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無敵ロボ トライダーG7の最終回


ロボット帝国。
銀河系支配総司令官ザクロンが、帝王であるマザーコンピュータ・シグマに謁見している。

シグマ「ザクロン、地球とか言う星は支配下に収めたのだろうな?」
ザクロン「は、はい……」
シグマ「はっきしろ」

地球支配総指揮官オンドロンの言葉を思い出す。

(地球に負けたのだ! こうなったら言ってやるわ、俺は無能なのではない! 俺たちが絶対と信じてきたマザーコンピューター・シグマが地球人に負けたんだ!)

ザクロン「申し上げます。私が見てきた限りでは、まったく使い物になりません」
シグマ「余の判断ではBクラス、使い方次第では役に立つと出た」
ザクロン「た、確かに……ですが、住んでいるのはかなりの下等動物。それを教育し、我々の手足として使えるのは何年も……いや、何十年も何百年もかかりましょう。帝王の一番お嫌いな、無駄なエネルギーを費やすことだけでございます」
シグマ「──それほどひどい星なのか」
ザクロン「はい。オンドロンも、その程度の下等な星に無駄なエネルギーを使ったことを恥じ、帝王に申し訳ないと、自ら責任をとって果てました」
シグマ「わかった。地球のある太陽系などもうよい。既に我々の手に落ちた星の環境整備に全力を注げ」
ザクロン「ははっ!」

謁見を終えた後、ザクロンが思う。

ザクロン (帝王に嘘をついた……だがこれで良かった。もし本当のことが知れたら、帝王への信頼は崩れ、ロボット帝国は滅びる……太陽系にある地球を、絶対に知られてはならぬ! 知らせてはならぬ……知らせてはならぬ!)


とびだせ! 若社長!!


緑ヶ丘小学校6年2組。

三重子「みんな静かに! 皆さん、明日はいよいよ卒業式。この教室ともお別れですね。今日は、次にこの教室を使う後輩のために、きれいに大掃除をしましょう」
生徒たち「はーい!」
三重子「特別に、今日はお喋りをしながらでも構いません。お友達の中には、私立へ行く人も何人かいますね」

生徒たちの視線が、健一に注がれる。

三重子「そういう人とは、これからは会える機会も少なくなると思います。楽しい思い出を話しながら、お掃除をして下さい。さぁ、始めましょう!」
生徒たち「はーい!」


和気藹々とした雰囲気の中で大掃除が始まる。
ワッ太とアキラは窓拭きを担当する。

アキラ「なぁワッ太」
ワッ太「あぁ?」
アキラ「健一の奴さぁ、私立の名門校に、すんげぇ成績で受かったって話だぜ」
ワッ太「あいつなら当然だろ? ここの出来が違うもの、ここの出来が」

そう言って頭を指差すワッ太。

アキラ「もう、一生苦労しねぇよな。完全にエリートコースに乗ったんだもん。俺もさ、あいつみたいに勉強すればよかった」

雑巾を絞るかおるに健一が声をかける。

健一「あ! いけませんね、かおるさん。雑巾など絞ったら、そのビューティホゥな手が荒れてしまいます。僕がやりましょう」
かおる「私の方はいいわ。それより、ワッ太君の方を手伝ってあげて」
健一「そうですかぁ? かおるさんがそう言うんでしたら……」

健一が窓拭きに加わる。

健一「お邪魔しま〜す」
ワッ太「おぉ、手伝うのか」
健一「えぇ」
ワッ太「サンキュー! でも健一、お前ともこれでお別れだよな」
健一「そうですかねぇ〜?」
ワッ太「はぁ?」

健一、学帽を取り出してかぶる。

ワッ太「け、健一! それ、お前の帽子かぁ!?」
健一「はい!」
ワッ太「な、何だってぇ!? やっぱりそうだ、間違いない。これ……この校章は緑ヶ丘中学! 俺やアキラの行く学校じゃねぇかよ!」
健一「そうですよ?」
ワッ太「どうしてお前が……?」
健一「これは、僕の帽子です!」
ワッ太「だってお前、私立の名門校にすっげぇ成績でさぁ……」
健一「いや、あそこへ行くのはやめたんです」
ワッ太「やめたぁ!?」
アキラ「本当か!?」

