さよなら銀河鉄道999
人間と機械化人の戦いが続く地球。追いつめられた鉄郎たちは、レジスタンスとして戦っていた。
○客車 座席で寝ている鉄郎、顔にぬれタオルが乗せられている。 鉄郎「うっ!」 やがて突然目を覚まし、急に上半身を起こす。 メーテル「これから先は、引き返せない旅よ」 惑星モザイクから離れて行く999。 メーテル「鉄郎、あなたの行く先は、アンドロメダ星雲の中心にある、惑星大アンドロメダ」 アンドロメダ星雲の手前に広がる真っ黒なガス雲。 メーテル「(声)そう、そこは大恒星群の重力バランスの中にある、全宇宙を支配する機械帝国の首都」 宇宙を走行する999。 窓の外を見ている鉄郎。 鉄郎「でも分からないな。そんな面倒なことするくらいなら、初めからぼくを殺せばいいんだ」 メーテルの方に向き直る鉄郎。 車掌「おかしなことがあるもんな、……どういうわけで?」
○機関車 機関車内。 機関車「ハイ、今ノトコロ修正可能デスガ、何カガ999ニ、作用シテイマス。何カ分カラナイガ、右ノ方ニ何カガアッテ、強ク引キツケテイルノデス。恐ロシイ、トテモ、私ハ恐ロシイ……」
○宇宙 突然汽笛を鳴らす999。 ガス雲の切れ目の光に向かって突入する999。 プラズマを放射しながら飛ぶ水滴。 機関車「(声)惑星大アンドロメダノ重力圏突入、20秒前、重力ブレーキ出力最大。到着マデアト30分、45秒」 一際明るい光に突入する999。 光の渦をかき分けて進む999。 そこを抜けると、巨大な恒星群があった。 ゆっくりと進む999。
○惑星大アンドロメダ 光の中心部へ向けて降下して行く999。 巨大な建物の間を縫うように走る999。 窓から身を乗り出して見ている鉄郎。 巨大な建物の間から、一際大きな建物(大ステーション)が姿を現す。
○ステーション ホームに入っている999。 アナウンス「終着駅、惑星、大、アンドロメダ。惑星、大、アンドロメダ。上層へのお出口は、第、808、エスカレーター通路へ」 構内を歩いている鉄郎とメーテル、。 アナウンス「地下方面は、第989、エスカレーター降下道へ。……アンドロメダ、アンドロメダ、惑星、大アンドロメダ。終着駅、大、アンドロメダ」 鉄郎とメーテルが上のフロアに上がると、そこにはファウストが待っていた。 ファウスト「鉄郎、とうとう来たか」 とっさに銃を構える鉄郎。 ファウスト「慌てるな!」 そう言って鉄郎に近づくファウスト。 ファウスト「お前はここへ来た客だ。争うつもりはない。その証拠に見ろ、私は武器は持っておらん」 と言って左右に両手を広げて見せるファウスト。 ファウスト「メーテル様、お迎えが参っております」 そう言い残して1人で歩いて行くメーテル。
○市街地 遊歩道を進む鉄郎、ファウスト、車掌、メタルメナ。 ファウスト「よく見るがいい、鉄郎。ここには死の恐怖はない。飢えのおそれもない。ユートピアだ。人は無限の可能性をいつまでも持ち続けることができる。お前たち人間にとってはつかの間の青春が、ここでは永遠に続くのだ」 きょろきょろとみ見回している鉄郎。 メタルメナ「素晴らしいわ。永遠の命って……」 周りの機械化人を見ていた車掌、ある様子に気づく。 車掌「おや?メタルメナさんと同じものを食べている」 メタルメナ同様、カプセルを食べると恍惚とした表情になる機械化人。 ファウスト「あのカプセルは、この星で造られて全宇宙へ供給されている。機械化世界を支える力の源だ」 ホテルへと入って行く一行。
○地下宮殿 ある建物に到着したメーテル、リムジンから下りる。
○地下宮殿謁見室 やがてエレベータが停止したらしく、メーテルが歩いている。 プロメシューム「ようこそ、我が娘メーテル……」 やがて立ち上った炎の中に、プロメシュームの顔が浮かび上がる。 プロメシューム「お前は、鉄郎と共に、お前の分身である惑星メーテルと、人の姿をしたこの私を破壊した」
