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さよなら銀河鉄道999
―アンドロメダ終着駅―

(昭和56年8月1日公開)



 人間と機械化人の戦いが続く地球。追いつめられた鉄郎たちは、レジスタンスとして戦っていた。
 そんなある日、鉄郎にメーテルからのメッセージが届く。「鉄郎、999に乗りなさい」というそのメッセージを受け取った鉄郎は、999の行き先も旅の目的も分からないまま、999に乗る。
 そして、メーテルとの再会。しかし、メーテルは、途中の駅で降りて、どこかの惑星で死ぬまで一緒に暮らしてもいいという。
 ますます分からなくなる鉄郎をよそに、999は走り続ける……。



○客車

座席で寝ている鉄郎、顔にぬれタオルが乗せられている。

鉄郎「うっ!」

やがて突然目を覚まし、急に上半身を起こす。
落ちたタオルを拾い上げるメーテル。
深呼吸する鉄郎。

メーテル「これから先は、引き返せない旅よ」

惑星モザイクから離れて行く999。

メーテル「鉄郎、あなたの行く先は、アンドロメダ星雲の中心にある、惑星大アンドロメダ」
鉄郎「惑星、大アンドロメダ?」

アンドロメダ星雲の手前に広がる真っ黒なガス雲。

メーテル「(声)そう、そこは大恒星群の重力バランスの中にある、全宇宙を支配する機械帝国の首都」
鉄郎「(声)何でそのことを黙ってたんだ?」
メーテル「(声)話せば、あなたは必ず行くと言うわ」
メーテル「そして、二度と生きては戻らない」
鉄郎「じゃ、どうしてぼくにあんなメッセージカードを!?」
メーテル「あれはあたしじゃない。あなたを惑星大アンドロメダへの旅に出すための罠」

宇宙を走行する999。
その最後尾の展望車。

窓の外を見ている鉄郎。

鉄郎「でも分からないな。そんな面倒なことするくらいなら、初めからぼくを殺せばいいんだ」

メーテルの方に向き直る鉄郎。
突然ゆっくりと歩いて来る車掌。

車掌「おかしなことがあるもんな、……どういうわけで?」
メーテル「車掌さん?」
車掌「は、はい!」
メーテル「浮かない顔をしてどうしたんです?」
車掌「いやぁ、それがどうも変でして……999が真っ直ぐ進まないんですよ」
鉄郎「真っ直ぐに走れない?」



○機関車

機関車内。
機関車の話を聞いている3人。

機関車「ハイ、今ノトコロ修正可能デスガ、何カガ999ニ、作用シテイマス。何カ分カラナイガ、右ノ方ニ何カガアッテ、強ク引キツケテイルノデス。恐ロシイ、トテモ、私ハ恐ロシイ……」



○宇宙

突然汽笛を鳴らす999。

ガス雲の切れ目の光に向かって突入する999。
だんだんと明るくなって行く光。
光の中は巨大な回廊になっており、プラズマが放射している。
その中を進む999。

プラズマを放射しながら飛ぶ水滴。
巨大な水面の上を走行する999。
巨大な炎をバックに走行する999。

機関車「(声)惑星大アンドロメダノ重力圏突入、20秒前、重力ブレーキ出力最大。到着マデアト30分、45秒」

一際明るい光に突入する999。
大きく汽笛を鳴らす999。

光の渦をかき分けて進む999。

そこを抜けると、巨大な恒星群があった。

ゆっくりと進む999。
やがてその前方に一つの惑星が姿を現す。
光に覆われた惑星。
地表に降下して行く999。



○惑星大アンドロメダ

光の中心部へ向けて降下して行く999。
ひかりかがやくたくさんのビル。
市街地を離れると、地上の誘導灯が道を指し示す。
光の指し示す方向に向かって走る999。

巨大な建物の間を縫うように走る999。

窓から身を乗り出して見ている鉄郎。

巨大な建物の間から、一際大きな建物(大ステーション)が姿を現す。
そのふもとの中にある駅に突入する999。
大ステーションの全景。



○ステーション

ホームに入っている999。
汽笛を鳴らし、やがて停車。
電源が落ちて、活動を停止していく機関車。

アナウンス「終着駅、惑星、大、アンドロメダ。惑星、大、アンドロメダ。上層へのお出口は、第、808、エスカレーター通路へ」

構内を歩いている鉄郎とメーテル、。
の後ろを歩く車掌とメタルメナ。
鉄郎とメーテルは、エスカレータに乗って上がって行く。

アナウンス「地下方面は、第989、エスカレーター降下道へ。……アンドロメダ、アンドロメダ、惑星、大アンドロメダ。終着駅、大、アンドロメダ」

鉄郎とメーテルが上のフロアに上がると、そこにはファウストが待っていた。

ファウスト「鉄郎、とうとう来たか」
鉄郎「うっ!」

とっさに銃を構える鉄郎。

ファウスト「慌てるな!」

そう言って鉄郎に近づくファウスト。

ファウスト「お前はここへ来た客だ。争うつもりはない。その証拠に見ろ、私は武器は持っておらん」

と言って左右に両手を広げて見せるファウスト。

ファウスト「メーテル様、お迎えが参っております」
メーテル「分かりました。鉄郎、あなたがたは、先にこの上のホテルへ行ってて」
鉄郎「でも……」
メーテル「言う通りにして、鉄郎!」

