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  ●前回までのあらすじ

激しい戦いの末、ついに歴史の支配を目論む天回を打破した信長、日吉たち。
だが、時空の乱れに飲み込まれた日吉とヒナタ(ヒカゲ)はいずこかの時代に流され行方不明にってしまう。

元の時代に戻った信長は、自らの天下を築き上げることを誓う。

それから三十年後、天正十年。天下統一に王手をかけた信長の前に、運命の”本能寺の変”が迫っていた・・・・



   
  ●最終話 本能寺(その3)



「京都、本能寺」「天正十年(1582年)、6月2日、6:00AM」


 ワー、ワー、ワー (本能寺に泊まっている信長と伴の者たち。遠くから騒がしい声が聞こえる)


信長「…表が騒がしいな。ケンカか?」
小姓「上様! 今、外を確かめに行っておりますが…」

  ヒュッ!!ドカッ(鋭い音とともに矢が飛んできて柱に刺さる)

信長「!! 武器を・・・弓矢を持って来い!」「急げっ!!」
小姓「は・・・!はいっ!ただ今!!」

  ドタドタドタッ(信長の前に蘭丸が奔りこんでくる)

蘭丸「上様・・・!!上様ーーーーーッ!!」
信長「ーーー!! お蘭・・・!!」
蘭丸「急ぎお逃げくださいッ!! ただ今、脱出路を捜させております!!」
信長「!!」

「うわああーーーーッ!!」「上様をお守りしろーッ!!」

  パン!パパン!!(激しい戦闘音に混じって上がる悲鳴)

信長「謀反か・・・!! どこのどいつの仕業だ!?」
蘭丸「…………明智軍と思われます!!」
信長「!!」

  (一瞬、絶句する信長)

信長(光秀か・・・!!)
  「そいつは・・・しょうがねえな!!」


  (一方、本能寺を攻めている明智軍)

明智兵「うおおおおおおおおおおーーーーーーーーーツ!!」

  (激しい雄叫びを上げて攻撃をかける兵士。それを冷静に見る光秀)

光秀「………」
  (結果は考えるまでもない。京にいる信長軍は全部あわせても数百名。寺の警備はごくわずかだ。対して我が軍は一万五千…!)
  「これは・・・戦ですらない・・・!!」

  (本能寺に攻め入る明智軍)

明智兵「狙いは信長ただ一人!! 奴はどこだ!?」「ガッ!!」

  ヒュッガ!!(襖を開けて攻め入った兵士の一人が顔面に矢を受ける)

信長「俺ならここだサンピン!!」

  ヒュッガッ!!(弓矢で奮闘する信長。また一人の明智兵が矢を受ける)

明智兵「ぐっ!!」「おのれ信長ッ!!」

  ギリッ、ブチッ!!(さらに応戦しようとする信長だが、弓の弦が切れてしまう)

信長「ーーー!! 弦が・・・!!」

  ドガッ(動揺した隙をつかれ、腕に槍を受けてしまう信長)

信長「チィッ!!」

  ズシィッ!!(刀で反撃し、兵士を一人倒す信長)
  (本能寺はすでに炎に包まれている)

信長「・・・・・・・・・! これまでだな!」


  (その場から部屋の奥へ入る信長。そこには腰元らがいる)

信長「ーーーーーー! 何をしてる!? もういいから女は早く逃げろ!!」
腰元「上様・・・!!」
信長「おい、お蘭!! お・・・・・・」

  (蘭丸の名を呼びながら廊下に出る信長。そこには血を流した小姓を抱えた蘭丸がいた)

蘭丸「・・・・・・・・・弟が・・・!!」
信長「・・・・・・・・・力丸か・・・」
蘭丸「外は・・・すき間もなく兵で囲まれているそうです。ヤスケ殿が妙覚寺の友軍に救援を求めようとしましたが、
敵に捕えられました。もはや・・・・・・」
信長「もういい・・・ご苦労だった」

  (力丸を抱き涙を流す蘭丸を労う信長)

信長「この首、光秀にはやらん! 最後の仕事、頼まれてくれや」



  グワッ、メラメラ(炎に包まれた本能寺の間。腹を切らんとする信長と、介錯しようとする蘭丸)

