戻る TOPへ
魔法騎士レイアース(第二部)の最終回
勝利への道!
信じる心が開く明日!
ノヴァとの戦いに勝利した光。しかし、その瞳から涙が流れ落ちている。
怯え切っているノヴァへ、光が歩み寄る。
ノヴァが魔法を放つが、一向に通じない。
ノヴァ「炎の矢ぁ──っ!!」
光の掌底の前に、ノヴァの放った炎の矢も掻き消える。
ノヴァの目の前に迫った光が、手を伸ばす。
思わず身構えるノヴァ。
しかし、光はノヴァの頭を優しく撫でる。
ノヴァ「……!?」
光「私の……心……」
ノヴァ「……」
光「私が……あの一瞬に残していた……心の影……」
光の脳裏に、自分たちがエメロード姫を殺してしまった光景が蘇る。
あのときの自分の後悔の心が具現化した存在が、このノヴァ。
光がノヴァを強く抱きしめる。
ノヴァ「ずぅっと一人だったんだ……どこを探しても、光いなくて……一人で泣いてたら、デボネアお母様が、私と一緒にいてくれるって……私を好きになってくれるって……!」
光「ごめんね……一人で淋しかったんだね……」
ノヴァが光に抱きつく。
光「ノヴァ……」
ノヴァの手を自分の胸に当てる光。
光「私の心がわかる?」
ノヴァが光の胸に耳を押し当てる。
光「私は、好きな人とは一緒に幸せになりたい……生きて、幸せに……ノヴァ、私は自分を好きになろうと思う。後悔したり、悲しんだり、苦しんだりする心ごと……自分を好きになりたいと思う」
ノヴァ「私のことも……好きになってくれる……?」
光が笑顔で頷く。
光「戻って……おいで」
ノヴァ「うん……!」
ノヴァが光の体の中へと消えてゆく。
光「ノヴァ……」
セフィーロ城。
プレセアがアルシオーネを問い詰めている。
プレセア「デボネアがどこにいるか……教えて」
答えようとしないアルシーネに、プレセアが掴みかかる。
プレセア「教えて、アルシオーネ!! このままでは、あの人が……あの人が死んでしまうっ!!」
アルシオーネが、自分の肩を握るプレセアの手から、何かを感じ取る。
アルシオーネ「はっ……あなた、プレセアじゃないわね!?」
プレセア「こ……心を読んだのね」
アルシオーネ「プレセアから聞いたことがある……双子の妹がいると」
プレセア「そうよ……私はプレセアの妹、シエラ……」
死んだプレセアが蘇ったものと思われていたが、彼女はプレセアと瓜二つの双子の妹、シエラであった。
アルシオーネ「なぜプレセアのふりをしているの?」
シエラ「魔法騎士を悲しませたくなかったから……そして、あの人を助けたかったから……!」
アルシオーネ「あなた……導師クレフを……」
シエラ「クレフのために、シエラでなくなることくらい……何でもない! それであの人のそばにいられるなら……」
アルシオーネ「報われないとわかっていても……? 報われなくても、愛する人のために……」
ドアが開く音。
部屋に海と風が飛び込んでくる。
海「教えて、アルシオーネ! デボネアはどこにいるの? もう、これ以上誰か死ぬのも嫌! だから、私たちはデボネアと戦うわ!」
アルシオーネ「……勝てなくても?」
海「……勝つわ。大好きな人を守るために、絶対勝つわ!」
風「教えて下さい、アルシオーネさん!」
アルシオーネ「たとえ……報われなくても……愛する人のために……」
悲しげにうつむくアルシオーネ。そして、その表情が決意に満ちる。
アルシーネ「デボネア様は……」
不意に顔が苦痛に歪む。
アルシオーネの体が宙に浮き、黒い霧に包まれる。
アルシオーネ「うっ、うぅっ、あぁ──っ!!」
一同「アルシオーネ!?」
アルシオーネ「あぁっ……デボ……ネア……さ……」
シエラ「まさか……デボネアのことを話そうとしたから!?」
海「やめて! 言わなくていい!!」
風「アルシオーネさん!!」
アルシオーネ「あぁ──っ!! デボネア……は……セフィーロの……裏ぁっ!!」
一同「アルシオーネ!!」
