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新造人間キャシャーンの最終回


きゅうさいだいけっせん


人類の平和を願って 東光太郎博士によって造られた
アンドロイドBK1号が 自然の過ちによって狂い
皮肉にも 人類征服を目指す鉄の悪魔となって暴れ出した

東博士の息子・鉄也は
自ら 新造人間キャシャーンとなって
敢然と アンドロ軍団の前に立ち塞がった

だが 既にアンドロ軍団の団長ブライキング・ボスは
地球の3分の1を征服し
最後の とどめの決戦を企てていた


これに対し 東博士とキャシャーンは
科学の総力を挙げて 謎の秘密兵器を生み出し
人類の危機を 一気に挽回しようと図っていた

そして その決戦の時が
刻一刻と迫っていた


東博士の科学研究所。
研究室内にキャシャーンと、花束を抱えた上月ルナが訪れる。

キャシャーン「お父さん!」
東博士「ん?」
キャシャーン「シャポニー国のカナタ首相から花束が贈られてきました」
ルナ「今度の秘密兵器の成功を祈って、激励の意味なんですって」

ルナが花束を花瓶に生ける。

東博士「ありがたいことだ。元々わしに責任があることなのに……キャシャーン、わしは必ず成功させてみせる。これさえ完成すれば、ブライキング・ボスはもちろん、地球上の全てのロボットを一瞬にして倒すことができるのだ」
キャシャーン「はい。僕も全力をかけて戦います。お父さんだけに苦労はかけません」
東博士「ありがとう。だがスワニーの中の母さんのことを思うと……」
キャシャーン「お父さん、必ずスワニーは救い出してみせます!」
東博士「頼む。わしは1日も早く、このスプレーザーを完成させる。それまで警戒を頼むぞ、キャシャーン」
キャシャーン「はい!」

先ほどルナが持ち込んだ花の中から、1匹の蜂が出てきて、研究所の外へ飛び去っていく。
それは、アンドロ軍団のミニロボだった……


一方アンドロ軍団の基地では、ブライキング・ボスが白鳥ロボット・スワニーを張り付けにして苦しめている。

ブライキング「フフフ……スワニー、よくもこの俺を裏切ってくれたな!」

スワニーの体に高圧電流が流される。

ブライキング「苦しむがいい、悶えるがいい! じっくりと痛めつけてやるわい。このまま5分も続ければ、お前は完全にアウトだ!」

そこへ部下のアクボーンがやって来る。

アクボーン「ボス〜! ボス、ミニロボがキャシャーンと博士の居所を突き止めて参りました」
ブライキング「やったか! 早く聞かせろ!」
アクボーン「はっ!」

アクボーンが先ほどの研究所から帰還したミニロボを差し出すと、ミニロボは録音したキャシャーンたちの会話を再生し始める。

ミニロボ「ヤルッツェ・ブラッキン! 『キャシャーン、わしは必ず成功させてみせる。これさえ完成すれば、ブライキング・ボスはもちろん、地球上の全ロボットを一瞬にして倒すことができるのだ』『やります、僕も。お父さんにだけ苦労はかけません』『ありがとう。だがスワニーの中のお母さんのことを思うと……』『お父さん、必ずスワニーは助け出してみせます!』『頼む!』」
ブライキング「もうよい! キャシャーンはやはり東博士の倅・鉄也だった! そしてスワニーの体の中には、東博士の女房が……」
アクボーン「こいつも、溶鉱炉に叩き込んでやる!」
ブライキング「待て、アクボーン! そうとわかれば、なおさらこいつが可愛くなった……フフフ、たっぷりと苦しめて殺してやる」
アクボーン「はっ!」
ブライキング「アクボーン、東博士は何か恐ろしい物を造っているぞ。その前にこっちから総攻撃をかけるのだ!」
アクボーン「しかし……あそこは地球上で一番備えの堅いところです」
ブライキング「手はある! 地球上の機械はすべて俺たちの仲間、協力を求めるのだ!」
アクボーン「と、申しますと……?」
ブライキング「機械誘導ロボットを地球上に撒き散らせ! あとはスイッチ一つだ」
アクボーン「なるほど!」
ブライキング「この決戦で俺たちアンドロ軍団の勝利が決まるのだ。やれっ!!」
アクボーン「ヤルッツェ・ブラッキン!!」


研究所。
東博士が天体望遠鏡で宇宙を覗いている。

東博士「ホーレー彗星がはっきりと見えてきたぞ」
キャシャーン「お父さん。ホーレー彗星と、今造られている秘密兵器とは、どんな関係があるんですか?」
東博士「うむ、それはな……」

