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未来戦隊タイムレンジャーの最終回
 

Case File 50
無限の明日へ

タイムファイヤー・滝沢直人のDVディフェンダーを振るってゼニットの大群と戦うタイムレッド・浅見竜也。

仲間たちは未来へ帰り、直人は力尽きた。それでもなお、ただ1人で戦い続ける。

レッド「俺は最後まで戦う……!」

未来の31世紀の世界。

ユウリたち4人が走っていた。

変革された31世紀世界は、ユウリたち4人にとって最良の環境だった。

それでもなお4人は、それを捨てて21世紀へ戻り、21世紀の世界を守ることを決意した。

ユウリ「戻りましょう……21世紀へ!」

現代。

タイムレッドの激闘が続く。

狂気に取り付かれたギエンが巨大ロボ・ネオクライシスで暴れ回る。

直人から竜也へ託された巨大恐竜ロボ・ブイレックスがそれに挑む。

ギエン「歴史に定められた破壊だ……今日、私は神になる!」

ギエンとブイレックスのエネルギーであるλ2000の影響で上空の空間が歪み、ビル群が次々に空へ飲み込まれてゆく。

21世紀に生じるといわれていた「大消滅」が遂に起こり始めたのだ。

浅見コンツェルン

竜也の父・浅見社長へ、部下が直人の死を報告する。

社長「滝沢が……!? まさか……!」

部下「ブイコマンダーはそのまま竜也さんが……1人で戦っておられます! 止めないと、竜也さんまでが!」

浅見「いや……! 止まるような奴じゃない。あいつは、私の息子だからな……」

レッド「(ブイレックスがλ2000のエネルギーを使えば、大消滅を加速させる。必要最小限にしないと……) ブイレックス、防御に回れ!」

防御に回ったブイレックス、しかしネオクライシスの攻撃の前に劣勢に追い込まれる。

人々が避難している。

立ち止まる少女を、母親が励ます。

母親「ほら、頑張って歩くのよ!」

少女「お母さん、歩けないよぉ……」

ホナミが駆け寄る。

ホナミ「頑張って、避難所まであともう少しだから、ね!」

母親「さ、行きましょ!」

西暦3001年2月4日。

時間保護局内に警報が響く。

「隔離中の隊員4名が脱走。ただちに取り押さえよ。繰り返す。隔離中の隊員4名が脱走。警備兵はただちに取り押さえよ」

警備兵たちが走り出す。

廃棄されていたタイムレンジャーのナビゲーターロボ・タックの元に、警報が伝わる。

タック「脱走……!?」

ユウリたちを警備兵たちが追う。

「いたぞ!」「捕らえろ!」

廊下を逃げ惑うユウリたち。

しかし前方からも警備兵たちが来る。このままでは挟まれてしまう。

そのとき、壁のダクトが開き、タックの声が響く。

「皆、こっちだ!」

シオン「タック!?」

とっさにダクトに飛び込む4人。

かけつけた警備兵たち、4人の姿を見失う。

「どこへ行った!?」「探せ!」

廃棄場へ逃げ込み、タックと再会した4人。

タック「みんな大丈夫か?」

シオン「タック……良かった……無事だったんですね」

タック「そこら辺からエネルギーをかき集めた。それより……本気で戻るつもりなのか?」

アヤセ「当たり前だろ」

タック「どのみち君たちは、あの時代に留まるのは無理なんだぞ! 20世紀の情報が消えれば……」

ユウリ「わかってるわ!……それでも戻りたいの」

タック「そうか……僕も協力する」

タイムジェット格納庫。

警備兵が見張っている。

タック「まずタイムジェットだが、γ形態で格納庫に封印されている。それをジャックして、時間移動の準備をするんだ」

格納庫に忍び込んだドモンとシオン。

シオンがわざと物音をたてる。

駆け寄る警備兵。すかさず物陰からドモンが飛び出し、警備兵を倒す。

ドモン「シオン、行け!」

シオン「はい!」

シオンがタイムジェットへ走る。

警備兵「どうした!?」

倒れた警備兵からドモンが銃を奪い、他の警備兵を牽制する。

タック「それと同時に、管理ルームに保管されているクロノチェンジャーを奪い返し……司令室から発進システムのロック解除」

管理ルーム。

保管されているクロノチェンジャーを警備兵が守っている。

室内に指輪がコロコロ転がってくる。

警備兵が気を取られたとき、室内に忍び込んだユウリの蹴りが炸裂。

タック「そして僕は、大消滅に関するデータを集める。時間をかけるほどこっちには不利だ」

司令室。

室内にタックが飛び込む。不意を突かれた警備兵に、アヤセの鉄拳が炸裂する。

廊下を歩くリュウヤ隊長と部下。

リュウヤ「絶対に奴らを行かせるな。手こずれば射殺してもいい」

部下「了解!」

リュウヤ(なぜだ……この時代は奴らにとって最良のはず……)