アルシオーネ「私が決めた……最期よ……泣くことは……ないわ……」
悲しげに微笑むアルシオーネ。
アルシオーネ「ザガ……ト……」
ザガートへの報われない愛を抱いていた自分を、シエラたちに重ねていたのだろうか。
アルシオーネが黒い霧と共に消滅する。
3人の目から涙が。
海「アルシオーネ……」
セフィーロ城を飛び立つ魔神セレス、ウィンダム。
光の魔神レイアースも2人に追いつく。
クレフ「魔法騎士たちよ……必ず戻ってくれ……」
セフィーロの空を覆いつくす闇へと向かう三魔神。
海「アルシオーネが言ってた『セフィーロの裏』って……」
風「きっと、あの闇を抜けた向こう側ですわ」
光「いくよ、海ちゃん! 風ちゃん! 炎の……矢ぁ──っ!!」
海「水の──竜ぅ──っ!!」
風「碧の……疾風──っ!!」
三魔神の放った炎、水流、疾風が絡み合って光球と化し、闇に炸裂。
闇の中に穴が空く。
光「今だ!!」
その穴へと突入する三魔神。
闇を抜けると、そこには黒光りする城──デボネア城が。
光「あそこに……デボネアがいるのか!」
三魔神がデボネア城へ突入する。
中の大広間。壁に、光に敗れたノヴァの魔神レガリアが磔にされている。
光「レガリア!?」
デボネアが現れる。
デボネア「ハッハッハッハ……よくここまで来たな、魔法騎士たちよ」
光「デボネア……!」
デボネア「しかし、これで終わりだ!!」
デボネアの体がレガリアの中へ吸い込まれる。
レガリアの瞳に光が宿り、全身の装甲が次々に砕け散る。
それに伴い、城が崩壊し始め、天井から瓦礫が降り出す。
海「危ない!」
風「早く外へ!」
城の外へ逃げる三魔神。
デボネア城が崩壊。
その中から現れた巨大な影──レガリアと合体したデボネアの姿。
レガリアの全身が怪物状に変化し、下半身は蛇状となり、胸にデボネアの顔が浮かび上がってる。
デボネア「愚かな虫けらどもよ。悪あがきなどせず、おとなしく消滅のときを待っておれば良いものを。楽には死なせん……魔法騎士!!」
デボネアの放つ魔法を食らい、三魔神が地面に叩きつけられる。
セレスとウィンダムが反撃に転じる。
海「氷の──刃っ!!」
風「碧の旋風──っ!!」
2人が渾身の力で放つ新魔法を、デボネアは難なく2人に跳ね返す。
海・風「あぁ──っ!!」
光「海ちゃん!! 風ちゃん!!」
魔神個々の力では勝ち目がない。
光たちの魔力が満ち始める。
三魔神が赤・青・緑の光と化し、一体化。
合体レイアースとなる。
セフィーロ城。
消滅へと向かうセフィーロに伴い、城も崩れ始めている。
城内に避難した人々が怯えきっている。
デボネア城跡。
レイアースがデボネアと激闘を繰り広げているが、次第に劣勢に追い込まれる。
さらにデボネアが攻撃を繰り出そうとしたとき、どこからかビームがデボネアに炸裂。
驚いた光が振り向くと、そこにはオートザムの戦艦NSXが。
ジェオ「セフィーロを守るのが、イーグルの最後の願いだ!」
デボネア「邪魔だ!」
NSXへ魔法を放つデボネア。
ザズ「シールドッ!!」
NSXが張ったシールドを突き抜け、魔法が炸裂する。
ジェオ・ザズ「うぅっ!!」
光「ジェオ!! ザズ!!」
また別の方からビームがデボネアに炸裂。
チゼータの移動要塞ブラヴァーダ、ファーレンの移動兵器・童夢である。
まさに三国揃っての総力戦だ。
風「アスカさん!」
海「タータ、タトラ!」
アスカ「がんばるのじゃ、魔法騎士!!」
タータ「私に勝ったお前たちが、こんなところで負けてどうする!?」
タトラ「あなたたちは、もっと強いはずよ!」
デボネア「うるさい蝿どもめ!!」
デボネアの放った魔法がブラヴァーダと童夢に炸裂。
タータ・タトラ「あぁっ!!」
アスカ「わぁ──っ!!」
光「やめろぉ──っ!!」
レイアースの胸の光球から、赤・青・緑の光が放たれる。
光・海・風「閃光の──螺旋──っ!!」