東博士が天体図を指し、説明を始める。

東博士「ホーレー彗星は、1103年周期で地球に接近するのだ」
ルナ「凄く長いんですね……」
東博士「うむ。このホーレー彗星をスペクトルで分析した結果、タイニウムとロボニウムという2つの元素があることがわかった」
キャシャーン「地球にはない元素ですね?」
東博士「その通りだ。この2つの元素がマグネチックの作用によって、ロボットを破壊するスプレーザーと言う強力な光線を放射するのだ」
キャシャーン「彗星は、いつ地球に接近するんですか?」
東博士「11日後の、午後4時23分。それから、31分11秒の間、その効果を発揮するのだ。やるのは、その30分間だ」

続いて東博士が、人工衛星の設計図面を見せる。

東博士「これが2つの元素を集める人工衛星。これを基地にして、地球の各地に備え付けたスプレーザー発射機でロボットを攻撃するのだ」
キャシャーン「このチャンスは二度と来ない……どんなことがあってもやり遂げてみせます」
ルナ「キャシャーン……私も命を賭けてやるわ!」


アンドロ軍団必殺の秘密兵器
スプレーザー発射機と人工衛星は
連日 徹夜の作業で製作されていた


一方 アンドロ軍団の放った 機械誘導ミニコンロボは
世界各国に飛び散り
あらゆる機械に吸い付いていった


そして遂に ホーレー彗星は地球に迫った
最も接近する日の前夜
全人類の願いを込めて
スプレーザー用人工衛星が 打ち上げられた

そして地上では
スプレーザー発射機の設置が急がれていた


アンドロ軍団は
ミニロボットの情報で得た 東博士の科学研究所と
その秘密兵器を破壊すべく
密かに 軍団を先行させた


研究所のある島を目掛け、アンドロ軍団を乗せた巨大潜水艇が迫る。

ブライキング「砲撃、開始!!」
バラシン「ヤルッツェ・ブラッキン!! 潜水ロボ、101魚雷発射!」

ロボットが放った魚雷が海岸に命中。

人々「アンドロ軍団だ──!!」

さらに水中からロボットたちが飛び出し、地上へ攻撃を開始する。

そこへ駆けつけたキャシャーン、ルナ、フレンダー。

キャシャーン「スプレーザー発射機の設置が終わるまで、ロボットを上陸させるものか!」

ロボットの暴挙の中へ、キャシャーンが単身、躍り出てゆく。

キャシャーン「流星キ──ック!!」「電光──パンチ!!」

強力なキックやパンチが、次々にロボットを破壊してゆく。


研究所内。

技術陣「東博士、まだですか!?」
東博士「まだ早い。あと20分経たなければ、ホーレー彗星の効果は出ない」
技術陣「博士、各国のスプレーザー発射機装備は完了しました」
東博士「うむ」
技術陣「アンドロ軍団は、海岸の要塞を攻撃中です。キャシャーンが応戦していますが、防ぎきれません。早くスプレーザー光線の発射命令をお願いします」
東博士「まだ早い……キャシャーン、頼む。もう少しの間、阻止してくれ!」


アンドロ軍団のロボットの大群が、次々に上陸して来る。
その様子を、ブライキング・ボスがワルガーダーを従えて悠々と眺めている。

ブライキング「この要塞も、あと一押しで全滅だ……! 地球上の機械よ、暴れろ! 思いっきり暴れるのだ! フハハハハ!!」

ブライキング・ボスが手元のスイッチを入れる。
世界各地の機械に取り付いた、昆虫状の機械誘導ミニコンロボが始動。
自動車や工作機械が無人のまま、ミニコンロボに操られて動き出し、人々を襲い始める。

人々「うわぁ、誰かぁ!」「何が起こったんだ!?」「助けてくれぇ!」「わぁっ!!」


世界各国の都市は
今や 機械に破壊されつつあった

人間の 平和な生活のために造られた機械が
人間に対して復讐を始めたのである

人類は 自ら造った機械のために
滅びようとしていた

その上 ブライキング・ボスは
次々と 軍団兵ロボを上陸させ
要塞も 都市も 今や
その手中に収められようとしていた


東博士がホーレー彗星の位置を確認する。

東博士「今だ! 作戦開始!」
技術陣「はっ!」

世界各地、街中に警報が鳴り響く。
何事かと人々が空を見回す。

キャシャーン「あっ!?」
ルナ「キャシャーン……!」
キャシャーン「作戦開始だ。ルナ、フレンダー、逃げろ!」

岩陰へ隠れるキャシャーンたち。

キャシャーン「フレンダー、逃げろ!」

フレンダーが土を掘り、地中へ潜る。


宇宙空間。
スプレーザー用人工衛星が、ホーレー彗星から放たれる元素を捉える。


技術陣「発射ぁっ!!」

遂に最終兵器スプレーザーが発射される。
光線を浴びたロボットたちが、次々に倒れてゆく。

ブライキング「ガ、ガードラー!!」

ワルガーダーが万能メカ・ガードラーに変形。
ブライキング・ボスがそれに乗り込み、地中へ潜り込む。

アクボーン「ボ、ボスゥ!? お1人で逃げるなんて……」
バラシン「そんな殺生な!?」
アクボーンたち「わぁぁ──っ!?」

アクボーンとバラシンもスプレーザーを浴びて倒れ、その装甲が剥げ始める。


世界各国に設置されたスプレーザー発射機から、アンドロ軍団のロボット目掛けて光線が発射される。
あるロボットは倒れ、あるロボットは大爆発。
無人自動車らを操っていたミニロボも爆発を遂げる。