そう言い残して1人で歩いて行くメーテル。
無言で見送る鉄郎。



○市街地

遊歩道を進む鉄郎、ファウスト、車掌、メタルメナ。
その両側に広がる市街地。

ファウスト「よく見るがいい、鉄郎。ここには死の恐怖はない。飢えのおそれもない。ユートピアだ。人は無限の可能性をいつまでも持ち続けることができる。お前たち人間にとってはつかの間の青春が、ここでは永遠に続くのだ」

きょろきょろとみ見回している鉄郎。
そんな鉄郎を黙って見ているファウスト。

メタルメナ「素晴らしいわ。永遠の命って……」

周りの機械化人を見ていた車掌、ある様子に気づく。

車掌「おや?メタルメナさんと同じものを食べている」

メタルメナ同様、カプセルを食べると恍惚とした表情になる機械化人。

ファウスト「あのカプセルは、この星で造られて全宇宙へ供給されている。機械化世界を支える力の源だ」

ホテルへと入って行く一行。



○地下宮殿

ある建物に到着したメーテル、リムジンから下りる。
そのまま歩いて行き、光のエレベータに乗って降下する。
市街地を見ながら、どんどん降下。



○地下宮殿謁見室

やがてエレベータが停止したらしく、メーテルが歩いている。
やがて長い廊下を歩き切る。
するとその先、フロアの中心部には、ドーム状の球体がある。
それはガラスのような透明な物質で出来ている。
中に入るメーテル。
するとはるか下で青白い炎が巻き上がる。
聞こえて来る声。

プロメシューム「ようこそ、我が娘メーテル……」
メーテル「お母様……」
プロメシューム「私のことを、まだ母と呼んでくれるのか?」

やがて立ち上った炎の中に、プロメシュームの顔が浮かび上がる。

プロメシューム「お前は、鉄郎と共に、お前の分身である惑星メーテルと、人の姿をしたこの私を破壊した」

(前作の描写。セピア色)
プロメシューム「(ペンダントを奪おうとして飛びつく)やめなさああああい!」
鉄郎「(プロメシュームに向かって行く)うわああああああああああ!」
交差する鉄郎とプロメシューム。
プロメシュームの身体をすり抜けつつペンダントを投げる鉄郎。
落ちて行くペンダントと悲鳴をあげるメーテルとがしばらく交互に映される。
その後、中心部へ落ちて行くペンダント。爆発する中心部。

(クレアに抱き着かれて)
絶叫しながら身体が崩壊して行くプロメシューム。

プロメシューム「私たちは、半分ずつ自分を失ってしまった。私たちの間に、もう憎しみはないはず。今一度話し合おう、 メーテル」
メーテル「はい」
プロメシューム「私は、人という人から裏切られ、石もて追われるごとく、ふるさとの遊星ラーメタルを後にした」

古城のプロメシュームの絵。
メーテルの絵。

プロメシューム「(声)ただ1人、娘のお前だけを連れて」

メーテルの絵のアップ。
古城の外観。

宇宙に浮かぶ小さな惑星(大アンドロメダ)。

プロメシューム「(声)石ころに等しいこの星にたどり着いた後、誰にも頼らず」

大きくなった惑星。

プロメシューム「自分1人の力で機械の星を積み重ね」

表面が明々と輝く惑星。

プロメシューム「(声)死の恐怖のない、永遠の機械化世界を作り上げた」
プロメシューム「どう、どんなに辛い仕事だったか……。しかし、私の苦労も、今やっと報われる時が来た。あとはお前に任せて、私はこの惑星の心となり余生を送りたい」
メーテル「はい、お母様」



○ホテル

ホテルの一室から外を眺めている鉄郎。
窓の外を戦闘ヘリが飛んでいる。
くつろいでいるメタルメナ。

鉄郎「遅いなーメーテルは……」

突然車掌が走って来る。

車掌「て、鉄郎さーん!」

振り向く鉄郎。

車掌「は、大変です!」



○市街地

大騒ぎの市街。祝賀ムードに満ちている。飛び交う紙吹雪。
道路に群がっている群集。
口々に叫んでいる。

群集「メーテルさまー、ばんざーい!」
群集「機械化帝国に、栄光あれー!」

群集をかき分けて進む鉄郎。
下を見下ろすと、リムジンに乗ったメーテルがいる。

群集「女王陛下―、ばいざーい!」

呆然としている鉄郎。
やがて銃を手に取り、悲しそうな表情をする。
銃を構えて狙いを定める鉄郎。

鉄郎「(声)メーテル!」
鉄郎「(声)メーテル!」
鉄郎「(声)メーテル!」

目前を通り過ぎて行くリムジン。
しかし鉄郎は撃つことができない。

やがて鉄郎が気がつくと、群集はいなくなっている。
力なくその場に座り込んでしまう。

鉄郎「何のために……一緒に旅をして来たんだ……」

そしてうつむいてしまう。

鉄郎「何のために……」



○市街地

やがて車掌が車で追い掛けて来る。
そして下の道路から叫ぶ。

車掌「鉄郎さーん!」
鉄郎「ん?」

その声に気づいた鉄郎、道路の端まではって行く。
そして顔を出してのぞく。

車掌「メーテルさんが、お呼びです!」
鉄郎「メーテルが?」



○大寺院

(原作漫画の「排気筒」にそっくり)