三色の光が白色の螺旋と化し、最強攻撃、合体魔法・閃光の螺旋がデボネアに炸裂。
デボネア「うぅっ! おのれっ、おのれぇーっ!!」
セフィーロ城。
ランティスが光の危機を直感。剣を構え、魔法力を込める。
それに同調したかのように、光に託されたランティスのペンダントが光り始める。
デボネアから放たれる強力な魔法。
しかしレイアースの目の前に光の壁が生じ、その魔法をデボネアにはね返す。
デボネア「があぁーっ!!」
光 (ランティスのペンダント……? また助けてくれた……)
デボネア「許さん……許さんぞ、魔法騎士──っ!!」
デボネアから放たれた魔法が、こんどこそレイアースに炸裂する。
大地に叩きつけられるレイアース。
ジェオ・ザズ「光ぅ!!」
タータ・タトラ「海!!」
アスカ「風──っ!!」
海 (強い……)
風 (なぜ……こんなに……)
光 (……強いんだ……)
デボネア「ハッハッハッハ……私はセフィーロの者たちが生み出したものだからだ」
光・海・風「……!?」
デボネア「柱を信じ、柱にすべてを預けてきたセフィーロの者たち……そして、その柱を失った巨大な恐怖の心が、私を生んだのだ」
セフィーロ城。
城へ避難した人々が恐怖に怯えきっている。
一緒に避難している少女ミラの前に、モコナが現れる。
モコナ「ぷぅ、ぷぅ〜」
ミラ「あぁっ……うん!」
何かを悟り、ミラが立ち上がる。
ミラ「みんな、『恐い』って思っちゃだめだよ!」
驚く人々。
その中、海と風に救われた少年少女が頷きあう。
少年「前に魔物が出てきたときも、僕らが『お姉ちゃんは絶対に勝つ』って信じたら、やっつけられたんだ!」
少女「そうよ! 信じて、『恐い』って思っちゃだめよ!」
そこへ、フェリオ、アスコット、ラファーガ、カルディナ、シエラが現れる。
フェリオ「そうだ! セフィーロの魔物は、すべて心が生み出したものだ!」
カルディナ「『恐い』て思う心が、敵をもっと強うしてしまう」
シエラ「だったら、デボネアは……私たちの心!?」
フェリオ「うむ」
アスコット「僕らの恐怖心が、もっと魔法騎士たちを苦しめてしまうんだ!」
ラファーガ「恐れるな! 恐れる己の心と戦うのだ!」
未だ戸惑っている人々。
たまらず、プリメーラが飛び出す。
プリメーラ「もう〜じれったいわねぇ! このセフィーロは、誰の国なのっ!?」
アスコット「セフィーロは僕たちの国だ!」
ラファーガ「私たちが守るべき、私たちの国だ!」
カルディナ「大好きな人が住んでる、大事な場所や!」
シエラ「愛する人は、自分たちの手で守らなければ!」
フェリオ「自分を信じろ! 他の誰でもない、自分を!」
ミラ「一緒に戦って!」
その言葉に動かされた人々が、次々に意を決して立ち上がる。
「私、信じるわ!」「俺も信じるぜ!」「わしも!」「私も信じるわ」
ミラ「頑張って、お姉ちゃんたち! 私たちも一緒に戦うよ!」
セフィーロの人々の心を受け、レイアースが光を放ち始める。
光「レイアースに力が……!?」
海「みんなの心が流れ込んでくる……」
風「セフィーロの皆さんの心ですわ……!」
セフィーロ城。
柱の証であるエメロード姫の王冠が突然、消滅する。
クレフ「柱の証が……!?」
柱の証がレイアースのもとへ現れる。
光がそれに手を伸ばすと、柱の証が黄金色の剣と化す。
剣を手に、デボネアへ突撃するレイアース。
魔法を放つデボネア。
それをものともせず突撃するレイアース。
デボネアの顔面を、レイアースの剣が貫く。
デボネア「がぁ──っ!! 己を信じる心……おのれ、セフィーロの者ども……魔法騎士……っ!!」
デボネアの体から、無数の光が放たれ、そして消滅──
光のもとに、クレフとランティスの声が届く。
クレフ (やはり柱は、光だったな……)
ランティス (光、その柱の証を……)
光 (クレフと約束したんだ。もし私の柱の資格があるなら、私の望んでいるセフィーロにしたいと願っていいって!)
