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未来警察ウラシマンの最終回


(ナレーション)

ネクライム第2代総統ルードビッヒも、初代総統フューラーも、共にウラシマンの活躍によって倒され、犯罪帝国ネクライムは完全に崩壊し、ネオトキオの平和と正義と秩序が回復された。
しかし、対ネクライム作戦の頂点に位置した機動メカ分署マグナポリス38も、犯罪帝国の崩壊と同時にその目的を失い、メカ分署解散決議案が討議されていた。
2050年12月23日、クリスマスイブ前日であった。


AD2050
12.23


サヨナラ2050年


朽ち果てたネクライムの館の跡。
雨が降りしきる中、ジダンダが彷徨っている。
瓦礫の中から、悪魔の壷が出現し、笑い声が響く……。


一方、ボロボロになったマグナマー38では、クロード、ソフィアら自身の手で修理が行われている。

クロード「な〜んかひでぇ話だと思わねぇか、ソフィア。腹が立つじゃないか、まったく!」
ソフィア「ほ〜んと! ネクライムが崩壊したからマグナポリス38は不要だ、修理したければ自分たちで勝手にしろ、ですって!」
クロード「まぁな、権藤のおやっさんも予算の使いすぎだって、よく怒られていたからな……しかし機動メカ分署解散はないよな、解散は!」
ソフィア「そ〜よねぇ! リュウだって元いた世界に戻れなくなることを覚悟で、フューラーと戦ったんじゃないの。いっくら次にもっといいポストが用意されてるからって、嫌よぉ! もうひどいわぁ!」

マグナマー38の車内、なぜか権藤警部が浮かれまくっている。

権藤「や〜ったぁ〜! やった、やった、やったぁ! ヒャッハハハハハ!」

あまりに浮かれすぎた権藤が窓から床に落ちる。

クロード「あぁ!?」
ソフィア「あ?」
クロード「ど、どうしたんスか? おやっさん」
権藤「キ、キヒヒヒヒ……」
ソフィア「あの、大丈夫ですか? 警部、ねぇ」
権藤「フハハ、喜べ喜べ、喜ぶんじゃい! これが喜ばずにいられるか! お前たちも喜べ、ほれ!」

クロードとソフィアも、つられて無理に作り笑いを浮かべる。

権藤「リュウにクリスマススター賞が贈られることになったんじゃよ!」
クロード「クリスマススター賞!? あのネオトキオ最高名誉市民賞のぉ!?」
ソフィア「キャイ〜ン!!」
クロード「やったぜぇ! 最っ高〜!!」
権藤「リュウがネオトキオ最高名誉市民になれば、メカ分署解散もないっ!」
クロード「ヒャ〜ッホウ〜!」

浮かれまくる一同。

権藤「ところでリュウはどこじゃい?」
ソフィア「あら? そう言えばさっきまで私たちと一緒に修理してたのに……」
クロード「あの野郎、さぼったな!」
ソフィア「リュウ……」
クロード「大丈夫だよソフィア、今夜のクリスマス・ディスコパーティには出るって言ってたから」
ソフィア「う……うん、そうね」


夕方の街角。
リュウが沈んだ面持ちで、あてもなく歩いている。

日が落ちる。
クリスマスイブを明日に控え、幸せそうな灯りに満ちる街並み。
そんな街を見つめるリュウの目に、涙が浮かぶ。
自分の半身とも言うべきフューラーを死なせた悲しみか、元の世界に戻れない悲しみか。

街頭の花売りのワゴン。
店員の女性が、リュウに青薔薇の花を差し出す。

薔薇を胸に挿して歩き出すリュウ。


ネクライム一同が葬られた墓地にリュウがやって来る。

リュウ「ルードビッヒ……」

雪が降り出す。
リュウが胸の薔薇をルードビッヒの墓標に放る。

リュウ「ルードビッヒ、俺はお前に随分教えてもらったぜ……いいこと、悪いこと……生きること、死ぬこと……だけど、だけど……」

雪が降り積もる。
リュウの胸に、フューラーの今際の際の言葉が蘇る。

(お前は……お前は過去に帰りたくないのか……帰りたくないのか……)