(前作の描写。セピア色)
(クレアに抱き着かれて) プロメシューム「私たちは、半分ずつ自分を失ってしまった。私たちの間に、もう憎しみはないはず。今一度話し合おう、 メーテル」 古城のプロメシュームの絵。 プロメシューム「(声)ただ1人、娘のお前だけを連れて」 メーテルの絵のアップ。 宇宙に浮かぶ小さな惑星(大アンドロメダ)。 プロメシューム「(声)石ころに等しいこの星にたどり着いた後、誰にも頼らず」 大きくなった惑星。 プロメシューム「自分1人の力で機械の星を積み重ね」 表面が明々と輝く惑星。 プロメシューム「(声)死の恐怖のない、永遠の機械化世界を作り上げた」
○ホテル ホテルの一室から外を眺めている鉄郎。 鉄郎「遅いなーメーテルは……」 突然車掌が走って来る。 車掌「て、鉄郎さーん!」 振り向く鉄郎。 車掌「は、大変です!」
○市街地 大騒ぎの市街。祝賀ムードに満ちている。飛び交う紙吹雪。 群集「メーテルさまー、ばんざーい!」 群集をかき分けて進む鉄郎。 群集「女王陛下―、ばいざーい!」 呆然としている鉄郎。 鉄郎「(声)メーテル!」 目前を通り過ぎて行くリムジン。 やがて鉄郎が気がつくと、群集はいなくなっている。 鉄郎「何のために……一緒に旅をして来たんだ……」 そしてうつむいてしまう。 鉄郎「何のために……」
○市街地 やがて車掌が車で追い掛けて来る。 車掌「鉄郎さーん!」 その声に気づいた鉄郎、道路の端まではって行く。 車掌「メーテルさんが、お呼びです!」
○大寺院 (原作漫画の「排気筒」にそっくり) 車で建物の前に降り立った鉄郎、車掌、メタルメナ。 鉄郎「メーテル……」 そう言って背中を向けて歩き出すメーテル。 鉄郎「ん?」 そこには幽霊列車が停止していた。 鉄郎「なぜこんなところに、幽霊列車が……!?」
○大寺院入り口 ドームの入り口にいる4人 メーテル「ドームを開けなさい」 メーテルの体を天井からの光が包む。 セキュリティシステム「失礼しました、女王陛下。仰せに従います。ロック、解除」 ドアが開く。
○大寺院正面 鉄郎「こ、これは……?」 鉄郎を追って走って行く車掌、メタルメナ。 車掌「あっ、あ!」 その先には無数の人間が、ベルトコンベアに乗せられて運ばれていた。 車掌「あ、か、か、かっ……きゃ、あたわ、あわわ……」 ベルトコンベアの先では、落下して行く人間から命の火を抜き取っている。 加工する機械に近づいて行き、できあがったカプセルエネルギーを手に取る鉄郎。 鉄郎「はっ!」 その音を頼りに走り出す鉄郎。
○大寺院の遺体廃棄所 やがて、命の火を抜かれた人間が捨てられているところにたどり着く。 鉄郎「はっ!……ミャウダー!」 ミャウダーの手には、ペンダントが握り締められている。 鉄郎「ミャウダー!」
○大寺院正面 元のところにいる3人(車掌がへたりこんでしまったところ)。 車掌「あ……」 (鉄郎の回想) 涙を流している鉄郎、やがて泣き崩れる。 鉄郎「……ミャウダー……」 車掌もつられて大泣き。 メタルメナ「だらしないわね。人が死んだことぐらいで泣くなんて」 泣いている鉄郎。 メーテル「あなたのために泣いてくれる友達が、あなたにはいるの?」 手を休め、首をかしげてメーテルを見つめるメタルメナ。 鉄郎「これでもまだ、ここが楽園に見えるのかメタルメナ!?……さあ食え、食ってみろ!」 鉄郎、両手一杯のカプセルエネルギーを差し出す。 鉄郎「命の火だぞ、食わないのか!」 カプセルエネルギーを受け取るメタルメナ、両手が震えている。 鉄郎「どうした!?」 メタルメナの震える指の間からこぼれ落ちるカプセルエネルギー。 鉄郎「何が永遠の命ちだ……」 銃を構える鉄郎。 機械化ポリス「お前たち全員を逮捕する!」 