クレフ「……あぁ!」
柱の証の剣を、光が高々と掲げる。
光「このセフィーロから、柱を無くす! そして、これからのセフィーロは、この国を愛するみんなで作っていって欲しい!!」
剣が黄金色の光に変わって空に放たれ、上空の闇を割く。
闇の中から次々に日の光が降り注ぎ、暗く閉ざされていたセフィーロの地に明るさが戻り始める。
その中に掻き消えるように、レイアースの姿が消えてゆく──。
セフィーロの人々が見守る中、光・海・風が空からゆっくりと降りてくる。
レイアース「願いは叶えられた。もう一度セフィーロを訪れ、自分自身の心のために戦いたいという、お前たちの願いがな」
光「じゃあ、私たちをセフィーロに召喚したのは……!?」
レイアース「お前たち自身だ」
海「じゃあ、私たちは……」
風「もう……戻らなくてはならないんですね」
クレフ「海……」
海「クレフ!? クレフ、あたし……」
想いを告げようとする海、しかしその言葉を飲み込んで微笑む。
海「……何でも、ない……」
クレフ「ありがとう……海……」
フェリオ「風……」
風「フェリオ……!」
フェリオ「約束通り、帰って来てくれたな……」
風「忘れません……あなたのこと、絶対に忘れません……」
フェリオ「風……」
ランティス「光……」
光「ランティス……これからきっと、セフィーロは平和で美しい国になるよね。エメロード姫がいた頃に負けないくらい……ランティス……好き」
ランティス「俺もだ……」
ランティスの返事に驚く光。
空からゆっくり降りてくる光に歩み寄るランティス。
光が手を伸ばす。
ランティスが手を差し伸べる。
ふたつの手が触れ合おうとする瞬間。
周囲が白い光に包まれ──
東京タワー展望室。
3人はいつの間にか、東京へ戻って来ていた。
光「戻って来た……」
風「私たちがもう一度セフィーロへ行けたのは、私たちの意志だったんですね」
海「そして、今度こそ後悔しないように戦った!」
光「うん!」
3人が笑顔で抱き合う。
光の目には涙が輝いている。
夏。
東京タワー展望室に、光、海、風の姿。
風「あれから、1年以上経ちますね……」
海「私たち、2度も異世界へ行った女子中学生ね!」
光と風が笑い合う。
ふと、光が窓の外に何かを見つける。
光「見てぇっ!!」
海・風「えぇっ……?」
光の指差す方を、海と風が見る。
海・風「あぁっ……」
窓の外の空。
セフィーロの光景が浮かび上がる。
美しい大地、水、緑に満ちた景色。
海「綺麗……」
風「柱がなくても、美しく平和な世界を作ることができたんですね……」
海「みんなの力で、ね……」
光「もう一度、セフィーロに行きたい……今度は後悔のためじゃない……」
胸からランティスのペンダントを取り出し、握り締める。
光「セフィーロの……新しい物語を知るために!」
終