車で建物の前に降り立った鉄郎、車掌、メタルメナ。
迎えるメーテル。

鉄郎「メーテル……」
メーテル「鉄郎、今からここで見るものを、よく胸に焼きつけなさい」

そう言って背中を向けて歩き出すメーテル。
その後を追う一行。
しかし鉄郎は、建物の脇に何かを見つける。

鉄郎「ん?」

そこには幽霊列車が停止していた。

鉄郎「なぜこんなところに、幽霊列車が……!?」



○大寺院入り口

ドームの入り口にいる4人

メーテル「ドームを開けなさい」
セキュリティシステム「このドームを開けられるのは、女王陛下だけです」
メーテル「あたしが女王です」

メーテルの体を天井からの光が包む。

セキュリティシステム「失礼しました、女王陛下。仰せに従います。ロック、解除」

ドアが開く。
明るく輝く光。
やがて光が晴れると、そこには巨大な機械があった。
思わず歩き出す鉄郎。



○大寺院正面

鉄郎「こ、これは……?」
メーテル「命の火を抜き取る工場」
車掌「えっ?」

鉄郎を追って走って行く車掌、メタルメナ。

車掌「あっ、あ!」

その先には無数の人間が、ベルトコンベアに乗せられて運ばれていた。
みんな死んだように眠っており、身動き一つしない。
驚いてその場にへたり込んでしまった車掌。

車掌「あ、か、か、かっ……きゃ、あたわ、あわわ……」

ベルトコンベアの先では、落下して行く人間から命の火を抜き取っている。
そして命の火はガラス管を通して運ばれて行き、たくさんのカプセルエネルギーに加工される。

加工する機械に近づいて行き、できあがったカプセルエネルギーを手に取る鉄郎。
それを手に取ってじっと見ている鉄郎。
やがて鉄郎の耳に、聞き覚えのあるオルゴールの音が聞こえて来る。

鉄郎「はっ!」

その音を頼りに走り出す鉄郎。



○大寺院の遺体廃棄所

やがて、命の火を抜かれた人間が捨てられているところにたどり着く。
小山のようなその形。
よじ登る鉄郎。
その様子に愕然とする鉄郎。
やがてその中にミャウダーの顔を見つける。

鉄郎「はっ!……ミャウダー!」

ミャウダーの手には、ペンダントが握り締められている。
鉄郎、絶叫。

鉄郎「ミャウダー!」



○大寺院正面

元のところにいる3人(車掌がへたりこんでしまったところ)。
鉄郎の絶叫が聞こえて来る。
そこに鉄郎が、ミャウダーの亡骸を抱えて戻って来る。
鉄郎、ミャウダーの亡骸を床に寝かせる。
駆け寄る車掌。

車掌「あ……」
鉄郎「……」

(鉄郎の回想)
ミャウダー「俺は、アンドラード星のミャウダー」
ミャウダー「俺より先に死ぬなよ。男の約束だぞ」

涙を流している鉄郎、やがて泣き崩れる。

鉄郎「……ミャウダー……」
車掌「うううっ、ううううう……」

車掌もつられて大泣き。
退屈そうに自分の手をいじくっているメタルメナ。

メタルメナ「だらしないわね。人が死んだことぐらいで泣くなんて」
メーテル「男の子が、友達のために涙を流すのは、恥ずかしいことじゃないわ」

泣いている鉄郎。

メーテル「あなたのために泣いてくれる友達が、あなたにはいるの?」

手を休め、首をかしげてメーテルを見つめるメタルメナ。
無言のメーテル。
やがて鉄郎、顔を上げてメタルメナを見つめる。
その迫力に怯えたようになり、後ずさりするメタルメナ。
鉄郎、メタルメナの手を引っ張って、ベルトコンベアの見える場所まで連れて行く。

鉄郎「これでもまだ、ここが楽園に見えるのかメタルメナ!?……さあ食え、食ってみろ!」

鉄郎、両手一杯のカプセルエネルギーを差し出す。
その勢いに押されて後ずさりするメタルメナ。

鉄郎「命の火だぞ、食わないのか!」

カプセルエネルギーを受け取るメタルメナ、両手が震えている。

鉄郎「どうした!?」

メタルメナの震える指の間からこぼれ落ちるカプセルエネルギー。

鉄郎「何が永遠の命ちだ……」
鉄郎「人の命を犠牲にしてできた楽園なんて、あるもんか!」

銃を構える鉄郎。
とその時、機械化ポリスが3人出現する。

機械化ポリス「お前たち全員を逮捕する!」

何かを決意したのか、突然機械化ポリスに向かって走り出すメタルメナ。

車掌「メタルメナさん!」

両手小指のレーザーを武器にして、機械化ポリスに突撃。
爆発。立ち上る火柱。

鉄郎「メタルメナ!」

残ったポリス2人と鉄郎の銃撃戦。
鉄郎、2人とも破壊。
そして倒れているメタルメナに駆け寄り、抱き起こす。

鉄郎「メタルメナ……」

そこに駆け寄る車掌。

メタルメナ「あたしは……、永遠の命と、宇宙で一番美しいメーテルさんの体が欲しかった……。何てことを……。あたしの負け、鉄郎さん……」
鉄郎「メタルメナ、きみってやつは……」