リュウ「行くところもないし、戻るところもない……俺は旅に出るぜ! ルードビッヒ、あばよ……」

リュウが墓地を去る。
やがて、ジダンダが墓地にやって来る。

ジダンダ「ルードビッヒ様〜! ウルフ……ベアー……キャット……ホーク……シャーク……ミレーヌ様ぁ〜!」

墓標を前に泣き崩れるジダンダ。

ジダンダ「なぜ先に逝っちまったドスか〜地獄まで一緒だと誓い合ったじゃないドスか〜結婚なんかできなくたっていいんドス! このジダンダも、皆と一緒に逝きたかったドス……どうして1人ぼっちにしたドスか〜わたしゃ1人じゃ、1人じゃ……ミレーヌ様ぁ〜!! ルードビッヒ様ぁ〜!!」

悪魔の壷をルードビッヒの墓標に添える。

ジダンダ「ルードビッヒ様の壷ですダスドス……」

リュウが添えた薔薇に気づく。

ジダンダ「ん、花? ルードビッヒ様の墓に花……さぞやお悔しいことでしょうなぁ……一度はクリスタルナイツの全権力を手中にしたルードビッヒ様、その墓に花1輪……ルードビッヒ様ぐらいのお方なら、花輪の山ができてもいいものを……」

不意にジダンダが涙を拭って立ち上がる。

ジダンダ「このジダンダ、クリスタルナイツの生き残りとして、必ずや必ずやルードビッヒ様の墓を花束で一杯にして見せますドス!」


クリスマス・ディスコパーティ会場。
多くの参加客が踊っている。

クロード「えぇ〜っ!? 旅に出るぅ!?」
ソフィア「リュウ、どうしたのよ……?」
リュウ「あぁ……」
権藤「明日になればクリスマススター賞じゃ、メカ分署解散もない」
クロード「お前は知らんかもしれんけど、クリスマススター賞と言えば、ネオノーベル賞よりも凄いことなんだぜ!?」
ソフィア「ネオトキオ最高名誉市民賞なのよ」
権藤「そりゃお前の気持ちもわからんでもない。しかし早まるでないよな」
クロード「そうだよ、その通りだ! お前はネオトキオを救った英雄なんだぜ!」
リュウ「俺は……英雄なんかじゃないよ……」
ソフィア「女の子にもてるわ〜」
リュウ「ほんと!?」
ソフィア「キャイン!」
リュウ「そっかぁ! ……でもなぁ……俺やっぱ、旅に出る」
クロード「駄目だこりゃ、相当重症だぜ」
ソフィア「そうねぇ……リュウ、あなたの気持ちわかるけど、権藤警部の気持ちもわかってあげたら?」
リュウ「え?」
権藤「リュウ……」
ソフィア「権藤警部はあなたが名誉市民に選ばれて本当に喜んだんだから! 見せたかったわ、私たちだって、そりゃ、もう……」

泣き崩れるソフィア。

リュウ「ソフィア……」
ソフィア「どっか行っちゃうなんて言わないでちょうだい……」
権藤「ソフィア、もう良い。可愛い子には旅をさせろとも言うし、リュウが旅にでるのもいいかもしれん……」
リュウ「親父さん……わかったよ。俺、ネオトキオ最高名誉市民になるよ」

ソフィアが起き上がる。嘘泣きだったらしい。

一同「えぇっ!?」
リュウ「うん……!」


夜空に花火が上がる。


NEO.TOKIO
12.24


巨大スタジアムのステージにリュウが現れる。
司会女性がマイクを向ける。

司会「ようこそミスター・ウラシマン、ようこそネオトキオに! 皆さん、ネオトキオを崩壊から救った英雄、過去から来た若者、そして、熱血機動刑事ミスター・ウラシマンにもう一度盛大な拍手を!」

観客席を埋め尽くす観客たちから、割れんばかりの拍手喝采。
クロードたちも客席から拍手を送る。

司会「いかがです! 今の気持ちを一言で言うと」
リュウ「え? 俺が喋るの?」
司会「えぇ、是非! 何か一言」
リュウ「困ったなぁ……一言で言うとしたら、俺……ネオトキオに来て、素晴らしい仲間に出会えて良かった、ってことかなぁ……でも」
司会「ありがとうございました! 仲間って本当にいいですね。それではネオトキオ市長より、ミスター・ウラシマンへのクリスマススター賞授与式に移りたいと思います」

