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無敵超人ザンボット3の最終回


燃える宇宙


ナレーション「まだ、神ファミリーとガイゾックの戦いは続いていた。ファミリーの女性と子供たちを地球に送り帰した後、源五郎はビアルIII世で体当たりを敢行、メカ・ブーストを倒し、残った勝平たちがバンドックの頭を破壊して、ブッチャーを葬り去った。だが、それは勝利ではなかったのだ」


宇宙空間での神ファミリーとガイゾックとの最終決戦を前に、勝平らの母親たち、弟・妹たちは地球に逃された。
ファミリーの長老・兵左ェ門と勝平の祖母・梅江、勝平の父・源五郎は特攻で宇宙に散った。
残るは勝平・宇宙太・恵子が乗るサンボット3、そして勝平の兄の一太郎、宇宙太の父の大太、恵子の父の久作が乗るビアルI世のみ──。


頭部を失ったバンドックの胴体が、不敵にザンボット3とビアルI世を見下ろす。

勝平「まだ……動くのか? バンドックが……」
一太郎「これは……バンドックは、まだ膨大なエネルギーを放出しています…ガイゾックが……?」

バンドックの各部から激しい光が吹き出す。

勝平「うわぁっ! じ、自爆するつもりなのかぁ!?」
宇宙太「そんな、甘い相手じゃないぜ……わぁ!」
恵子「あぁ──っ!?」

バンドックが大爆発。
装甲が砕け散り、凄まじい閃光が閃く。

大太「こ、これは……」
一太郎「磁気爆発です! メインエンジンの出力を最大にして下さい! 吹き飛ばされますよぉ!」
大太「や、やっている!」

バンドックが消え去った跡に現れたのは、巨大な目玉のような不気味な物体。

勝平「な、何だあれは? い、一兄ちゃん! こ、この目玉が、ガイゾックの正体なのか!?」
一太郎「わからん。正体かもしれん。そ、そうでないかもしれん。しかしともかく、バンドックは破壊されたんだ。この目玉の正体さえわかれば、俺たちはガイゾックに勝てるかもしれん」
大太「一太郎くん、突っ込むぞ! ただちにミサイル攻撃だ!」
宇宙太「勝平! ザンボットバスターを連射するぞぉ!」

ザンボット3とビアルI世がミサイルを連射するが、効果がない。
目玉状の物体から、再び猛烈な光が放たれ、ザンボット3らを襲う。

勝平「畜生! どういうことなんだ、これはぁ!」
恵子「勝平! ムーンアタックのエネルギーが溜まるまで、何とか頑張ってぇ!」
勝平「おう! くそぉーっ!」

ザンボット3が突撃するが、目玉状の物体は忽然と姿を消してしまう。
周囲に不気味な音が鳴り響く。

勝平「あぁっ……何の音だ?」
恵子「レーダーには、何も映らないわ」
勝平「来たぁ! メカブーストじゃないぞ!」

メカブーストではない、生物状の奇怪な怪物が襲ってくる。
ザンボット3が攻撃を繰り出すが、その攻撃が怪物をすり抜けてしまう。

宇宙太「て、手応えがなかったようだが?」
勝平「らしいな……どうなって……うわぁ!」

怪物がザンボット3とビアルI世目掛け、真っ赤な光線を吐きかける。

一同「うわあぁ──っ!!」


やがて光線が止むと──そこは、それまでいた宇宙空間ではなく、海底とも異次元ともつかない奇怪な空間。

勝平「どこだ? ここは……宇宙に、こんなところがあるのか?」
宇宙太「罠だ! ひょっとすると……」
恵子「何かが来るわ?」

ザンボット3のコクピットのスクリーンに、深海魚とも竜ともつかない怪物が現れる。
一方、ビアルI世の司令室のスクリーンには、植物とも人型ともつかない怪物が現れる。

一太郎「前方に何か見えます! レーダーでキャッチできませんか?」
久作「だめだ! レーダーも磁気探知機も、メチャメチャで使い物にならん!」
大太「ぶつかるぞ!」
勝平「そう、なめられてたまるかぁ!」

ザンボット3に迫る怪物がミサイルを放ち、ザンボット3の胴に炸裂。
ザンブルのコクピットが火を噴き、飛び散る無数の破片が宇宙太に突き刺さる。

宇宙太「ぐわぁ──っ!」
勝平「宇宙太、大丈夫か!?」
宇宙太「クッ……平気、平気!」
恵子「勝平、敵は正面よ!」
宇宙太「しょ、正面!?」
勝平「バスターミサイル!!」