何かを決意したのか、突然機械化ポリスに向かって走り出すメタルメナ。 車掌「メタルメナさん!」 両手小指のレーザーを武器にして、機械化ポリスに突撃。 鉄郎「メタルメナ!」 残ったポリス2人と鉄郎の銃撃戦。 鉄郎「メタルメナ……」 そこに駆け寄る車掌。 メタルメナ「あたしは……、永遠の命と、宇宙で一番美しいメーテルさんの体が欲しかった……。何てことを……。あたしの負け、鉄郎さん……」 鉄郎の顔に震える手を添える、メタルメナ。 メタルメナ「あたしのために、泣いてくれるの……?」 メタルメナの指に、鉄郎の涙が伝わる。 メタルメナ「ありが……とう……」 鉄郎、メタルメナをその場に寝かせる。 鉄郎、手当たり次第に銃で設備を破壊し始める。 爆発炎上する寺院の外観。 炎の中を逃げ惑う人々。 メーテルたちの所に戻って来た鉄郎。 メーテル「鉄郎、早くあの人たちを999へ乗せてちょうだい」 メーテルの表情が厳しくなる。 メーテル「このあたし。母の血をもらった、このあたしの手で倒すのがさだめ……」 炎上する寺院の外観。 プロメシューム「(声)やはり裏切ったのか、メーテル……。この母を、お前に全てを与えて安らかに眠りにつこうとしているこの母を……」
○地下宮殿謁見室 プロメシューム「だが、私は負けぬ。決して負けはしない……」 ひざまづいているファウスト。 ファウスト「鉄郎はどのようにいたしましょうか?」 プロメシューム「鉄郎はお前の頼みで呼び寄せてみただけのこと。所詮、機械化世界とは相容れぬ宿命の敵。生かしておいても意味はない。……できぬとは申さぬであろうな、ファウスト?」 ファウスト、無言で立ち上がる。
○コントロールルーム コントロールパネルに近づくメーテル。 ファウスト「(声)お待ちしておりました、メーテル様」 空間から現れたファウストの姿が、実体化して行く。 ファウスト「女王プロメシュームの命により、お命を頂きましょう」 そう言って銃を構える。 鉄郎「ファウスト!」 鉄郎の一撃が、ファウストの銃を弾き飛ばす。 メーテル「鉄郎!」 パネルに近づき、操作するメーテル。 プロメシューム「メーテル、何をする?おまえは母の命を絶とうというのか!?」 その言葉に動じないで操作し続けるメーテル。 プロメシューム「我が子の、お前を大切に育てたこの母を、メーテル、……」 言葉にならない、プロメシュームの言葉。 メーテル「許して、お母様……」 泣き崩れるメーテル。 プロメシューム「ふふふふ……、ふふふふ……、はははは……、はははははははは……」 突然周辺のガラスパイプ内にプロメシュームの顔がたくさん現れる。 プロメシューム「愚かな娘よ。ここは惑星メーテルではない」 ファウスト、落ちていた銃を素早く拾って一撃。 プロメシューム「全宇宙を司る機械帝国の首都」 鉄郎をかばうようにファウストの前に立ちはだかるメーテル。 プロメシューム「惑星大アンドロメダ、すなわち私自身!メーテル、私が未来を託すために育てたお前がこの母を裏切るとは……。死ぬがいい、滅びるがいい、人間どもと一緒に!」 メーテルに銃口を向けるファウスト。 ファウスト「ん?」 ファウストに駆け寄って来る1人の兵士。 兵士「戦闘艦2隻、絶対機械圏内に、侵入!」
○宇宙 宇宙空間で繰り広げられる戦闘。
○コントロールルーム ファウスト「……しかしこの振動はどういうわけだ!?」 ガラスパイプに次々とひびが入って行く。
○惑星大アンドロメダ 次々と炎に飲み込まれて行く建物。
○ステーション ステーションでは、避難民が次々と乗り込んでいる。 車掌「い、いったい……何が始まったんですか?」 エスカレーターを駆け下りて来る鉄郎とメーテル。 車掌「あ、鉄郎さん、メーテルさん!早くお乗り下さい!」 起動する機関車。 乗ろうとする鉄郎に、ためらいがちに話し掛けるメーテル。 メーテル「鉄郎、あたしは……」 鉄郎、そう言ってメーテルの手を取って無理矢理乗せる。 鉄郎の後を追って来たメタルメナ、階上から炭水車に倒れ込む。
