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レヴァリアース
最終話 忘却に沈む彼の地G−セピアの憧憬−

(最終話に至るまでのあらすじ)
かつて邪神竜ディアボロスが勇者ザードにより倒された大陸、オッツ・キイム。
しかしその勇者ザードは甦ったディアボロスに殺されたという。
ザードの妹イリアはその真相を探るため男装し、ウリックと名乗って(名義上ここの本文ではウリックとする)旅をしていた所アドビスの王子シオンと出会い、また妖精のレムも加わり3人で旅をする事となる。
王子であるシオンのわがままにウリックは苦労するが、ウリックの天真爛漫でまっすぐな性格が法力国家の王子でありながら、魔法使いであるため国であまり快く思われなかったシオンの心を徐々に開いていく。
真実を知るため、西のイビスからディアボロスが封じられている異世界に向かうウリックたち。
しかし邪神竜ディアボロスは封印されていた。では誰がザードを殺したのか?
そう考えるウリックたちの前に赤い仮面の男・イールズオーブァが現れ、ザードを殺したのは自分だ、と冷酷に告げる。
シオンはウリックたちを魔法で逃がし、単身イールズオーブァに一騎打ちを挑む。しかしウリックは「シオンが死んでしまう方が嫌だ」と決戦の場まで戻ってくる。
人知を超えた魔法で魔物の姿へと変じたイールズオーブァに対し、シオンは自らの命を賭した魔法を放つ。そして倒れ伏すシオン。
だがイールズオーブァは復活し始めた。その時…ウリックの怒りの一撃が、初めて魔物を倒すに至ったのである。
戦いの後、シオンの命は燃え尽きようとしていた。死を目前にして、シオンはウリックに過去のザードとの出会いのことを語り始めた…

(本文)
 イールズオーブァとの死闘で命が燃え尽きようとしているシオン。ウリックに抱えられながらザードとの出会いを語っていた。
シオン「その男は、嫌がる俺様になおも妹の話を続けた」

 回想、ザードとシオンの会話。
ザード「本、好きで、その子」
シオン「は?」

あ…妹の好きな本って言いたいんだナ

シオン「ザードの妹のコトだからどんなすごい魔法書かと期待したが…」
 その本は「よい子のほん」と記された絵本であった。
――ペン子ちゃんのママはお星さまになりました
そうして、いつまでもいつまでもペン子ちゃんをお空でみまもっていたそーな
…おしまい

ばかばかしー…たわいもない擬人化でつくられた物語…
こんな本のどこがいーんだ?
シオン「イリアって子、そんなにこの本好きなのか?」
ザード「泣いてる…イリアは毎回、読むたび」

 回想、シオンと城の老婆(ばば)との会話。
ばば「王子、何か無理をなさってるように感じます。自然にふるまってくだされ」
シオン「そうさせてるのはお前達だろ」
ばば「…ばばには王子の考えがわかりません」
シオン「…皆、バカだから私のことがわからないんだ。いや…私をわかろうとしないんだ。もういい…こんなことを論じても時間の無駄だ。私にはばばが心配する理由の方がわからない」

 回想、シオンとザードの会話再び。
シオン「…わからない。イリア(そいつ)のコトを考えると何故か胸の下あたりが気持ち悪くなり体が震える…ヤな感じなんだ。ザード…どうしてなんだろ」
ザード「…女だからか?」
シオン「…違う。女に対する嫌悪とは違う…そいつだけに感じるものだ」
ザード「何故イリアにだけそう感じる?」
シオン「…わからない。どうしてだろう………そうか、その子を理解するのが怖いのか…?理解したくないのか…?」
ザード「どんな所がヤな感じなんだ」
シオン「…………だって、だって…あんなことで泣くんだ…わかんねーよ」
 いつしかシオンの目にも涙が浮かび始めていた。
ザード「シオン、何故だ…イリアと本の話…とりようによってはばかばかしいと笑うことも…怒ってけなすこともできるし、彼女の気持ちになって一緒に泣くこともできる。だが、君はいずれも選ばずわからないと言って怖がってる。何故だ」
 その時、かつてばばに言われた言葉が甦ってくる。
ばば「自分の気持ちに…感情のままに…素直であってくだされ。でなければ、いずれわからなくなってしまいます」