負傷した宇宙太の視界、目の前の怪物がぼやけ……ビアルI世の姿となる。
そして、ザンボット3の放ったバスターミサイルがビアルI世に命中する。

宇宙太「あぁっ!? 勝平、やめろ! 俺たちはビアルI世を攻撃しているぞ!」
勝平「何ぃ!? 何寝惚けてんだ、宇宙太!」
宇宙太「間違いない! 退け、勝平! 相手はビアルI世だ!」
恵子「どこがビアルI世なの? 宇宙太、私には敵しか見えないわよ!」
宇宙太「ガイゾックの催眠作戦だ。目の前にいるのは幻なんだ! うぅっ……この傷を受けなかったら、俺だって正気にはなれなかったぜ。どこだぁ、ガイゾックは……いたぁ! 勝平、右上を攻撃だ! バンドックがいる!」
勝平「バンドックぅ!? ふざけるなぁ!」

勝平の視界には、宇宙太が指示した位置には何も見えない。
ザンボット3が再び攻撃を食らう。

勝平「うわぁ!」
宇宙太「勝平、右上だ! ミサイルを撃て! ここで撃たなかったら、貴様を呪い殺してやるぞぉっ!」
勝平「わ、わかった、右上だな」
宇宙太「仰角13.21、方位8.23!」
勝平「了解!」

宇宙太の指示に従い、勝平がザンボットミサイルを撃つ。
勝平の視界の中、何もない空間にミサイルが炸裂。
周囲の奇怪な空間が宇宙空間に変わり、そしてミサイルの炸裂した場所にバンドックが現れる。

勝平「あぁ!」
恵子「じゃ、じゃあ……」

ザンボット3の目の前の怪物が、ビアルI世へと姿を変える。
そしてビアルI世の目の前の怪物が、ザンボット3へと姿を変える。

一太郎「あぁっ! あれは!?」
勝平「一兄ちゃん聞こえるかい? 俺たちはガイゾックの目くらましにかかってたんだ!」
一太郎「目くらまし? ガイゾックめ、俺たちは危うく同士討ちをするところだったのか!」
勝平「こんなことで俺たちは……恵子、宇宙太、いいな! 奴に突っ込むぞ!」
宇宙太「了解! ヘッ、始めっからそのつもりよぉ!」
恵子「いいわ、勝平。最後の攻撃!」

ザンボット3がザンボットカッターを振るい、バンドック目掛けて突撃する。
バンドック砲が放たれる。

勝平「当たるもんかぁっ! 覚悟しろ──っ!!」

ザンボット3が砲撃を掻い潜りつつ、バンドックの首の付け根に突入。

久作「け、恵子ー!」
大太「宇宙太!」
一太郎「か、勝平! や、やったか!?」

バンドックの底部を突き破り、ザンボット3が飛び出す。

久作「大太さん、来たぞ! ザンボット3だ!」
大太「おぉっ!」

しかしバンドック砲が閃き、ザンボット3の左足がちぎれ飛ぶ。

恵子「あぁ──っ!!」
勝平「もう一度行くぜ! 宇宙太、恵子、いいな!?」
宇宙太「あ、ああ、いいぜ!」
恵子「バランス修正良し。ど……どうぞ!」
勝平「ゴーッ!」

今しがた突き破った底部へ、再びザンボット3が突入。
バンドックを貫通し、脇腹からザンボット3が飛び出す。
しかしバンドック砲が再び放たれ、ザンボット3の両腕までもちぎれ飛んでしまう。

勝平「バンドックめ!」
宇宙太「恵子、ザンボエースをそっちで切り離してくれ。ザンブルもザンベースも、もうだめだ!」
恵子「宇宙太……わかったわ!」

勝平の意思に反し、ザンボット3から勝平の乗るザンボエースのみが分離される。

勝平「う、宇宙太!? なぜコンビネーションアウトした? まだ一緒に戦えるんだぞ!」
宇宙太「冗談じゃないぜぇ……こっちは見事に手足がなくなっちまったんだ」
恵子「とにかく、2人で体当たりくらいできるわ。とどめを刺してみせる!」

ザンボエースを残し、ザンブルとザンベースが飛び去る。

勝平「宇宙太、恵子、早まるなぁ! 一兄ちゃん、マグナムを、マグナムをくれぇ!」
一太郎「了解!」
勝平「戻れ、宇宙太! 恵子!」

ビアルI世からザンボエースのホルスターが射出される。

勝平「宇宙太、恵子! う……」

ホルスターがサンボエースに装着される。
だが時すでに遅し、ザンブルとザンベースがバンドック目前に迫っている。
その様を呆然と見つめる勝平。

勝平「お、おい……!?」

ザンブルのコクピット。宇宙太が傷の痛みを堪え、ボロボロの計器にもたれかかっている。

宇宙太「すまねぇ、恵子……俺がこんなにやられてなけりゃ、恵子にコントロールしてもらうこともなかったのによぉ……」
恵子「何言っているの、今更……目標進路いいわね。ぶつかると同時に、イオンエンジンを爆発させるのよ」
宇宙太「よーし、バンドックの死角に入ったぞ! このまままっすぐだ、恵子!」
恵子「出力最大、イオン臨界オーバー。勝平、先に行くわね!」