鉄郎の顔に震える手を添える、メタルメナ。

メタルメナ「あたしのために、泣いてくれるの……?」

メタルメナの指に、鉄郎の涙が伝わる。
メタルメナ、それを口につける。

メタルメナ「ありが……とう……」

鉄郎、メタルメナをその場に寝かせる。

鉄郎、手当たり次第に銃で設備を破壊し始める。
爆発を起こし、炎上する機械群。
ベルトコンベーアが止まり、寝かされていた人々が起き始める。

爆発炎上する寺院の外観。

炎の中を逃げ惑う人々。

メーテルたちの所に戻って来た鉄郎。

メーテル「鉄郎、早くあの人たちを999へ乗せてちょうだい」
鉄郎「その前にやりたいことがあるよ」
車掌「?」
鉄郎「どうしてもプロメシュームを、倒すのさ!」
メーテル「母を倒すのは、あなたじゃない……」

メーテルの表情が厳しくなる。

メーテル「このあたし。母の血をもらった、このあたしの手で倒すのがさだめ……」

炎上する寺院の外観。

プロメシューム「(声)やはり裏切ったのか、メーテル……。この母を、お前に全てを与えて安らかに眠りにつこうとしているこの母を……」



○地下宮殿謁見室

プロメシューム「だが、私は負けぬ。決して負けはしない……」
プロメシューム「殺せ!メーテルを殺せ!」

ひざまづいているファウスト。

ファウスト「鉄郎はどのようにいたしましょうか?」

プロメシューム「鉄郎はお前の頼みで呼び寄せてみただけのこと。所詮、機械化世界とは相容れぬ宿命の敵。生かしておいても意味はない。……できぬとは申さぬであろうな、ファウスト?」
ファウスト「……」

ファウスト、無言で立ち上がる。



○コントロールルーム

コントロールパネルに近づくメーテル。
そのとき、突然声が聞こえる。

ファウスト「(声)お待ちしておりました、メーテル様」
メーテル「!」

空間から現れたファウストの姿が、実体化して行く。

ファウスト「女王プロメシュームの命により、お命を頂きましょう」

そう言って銃を構える。
身構えるメーテル。
メーテルに狙いを定めるファウスト。
その時鉄郎が飛び込んで来る。

鉄郎「ファウスト!」
ファウスト「!」

鉄郎の一撃が、ファウストの銃を弾き飛ばす。

メーテル「鉄郎!」
鉄郎「メーテル、こいつはぼくに任せろ!」

パネルに近づき、操作するメーテル。

プロメシューム「メーテル、何をする?おまえは母の命を絶とうというのか!?」

その言葉に動じないで操作し続けるメーテル。

プロメシューム「我が子の、お前を大切に育てたこの母を、メーテル、……」

言葉にならない、プロメシュームの言葉。

メーテル「許して、お母様……」

泣き崩れるメーテル。

プロメシューム「ふふふふ……、ふふふふ……、はははは……、はははははははは……」

突然周辺のガラスパイプ内にプロメシュームの顔がたくさん現れる。

プロメシューム「愚かな娘よ。ここは惑星メーテルではない」

ファウスト、落ちていた銃を素早く拾って一撃。
鉄郎の手から銃を弾き飛ばす。

プロメシューム「全宇宙を司る機械帝国の首都」

鉄郎をかばうようにファウストの前に立ちはだかるメーテル。

プロメシューム「惑星大アンドロメダ、すなわち私自身!メーテル、私が未来を託すために育てたお前がこの母を裏切るとは……。死ぬがいい、滅びるがいい、人間どもと一緒に!」
ファウスト「お覚悟!」

メーテルに銃口を向けるファウスト。
そのとき建物全体が揺れ始める。

ファウスト「ん?」

ファウストに駆け寄って来る1人の兵士。

兵士「戦闘艦2隻、絶対機械圏内に、侵入!」
ファウスト「何!?」



○宇宙

宇宙空間で繰り広げられる戦闘。
先頭にドクロのマークがついた戦艦、アルカディア号である。
ついでクイーンクィーンエメラルダス号。
アルカディア号の砲撃で次々と吹き飛ぶ戦闘衛星。
2隻並んで、惑星に降下して行く。



○コントロールルーム

ファウスト「……しかしこの振動はどういうわけだ!?」

ガラスパイプに次々とひびが入って行く。
鉄郎、メーテルの手を取り走り出す。
鉄郎、その時落ちていた銃を拾うが、その拍子にミャウダーのペンダントを落とす。
それを拾い上げるるファウスト、じっとペンダントを見つめる。