格納庫。

ドモンが警備兵たちと応戦している。

タイムジェットのコクピットで発進準備を進めるシオン。

格納庫へ、クロノチェンジャーを手に入れたユウリが駆けつける。

警備兵がユウリに銃を向ける。

慌ててユウリを守るドモン。

ドモン「ユウリ、急げ!」

ユウリがタイムジェットへ走る。

司令室。

アヤセが発進システムを操作している。

ドアが開く音。

振り向き、慌てて銃を手にするアヤセ。

そこには銃を構えたリュウヤ。

リュウヤ「そこまでだ」

アヤセ「……!」

タイムジェットのコクピット。

シオンが準備を進める傍ら、現代人の服装となったユウリがクロノチェンジャーを装着する。

ユウリ「シオン、発進準備は?」

シオン「もうちょっとです。ただ、タイムジェットの移動係数の限界は、ピッタリ1000年しかなくて、今から移動すると、21世紀滞在のリミットは大消滅の日ギリギリです……」

ユウリ「……間にあうわ。きっと!」

司令室。

アヤセ「……」

リュウヤ「アヤセ! お前は自分が何をしているのかわかっているのか? この時代にいれば、お前は生き延びられるんだぞ」

アヤセは不治の病に侵されている。

だが歴史の変わったこの31世紀世界では、その病気の治療法が確立されているので、生き延びられる。

21世紀に戻って大消滅を食い止めれば、その延命の道を捨てることになる──。

タイムジェットのコクピット。

現代人の服装となった3人が、発進の時を待っている。

ドモン「アヤセの奴、遅ぇな……」

クロノチェンジャーの通信音。

クロノチェンジャーを通じ、司令室の会話が響く。

リュウヤ「銃を渡すんだ。お前も命が惜しいはずだ」

司令室

リュウヤ「仲間を裏切っても、お前を責められる奴はいない……」

アヤセ「……俺は……」

リュウヤの目が答を待っている。

銃を手にしたアヤセの手が震えている。

アヤセ「……生きていたい……」

アヤセが銃を下ろす。

リュウヤ「当然だ」

ゆっくりリュウヤが歩み寄り、銃を渡せとばかりに手を差し出す。

アヤセが銃を差し出す。

リュウヤがそれをつかもうとしたとき、銃が床に落ちる。

驚くリュウヤ。その手にアヤセの蹴りが飛び、リュウヤの銃が弾き飛ぶ。

リュウヤを押さえつけるアヤセ。

リュウヤ「貴様ぁ……!」

アヤセ「タック、今の内にデータを!」

タック「わかった!」

リュウヤ「お前は生きていたいんじゃないのか!?」

アヤセ「あぁ。ただし、自分が選んだ道でな!」

リュウヤ「バカな!!」

リュウヤがパンチでアヤセを吹き飛ばす。

床に落ちた銃を拾おうとするリュウヤにしがみつくアヤセ。

リュウヤの手が銃にかかる。

その手をアヤセがつかみ、もみ合いとなる。

異変を察知したユウリたちが司令室へ急ぐと銃声を耳にし、司令室に飛び込むと……そこには、アヤセに銃を突きつけているリュウヤ。

ドモン「アヤセ……?」

リュウヤ「バカな……この私が……!?」

リュウヤが口から血を流し、腹を押さえて膝をつく。

リュウヤ「うっ……うぅっ……!!」

アヤセ「隊長……」

リュウヤ「信じられない……お前たちは、なぜ……!?」

タック「リュウヤ隊長……ブイレックスのパイロット、本当のタイムファイヤーは……あなただったんですね! あなたの記録したデータに全てが!」

リュウヤ「あぁ……そうだ……うぅっ!!」

リュウヤの腹に銃撃の跡。

銃の暴発が彼の腹を貫いたのだ。

リュウヤ「6年前……Gゾードの時間移動実験の失敗で……私は時空に飲み込まれ……2つの歴史を見てしまった……ギエンとブイレックスの戦いで、21世紀に大消滅が起こる正しい歴史と、20世紀に現れたGゾードによってギエンが死に、その結果30世紀が消滅する、間違った歴史を」

