戻る TOPへ

魔法騎士レイアース(第一部)の最終回


(ナレーション)
獅堂光、龍咲海、鳳凰寺風の3人は、異世界セフィーロを救う魔法騎士となるべく、エメロード姫に召喚された。
そして遂に、3人が最後の敵・ザガートを倒すべき時が来たのである。
3人の前に立ちはだかるザガート。その攻撃は凄まじく、光たちは何度も吹き飛ばされた。
だが光たちは、3人で力を合わせ、合体魔法・閃光の螺旋を炸裂させ、遂にザガートを消滅させたのである。


伝説の魔法騎士マジック ナイト 
驚異の真実


ザガート城の水牢に囚われているエメロード姫が、ザガートの死を直感する。

エメロード「ザガート……」

水牢から光が放たれ、牢を突き破ってエメロードが出現する。
その姿は今までのような幼女の姿ではなく、大人の女性の姿に、声も冷たい大人の声に変貌している。

エメロード「魔法……騎士……」


魔神レイアース、セレス、ウィンダムでザガートを倒した光、海、風の3人。
異変を知る由もなく、勝利を喜んでいる。

光「これで、やっとエメロード姫の願いを叶えることができるんだ! 魔神を蘇らせ、姫をさらったザガートを倒せた。これでこのセフィーロは救われる! 私たちは東京へ帰れるんだぁ! あのね、海ちゃん、風ちゃん……私、海ちゃん風ちゃんと一緒にこのセフィーロに召喚されて、本当に良かったよ! 私1人ならきっと、こんなに頑張れなかった……」
海「私だって同じよ光……もし私1人だったら、きっとパニックになって……一番最初の森で、魔物のゴハンになっていたかもしれないわ!」
風「私も……もし1人だったら、異世界でどう行動したらいいかなんて、考えもつきませんでしたわ」
光「……行こう、海ちゃん! 風ちゃん! エメロード姫は、きっとこの中だ!」

ザガート城へ向かう三魔神。
城は無数の水晶状の物体で覆われている。

海「どうやって入るのかしら……」
風「水晶のようですわね……?」
光「どうすれば……」
レイアース「それは、この城を守る結界」
光「その声は、レイアース!? でも、ザガートはもう……」
セレス「この城はエメロード姫のもの」
海「セレス!」
ウィンダム「この結界は、エメロード姫の心によって築かれたもの」
風「ウィンダム……」
レイアース「汝らの魔法で結界は破れる」
光「この結界の中の城に、エメロード姫がいるんだね」
セレス「セフィーロの柱は、この中」
海「行きましょう!」
光「うん!」
風「えぇ!」
セレス「異世界の少女たちよ」
レイアース「魔法騎士の真の敵は、これまでのものとは比べ物にならぬほど強い。心せよ」
海「……どういう意味?」
風「もう戦いは終わりましたのに……?」
光「行こう! エメロード姫のもとへ!」

3人が魔法を繰り出す。

光「炎のーっ、矢──っ!!」
海「水の──竜ぅ──っ!!」
風「碧の、疾風──っ!!」

三魔神の放った炎、水流、疾風が絡み合って白色の光となり、炸裂。
水晶状の結界が砕け散り、城が現れる。
城の中へ突入する三魔神。
中の大広間。変貌を遂げたエメロードの姿がある。

光「あ……誰かいる」
風「女性のようですわね……」

光たちが魔神から降りる。

光「あなたは?」
エメロード「私は……エメロード」
光「エメロード姫……!? そんな、エメロード姫は……」
海「エテルナの泉で助けてくれたときは……」
風「小さな女の子の姿でしたわ」
光「本当に、エメロード姫なのか?」
エメロード「私は……エメロード」
海「確かに、エテルナの泉で見た女の子と似てるけど」
風「綺麗な金の髪も、目の色も同じですわ」
光「エメロード姫。私たちはあなたに召喚された、異世界の者だ。導師クレフの教え通り、創師プレセアに武器を作ってもらって、モコナに導かれて、魔神を蘇らせることができた。プレセアは命を賭けて、私たちに武器を作ってくれた……クレフはあなたとの約束通り、私たちが魔法騎士になれるよう見守ってくれた! ザガートに石にされたけど……でも、ザガートは倒したからきっと」
エメロード「ザガート……!?」
光「!?」

ザガートの名に反応するエメロード。
異変を直感する光。

光「どうしたんだ、エメロード姫……!?」
エメロード「ザガート……」
海「様子が変よ!」

エメロードの目から涙が流れ落ちる。

エメロード「ザガートを殺したのは……あなたたちね……私の愛するザガートを殺したのは、あなたたちね!! 許さないっ……!」

エメロードの背後から、巨大な白い魔神が出現する。
床が砕け、城が崩壊し始める。
崩壊に飲まれそうになる3人。
三魔神の胸から光が降り注ぎ、3人が魔神の中へ吸い込まれる。