生徒たちも騒然となる。

健一「ママは反対したけれど、僕は緑ヶ丘中学へ行きたいとパパに話したら、賛成してくれたんです!」
アキラ「へぇ……お前んちの父さん、変わってんな。息子の将来考えたら、普通は……」
健一「これで、君たちやかおるさんともまた一緒。よろしくね」
ワッ太「健一……俺、お前って奴がど〜もわからなくなってきたよ」
健一「そんな筈はないでしょ! 僕だって人間ですからね。ママが決めたパターン通りには生きたくありませんよ。本当は……君たちみたいな友達がいないとつまんないのよねぇ〜」

にんまりと笑う健一。

ワッ太「……こんの野郎!」

ワッ太が健一の頭をポカッと殴る。

健一「ワッ太! やりましたねぇ〜!」
アキラ「俺も入れろよ〜このこのっ!」

3人が笑い合いながら暴れ回る様子を、生徒たちが微笑ましく見つめている。


一方、隣の6年1組。 大門先生がモップ片手に、何やら思い悩んでいる。

大門「うーむ、迷える子羊よ……何とかしなければ……何とか……言うべきか、言わざるべきか、それが問題だ……」
生徒「先生、モップ借りていいですか? ……借りますよ?」
大門「よぉし、この際だ! はっきり言うぞ、むんっ!!」


玄関の下駄箱の傍らにいる大門先生のもとへ、三重子先生がやって来る。

三重子「何ですの? お話って」
大門「三重子先生」
三重子「はい?」
大門「僕は、言おうか言うまいか随分考えたんです……」
美江子「はぁ……?」
大門「でもわかったんです。美江子先生、あなたの他には僕の願いを……願いを叶えてくれる人はいません!」

大門先生が三重子先生の手を取り、封筒を握らせる。
表面にはハートマークと共に「親愛なる三重子先生」と書かれている。

大門「ご返事は後で結構です」
三重子「大門先生……! 嫌ですわ、こんなところで申し込みをするなんて……うふっ、でも先生らしくって」
大門「じゃ、じゃあ、いいんですね!?」
三重子「決心がつきました。母も、きっと喜んでくれると思いますわ」
大門「お母さんも喜んでくれる……?」
三重子「じゃ、失礼します……じゃあ!」

三重子先生が教室への階段を駆け上がっていく。

三重子「あんな下駄箱の前でプロポーズなんて……本当にあの人らしいわ」

踊り場で足を止め、封筒の中身を開く。

三重子「『明日の卒業式に着るモーニングが質店に入っているんです 一万円貸して下さい』……まぁひどい! 借金の申し込みなのぉ!?」


一方、玄関に残っている大門先生。

大門「はっ、三重子先生……プロポーズだと思ったのでは!? みみみ、三重子先生が遂にOK!?」


三重子先生が教室に戻ると、生徒たち皆が窓の外を覗いている。

ワッ太「せ、先生、大門先生が!」
三重子「大門先生が!?」
ワッ太「ほら、あそこ!」

見ると、向かい側の校舎の屋上で、大門先生が鉄柵の上で飛び回っている。

大門「わぁ〜やった、やったぁ! 俺は世界一の幸せ者だぁ〜っ! ご町内の皆様、聞いて下さい! 三重子先生は僕と結婚するんで〜す!!」

ワッ太「先生、本当!?」
三重子「や、やだぁ……恥かしい!」

三重子先生が顔を赤らめ、教室から飛び出す。

ワッ太「本物だ! 2人は結婚するんだぁ!」

沸き返る生徒たち。

大門「やったぁ〜やったぞ〜! やったぁ〜!」
ワッ太「大門先生がはしゃぐわけだよなぁ」

はしゃぐあまり、大門先生が屋上から滑り落ち、かろうじて校旗にぶら下がる。

ワッ太「先生!?」
大門「ワッ太〜やったぞ! 遂にOKしてもらったぞ〜やったぁ〜っ! やったぞぉ!」


竹尾ゼネラルカンパニー。
柿小路専務が電話に手を伸ばし、手を引っ込め……を繰り返している。

郁絵「専務、さっきからどうなさったんですか?」
専務「え? あ、いや……」
郁絵「電話をおかけになるなら、そうなさればよろしいのに」
専務「いや、大したことじゃないんだ……こんなことに慣れてるとは言え、いざとなるとねぇ……」
木下「な、何ですか?」
専務「あ? いや、個人的なことですから……」
郁絵「電話といえば……最近はロボット退治の仕事は全然入りませんわね」
専務「あぁ、そう言えばそうですなぁ。言ってみれば、お得意さんでしたから……」
木下「2ヶ月前のロボットが最後になりましたね」
郁絵「何が目的で暴れていたのかわからないけど」
木下「妙なロボットでしたねぇ」
専務「まぁ、仕事の減った分だけつらいけど、社長を危ない目に合せないで済みますなぁ」
郁絵「そうですわね。社長も中学へ行かれることだし、これからはあまり負担をかけないように考えなくてはね」