○惑星大アンドロメダ 発車した後、崩壊して行くホーム、ステーションビル。 窓から顔を出して後ろを見ている鉄郎、車掌、大勢の乗客。 車掌「せ、戦闘衛星ですよ!」 砲撃から必死に逃げる999だが、砲撃が最後尾の車両に命中し、爆発炎上。 鉄郎「みんな、前の方へ逃げろ!」 砲撃を受けながら前の方へ逃げて行く乗客たち。 鉄郎「くっそぉー!」 とその目前で、戦闘衛星がビームの直撃を受けて破壊される。 鉄郎「ハーロック!」 その方向を見ると、アルカディア号がいた。 鉄郎「弾道が右へカーブしてるぞ?」
○アルカディア号 戦闘衛星を狙って発車したアルカディア号の弾道も進行方向に向かって右にそれる。 ハーロック「おかしい……弾道が右へそれて行く……なぜだ?」 そのときアルカディア号が大きく揺れる。 ハーロック「う!どうした?」 ヤッタランと並んで計器に向かっている有紀蛍。 有紀蛍「もの凄い吸引力が、右後方から働いています」 トリさんが飛んで来て、ハーロックの右肩にとまる。
○機関車 激しく汽笛を鳴らし、全速力で走る999。 車掌「あぁっ」 遅れてやって来たメーテル。 メーテル「サイレンの魔女!」 宇宙で輝く怪しげな光。 鉄郎「(声)サイレンの魔女?」 徐々に近づいて来る怪しげな光。
○惑星大アンドロメダ プロメシューム「(声)サイレンの魔女?なぜそのようなものがここへ?なぜ?」 悲鳴をあげながら空中へ吸い上げられて行く、たくさんの機械化人や乗物。
○アルカディア号 同様に吸い上げられて行くアルカディア号。 ミーメ「(声)サイレンの魔女……。異質のエネルギーを求めて」 グラスを片手に、ハーロックと並んで立つミーメ。 ミーメ「宇宙をさまよう、大暗黒彗星」 ハーロック、体が明るく輝くミーメ、有紀蛍、ヤッタラン、ドクターゼロ。 ハーロック「機械帝国の機械エネルギーが、サイレンの魔女をここへ呼び寄せたのか?」 コンピュータの電源が落ちて行く。 トチロー「(声)頼んだぞ、友よ……」 明るく輝くサイレンの魔女。 ハーロック「自動操縦停止、人力操舵に切り替えろ!」
○機関車 機関車にいる鉄郎、メーテル、車掌。 メーテル「機械エネルギーは使えないわ。人力で運転するのよ」 運転席で、手動運転でがんばる車掌。
○機関車の動力炉 エネルギー交換装置にエネルギー鉱石をスコップで放り込む鉄郎。
○アルカディア号 ハーロック「アフターバーナー全開、左22度に、進路修正!」 その時、ブリッジに光るものが現れる。 ハーロック「待てっ!」 並んで外を見ているハーロックとファウスト。 ハーロク「久しぶりだな……」 ファウスト、無言でうなずき、外を見る。 ファウスト「鉄郎と最後の決着をつける時が来た」 ファウストのアップ。 ハーロック「(声)あぁ。しかし辛い戦いになるな」 外を見ていたハーロック、ファウストの方に向き直る。 ハーロック「……。『鬼』だな」 999の汽笛の音。 ファウスト「『鬼』だ。私は人の姿をした、『鬼』だ」 そこにミーメがやって来て、グラスを差し出す。 ファウスト「さらばだ、ハーロック……」 そう言って飲み干す。 ハーロック「さらば、友よ……」 そう言って飲み干す。 2人はカラになったグラスを投げる。 ファウスト「まだ私のことを、友と……?」 ファウスト、ここでペンダントをハーロックに差し出す。 ファウスト「預かってくれるか?」 ファウスト、自分の手をじっと見つめた後、徐々に消えて行く。
○クィーンエメラルダス号 エメラルダス「今から、この世で一番辛いものを見なければなりませんね、ハーロック」 モニターに映るハーロックに語り掛けているエメラルダス。
○惑星大アンドロメダ 崩壊がだんだん大きくなって行く惑星表面。