海「ここは!?」
風「魔神の中……」
光「魔神が助けてくれたんだ」

白い魔神の額から光が伸び、エメロードが魔神の中へ吸い込まれる。

エメロード「逃がさない……!」
光「城が崩れる、早く外へ!」

三魔神が城の外へと向かう。

光「どうして? あれはエメロード姫じゃないのか?」
レイアース「あの者はセフィーロの柱」
海「そんなぁ! 私たちはエメロード姫に召喚されたんでしょう!?」
セレス「そうだ。異世界の者を召喚する魔法は、セフィーロの柱のみが使えるのだ」
風「でしたら、どうしてエメロード姫に攻撃されるのです!?」
ウィンダム「あれが魔法騎士が真に対峙すべき者だ」
光「どういうことなんだ!?」


三魔神を追うエメロードの魔神。

エメロード「はっ……これは……」

途中、三魔神に敗れたザガートの剣が地面に突き刺さっている。
エメロードがその剣を手にする。

エメロード「ザガートの剣……ザガートを殺した魔法騎士……許さない! ザガートのこの剣で殺してやる!! 魔法騎士!! 絶対に許さない、魔法騎士!!」


城から飛び出す三魔神。
それを追ってエメロードの魔神も飛び出し、ザガートの剣を一閃して光線を放つ。
すかさず避ける三魔神。
光線が城に命中。城が砕け、消滅する。

海「……凄い」
風「たった一撃で、お城が砕けるなんて……」
光「あなたは、本当にエメロード姫なのか!?」
エメロード「そうよ……私はセフィーロの、エメロード!!」
光「私たちをセフィーロに召喚したのは、あなただろ!? だったら……なぜ攻撃するんだぁ!?」

そのとき、エメロードの魔神に一瞬、もとの幼女の姿のエメロードの姿が浮かび、消える。

3人「!?」
海「今のは一体……?」

エメロードの魔神が尚も攻撃を加える。

風「防りの風!」

ウィンダムが防御魔法を繰り出すが、防ぎきれず、三魔神が地面に叩き落される。
そのとき、もとのエメロードの声が3人の心に響く。

エメロード「魔法騎士たちよ……」
光「エメロード姫……!?」
海「この声は……エテルナの泉で聞いた……」
風「あの時の……エメロード姫の声ですわ」
光「やっぱり、あの魔神に乗っているのはエメロード姫じゃないんだ! 本物のエメロード姫は、まだどこかに幽閉されているんだ! エメロード姫、どこにいるんだ? 今助けに行く!」
エメロード「いいえ……これは私。私なのです……」
海「どういうこと……?」
エメロード「この魔神の乗っているのは、私です……セフィーロの柱であることより、ただ愛する人のために生きることを選んでしまった、愚かな私の姿なのです……」
風「愛する、人……?」
光「どういうことなんだ! あなたは私たちを東京からこのセフィーロに呼んだんだろ?」
海「東京タワーで確かに聞いたわ! 『この世界を助けて』」
風「『伝説の』……」
光「『魔法騎士たちよ』……!!」
エメロード「そう……私が伝説の魔法騎士を召喚したのは、このセフィーロを救うため……」
光「ザガートを倒せば、このセフィーロは救われるんじゃないのか!? ザガートがあなたを幽閉したから、あなたがセフィーロのために祈れなくなって、セフィーロは魔物の徘徊する不安定な世界になってしまったんじゃないのか!?」
エメロード「違いますっ……! ザガートの、あの人のせいではありません……全て私が、私が悪いのです…… セフィーロは、心が全てを決める世界。そして柱は、その世界の理や秩序を、意志の力で支える者。柱はただ、この世界の安定と幸せのみを祈り続けなければならない。なのに……なのに、私は……ザガートを……神官であるあの人を……愛してしまった……」
3人「……!?」

エメロード「ザガートを愛してしまった私は、セフィーロより、ザガートのことを想うようになってしまった……セフィーロの柱としての務めを忘れ、ザガートが、彼が幸せであるならそれでいいと、そんな恐ろしいことを考えるようになったのです」
光「だったら……ザガートはどうして、あなたをさらったりしたんだ?」
エメロード「あの人も……気づいてしまったのです。私の想いに……隠し続けるつもりだった想いに……そして、ザガートも私を愛してくれた」
3人「……」
エメロード「でも、2人の想いは決して叶えられることはないのです。私はセフィーロの柱。誰か1人のものにはなれない。それでも諦めきれなかった、忘れられなかったのです! あの人の、ザガートのことを……」
風「では、この世界に魔物が徘徊したのは……」
海「ザガートのせいじゃ……ない?」
エメロード「セフィーロは意志の世界。祈る心さえあれば、どこからでも、どんな妨げがあっても、世界の安定は願えます」
光「じゃあ私たちは、なぜ召喚されたんだ!」