リュウヤの見た、もうひとつの世界の回想。

試作生体メカ・Gゾードがギエンを射殺する。

ブイレックスロボがGゾードに挑むが、敗れ去る。

タイムファイヤーが力尽きて倒れる。

ヘルメットが割れ、覗いた素顔はなんと、リュウヤだった。

リュウヤ「だが、そのどちらの歴史においても、変わらないことがあった。私がブイレックスのパイロットとして派遣され、死ぬことだ……歴史を正しく修正して、30世紀を守る。だが……私の運命だけは変えなければならない……」

シオン「それで……直人さんを……自分の身代わりに……?」

リュウヤ「歴史にとっては些細なことだ……」

シオン「そんなこと……そんなこと許されると思ってるんですか!?」

リュウヤに掴みかかるシオン。

慌ててドモンが制する。

シオン「あなたは自分の勝手で歴史をいじっているだけです!! 1000年前の人たちだって……この時代の人たちと同じように生きているのに……直人さんだってぇ!!」

ドモン「よせぇ、シオン!!」

尚もリュウヤに食って掛かるシオンを、ドモンが必死に引きはがす。

リュウヤ「自分の死を知ったら……それを変えられる手段があったら……誰だってそうする……! そうだろ……?」

アヤセ「あんたも……明日を変えたくて……」

リュウヤ「6年かかった……だが、結局は……同じ結末だ……うぅっ!!」

リュウヤが倒れ、目が閉じる。

悲痛な表情のユウリたち。

タック「皆、行くんだ……僕が手動で発射ボタンを押す。データは全て転送しておくから……それで大消滅を食い止めろ!」

ユウリ「タック……」

タック「君たちの選択は間違ってるかもしれない……でも僕は信じる! 君たちが自分で選んだ明日を。そこでまた会おう!」

タイムジェット格納庫。

コクピットで、ユウリたちが生身のままで操縦スティックを握っている。

タック「タイムジェット発進!!」

タイムジェットが光に包まれる──。

現代

ギエン「破壊、破壊、破壊〜ッ!!」

ギエンのネオクライシスの猛攻に、ブイレックスがついに倒れる。

レッド「ブイレックス!? うわっ、うわぁーっ!!」

ブイレックスに気を取られた一瞬、ゼニットたちの攻撃がレッドに炸裂。

変身が解け、竜也の姿に戻って倒れる。

竜也「うぅっ……」

ギエン「ハハハハハッ! ドルネロ、僕を見てよぉ〜。どこにいるのぉ〜?」

自分が殺したドルネロの名を呼ぶギエン。

既に正気を失っているようだ。

大消滅が進む。

ビル群が空へ吸い込まれてゆく。

竜也「あぁっ……大消滅!?」

ホナミや人々が空を見上げる。

浅見コンツェルンでは、浅見社長と部下が空を見上げている。

ギエン「終わりだぁ〜っ!!」

ゼニットたちが生身の竜也に銃口を向ける。

轟音。

虚空からタイムジェットγが飛び出す。

竜也「タイムジェット……!? まさか!!」

コクピットの中。

4人はタイムレンジャーに変身している。

ピンク「ガンマトルネード!!」

ギエン「おわっ、わぁ〜っ!!」

タイムジェットγが旋回飛行。

竜巻が巻き起こり、ネオクライシスを吹き飛ばす。

タイムジェットから降りたタイムレンジャー4人。

ゼニットたちを次々に倒してゆく。

イエロー「ボルバルカン!」

ブルー「ボルランチャー!」

ピンク「ボルスナイパー!」

グリーン「ボルパルサー!」

4人「シュート!!」

ボルユニットの砲撃がゼニットを一掃。

ゼニットが全滅した中、変身を解いた4人が竜也のもとへ歩いてくる。

タイムピンク・ユウリ。

タイムブルー・アヤセ。

タイムイエロー・ドモン。

タイムグリーン・シオン。

竜也「皆……」

シオン「竜也さん……」

竜也「何で……何で戻って来たんだよぉ!」

アヤセ「歴史が変わって……31世紀がとんでもない世界になってた」

ドモン「そうなんだよ。ひどい未来だったよなぁ!」

アヤセとドモンの言葉に、ユウリとシオンも笑い合う。

ユウリ「竜也、『新しい道が見つかる』って、言ったわよね……私は、この道を選んだの」

シオン、アヤセ、ドモンが頷く。

竜也「お前たち……バカだよ! この時代の人間じゃないのに……」

動きが止まり、山の中に吹き飛ばされたネオクライシス。

コクピットで、気絶していたギエンが目を覚ます。

作戦を練る竜也たち。

ユウリ「ギエンはきっとまた暴れ出すわ。その前に、作戦を立てないと」

シオン「タックの情報によると、ギエンとブイレックスのλ2000を何とかしないと、大消滅は止められません。それで、まずブイレックスのλ2000を、ζ3に変換。そのエネルギーを使ったマックスバーニングで、ギエンのλ2000を粒子レベルまで分解します」