○運転席 レバーを操作している車掌、メーテルに話し掛ける。 車掌「変ですねぇ。これだけパワーアップすれば、脱出できていいはずですが……」
○副コンピュータ室 炭水車内、副コンピュータ室。 メタルメナ「さようなら、鉄郎さん……」 と言い残して、空中に身を投げる。
○機関車の動力炉 動力炉に姿を現したファウスト。 ファウスト「……鉄郎……」 鉄郎が振り返ると、ファウストの姿が空中に消えて行く。 鉄郎「待て!ファウスト!」
○機関車 鉄郎、銃を構えて出て来る。 メーテル「どうしたの?」 突然ファウストの声が響き渡る。 ファウスト「(声)鉄郎……今度はどちらも身を引くわけにはゆかぬ……。許しを乞うのは今のうちだ……」 銃を構えて警戒している鉄郎を、じっと見つめるメーテル。
○車外 汽笛を鳴らす999。 2人の横、進行方向に向かって999の左を航行するアルカディア号。 長い沈黙。 やがて鉄郎の一撃。 鉄郎「あっ!」 鉄郎、何とかかわす。 はしごを伝って炭水車に上ろうとするメーテルに、呼び掛ける声。 エメラルダス「(声)メーテル」 振り向いて見上げるメーテル。 エメラルダス「(声)これは誰にも手出しのできない、男の戦い」 決闘を見ているハーロックの姿。 エメラルダス「(声)鉄郎のためを思うなら、手を出してはいけない」 鉄郎、しゃがんで撃つが、ファウストには当たらない。 鉄郎「うわぁっ!」 ファウストの一撃がかすめて、鉄郎は後ろに飛ばされる。 やがて999は真っ暗な闇に突入し、お互いが全く見えなくなる。 ファウスト「(声)光がなくても、私にはお前が見える。前の時もそうだった。待っていろ、今からお前の側へ行く。我慢できるかな?ふふふふ……」 ゆっくり後ずさりする鉄郎、転びそうになる。
○惑星大アンドロメダ いよいよ炎の海に包まれる惑星表面。 プロメシューム「(声)うわぁあああああああ……」 惑星に響き渡る、プロメシュームの断末魔の声。
○車外 鉄郎「ん?」 どこからか聞こえて来る、ミャウダーのオルゴールの音。 鉄郎「うわぁっ、くっ!」 鉄郎、その方向目掛けて一撃。 ファウスト「(声)あぁっ!」 やがて闇が晴れ、明るくなる。 ファウスト「強く、なったな……、鉄郎……」 鉄郎、何かを感じたのか、驚きの表情。 ファウスト「さらば……」 ファウストの体が明るく輝く。 ファウスト「さらばだ……、」 と言ってファウスト、鉄郎の方向に手を伸ばすが、しかしその手を止める。 ファウスト「息子よ……」 そのまま遠ざかって行くファウスト。 ファウスト「さらばだぁー、我が息子よぉー!」 吸い込まれて行くファウスト、やがて一際明るく輝き、そして消える。
○アルカディア号 ファウストから託されたペンダントを見ているハーロック。 吸い上げられて行くファウストのペンダント。 999の汽笛の音。
○機関車の動力炉 全力疾走する999。
○宇宙 左右をアルカディア号とクィーンエメラルダス号に守られるかのように疾走する999。 惑星表面からたくさんの光が舞い上がる。 プロメシューム「(声)寒い、寒い、とても寒い……。メーテル、私を、私を暖めておくれ……。メーテル、私のかわいい娘よ……。メーテル、メーテル、メーテル……」
○惑星大アンドロメダ 荒れ果てて廃墟となった惑星表面。 鉄郎「これがお母さんときみが旅をした宇宙船か……」 宇宙船の残骸にすがりついて泣き崩れるメーテル。 メーテル「さぞ辛くて長い旅だったでしょうね……。でも、その旅もやっと終わったわ……。……。やっと……」 メーテルの脳裏を横切る、古城の母の絵、メーテルの絵。
○惑星ラーメタル 朝日の昇った、ラーメタル。 ハーロク「やはり地球へ戻るのか?」 鉄郎、振り返り、ハーロックに向かって。 鉄郎「ええ、ぼくのために死んで行った仲間との約束ですから。それに、助け出したみんなも一緒に来てくれるそうです」 ハーロック「そうか……」 ゆっくりと前に出るハーロック、鉄郎の肩に両手を置いて……。