緑ヶ丘小学校の保健室。
大門先生が暴れ過ぎて両膝に傷を負ったらしく、三重子先生が手当てしている。

三重子「大門先生って本当に、何をしでかすかわからない方ですわね」
大門「いやぁ、つい興奮してしまって……」
三重子「でも、大門先生のそんなとこが……好きです。いやっ、恥かしい!」

恥しさのあまり、三重子先生が両拳を大門先生の膝の傷口に叩きつけてしまう。

大門「ぎゃあぁ〜っ!!」


翌朝。
竹尾家。ワッ太が学生服に身を包み、母・加代は着物姿で出かける準備をしている。

サチ子「わぁ、格好いい!」
しげる「本当にお兄ちゃん?」
サチ子「嘘みたい……」
ワッ太「結構決まってんだろ? でも堅っ苦しい……」
サチ子「馬子にも衣装ね」
しげる「あ……お兄ちゃん、ダブダブですよ」
ワッ太「ちぇっ、そうなんだよ。母ちゃんたら、すぐ大きくなるんだから大きめでいいんだって、やんなっちゃうなぁ……チビだけどな、俺」
加代「何ブツブツ言ってるんだい、男は格好なんか気にするんじゃないよ」
ワッ太「ちぇ〜っ、悩める現代の若者の気持ち、わかってくれねぇもん」
サチ子「あ〜あ、ダメね。そのダブダブの学生服には、息子が早く大きくなって欲しいって親心が入ってるのよ。わっかるぅ?」
ワッ太「こいつめ偉そうに! 何だよ、さっきから聞いてりゃぁ!」

居間で兄弟喧嘩が始まる。

加代「ワッ太! 早く行かないと卒業式に遅刻するよ!」
ワッ太「あ、いけね!」

玄関に走るワッ太。

ワッ太「あぁ、忘れてたよ!」

慌てた様子でワッ太が家の中に引き返し、帽子を脱ぎ、仏壇に手を合せる。

ワッ太「じゃ父ちゃん、行ってくるかんな!」


卒業式場。
学生服やセーラー服姿の卒業生たち。健一だけが赤いブレザーで目立っている。

校長「皆さん、卒業おめでとう! 思い起こせば、今日あるのはご両親の力と……」

大門先生が三重子先生に耳打ちする。

大門「毎年あの人、同じこと言ってますなぁ」
三重子「えぇ、形式だけですわ」
大門「もっと心を込めた挨拶ってのは、ないんですかねぇ……ほら見て下さい。みんなあくびしてますよ」

大門先生の言う通り、皆はいかにも退屈そうで、特にワッ太は一際大きな口であくびをしている。


「社長ぉ〜っ!!」

なんと専務が、卒業式場に自転車で駆け込んでくる。

ワッ太「せ、専務ぅ!?」
専務「社長、社長〜!」
大門「専務!?」
専務「社長、お喜び下さい!」
ワッ太「これから仕事なのぉ!?」
専務「いやぁ、とんでもありません!」

慌てて大門先生が専務のもとへ駆け寄る。

大門「せ、専務! 今日がどういう日だと思ってるんですか……!」
専務「大門先生もぜひ聞いて下さい!」
ワッ太「専務、一体どうしたって言うのぉ!?」
専務「産まれるんですよぉ!」
大門「産まれる?」
専務「はい、14人目の子供がこの夏に産まれるんです!」
ワッ太「ちょ、ちょっと14人って……今、子供は12人でしょう?」
専務「はい、今度は双子なんです!」
大門「双子!?」
ワッ太「双子ぉ!?」
専務「妻が病院で診てもらってわかったんですが、何はともあれ社長にお知らせしようと思って……」
ワッ太「良かったね専務、おめでとう!」