 再び現実に戻る。
シオン「…それからもザードは来るたびに妹の話しをした。日記を付けてること、勉強が嫌いなこと、両親が亡くなったこと。ただ、俺様はいつの間にか怖さがうすれ…逆に興味をひかれるようになっていた。…そうなんだ、そんな時に…」
ウリック「…何?」
シオン「…いや…なんでもない…」
 そういってシオンは眼を閉じ、遠い日のことを回想していた。

 回想、森の中にて。膝をすりむいた幼い日のシオンがいる。
シオン「いてぇ、すっちゃった…」
 そこに幼い日のイリアが通りかかる。

! こいつペン子本の好きなヤツ…

イリア「あ…あう」
 イリア、シオンのキズを見て大泣きしてしまう。シオンは戸惑うが、キズを手当てした後には満面の笑顔で、
イリア「キズ、これでだいじょうぶだヨ」
 
 回想、アドビス城にてシオンとザードの会話。
ザード「俺が帰ってこなかったら…あの子を守ってくれないか」
シオン「ザードがいつも言ってる子か?」
…キズを見ただけで泣いた子
泣いたと思ったらすぐに笑ってた子…
シオン「うん、命にかえても守る」 

 回想、シオンとウリックの旅路が走馬灯のように。
ザードの妹…久しぶりに会ったけど何故男のカッコなんか…?
陰から守ってやるか、事情説明するのメンドーだし
あ、気づかれた
やっぱコイツ俺様のコト覚えてねーな。ガキん時1回会ったきりだしムリねーか
シオン「ま、助けてもらってやった。ありがたく思え」
しかし何故俺様はこんな奴を命にかえても守るなんて約束したんだ…
ザードの頼みだから…?…いや、それだけじゃないような…
 そしてウリック(イリア)の言葉。
あんなに困ってるんだ
これでだいじょうぶ

 再び現実へ。
シオン「そいつ…ザードの言ってた女と出会い、一緒に旅したおかげでいろんなコトが見えてきた。昔、ばばの言ったことも、ザードの問いの答えもよくわからなかった…ケド…今ごろ…今ごろ何となくわかったよーな気がする」
 シオンは安らかな笑顔を浮かべる。ウリックは大粒の涙をこぼす。
シオン「2つの月が…離れ…る…早く…オッツ・キイムに帰…れ」
ウリック「やだ、いやだいやだ、ココにのこる、シオンと一緒に」
 ウリックは最早涙声になっていた。レムもまた泣き出している。
レム「いっく…ウリッ…ク」
シオン「俺の代わ…りに、世界を旅してくれ…よ」
 垣間見えてく、オッツ・キイムの風景。
 かつてウリックが旅の途中で出会った人々の姿、そして同じようにオッツ・キイムを旅している3人の若者達(「幻想大陸」の十六夜・ジェンド・カイ)の姿も見える。
シオン「いろんなことを…自分自身の目でたしかめて…いろんな生きものや、いろんな人と会ってふれあって、時に笑って、時に泣いて…悩み、感動して、知って、お前のこれからの時間(とき)を…すばらし…い…もの…に……イリア…生きて…く……」
 そして、シオンの命は燃え尽きた…
 決戦の場となったイールズオーブァの書庫に響き渡る、ウリックの慟哭、そしてすすり泣く声。
 一通り泣き終わった後、ウリックは泣きじゃくりながらもシオンのことを回想する。

シオン…

 そして駆け巡っていく、シオンと旅した日々の思い出。
シオン「ここのアップルパイ、うまいんだぜ。いこう」
ウリック「わーい♪」

シオン「へんそーだよ、へんそー♪」

シオン「魚はいやだい。もっとごーじゃすででりぃしゃすなのが食べたい」
ウリック「わがまま太郎!」

シオン「まずい!」
ウリック「なら食べなくてもいーよ」

シオン「俺様のマネすんじゃねーよ」

 そして最後に、決戦前にみんなで食事をしていたシーンの1カットより。

これからも、すばらしい時間を――

(レヴァリアース・完)

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