ザンブルとザンベースが、バンドックの機関部に迫る。


恵子「さ……さよなら……父さん……母さん……」

宇宙太「すまねぇ……恵子……」


ザンブルとザンベースがバンドックに激突。
機体がひしゃげ、そして──大爆発。


恵子「ああぁぁ──っ!!」

宇宙太「勝平──っ!!」


ザンブルとザンベースのコクピットが炎に包まれ、宇宙太と恵子の姿が破片と爆風の中に掻き消える──。


勝平「う、宇宙太、け、恵子……お前たち……お前たちだけを、死なしゃしないぞ!」

大粒の涙をこぼす勝平。
宇宙太と恵子の自爆で空いた突破口から、ザンボエースがバンドック内部に突入する。
たちまち、内部の防衛システムがザンボエースを襲う。

勝平「まだ抵抗するのかぁ! こいつ!」

勝平が涙を流しながら操縦桿を握る。
防衛システムの攻撃で、ザンボエースの腕が、翼が、次々に吹き飛ぶ。
ザンボエースの爪先にビームが炸裂。
予備コクピットに乗っていた勝平の愛犬・千代錦が吹き飛ぶ。

勝平「千代錦──っ!」

攻撃を掻い潜り、ザンボエースがバンドック中心部に突入する。
広大な部屋の中で勝平が見たのは──
巨大な脳髄のような不気味な物体。ガイゾックの本体だ。

ガイゾック「侵入者は……地球……太陽系第三惑星の乗物か……」
勝平「こ、こいつが……ガイゾックの正体か……?」
ガイゾック「その声……神勝平だな……我、敗れたり……神勝平……」
勝平「や、やっぱり、貴様がガイゾックか! ガイゾックの正体なのか!?」
ガイゾック「我は……ガイゾック星人によって造られた……コンピューター・ドール第8号に過ぎない……」
勝平「ただのコンピューター!?」
ガイゾック「そうだ……悪い考えを持った生き物に反応するように造られている……かつて我……お前たちの先祖の星……ビアル星を、悪い考えが満ち満ちていた故に滅ぼせり……しこうして我、二百年の平和な眠りに就けり……だが、再び悪い考えに満ち溢れた星が我の平和を目覚めさせたのだ……その星にお前たちがいた……」
勝平「地球の人間が、みんな悪い人だと言うのかぁ!?」
ガイゾック「憎しみ合い、嘘をつき合い、我が儘な考え……まして、仲間同士が殺し合うような生き物が、良いとは言えぬ……宇宙の静かな平和を破壊する……我は、そのような生き物を掃除するために、ガイゾックによって造られた……」
勝平「そ、そんなことはない! み、みんな、みんないい人ばっかりだぁっ!」

いつしか、勝平の目に涙が滲んでいる。
かつて地球の人々から戦いを批難された勝平に、ガイゾックの言葉は皮肉に響くが、戦いの中で信じられる人々との出合いを得た勝平は、必死に訴える。

ガイゾック「神勝平……我がシステムは破壊されすぎた……最後に聞きたい……なぜ、我に戦いを挑んだ……なぜ……?」
勝平「地球を守るためだぁ!」
ガイゾック「地球の生き物が……頼んだのか……?」
勝平「俺たちの地球だ! 守らなくっちゃ、いけないんだ!」
ガイゾック「自分たちだけのために……守ったのか……?」
勝平「違うっ!!」
ガイゾック「神勝平……本当に、家族や親しい友人を殺してまで……守る必要があったのか……? 悪意のある地球の生き物が、お前たちに感謝してくれるのか……? 地球という星が、そのような優しさを……?」
勝平「な、何をっ!」
ガイゾック「お前たちは勝利者となった……しかし……お前たちを優しく迎えてくれる地球の生き物が……いるはずがない……」
勝平「こいつぅ……」
ガイゾック「この悪意に満ちた地球に……お前たちの行動を……わかってくれる生き物が……1匹でも……いると……言うのか……?」