○惑星大アンドロメダ

次々と炎に飲み込まれて行く建物。
鉄郎とメーテルが逃げ出すと同時に、崩壊する。



○ステーション

ステーションでは、避難民が次々と乗り込んでいる。
ミャウダーの亡骸を抱いている車掌。

車掌「い、いったい……何が始まったんですか?」

エスカレーターを駆け下りて来る鉄郎とメーテル。
乗り込もうとしていた車掌、2人に気づく。

車掌「あ、鉄郎さん、メーテルさん!早くお乗り下さい!」

起動する機関車。

乗ろうとする鉄郎に、ためらいがちに話し掛けるメーテル。

メーテル「鉄郎、あたしは……」
鉄郎「何してんだ、早く、メーテル!」

鉄郎、そう言ってメーテルの手を取って無理矢理乗せる。
汽笛の音。
走り始める999。

鉄郎の後を追って来たメタルメナ、階上から炭水車に倒れ込む。



○惑星大アンドロメダ

発車した後、崩壊して行くホーム、ステーションビル。
逃げ惑う機械化人、次々と崩壊に巻き込まれて行く。
崩壊する建物の間をぬって、上昇していく999。
999攻撃のために浮上する戦闘衛星。

窓から顔を出して後ろを見ている鉄郎、車掌、大勢の乗客。

車掌「せ、戦闘衛星ですよ!」

砲撃から必死に逃げる999だが、砲撃が最後尾の車両に命中し、爆発炎上。

鉄郎「みんな、前の方へ逃げろ!」

砲撃を受けながら前の方へ逃げて行く乗客たち。
砲撃によって、また1両が爆発炎上。
残った最後尾の車両のデッキで、攻撃の様子を見ている鉄郎、メーテル、車掌。

鉄郎「くっそぉー!」

とその目前で、戦闘衛星がビームの直撃を受けて破壊される。
驚く鉄郎。

鉄郎「ハーロック!」

その方向を見ると、アルカディア号がいた。
次々と戦闘衛星を破壊して行くアルカディア号。
残った戦闘衛星が999を狙撃するが、そのビームがなぜか進行方向に向かって左に曲がってしまう。

鉄郎「弾道が右へカーブしてるぞ?」



○アルカディア号

戦闘衛星を狙って発車したアルカディア号の弾道も進行方向に向かって右にそれる。

ハーロック「おかしい……弾道が右へそれて行く……なぜだ?」

そのときアルカディア号が大きく揺れる。

ハーロック「う!どうした?」

ヤッタランと並んで計器に向かっている有紀蛍。

有紀蛍「もの凄い吸引力が、右後方から働いています」
ハーロック「何?」

トリさんが飛んで来て、ハーロックの右肩にとまる。



○機関車

激しく汽笛を鳴らし、全速力で走る999。
機関車に飛び込んで来た鉄郎、車掌。

車掌「あぁっ」
鉄郎「どうした、やられたのか?」
機関車「何カシラ、恐ロシイ重力ガ、作用シテイマス。私ニハ、ドウニモ、デキマセン」

遅れてやって来たメーテル。

メーテル「サイレンの魔女!」

宇宙で輝く怪しげな光。

鉄郎「(声)サイレンの魔女?」
メーテル「サイレンの魔女が歌う時、生きとし生けるもの全ての命の火が消える……アンドロメダに昔から伝わる伝説よ」

徐々に近づいて来る怪しげな光。



○惑星大アンドロメダ

プロメシューム「(声)サイレンの魔女?なぜそのようなものがここへ?なぜ?」

悲鳴をあげながら空中へ吸い上げられて行く、たくさんの機械化人や乗物。
戦闘衛星や999も同様に。
吸い上げられて行く999の中で、その様子を見ている鉄郎と車掌。



○アルカディア号

同様に吸い上げられて行くアルカディア号。

ミーメ「(声)サイレンの魔女……。異質のエネルギーを求めて」

グラスを片手に、ハーロックと並んで立つミーメ。

ミーメ「宇宙をさまよう、大暗黒彗星」
ハーロック「プロメシュームが、機械エメルギーをこの空間で充満させたため、それにひかれてサイレンの魔女が来た」

ハーロック、体が明るく輝くミーメ、有紀蛍、ヤッタラン、ドクターゼロ。

ハーロック「機械帝国の機械エネルギーが、サイレンの魔女をここへ呼び寄せたのか?」
トチロー「(声)そうだ、俺も今は機械だからな。しばらくの間、眠ることにするよ……」

コンピュータの電源が落ちて行く。

トチロー「(声)頼んだぞ、友よ……」

明るく輝くサイレンの魔女。
その中心部に、機械化人や乗物などをどんどん吸い込んで行く。

ハーロック「自動操縦停止、人力操舵に切り替えろ!」



○機関車

機関車にいる鉄郎、メーテル、車掌。

メーテル「機械エネルギーは使えないわ。人力で運転するのよ」

運転席で、手動運転でがんばる車掌。



○機関車の動力炉

エネルギー交換装置にエネルギー鉱石をスコップで放り込む鉄郎。



○アルカディア号

ハーロック「アフターバーナー全開、左22度に、進路修正!」

その時、ブリッジに光るものが現れる。
驚くハーロック。
駆け寄る乗組員。
やがて形を取って現れる。ファウスト、である。
ハーロック、乗組員を制するように。

ハーロック「待てっ!」
ファウスト「……」

並んで外を見ているハーロックとファウスト。
そこにミーメがグラスを2つ持って後ろから近づいて来る。

ハーロク「久しぶりだな……」

ファウスト、無言でうなずき、外を見る。

ファウスト「鉄郎と最後の決着をつける時が来た」
ハーロック「……」
ファウスト「立ち会ってくれるか?」
ハーロック「よかろう」
ファウスト「どちらが勝っても手を出さぬと誓ってくれるか?」