駆け出す鉄郎、振り返る。 ハーロック「(声)鉄郎、お前の父は昔、俺やエメラルダスと共に戦った素晴らしい戦士だった。不幸にして途中でたもとを分かったが、お前は、お前の父によく似ている」 飛んで来たトリさんが、ハーロックの右肩にとまる。 ハーロック「(声)鉄郎、たとえ父と志は違っても、それを乗り越えて、若者が未来を作るのだ。親から子へ、子からまたその子へ血は流れ、永遠に続いて行く」
○ステーション 駅前の階段を駆け上がる鉄郎。 鉄郎「車掌さん」 車掌、2,3歩歩み出て。 車掌「生身の体がいいか、機械の体がいいか、迷いに迷っていた、自分が恥ずかしいです」 鉄郎を振り返り。 車掌「こうなったら絶対になります」 と言って車掌、上着を脱ぐ。 鉄郎「あぁ、あ……。これじゃお風呂へ入っても仕方ないなぁ」 車掌、自分のお腹をぽんぽんと叩いて笑う。 車掌「はははは、あっはははははははは……」
○駅構内 ホームに停車中の999。 車掌「(声)へ、へっくしゅん!」 荷物の積み込みでごった返しているホーム。 エメラルダス「メーテル、あなたは鉄郎と一緒に行くことはできない。あなたも私も、永遠に終わることのない、時間の中を流れて行く、時の旅人」 振り返るメーテル。 メーテル「先に乗ってなさい、鉄郎」 乗り込む鉄郎。 エメラルダス「私たちの旅に、終わりはない……」 悲しそうな表情になるメーテル。 煙を巻き上げ、ホームから出て行く999。
○客車 ふと外を見た鉄郎の目に、メーテルの姿が飛び込んで来る。 鉄郎「メーテル!」 窓にすがりつく鉄郎。 鉄郎「メーテルーー!」 線路を登って行く999。
○ステーション ホームから出て来て、999を見上げるメーテル。 メーテル「さようなら、鉄郎。いつかお別れの時が来ると、あたしには分かっていました」 じっと見下ろしている鉄郎。 メーテル「あたしは青春の幻影、若者にしか見えない、時の流れの中を旅する女」 じっと見下ろしている鉄郎。 メーテル「メーテルという名の、鉄郎の思い出の中に残れば、それでいい。あたしはそれでいい。さようなら、鉄郎」 じっと見下ろしている鉄郎。 メーテル「(声)あなたの青春と一緒に旅をしたことを、あたしは永久に忘れない」 駅が崖の向こうに消える。 上空へ舞い上がって行く999。 鉄郎「メーテルーーーーー!」 鉄郎の帽子が、飛ばされて行く。 鉄郎「メーテルーーーーー!」 鉄郎の帽子が、飛ばされて行く。 鉄郎「メーテルーーーーー!」 鉄郎の帽子が、飛ばされて行く。 鉄郎「メーテルーーーーー!」 帽子、小さくなって見えなくなる。
○客車 外を見ている鉄郎の後姿。
○宇宙 ラーメタルから離れて行く999。
○アルカディア号 ミーメと並んで窓から見ているハーロック。
○客車 硬い決意の表情で、客車に戻って来た鉄郎。 ナレーション「時は流れ、メーテルは消えて行く。少年の日が、二度と還らないように、エーテルもまた、去って帰らない。人は言う、999は鉄郎の心の中を走った、青春という名の列車だと」
○クィーンエメラルダス号 クィーンエメラルダス号から999を見ているエメラルダス。
○宇宙 アルカディア号とクィーンエメラルダス号との間を走り抜ける999。 別れを告げるかのように、二度汽笛を鳴らす999。 ナレーション「今一度、万感の思いを込めて、汽笛が鳴る。今一度、万感の思いを込めて、汽車が行く」 真っ直ぐ疾走する999。 ナレーション「さらばメーテル、さらば銀河鉄道999」 遠くに見えなくなる999。 …‥そして、少年は大人になる
○エンディング
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