アヤセ「ζ3への変換方法はあるのか?」

シオン「ブイレックスの体内温度を上昇させて、高温で変換させます。DVディフェンダーの調整が必要ですけど……」

竜也「それなら……あるよ」

直人から託されたブイコマンダーを、竜也が差し出す。

それを見た4人、直人の死を悟る。

ユウリ「やっぱり……?」

竜也が頷く。

竜也「直人が変えられなかったものを……俺は変えようと思ってる……」

シオンがブイコマンダーを受け取る。

やり切れない思いで、道端の瓦礫を蹴飛ばすドモン。

ふと見ると、避難所へ歩く人々。

その中に、ホナミの姿。ドモンと目が合う。

竜也「送ってってやれよ……この先に避難所があるんだ」

シオン「DVディフェンダーの調整には、まだ時間かかりますから……」

ドモン「あぁ……」

歩み寄るドモンとホナミ。

ドモンが笑顔を見せる。

ドモン「無事で良かった」

ホナミ「私なら大丈夫って言ったじゃない」

ホナミが笑顔で、ドモンの腹に軽くパンチを当てる。

泥と埃にまみれたホナミの顔を、ドモンが撫でる。

ドモン「すっごい汚れてんなぁ〜」

ホナミ「本当……?」

ドモンの顔から笑顔が消える。

ホナミが何かを悟る。

ホナミ「そっか……これが最後になっちゃうんだ……」

ドモンの手を握り締めるホナミ。

泣き出すホナミを、ドモンが強く抱きしめる。

ギエンがネオクライシスのコクピットの中で奮闘している。

ギエン「動けぇ〜っ! 動け、動け〜っ! 動けったら〜っ!! 動くんだぁ〜っ!!」

再び動き出したネオクライシスが街中に出現する。

アヤセ「始まったな……」

シオン「調整終わりました。竜也さん、お願いします」

シオンが差し出したブイコマンダーを竜也が受け取る。

竜也「皆ぁ……行くぞぉ!!」

アヤセ・ドモン「おぉ!!」

ユウリ・シオン「おぉ!!」

5人「クロノチェンジャー!!」

最後の変身を遂げる5人。

ピンク「タイムジェット!!」

タイムジェットγが飛来。レッド以外の4人が飛び乗る。

ピンク「チェンジフォーメーション・タイムロボα!!」

タイムジェットγが5機のタイムジェットに分離し、タイムロボαに合体してネオクライシスに挑む。

レッド「DVディフェンダー!」

レッドがDVディフェンダーのビームをブイレックスに放射する。

ブイレックスの体内の温度が上昇し始める。

ギエン「何なんだぁ〜! お前たち誰だぁ〜! 僕の邪魔をするなぁ〜っ!!」

イエロー「あいつ……俺たちがわかってねぇのか!?」

ピンク「とにかく、ζ3の変換が終わるまで、動きを封じるのよ!」

タイムロボが時空剣を振るって切りかかる。

しかしネオクライシスの装甲に、時空剣が叩き折れる。

グリーン「時空剣が!?」

DVディフェンダーのビームをブイレックスに当て続けるレッド。

ブイレックスが苦しむ。

レッド「皆、もう少しだ。頑張ってくれ!」

武器を失ったタイムロボに、ネオクライシスの攻撃が炸裂する。

4人「うわぁっ!!」

レッド「皆……!」

遂に、λ2000がζ3への変換が完了。

レッド「やったぞ!」

レッドがジャンプしてブイレックスの頭に飛び乗る。

レッド「皆、ブイレックスは動けない。そいつをブイレックスの前に!」

イエロー「わかってるけどよぉ……」

ギエン「お前たち、みんな死んじゃえ〜!!」

再びネオクライシスの攻撃が炸裂。

しかし、タイムロボは5機のタイムジェットに分離。

ギエン「あぁっ!?」

タイムジェットがタイムロボβに合体。空中からのパンチでネオクライシスを吹き飛ばす。

ブルー「竜也、今だ!!」

レッド「OK……マックスバーニング!!」

DVディフェンダーのビームとブイレックスのレックスレーザーの合体攻撃、マックスバーニングが炸裂。

ギエンの体内のζ3が消滅する。

ギエン「わぁっ、わぁ〜っ!!」

ネオクライシスがギエンもろとも大爆発し、残骸と化して崩れ去る。

残骸の中、ボロボロになったギエンの姿。

ギエン「ドルネロォ……どこ、行っちゃったの……? 僕、お金数えられるようになったよ……1、2……」

そしてギエンも崩れ去り、消滅する。