エメロード「私が魔法騎士を召喚したのは……私を……殺してもらうためです」


光「……殺……す……!?」

エメロード「柱は、自ら死を選ぶことを許されません。そして、セフィーロの何人たりとも、柱に危害を加えることはできない。だから柱には、他の誰にも使えない『召喚魔法』があるのです。セフィーロの者ではない、異世界から召喚した騎士に、自分を殺してもらうための魔法が……」
光「じゃあ、ザガートが、私たちを魔法騎士になるのを邪魔しようとしたのは、あなたを殺させないため……」
海「フェリオが言ってた伝説って、このことだったの……」

フェリオの語った言葉が蘇る。

「セフィーロに危機訪れしとき、異世界より魔法騎士現れ、魔神を蘇らせ、魔法騎士となる」

エメロード「私は、ザガートを失った悲しみを憎しみに変え、こんな魔物を作り上げてしまいました」
風「魔法騎士が魔神を纏うのは、生身ではとてもセフィーロの柱に勝てないから……」

光の脳裏に、レイアースの言葉が蘇る。

「魔法騎士の真の敵は、これまでのものとは比べ物にならぬほど強い。心せよ」

光「このことだったのか……」


変貌したエメロードが再び攻撃に転じる。

エメロード「よくも、ザガートを……殺してやる。このザガートの剣で!!」

もとのエメロードが必死に訴える。

エメロード「お願い! もう私も消えてしまう……もうすぐ、復讐と殺意で心が一杯になってしまう……そうなれば、私はきっと……セフィーロの完全な崩壊と消滅を祈ってしまう!」

セフィーロの崩壊が迫る。

エメロード「伝説の魔法騎士たちよ……私を殺して……そして、セフィーロを救って!!」
光「そんな……」

エメロードの魔神の振るった剣が、レイアースの肩を貫く。
光の肩口から血が吹き出る。

海「光!!」
風「光さん!!」
光「あぁ──っ!!」
エメロード「ハハハハハッ……」

そのとき、3人のもとにクレフの声が届く。
石化が解け、クレフが蘇ったようだ。

クレフ「魔法騎士たちよ……」
光「クレフ……!」
海「あなたは知っていたの? エメロード姫の想いを!」
クレフ「知っていた……」
風「何か、助ける方法はないんですか? エメロード姫が死なずに済む方法は?」
クレフ「……ない。現在の柱が消滅しなければ、新たな柱は誕生しない。セフィーロは新たな柱の誕生を待つより他に道がないのだ」
光「ただ人を好きになっただけなのにどうして……!? どうして死ななきゃならないんだぁ!!」
クレフ「それがセフィーロの約束……」
光「そんな……!」

クレフ「魔法騎士たちよ……どうか、エメロード姫の本当の願いを叶えてくれ」
光「本当の……願い?」
エメロード「お願いです、魔法騎士たちよ……私の、本当の願いを叶えて! 私を、ザガートのもとへ行かせて……」
3人「……!!」
エメロード「これからは、ザガートのことだけを想っていられるように……ずっと、2人でいられるように……魔法騎士たちよ、私の最初で最後のわがままを叶えて!!」


三魔神が立ち上がる。


光「わぁ──っ!!」


絶叫と共に、三魔神が赤、青、緑の光球を化して空に閃く。
3つの光が融合。
白色の閃光と共に、魔神が一つとなった姿──合体レイアースが出現する。


レイアース目掛けて突撃するエメロードの魔神。
まばゆく輝く剣を手にするレイアース。
レイアースの中。光、海、風の目に涙が溢れている。


激突。

レイアースの剣が、エメロードの魔神を貫く。


エメロード「ザガート……やっと……あなただけのもとに……」


エメロードの魔神が幾重もの閃光が放ち、そして……消滅してゆく。


エメロード「ありがとう……魔法騎士……」


周囲一面が、光に包まれる──。


東京タワー展望室。

第1話で、東京見学に来ていた女生徒たちが、突然の閃光に包まれた直後。

「すっごい光だったわねぇ」
「なんだろうねぇ、光……ぅっ!?」

光の級友たちが光の方を向いて、ギョッとする。

光、海、風が抱き合っている。

光「夢じゃ……ないんだね……」
海「光ぅ……」
風「光さん……」

3人の目から涙が溢れ出ている。


光「エメロード姫……もう一度、セフィーロに行きたい……もう一度、セフィーロに行って今度こそ、エメロード姫が大切に育てたセフィーロのために、自分ができることをしたい……」


第一部


inserted by FC2 system