ガイゾック本体が光に包まれる。
ザンボエースが吹き飛ばされ、壁面に叩きつけられる。

勝平「わあぁ──っ!!」


久作「勝平君の声だ! 微かに聞こえる!」
一太郎「まだ、あの中で生きているのか? 生きているのか? 勝平、答えろ! 生きているんなら、答えろ!」
勝平「うわぁー!!」
久作「間違いない、勝平君の叫び声が聞こえる!」
大太「このまま落下したらザンボエースが……」
一太郎「勝平、飛び出せ! 飛び出すんだぁ!」

制御を失ったバンドックが煙を吹きながら、地球の重力圏へと引き込まれてゆく。
ザンボエースの中で泣き続けている勝平。一太郎の声は届いているのか、届かないのだろうか。

勝平「お、俺は……地球のために……みんなのために……戦ってきたんだ……」
一太郎「勝平、脱出しろぉ!」

ビアルI世がバンドックを追う。
大気圏に差し掛かったバンドックが、赤熱化し始める。

一太郎「大気圏だ。このまま落ちたら燃え尽きてしまう」
大太「このビアルI世で、バンドックを減速させましょう。よろしいかな、久作さん?」
久作「よろしいでしょう……」
一太郎「おじさん!?」
大太「私も男だ。やれるだけはやってみたい!」

ビアルI世がバンドック下部に回り込み、逆噴射をかけてバンドックを押し上げる。
バンドックが過熱に耐え切れず、各部から火を吹き始める。

一太郎「勝平、生きているならお前だけでも脱出しろ!」

ビアルI世も次々に爆発。
一太郎、大太、久作が爆炎に包まれる。

一太郎「か、勝平ぇ──っ!!」

ビアルI世が爆発四散──。


ザンボエースがヨロヨロとした足取りで、バンドック外へ脱出。
そして、バンドックが大爆発。
ザンボエースが爆風に吹き飛ばされ、片足がちぎれ飛ぶ。


駿河湾。

海の彼方から朝日が顔を出す。
空から、ザンボエースが落ちてくる。

勝平「爺ちゃん……と、父ちゃん……婆ちゃん……お、俺たち……やったよね……ちゃ、ちゃんと戦ったんだよね……宇宙太……恵子……一兄ちゃん……あ……あ……」

波しぶきが上がる。
暗闇に閉ざされたコクピットの中、勝平が涙を流し続ける。

勝平「うぅ……お……俺たちは、つまらないことなんか……しなかったよな……な……なぁ……アキ……」


夜明けの駿河湾。
静かな波間に腰をつく、ボロボロのザンボエース。
顔面から海水が滴る様は、涙を流しているかのようだ。

砂浜に勝平が横たわり、涙を流しながら眠り続けている。

勝平「う……うぅっ……こ、怖いよぉ……と、父ちゃん……寒い……うぅ……さ、寒いよぉ、父ちゃん……うぅ……」

凍える勝平を、誰かの腕が抱く。
その腕を、勝平が震える手で握り返し、安心を覚えたかのように震えが止まる。

勝平を膝枕に乗せ、優しく抱いているのは──ミチ。
隣には、香月の姿が。

ミチ「みんな、遅いのね……」
香月「いいじゃないか、ミチ。ここに落ちた事は、もうわかってんだ。ミチのいい勘のお陰で、こうして俺たちが一番先に勝平に会えたんだ」
ミチ「だって……ここ、私たちの海だもん。勝平はここに戻って来るって、思ってた……」
香月「お前……勝平のこと、好きなんだろ?」

不意をつかれ、ミチが頬を真っ赤に染める。

ミチ「わ、私……ブスだから……」
香月「いいじゃねぇか、俺だって好きなんだ。こいつに惚れてんだ!」

母親に甘える子供のように眠り続ける勝平。
香月が微笑み、彼の寝顔を見つめる。


やがて、車の音。
ミチと香月が目をやると、彼方から、何台もの車がやって来る。
車の上には、勝平の母・花江、神ファミリーの皆、そして──大勢の人々。

花江「か、勝平!」
人々「勝平がいるんだ!」「生きてるんだとよ!」

車から降りた人々が、勝平のもとへ駆けてくる。

香月「ちょ、ちょっと待ってくれよぉ! 勝平はまだ……」
人々「勝平がいるのよ!」「生きてたんだって!」「良かったなぁ!」「良かったな、勝平!」「良かった良かったぁ!」「良かったわぁ!」「生きてたんだぁ!」

香月の制止を聞かず、人々が殺到してくる。
次から次へと人々が押し寄せてくる。

眠る勝平を取り巻き、百人に達するほどの大勢の人垣が築き上げられる。
皆の顔が、勝平の生還を喜ぶ笑顔に満ちている。


人々の喜びの声の中、勝平の目がゆっくりと開かれる──


(終)
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