拍手を送るワッ太たち。

大門「いやぁ〜おめでとう、専務!」
専務「いやぁ、とにかく私も、産まれてくる子供のために、もっと頑張らねば!」

いきなり体操を始める専務。
一方、父兄たちは何事かとざわついている。

大門「何でもいいですから来て下さい! 早く!」
専務「あ……あ!?」

大門先生が専務を無理やり、壇上に引っ張り出す。

大門「お静かに! お静かに! 皆さん、ここにいらっしゃるのは、今日の卒業式に父兄代表としてご挨拶して頂くことになっていた、柿小路梅麻呂さんです」
専務「へ……私が、挨拶!?」
ワッ太「えぇっ、専務がぁ!?」
大門「私のミスで、式の始まる時間を間違えて教えてしまったのですが、こうして柿小路さんは、自転車で駆けつけてくれたのです!」

父兄たちは納得した様子で、拍手を送る。

大門「何でもいいですから、ほら、専務!」
専務「いや……しかし、突然そんなこと言われても、あの……」
大門「この場を収めるのはこれしかないんですよ……さ、演壇の方へ!」

大門先生に突き飛ばされ、専務が演壇へ。

大門「それでは柿小路梅麻呂さん、お願い致します!」

皆の拍手が送られる。もはや専務、引くに引けない。

専務「た……たたた、只今ご紹介にあずかりました、柿小路でございます。ほ、ほほほ……本日はお日柄も良く、桜のつぼ、つぼみも、ゴホ、ゴホッ!」
大門「リラックスして、リラックス! 普段のままで!」

専務が汗を拭い、再びマイクに向かう。

専務「卒業生の皆さん、そして父兄の皆さん! 今日は本当におめでたい日です!」
大門 (やれやれ……)
専務「人間、生きていると色んなことがあります。私も今年で65年間人間をやっとりますです!」

どっと笑う生徒たち。

専務「しかし人類の歴史から見ますと、ほんの一握りの年数です。その一握りの体験で言わしてもらえば、人は実に小さなことで怒ったり、喧嘩をしたり、小さな喜びに笑ったりしています。そうしたことは一見、意味のない無駄なような気もします。しかし、その無駄の中に、何か大切なものがあるのではないでしょうか。無駄をするから人間なんです!」

いつしかワッ太たち、真剣に聞き入っている。

専務「近道よりも遠回りの方が、多くのものに出会うことができます。ですから、時には遠回りも必要なんです」

頷き合うワッ太、健一。

専務「そして、君たちが生きていく上でとても大事なことは、お互いを信頼し、助け合うことです。たくさんの友達を持つことです。今日は、何かが終わった日ではありません。明日に向かって、羽ばたいていく日です!!」


「仰げば尊し」の斉唱で、卒業式が幕を閉じる。
大門先生と三重子先生、喚起余って涙をこぼす。


竹尾ゼネラルカンパニー。

ワッ太「ほら、2人とも照れないで!」

どこから調達したか、新郎新婦の絵が描かれた記念写真用の顔出し看板に、大門先生と三重子先生が顔を出す。
アキラがシャッターを切る。

かおる「三重子先生、婚約おめでとう!」

かおるが三重子先生に花束を贈る。

三重子「皆さん、本当にありがとうございます……」
専務「いやぁ、本当にめでたいですなぁ」
ワッ太「さぁて、今度は専務の番だ! ほら、前に行って」
専務「な、何です!?」

今度は専務に、加代が花束を贈る。

加代「柿小路さん、双子の赤ちゃんがもうじき産まれるそうで……おめでとうございます」
専務「あ、いや……照れますなぁ、この歳で双子なんて」
ワッ太「本当におめでとう、専務! さ、ご馳走食おうぜ、みんな!」
アキラ「待ってましたぁ!」
木下「さぁみんな、パーッと食べてください!」

和やかなムードで会食が始まる。

大門「いやぁ、しかし照れますなぁ、婚約祝いだなんて」
三重子「本当に……」
専務「私もです」
常務「何言ってるんだい、素晴らしいことじゃないか! 新しい生命が生まれるんだから」
専務「好きですからなぁ、子供が」
常務「いや、それにしても聞きたかったですなぁ〜専務のご挨拶!」
専務「もう、冷やかさんでくれよ! 自分で何喋ったんだか覚えてないんだから」
大門「いや、あれは素晴らしかったですよ専務。実に素晴らしかった!」