ファウストのアップ。

ハーロック「(声)あぁ。しかし辛い戦いになるな」
ファウスト「この戦いに勝たない限り、私にも鉄郎にも未来はない」

外を見ていたハーロック、ファウストの方に向き直る。

ハーロック「……。『鬼』だな」
ファウスト「……」

999の汽笛の音。
エネルギー交換装置にエネルギー鉱石を放り込んでいる鉄郎。

ファウスト「『鬼』だ。私は人の姿をした、『鬼』だ」

そこにミーメがやって来て、グラスを差し出す。
受け取るハーロック、ファウスト。
互いに無言のまま乾杯の仕草。

ファウスト「さらばだ、ハーロック……」

そう言って飲み干す。

ハーロック「さらば、友よ……」

そう言って飲み干す。

2人はカラになったグラスを投げる。
グラスは床に落ちて、粉々に砕け散る。

ファウスト「まだ私のことを、友と……?」
ハーロック「……」

ファウスト、ここでペンダントをハーロックに差し出す。

ファウスト「預かってくれるか?」
ハーロック「(声)ああ」

ファウスト、自分の手をじっと見つめた後、徐々に消えて行く。
それを見送りながら、悲しそうにうつむき、涙を流すミーメ。
受け取ったペンダントを見つめるハーロック。



○クィーンエメラルダス号

エメラルダス「今から、この世で一番辛いものを見なければなりませんね、ハーロック」

モニターに映るハーロックに語り掛けているエメラルダス。



○惑星大アンドロメダ

崩壊がだんだん大きくなって行く惑星表面。
吸い寄せられて行く999。
所々に爆発が起きているアルカディア号。
吸い込まれて行く機械化人たち。



○運転席

レバーを操作している車掌、メーテルに話し掛ける。

車掌「変ですねぇ。これだけパワーアップすれば、脱出できていいはずですが……」
メーテル「この999のどこかに、機械エネルギーが働いているらしいわ」



○副コンピュータ室

炭水車内、副コンピュータ室。
座り込んでいるメタルメナ、立ち上がってよろよろと歩き出す。
そして客車との間のデッキに出る。

メタルメナ「さようなら、鉄郎さん……」

と言い残して、空中に身を投げる。
流れ落ちる涙。
そのまま吸い上げられて行く。



○機関車の動力炉

動力炉に姿を現したファウスト。
気づかないで作業をしている鉄郎。
ファウスト、鉄郎に話し掛ける。

ファウスト「……鉄郎……」
鉄郎「ん?」

鉄郎が振り返ると、ファウストの姿が空中に消えて行く。

鉄郎「待て!ファウスト!」



○機関車

鉄郎、銃を構えて出て来る。
とそこにはメーテルがいる。

メーテル「どうしたの?」
鉄郎「ファウストだ。この列車に、黒騎士が乗ってるんだ」
メーテル「えぇ?」

突然ファウストの声が響き渡る。

ファウスト「(声)鉄郎……今度はどちらも身を引くわけにはゆかぬ……。許しを乞うのは今のうちだ……」

銃を構えて警戒している鉄郎を、じっと見つめるメーテル。



○車外

汽笛を鳴らす999。
炭水車の上に上る鉄郎。
運転室の上にはマントをなびかせるファウストがいた。
風に飛ばされないように身構える鉄郎。
対峙したまま動かない2人。

2人の横、進行方向に向かって999の左を航行するアルカディア号。
対峙したまま動かない2人。
2人の横、進行方向に向かって999の右を航行するクィーンエメラルダス号。
2隻の船は、999を挟むように航行している。

長い沈黙。

やがて鉄郎の一撃。
ファウストはしゃがんでかわす。
次にファウストの一撃。

鉄郎「あっ!」

鉄郎、何とかかわす。
しかし一撃が顔をかすめたのか、左ほほから血が流れ落ちる。
沈黙。

はしごを伝って炭水車に上ろうとするメーテルに、呼び掛ける声。

エメラルダス「(声)メーテル」

振り向いて見上げるメーテル。
そこには、エメラルダスがいた。

エメラルダス「(声)これは誰にも手出しのできない、男の戦い」

決闘を見ているハーロックの姿。

エメラルダス「(声)鉄郎のためを思うなら、手を出してはいけない」

鉄郎、しゃがんで撃つが、ファウストには当たらない。
ゆっくりと歩き出すファウスト。
鉄郎、また3発撃つが、やはり当たらない。
ファウストの一撃。
鉄郎、横にかわす。
鉄郎、また3発撃つが、やはり当たらない。