空に渦巻いていた大消滅がやみ、青空が広がる。

イエロー「おい……」

ブルー「あっ……」

レッド「大消滅が止まったんだ……やったぞ──っ!!」

グリーン「やりましたよ!!」

ピンク「やったわ!!」

レッド「よ──っし!!」

そのとき、レッドの周囲の空間が歪み始める。

レッド「うわぁ──っ!!」

気がつくと、そこは光に包まれた空間。

いつの間にかレッドの変身が解け、竜也の姿に戻っている。

彼方から歩いてくるユウリ、アヤセ、シオン、ドモン。

竜也「皆……」

シオン「僕たち、戻らないといけないみたいですね。新しい31世紀へ……」

竜也「やっぱり……未来は変わったのか……」

アヤセ「さぁな。もしそうだとしても、お前と変えた明日の延長にあるんだ。悪いはずはない。だろ?」

竜也「……」

返事に詰まる竜也を、ドモンがこづく。

ドモン「おい、辛気臭い顔すんなよ。お前の勝負はこれからだろ?」

シオン「竜也さん……僕、竜也さんと出会えたこと、ずっと忘れません……! どんなことがあっても……もう僕は1人じゃないです……」

シオンの体が光に包まれ、消えてゆく。

ドモン「じゃあな! たまには……ホナミちゃんのこと、見に行ってやってくれ」

ドモンもまた消えてゆく。

竜也の瞳に涙がにじむ。

竜也「ドモン……シオン……」

竜也に笑顔を見せるアヤセ。

竜也「アヤセ……お前……」

アヤセ「大丈夫だ……俺は生きる……」

アヤセが消えてゆく。

ユウリ「……」

竜也「ユウリ……もっと、ちゃんと言えば良かった……『好きだ』って……」

ユウリ「竜也……」

2人が抱き合う。

竜也の目から涙が流れ落ちる。

ユウリも涙を堪えている。

しかしまもなく、ユウリの体も光に包まれる。

竜也「ユウリ……」

ユウリ「私たち……バラバラになるんじゃないわ……繋がった時間を生きてる……竜也たちの、明日の中に生きてるわ……だから……」

ユウリが消え去る──。

いつしか周囲は、元の世界に戻っている。

竜也「あぁ……わかってる! これはお別れなんかじゃない……」

空を見上げる竜也。

周りから鳩の群れが飛び立ち、羽毛が舞う。

一年後

公園をジョギングしているジャージ姿の竜也。

竜也「おはよう!!」

ベンチに集う親子連れの中に、赤ん坊を抱いたホナミが。

ホナミ「あ、おはようございます!」

竜也「どう、何か変わったことない?」

ホナミ「親子揃って大元気。ね!」

ホナミの抱いている赤ん坊を撫でる竜也。

竜也「早く大きくなれよ、ドモンジュニア! じゃあまたね、バイバイ!」

ホナミ「『バイバイ』って」

ホナミが赤ん坊をあやしながら、走り去る竜也を見送る。

車道を行く浅見社長の車。

歩道を走る竜也の姿を社長が見つけ、微笑む。

竜也 (親父、いつか真正面から浅見を受け止められるようになるよ。親父とやり方は違うかもしれないけど、今は自分の力で直人の分まで生きる)

走る竜也の前に、手を振って駆けてくる女性。

その顔は……ユウリ!?

しかしその女性は竜也の横をすり抜け、別の人のもとへと駆け寄る。

他人の空似か……といった様子の竜也。

住宅街、運送業のトラック。

荷物を運ぶ業者の1人が、ジョギング中の竜也にぶつかってしまう。

慌てて謝るその業者は……アヤセにそっくり。

呆気に取られる竜也。

幼稚園の前を走る竜也。

道路に飛び出す男の子を、慌てて捕まえる保父──ドモンにそっくり。

竜也は微笑み、街中でジョギングを続ける。

前方でふざけ合っている学生たち。ペットボトルが飛び、思わず竜也が受け止める。

謝りながらペットボトルを受け取る学生──シオンにそっくり。

竜也 (ユウリ、アヤセ、ドモン、シオン……お前たちは1000年先にいる。俺はそこへ向かってるんだ……)

ペットショップ。

少女に鳥を見せている店員──直人にそっくり。

竜也 (辿り着くわけないけど、でも……お前たちとは確実に繋がってる。俺がこれから作る、明日っていう時間の中で!!)
 
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