信長「人間50年ーーー下天のうちをくらぶれば 夢、幻のごとくなり。ひとたび この世に生を受けーーー滅せぬもののあるべきか」
蘭丸「上様・・・!!」





  (信長が最後の時を迎えようとしているころ、服部半蔵に捕まっていた五右衛門は脱出に成功していた)

五右衛門「ふざけ・・・やがって!!」

  (ようやく脱出した五右衛門の目に映るのは、炎に包まれた本能寺)

五右衛門「ーーーーー!? こりゃ・・・もう・・・!!・・・・・・・・・」
    (チッ・・・! 俺だけ置いていかれちまったぜ・・・!)
    「これからはクソ面白くもねえ権力者の時代だな。忍びはやめて泥棒にでもなるか・・・?」



  (安土城では猿のサスケが騒いでいる)

サスケ「キイッ!!キーッ!」
濃姫「・・・・・・・・・!! サスケ・・・!?」
サスケ「キキッ!! キキィーーッ!!」
濃姫(まさか・・・・・・!! 信長さまに何かー!!)





  (再び本能寺。最後の覚悟を決めたはずの二人が唖然としている)

蘭丸「う・・・上様?」
信長「・・・・・・!!」

  (二人が見ている先の空間には穴が開き、そこに分厚い服を着た日吉がいる)

日吉「約束どおり・・・戻りました、殿!!」「俺です!!藤吉郎です!! 思ったより早くーーー」
「・・・って、あれ? か、火事ですか!? それに、そのかっこうは・・・!?」
信長「サル・・・!!」
蘭丸「ひ・・・秀吉さま!? いや、しかしーー」

  (状況が飲み込めない信長と蘭丸。日吉の後ろからヒカゲも現れる)

ヒカゲ「早く道をあけて、日吉! 予想よりゲートが不安定だわ!!」「やっと見つけたけど、この銅たくは砂漠に埋もれて
ボロボロなのよ! 早くしないと二度と使えなくなるわ!!」
信長「ーーー!! ちょ、ちょっと待て・・・!! こっちには来るんじゃねえ!!」
日吉「え・・・だって殿・・・!!」
信長「こっちは今、何もかも終わってるんだよ。おまえは今、どこにいるんだ!?」
日吉「それが、こっちに来てまだ数年でーーよくはわからないけど大陸の辺境らしいんです・・・!! 時代も、俺たちがいたとこより
何百年か前で・・・『もんごる』ってとこなんスけどーーー」
信長「!!」

  (日吉の言葉を聞き、何か思いついた信長。蘭丸を振り返り・・・)

信長「・・・行くか、蘭丸」
蘭丸「は!?」
信長「この向こうにも天下は広がってる!! ここでの俺たちの役目は終わったが・・・おまえにも、道のないとこに道をつくる
面白さを見せてやろーじゃねえか!」
日吉「殿・・・!? 何をーー」
蘭丸「おっしゃってるんですか・・・!? 上様・・・!?」
ヒカゲ「もうダメ!! 行くか戻るか早く決めて・・・!!」

  ヴッヴッ!(空間に開いたゲートから音が響く)

信長「えーい、もうつべこべ言うなッ!! パーッともうひと花咲かせようってんだよ!! 人間80年!!つきあえ!!」
蘭丸「ちょ・・・上様!? 30年増えてますけどっ!?」

  どがっ!!(蘭丸を強引にゲートへ蹴り飛ばす信長)

信長「なあ、サル! 俺は・・・変わったか!?」
日吉「え!? いや・・・どうかな。だいぶ年は離れちゃいましたけどーーー」「殿は殿・・・」「ーーーかな?」
信長「・・・・・・・・・そうか・・!!」

  (日吉の言葉に笑みを浮かべる信長)

信長「よっしゃサル!! 今度はてめーが天下人になれ!! 先輩の俺がコーチしてやる!!」
日吉「て・・・天下って、殿!?」
信長「まずは『天下のためにその1』!!」



  (ゲートの光の中に消えていく日吉や信長たち)

  (同時刻、彼らと関わってきた濃姫や秀吉、光秀らは何かを感じていた・・・・)



信長「下天は夢だ!! こまかいことは気にすんな!」「わははははははははは」

  (信長の笑い声が響く中、本能寺の空に光が昇っていく・・・・・)




   ーーーーーMISTERジパング・完ーーーーーー



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