郁絵が飲み物を運んでくる。

郁絵「話が弾んでますね」
三重子「えぇ、とても素敵なパーティですわ。一生の思い出になります」
郁絵「本当に……3つのお祝いを一緒にするなんて、社長は流石ですわね!」
三重子「えぇ……」

三重子がワッ太の方を見やると、ワッ太たちは先の顔出し看板で遊んでいる。

健一「ねぇかおるさん、僕と並んで下さいよ」
かおる「え……でも」
ワッ太「かおるちゃん、ほら、一緒に撮りなよ!」
かおる「じゃ……じゃあ」

アキラとかおるが看板に顔を出す。

アキラ「こら健一、そんなに顔出すなよ」
健一「こ、こうですか? (かおるさんとこんな写真が撮れるなんて幸せ……!)」
アキラ「じゃ、撮るぞ!」

シャッターを切る寸前、かおるがどけ、代りにワッ太が顔を出す。

健一「かおるさん……」
ワッ太「なぁに〜!」
健一「だぁ〜っ!?」

驚いてひっくり返る健一。

ワッ太「わぁっ、やったやったぁ!」
健一「やりましたね〜」
ワッ太「ヒャッハハァ!」
健一「こら、待てぇ!」

いつもの調子でワッ太と健一の追いかけっこが始まる。
そこへ、寿司屋である新吉の父が、寿司桶を持って現れる。

新吉の父「お待っとうさん、社長!」
ワッ太「へ?」
新吉の父「へい、寿司20人前、お届けしやしたよ!」
ワッ太「あれぇ? 俺、頼まないよ」
新吉の父「あっしが勝手に持ってきたんでさぁ。新吉の野郎に“パーチー”があるって聞いたもんでね。」
ワッ太「おじさん、ありがとう!」
新吉の父「ほらよっと! さぁさぁ、じゃんじゃん食ってくれい!」

テーブルに広げられた寿司に、皆が一斉に食いつく。
ワッ太も食べようとするが、入り込む隙間がない。

ワッ太「お、俺も食いたいよぉ! そんな殺生な……くそぉ、こうなったら腕ずくで取ってやるぅ!」
大門「ワッ太ぁ──っ!!」

険しい剣幕でワッ太に迫る大門先生。

ワッ太「な、何だよ先生……お、俺、何も悪いことしてないよぉ!?」
大門「お前が中学に行ったらもう怒鳴れないんで、怒鳴り収めってわけだぁ!」
ワッ太「ほっ……何だよ、脅かすなよぉ」
大門「ワッハッハッハ……!」

電話が鳴る。

郁絵「はい、こちら宇宙の何でも屋、竹尾ゼネラルカンパニーです……あ、少々お待ちを。専務、お電話ですけど」
専務「電話? ……はい、代りました。えぇ? 穴の開いたドラム缶がたまってるから、処理場まで運んでくれ? そりゃぁ……うちは何でも屋ですが、今日はちょっと立て込んでおりまして……」
ワッ太「専務ぅ! どんな仕事だって断っちゃだめだよ!」
専務「え? あ、いや、しかしですな……」

ワッ太が受話器を奪う。

ワッ太「はい、竹尾ゼネラルカンパニー、お受けします! 場所は? ……はい、了解しました!」
専務「社長……!」
ワッ太「近くだ。すぐ戻ってくる」
常務「あぁ、仕事でしたら私が……」
ワッ太「任しとけってぇ! 俺は社長だぁい!」

社屋を飛び出すワッ太。

アキラたち「おぅ、頑張れよぉ!」
常務「先代社長にだんだん似てきましたなぁ!」


トライダーG7が格納されている公園に、毎度おなじみの出撃アナウンスが響く。

「毎度お騒がせして申し訳ございません。只今より、トライダー発進致します。危険ですから白線の外までお下がり下さい」

子供たちが避難した後、公園敷地が真っ二つに割れ、トライダーG7が出撃する。

ワッ太「安全確認! 発進!!」


社屋から飛び出してきた大門先生やアキラたちも、ワッ太の雄姿を見送る。

大門「ワッ太──頑張れよぉ──っ!」
アキラたち「頑張れぇ──っ!!」
ワッ太「わかってるってぇ! 任しときぃっ!!」


夕焼けの空へとトライダーG7が飛び立つ。


ワッ太「父ちゃん……見ててくれ! これからもずぅっとなぁ!!」


おわり
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