困惑するリュウをよそに、式典は進行してゆく。
ステージに市長が歩み出、表彰状を読み上げ始める。

市長「うぉほん。ネオトキオ市民の皆様、メリー・クリスマス。ミスター・ウラシマン、あなたは1983年の世界からタイムスリップして、過去の記憶をなくしたにもかかわらず、機動メカ分署の刑事として……」

市長の言葉が次第に、リュウの耳に入らなくなる。

リュウ (確かに、素晴らしい仲間に出会えたことは良かったさ……でも俺は、あんたの言っているようなネオトキオを救った英雄なんかじゃないよ……だってさ、フューラーは俺のダチ公だったんだぜ。それも、血を分けた兄弟同然の……どうせ大人はわかっちゃくんないよ……フューラーだって知ってたんだ。過去に戻ることなんかできやしないって……きっと、そのことを俺に教えたかったんだ……だからあいつ、あれだけ俺に会いたがっていたんだ……あんたたちが思っている以上に、案外いい奴だったんだぜ、きっと……)

市長「おめでとう、ウラシマン!」

リュウが我に返る。
市長がリュウの胸に勲章をつける。
再び、観客席から拍手喝采が送られる。
しかし依然、リュウの顔は曇ったままである……。


突然、爆発。
ステージが崩れ、リュウが転げ落ちる。

リュウ「わぁっ、わぁっ、助けて〜!」

爆風の中から、下品な笑い声と共にジダンダが現れる。
手製のジャイロらしき機械で宙に浮いている。

リュウ「あぁ、ジダンダ!?」
クロード「あのスットコドッコイがぁ!」
ソフィア「生きてたのね……」
ジダンダ「シャーラップ! 今はジダンダ総統と呼ぶデスダスドス!」
リュウ「ジダンダ総統!?」
ジダンダ「犯罪帝国ネクライム、三代目襲名〜! フューラー総統、ルードビッヒ総統亡き後、このジダンダが三代目総統だす〜」

ジダンダがちゃちな爆弾を投下し、爆風が炸裂する。
リュウが爆風を次々に避け、マグナブラスターでジャイロを破壊。
ジダンダが慌てて、壊れかけたジャイロでフラフラと逃げ出す。

観客の見守る中、チェイスが始まる。
クロードたちもたまらずに観客席から飛び出す。


スタジアムから飛び出し、街中を逃げ惑うジダンダを、リュウがどこまでも追い続ける。


ジャイロを破壊され、走って逃げ回るジダンダ、遂に息が切れる。

ジダンダ「はぁ〜、息が……もう駄目……」

追い詰めたリュウが銃を突き付ける。
クロードたちも追いつく。

リュウ「ジダンダ、走りすぎて腹ペコだろう! たらふく食わせてやるぜ、臭い飯をな!」

雪玉を投げて抵抗するジダンダ。

ジダンダ「えぇい、バカバカ、よるなコラァ!」
リュウ「この野郎〜!」
ジダンダ「やだやだぁ! 刑務所なんか行かないドス!」
リュウ「ジダンダ……?」
ジダンダ「あたしゃ……あたしゃルードビッヒ様の墓を花束で一杯にするまで、どこにも行かないドス!」
リュウ「何だって?」
ジダンダ「何だい! 行き当たりばったりのおみゃあなんかが勲章もらっちゃうなら、わたしゃだって一つや二つ、ましてやルードビッヒ様なら勲章の風呂にへぇれるだす!」

