神「またおまえか!?
半年に一回しか出番がないのにまた出たな!!」
悪魔「なんだよ そりゃ!!」
男「こいつがおれの保険だ」
中継のリポーター「飛行機が到着しました
いよいよリンダ・グローバーがあらわれます!!」
男「悪魔よ最初の願いごとをいうぜ
その死神とやらをおれの目のとどかない所へとばしてくれ」
ニヤリと笑う悪魔。
リポーター「総理ならびに各大臣がでむかえます」
悪魔「残念だな 消えてもらうぜ」
死神「くそう!」
カア助「オイ!やめろ!!」
死神「規則なんてクソくらえだ!!」
カア助「よせ!!」
男「うるさい!!気がちる!!」
カア助が撃たれる。
死神「カア助!!」
男「なんだ カラスは本当のカラスなのか」
カア助「く・・・
へ・・・へへへ 忘れてたぜ
いつもおまえと行動しているから
自分も死なないなんて思ってたら・・・
おれはただのカラスなんだ
おめえとはこれまでだ
へへへ もうケンカもしなくていいんだ・・・
新しい相棒と仲よくやりな・・・」
死神「カア助!!」
カア助「最後にひとこといわせてくれ・・・
おめえはいいやつだ・・・
だから規則を守って・・・
この仕事・・・・・・続けてくれ・・・・・・」
目を閉じるカア助。
死神「カ・・・カア助・・・」
悪魔「悪いがこれまでだ
あらよ!!」
魔法で吹っ飛ばされる死神。
悪魔「へ・・・へへへ
遠くへとばしてやったぜ」
男はすでに銃を構えて狙いをつけている。
悪魔「さすがプロだな
すげえ集中力だ」
リポーター「いよいよ平和の使者リンダ・グローバーが
われわれの目の前にあらわれます!
専用のハッチがひらきます」
照準を合わせ、引き金に指をかける男。
だがハッチからはリンダではなくサングラスをかけた男が出てくる。
リポーター「ボディーガードでしょうか? 数人の男がでてきました
リンダは命をねらわれているということですから当然のことでしょう」
男「今日から安心してねるんだな
永遠の眠りをな」
突然銃口の前に吹っ飛ばされたはずの死神が現れる。驚く男。
男「悪魔よ何をしている!?」
死神「おれがいそいでもどってきて
うしろからおもいっきりぶっとばしてやったよ」
男「さすがプロだな
自分の仕事をしっかりやる・・・いいことだ
プロなら規則を守れよ あのカラスのいったとおり
ジャマしても おまえの体はつつぬけだ
ムダなことはするな」
死神「口うるさいカラスはもういない
おれの好き勝手にさせてもらうぜ」
男「きさまに何ができる ひっこんでろ」
リポーター「リンダです!!
リンダ・グローバーの登場です!!」
突然倒れる男。
男「な・・・なんだ?
どうなったんだ!?
きさま何をした!!」
死神「魂をぬきとった
肉体は何もすることができない」
男「きさま・・・」
悪魔「すげえ規則違反だな」
いつのまにか目を覚ましている悪魔。
悪魔「よくもやってくれたなてめ〜〜っ」
男「悪魔よふたつめの願いだ
あの女を殺せ!!」
悪魔「わかった・・・
おまえの願いはなんでもかなえてやるぜ」
リンダ・グローバーの方へ飛んでいく悪魔。
男「フ・・・フハハハ ハハハハハ
はじめからこうすりゃよかったんだ
死神よおまえの負けだ!
世界平和なんてクソくらえだ!!」
死神「人殺しめ

おまえは

最低だ!」
男「おまえだって人を殺すのが仕事だろ」
覚悟を決めたような表情でハサミを取り出す死神。
(ハサミ―肉体と魂をつなぐ”魂の緒”を切るためのもの。
魂の緒を切られるとその人間は死ぬ。)
男「なんだそのハサミは?
何をするつもりだ?
オイ」
死神「そうさ おれは人殺しだ
カア助・・・ごめんよ
おれ・・・
死神やめるよ」
魂の緒を切る死神。
死神「おまえは死んだよ」
男「あの女も死んだ」
悪魔が戻ってくる。
男「やったか?」
悪魔「いいや」
男「なぜだ!?
何をしている!?」
悪魔「あんたとの契約は無効だ」
男「!!」
悪魔「死んだやつとは契約できないのさ」
呆然とする男。
男「やってくれたな 死神よ」
大歓声の中を車で移動するリンダ・グローバー。
男「死神よ おれの負けだ
おまえの好きなようにしろ
仕事に失敗した殺し屋は
依頼主に殺される運命にある」
男の魂を連れていく死神。
悪魔「どうすんだあいつは こんなことしでかして
死神失格だぜ」

霊界の裁判所。
裁判官「これよりNo.413号(主人公)の裁判をはじめます」
?「413号は日ごろより規則を守らず
今回 生存者の魂をなんの理由もなくとりあげたのです!!
法定規則にしたがい最高刑の罰則を要求いたします!!」
傍聴席の死神「最高刑ってなんだ?」
傍聴席の死神「消滅だよ」
裁判官「主任はいいたいことがあればいいなさい」
主任「え〜〜
413号はまったく規則を守らず私も手をやいておりました
人間の味方になって死亡時間も守らず人間のいいなりになるし
死亡予定の人間を勇気づけて予定をのばしてしまったこともあります
わがままで自分勝手で感情的ですぐ人間の味方になる
仕事の実績も悪く彼の行動は死神としては失格です!!
はっきりいって彼は死神にはむいていません!!
しかし・・・
彼のやったことはすべて正しいことだと信じます!!
彼は人間を理解し人間の心を読み人間のためにつくしました
彼は人間のために一所懸命仕事をしました
彼の仕事におけるミスはすべて人間のためのもので
彼個人のミスではありません
彼と関係のあった人間はなんの問題もなく安らかに死をむかえ
あるものは勇気づけられ 生きる気力をとりもどしたのです
彼こそが一番人間の心を理解している死神といえるでしょう!!」
裁判官「判決!!」

場面変わって主任の部屋。
死神「主任どうもありがとうございます」
主任「ん・・・ ああ・・・
あまり問題おこすなよ」
死神「ハイ
あの・・・監視役のカラスは・・・!?
新しいやつを・・・」
主任「そんな新しいカラスなんぞつけられん」
死神「・・・それじゃおれひとりで・・・」
主任「何をいってんだおまえは!
ホレ!!」
主任がカーテンをめくるとそこにはカア助の姿が。
死神「カア助!!
おまえ死んだんじゃなかったのか!?」
カア助「勝手に殺すな!
主任におまえの口ぐせにしていることをいわれちまった」
死神「おれの口ぐせ?」
カア助「『おまえはまだ死ぬ予定ではない』ってな」
微笑む死神とカア助。
虹のかかる空へと飛んでゆく。

―終わり―

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