鉄郎「うわぁっ!」

ファウストの一撃がかすめて、鉄郎は後ろに飛ばされる。
後ずさりする鉄郎。
近づいて来るファウスト。

やがて999は真っ暗な闇に突入し、お互いが全く見えなくなる。

ファウスト「(声)光がなくても、私にはお前が見える。前の時もそうだった。待っていろ、今からお前の側へ行く。我慢できるかな?ふふふふ……」

ゆっくり後ずさりする鉄郎、転びそうになる。



○惑星大アンドロメダ

いよいよ炎の海に包まれる惑星表面。

プロメシューム「(声)うわぁあああああああ……」

惑星に響き渡る、プロメシュームの断末魔の声。
惑星表面が弾けて、爆発する。



○車外

鉄郎「ん?」

どこからか聞こえて来る、ミャウダーのオルゴールの音。
その方向が一瞬明るく輝く。

鉄郎「うわぁっ、くっ!」

鉄郎、その方向目掛けて一撃。
やや間があって、鈍い音が聞こえて来る。

ファウスト「(声)あぁっ!」

やがて闇が晴れ、明るくなる。
落ちているミャウダーのペンダント。
身動き一つしないファウスト。
オルゴールの音だけが聞こえる。

ファウスト「強く、なったな……、鉄郎……」

鉄郎、何かを感じたのか、驚きの表情。
ファウスト、目を細めて。

ファウスト「さらば……」

ファウストの体が明るく輝く。
そして吸い上げられて行く、ファウスト。
離れながら、無言で見つめ合う2人。

ファウスト「さらばだ……、」

と言ってファウスト、鉄郎の方向に手を伸ばすが、しかしその手を止める。

ファウスト「息子よ……」

そのまま遠ざかって行くファウスト。

ファウスト「さらばだぁー、我が息子よぉー!」

吸い込まれて行くファウスト、やがて一際明るく輝き、そして消える。
999の汽笛の音。
呆然と見ている鉄郎。



○アルカディア号

ファウストから託されたペンダントを見ているハーロック。
それを開けると、中には鉄郎と母の写真がある。
無言で見ていたハーロック、やがて悲しそうな顔をして、それを握り締める。

吸い上げられて行くファウストのペンダント。

999の汽笛の音。



○機関車の動力炉

全力疾走する999。
エネルギー交換装置にエネルギー鉱石を放り込んでいる鉄郎。



○宇宙

左右をアルカディア号とクィーンエメラルダス号に守られるかのように疾走する999。

惑星表面からたくさんの光が舞い上がる。
そして地上全体が光に覆われ、やがて不気味な光を発し、何度か輝く。
そしてサイレンの魔女が去ったその後には、小惑星のような小さな岩塊が残されていた。
惑星大アンドロメダの本体である。

プロメシューム「(声)寒い、寒い、とても寒い……。メーテル、私を、私を暖めておくれ……。メーテル、私のかわいい娘よ……。メーテル、メーテル、メーテル……」



○惑星大アンドロメダ

荒れ果てて廃墟となった惑星表面。
そこには古ぼけた宇宙船が残されていた。
それにゆっくり歩いて行くメーテルと鉄郎。

鉄郎「これがお母さんときみが旅をした宇宙船か……」
メーテル「あたしを連れてたどり着いた、小さな石の星。この石の上で孤独と戦いながら、永遠の命の世界を作り上げたお母さん。良かれと信じて……。……。素晴らしいお母さん……」

宇宙船の残骸にすがりついて泣き崩れるメーテル。
を見ている鉄郎。

メーテル「さぞ辛くて長い旅だったでしょうね……。でも、その旅もやっと終わったわ……。……。やっと……」

メーテルの脳裏を横切る、古城の母の絵、メーテルの絵。





○惑星ラーメタル

朝日の昇った、ラーメタル。
古城の対岸にある、小高い丘の上。
に作られた、ミャウダーの墓。
その木でできた墓標にかけられた、ペンダント。
を、見ている鉄郎、ハーロック。

ハーロク「やはり地球へ戻るのか?」

鉄郎、振り返り、ハーロックに向かって。

鉄郎「ええ、ぼくのために死んで行った仲間との約束ですから。それに、助け出したみんなも一緒に来てくれるそうです」 ハーロック「そうか……」

ゆっくりと前に出るハーロック、鉄郎の肩に両手を置いて……。



駆け出す鉄郎、振り返る。
そしてまた走り出す。
その後をゆっくりと歩いているハーロック。

ハーロック「(声)鉄郎、お前の父は昔、俺やエメラルダスと共に戦った素晴らしい戦士だった。不幸にして途中でたもとを分かったが、お前は、お前の父によく似ている」

飛んで来たトリさんが、ハーロックの右肩にとまる。

ハーロック「(声)鉄郎、たとえ父と志は違っても、それを乗り越えて、若者が未来を作るのだ。親から子へ、子からまたその子へ血は流れ、永遠に続いて行く」
ハーロック「(声)それが本当の永遠の命だと、俺は信じる」