後に残されたのは、粉々に砕けたロボットの残骸のみ……


ホーレー彗星の接近により
秘密兵器・スプレーザーは
各国において その威力を発揮し
ロボットは たちまち破壊されていった


やがて、地上に現れたブライキング・ボスとワルガーダーが、自軍の惨状を目にする。

アクボーン「ボス……我が軍団は全滅です……人間どもが恐ろしい破壊光線を使ったのです!」
ブライキング「おのれぇ……東博士の仕業だ! だが俺は負けん! キャシャーンと東博士の命を取ってやる!!」

ブライキング・ボスが立ち去る。

アクボーン「ボスゥ〜っ!!」

アクボーン、バラシンが爆死──


スプレーザー発射機の前に、ブライキング・ボスがスワニーを抱いて現れる。

ブラキング「フフフ、撃つなら撃ってみろ! スワニーの命もお終いだぞ!」

物陰にキャシャーン、ルナ、東博士。

東博士「撃つなぁ!!」
ブライキング「その方がいい。スワニーの体の中に入っている奴もお陀仏だからな……キャシャーン、お前の正体も知っているぞ! 東博士の倅・鉄也! お前たち一家の運命もこれで終わりだ! 見ろ、スワニーを!」

スワニーの首とブライキング・ボスの手が、鎖で繋がれている。

キャシャーン「はっ……」
ブライキング「ハハハハ!」
ルナ「ブライキング・ボス、スワニーを放して!」

ルナがMF銃で立ち向かう。
だがブライキング・ボスはビームを放ってMF銃を弾き飛ばす。
地面に転がったMF銃を、ブライキング・ボスが踏み潰す。

ブライキング「スワニーを溶かしてやろうか……それとも東博士、キャシャーン、俺たちに従うか、えぇい、どっちだ!?」
キャシャーン「くそぉ……」
東博士「彗星は去った。スプレーザーはもう効かない……」
ブライキング「フハハハハ! どうだキャシャーン! 母親を見殺しにする気か!? キャシャーン!!」

突如、ブライキング・ボスの前に躍り出るキャシャーン。
ブライキング・ボスに飛び蹴りを見舞い、鎖をちぎり、スワニーを抱いて東博士のもとへ。

ブライキング「おのれキャシャーンめ……!」
キャシャーン「ブライキング・ボス! アンドロ軍団は今日限り滅びるのだ!!」
ブライキング「何を生意気な! このブライキング・ボスがいる限り、アンドロ軍団は滅びぬ! 行くぞ、キャシャーン!!」

ブライキング・ボスが自ら、帽子とマントを脱ぎ捨て、キャシャーンとの決戦に挑む。

ワルガーダーのビームをキャシャーンがジャンプで避ける。
キャシャーンが口笛を吹くと、地中からフレンダーが現れる。

フレンダーとワルガーダーもまた一騎打ちだ。
ワルガーダーのビームをフレンダーが避け、2匹がもみあい、ワルガーダーの爪がフレンダーの体を裂く。

ブライキング・ボスのビームをキャシャーンがジャンプで避ける。
キャシャーンがブライキング・ボスの顔面に膝蹴り、さらにパンチやチョップの連続。
そして両腕で、ブライキング・ボスの胴を締め上げる。
ブライキング・ボスはキャシャーンの背に拳を打ち付ける。
痛みに耐えつつ、両腕に渾身の力を込めるキャシャーン。ブライキング・ボスの背に次第に亀裂が走る。

ブライキング「ぐわぁ──っ!」

苦痛に耐えかね、ブライキング・ボスがキャシャーンを引き離す。


フレンダーの牙がワルガーダーの角を噛み砕き、爪が顔面を裂く。
ワルガーダーが爆死。
しかし激闘で疲れ果てたか、フレンダーもまた倒れる。


ブライキング・ボスの鉄拳が、蹴りが次々にキャシャーンに炸裂。

キャシャーン「うわっ!! うっ……うっ……」

地面に大の字に這いつくばったキャシャーン。
その頭を、ブライキング・ボスが踏みつける。

ブライキング「えぇい!」
ルナ「キャシャーン!」
東博士「キャシャーン!」
ブライキング「フハハハ! どうだ、このまま踏み潰してやる!」
キャシャーン (死んでもいい……お父さんとお母さんが助かれば、俺は本望だ……)
ブライキング「フハハハハ!」