ジダンダが泣き崩れる。

リュウ「ジダンダ……」
ジダンダ「うるさ〜い! おみゃあなんか勲章でもチャラチャラさせてろ!」


切ない眼差しで、リュウが空を見上げる。

いつの間にか大勢集まった野次馬が、罵声を浴びせる。

「何やってんだ〜!」「さっさと豚箱にぶちこめ!」「それでも機動メカ分署の刑事なの〜!」

リュウが野次馬の方へブラスターを向ける。
ギクリとした野次馬連中が、罵声をピタリと止める。
リュウがブラスターを懐へしまう。

リュウ「俺……やっぱ旅に出るぜ。本当の自分を見つめるために……」

意外な言葉にジダンダが驚く。

権藤「リュウ……」
ソフィア「私……なんだかリュウの気持ちわかっちゃった……」
クロード「あぁ……俺、リュウのためならメカ分署解散したって惜しくないぜ……」

リュウを見つめるクロードが頷く。
リュウ、胸の勲章を外し、投げ捨てる。


銃声。


弾道がリュウの頭を貫き、リュウが倒れる。


ソフィア「リュウ!? リュウ──ッ!!」


リュウたちを見下ろすビルの上に颯爽と立つルードビッヒ、ミレーヌ、ライフルを構えるスティンガー・ウルフ。
ルードビッヒの左腕にはギプスが巻かれ、右手には青薔薇が握られている。

クロード「ルードビッヒ!?」
権藤「何!?」
ソフィア「えぇっ!?」

リュウが起き上がる。
銃弾はリュウの脳天ではなく頭上をかすめたらしく、髪が焼かれ、見事な逆モヒカンができ上がっている。

リュウ「熱ぃ〜もうっ!」
ウルフ「ハッハッハ! 一旦はルードビッヒ様を守って地獄まで行ったんだがな、地獄でもお断りだとよ!」
ジダンダ「ルードビッヒ様!」
リュウ「ルードビッヒ!? 貴様確かミレーヌに背中から……」
ミレーヌ「そうよ。私が背中から刺してしまった……真剣だったわ。でもそんなに深刻になることなかったのよ、坊や」
リュウ「なぬぅ〜!?」
ルードビッヒ「私が倒れれば必然的に貴様とフューラーの対決になる……だから殺されてやったまでのこと。反物質場発生装置なぞ真っ赤な嘘……」
クロード「くそぉ、よくも騙したなぁ!」
ルードビッヒ「命を賭けたダブル・トリックと言って欲しいな……」
ジダンダ「ル、ルードビッヒ様ぁ〜!」
ミレーヌ「ジダンダ、私も知らなかったのよ。でも素敵でしょ? 彼のお芝居。もう2度と裏切ったりできないわね」
ジダンダ「ミ、ミレーヌ様ぁ」
リュウ「畜生〜!」

スティンガー・キャット、ベアー、ホーク、シャークも現れる。

キャット「またデートできそうね、色男さん」

クロードが鼻の下を伸ばしそうになり、慌てて表情を直す。

キャット「ホホホホホ!」
ルードビッヒ「ウラシマン、貴様のために何もかも失ってしまった……またゼロから始めねばならぬが、悪の美学は不滅……行くぞ! わざわざ助けに来たんだ、ジダンダ総統……」
ジダンダ「ヘ、ヘェッ!」

ルードビッヒが青薔薇を投げる。
リュウが青薔薇を受け取ると、既にルードビッヒたちの姿は消えている。

リュウたちが呆気に取られる。


クロード「旦那……今日は何の日だっけ」
リュウ「クリスマス・イブですよん」
クロード「そうだよなぁ……13日の金曜日じゃなかったよなぁ」
ソフィア「リュウ……今晩私とデートしてくれない?」
リュウ「……OK!」
ソフィア「キャイ〜ン!」
権藤「馬鹿もーん! 何をグチャグチャ言っとるんじゃい! 逃げちゃったじゃないの! 早ぉ追いかけろ、とっ捕まえろ、ぶちかませぇ! あほんだらめぇ!」
リュウ「でも勲章捨てちゃったからメカ分署は解散」
ソフィア「そうそう!」
リュウ「それに、今日はクリスマスイブ!」
ソフィア「そうそう!」
権藤「ん……あほんだれぇ〜っ!! ネクライムが崩壊してないのにメカ分署の解散などあるかぁ! メカ分署にクリスマスもお正月もない、お捻りもない! 早ぉ行けぇ〜っ!!」


権藤にどやされ、リュウ、クロード、ソフィアが慌てて雪の降り積もるネオトキオを駆けて行く──


THE END
AD 2050

Merry Christmas
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