○ステーション

駅前の階段を駆け上がる鉄郎。
上がり切ったところには車掌が待っていた。

鉄郎「車掌さん」
車掌「え?あぁ、お帰りなさい」
鉄郎「どうしたのさ?」
車掌「私もやっと、目が覚めましたよ」
鉄郎「えぇ?」

車掌、2,3歩歩み出て。

車掌「生身の体がいいか、機械の体がいいか、迷いに迷っていた、自分が恥ずかしいです」

鉄郎を振り返り。

車掌「こうなったら絶対になります」
鉄郎「どっちに?」
車掌「はぁ……いやですねぇ、元の体に、ですよ」

と言って車掌、上着を脱ぐ。
そこには何もなかった。空っぽ、である。
驚く鉄郎。

鉄郎「あぁ、あ……。これじゃお風呂へ入っても仕方ないなぁ」

車掌、自分のお腹をぽんぽんと叩いて笑う。

車掌「はははは、あっはははははははは……」



○駅構内

ホームに停車中の999。

車掌「(声)へ、へっくしゅん!」

荷物の積み込みでごった返しているホーム。
発車ベルが鳴っている。
機関車の横で、エメラルダスと話しているメーテル。
ちょうど鉄郎とメーテルが再会した辺り。

エメラルダス「メーテル、あなたは鉄郎と一緒に行くことはできない。あなたも私も、永遠に終わることのない、時間の中を流れて行く、時の旅人」
鉄郎「(声)メーテル!」

振り返るメーテル。
そこには荷物を抱えて乗り込もうとしている鉄郎がいた。

メーテル「先に乗ってなさい、鉄郎」
鉄郎「ああ」

乗り込む鉄郎。
メーテル、エメラルダスに視線を戻す。
エメラルダス、メーテルの右肩に左手を置き。

エメラルダス「私たちの旅に、終わりはない……」

悲しそうな表情になるメーテル。
発車のベルが止む。
メーテルのトランクが落ちる。
汽笛を鳴らし、発車する999。

煙を巻き上げ、ホームから出て行く999。



○客車

ふと外を見た鉄郎の目に、メーテルの姿が飛び込んで来る。
驚く鉄郎。

鉄郎「メーテル!」

窓にすがりつく鉄郎。
後ろに離れて行くメーテルの姿。
避難民でごった返す車内をかき分け、後ろへと走って行く鉄郎。
車掌を突き飛ばし、走って行く。
最後部から身を乗り出す鉄郎、絶叫。

鉄郎「メーテルーー!」

線路を登って行く999。



○ステーション

ホームから出て来て、999を見上げるメーテル。

メーテル「さようなら、鉄郎。いつかお別れの時が来ると、あたしには分かっていました」

じっと見下ろしている鉄郎。

メーテル「あたしは青春の幻影、若者にしか見えない、時の流れの中を旅する女」

じっと見下ろしている鉄郎。

メーテル「メーテルという名の、鉄郎の思い出の中に残れば、それでいい。あたしはそれでいい。さようなら、鉄郎」

じっと見下ろしている鉄郎。

メーテル「(声)あなたの青春と一緒に旅をしたことを、あたしは永久に忘れない」
メーテル「さようなら、あたしの鉄郎……」
メーテル「さようなら……」

駅が崖の向こうに消える。

上空へ舞い上がって行く999。
地平線の向こうから、ヘビーメルダーが見えて来る。
鉄郎の帽子が、飛ばされて行く。
鉄郎、絶叫。

鉄郎「メーテルーーーーー!」

鉄郎の帽子が、飛ばされて行く。

鉄郎「メーテルーーーーー!」

鉄郎の帽子が、飛ばされて行く。

鉄郎「メーテルーーーーー!」

鉄郎の帽子が、飛ばされて行く。

鉄郎「メーテルーーーーー!」

帽子、小さくなって見えなくなる。



○客車

外を見ている鉄郎の後姿。
鉄郎、やがて振り向く。



○宇宙

ラーメタルから離れて行く999。
やがてアルカディア号とすれ違う。



○アルカディア号

ミーメと並んで窓から見ているハーロック。
その視界には、999とクィーンエメラルダス号が見える。



○客車

硬い決意の表情で、客車に戻って来た鉄郎。

ナレーション「時は流れ、メーテルは消えて行く。少年の日が、二度と還らないように、エーテルもまた、去って帰らない。人は言う、999は鉄郎の心の中を走った、青春という名の列車だと」



○クィーンエメラルダス号

クィーンエメラルダス号から999を見ているエメラルダス。
に聞こえる、999の汽笛の音。



○宇宙

アルカディア号とクィーンエメラルダス号との間を走り抜ける999。
離れて行く2隻の船。
去って行く、アルカディア号。
その後を追うかのように去って行く、クィーンエメラルダス号。

別れを告げるかのように、二度汽笛を鳴らす999。
走り去って行く999。

ナレーション「今一度、万感の思いを込めて、汽笛が鳴る。今一度、万感の思いを込めて、汽車が行く」

真っ直ぐ疾走する999。

ナレーション「さらばメーテル、さらば銀河鉄道999」

遠くに見えなくなる999。

…‥そして、少年は大人になる
(黒地に白文字、横書き)





○エンディング



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