キャシャーンは
最後の運命を賭けて
超破壊光線を放つ決意をした


キャシャーンの全エネルギーを込めた最後の切り札、超破壊光線が額から放たれ、ブライキング・ボスに浴びせられる。

ブライキング「ぐわぁ──っ!? わぁっ、わああぁぁ──っっ!!」

光線を浴びたブライキング・ボスの体の装甲が、次々にボロボロに砕けてゆく。
そして、ブライキング・ボスが大爆発──

爆風で、バラバラに砕けたブライキング・ボスの体の破片が飛び散る。
そして、ブライキング・ボスの頭だけが地面に転がる。

東博士「超破壊光線だ……」


エネルギーを使い果たし、キャシャーンが倒れる……


キャシャーンの夢の中。

ルナの声が響く。

(ルナ「キャシャーン! キャシャ──ン!! キャシャ──ン!!」)
(キャシャーン「俺は不死身だ……俺は……不死身だ……俺は……俺は不死身だ……」)


やがて、キャシャーンの視界にルナの姿が。

ルナ「キャシャーン!」
東博士「キャシャーン!」

そこは東博士の研究所。ルナと東博士がいる。
キャシャーンが目を開く。

キャシャーン「俺は不死身だ……」
東博士「おぉ、気がついたか!」

傍らにはフレンダーも座り込んでいる。

キャシャーン「……お父さん、お母さんは!?」
東博士「大丈夫さ、見ていなさい」

東博士の指す大型機械。2つのカプセルが備えられている。
片方のカプセルにはスワニーが。もう片方には──次第に母・みどりが姿を現し始める。

キャシャーン「お母さん!」

カプセルの中に、みどりが現れる。

キャシャーン「お母さぁん!!」
みどり「キャシャーン……」
キャシャーン「お母さん!!」
みどり「キャシャーン……キャシャーン……!」

カプセルから飛び出したみどりにキャシャーンが駆け寄り、手を取り合う。

キャシャーン「お母さん!!」
みどり「キャシャーン、よくやってくれました……ありがとう」
キャシャーン「はい!」

そんなキャシャーンとみどりの肩を、東博士が抱く。

みどり「あなた、キャシャーンも元の人間に戻してやって下さい」
東博士「それは駄目だ……キャシャーンは新造人間なのだ。わしの今の力では、人間に戻すことはできない……」
みどり「え……!?」
ルナ「おじさま……!?」
キャシャーン「お母さん、僕はお父さんを信じている。きっと元の人間に戻してくれる日が来ますよね」
東博士「キャシャーン、信じていてくれ!」
キャシャーン「……僕は新造人間キャシャーンでいいんだ! もっともっと人々のために働きたい!」
東博士「頼むぞ。わしも一緒に働く! 一生を人類のために捧げるつもりだ」

キャシャーンと東博士が、堅く手を取り合う。


遂に アンドロ軍団は滅びた
悪夢は終わり 街は人間たちの手に戻った

機械は機械として その役割を果たし始めた
人間と機械が一つとなって 
永遠の平和を作る 新しい夜明けがやって来たのだ


アンドロ軍団に荒された街中で、ロボットたちの操る工作機械が復旧作業にあたっている。
そんな中を、工夫姿の1人のロボットが指揮をしている。

その現場をキャシャーンとルナが訪れると、その指揮ロボットが迎える。

ロボット「コレハ・コレハ・キャシャーン様」

キャシャーンとルナが、そのロボットの顔を見て目を丸くする。

ロボット「ゴ覧下サイ・ロボットタチハ・一生懸命働イテオリマス。人間ノ平和ノタメニ・美シイ街造リヲ・オ任セ下サイ」
キャシャーン「ありがとう。僕たちも手伝うよ」

深々とロボットが頭を下げ、そして頭を上げる。何とその顔は、ブライキング・ボスそっくり。
そして彼はまた、作業に戻ってゆく。

ルナ「キャシャーン、今のは?」
キャシャーン「どこかで見たことのある顔だな。あはははは!!」


キャシャーンが人間に戻れる日
それは いつであろう

しかし キャシャーンは信じていた
父・東博士がいる限り
必ず鉄也に戻れるに違いない
その日を信じて 立て キャシャーン

輝く太陽が 東鉄也に降り注ぐその日は近い


丘の上から、キャシャーンとルナが太陽に照らされた街々を見下ろし、未来へ想いを馳せる。


フレンダーの遠吠えが響き渡る──


(終)
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