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村長の家の地下にあった「宝物」の正体はかつて空から降りてきたメダロットの遺跡だった。
村おこしのため、父のため、とコイシマル達を追い出そうとするヒコオとネクウ。
そこへイトが現れる。全ては彼女の仕組んだ策略だった。
目的のため、と言い残し遺跡の奥へ進むイト。イトのメダロットは残ってコイシマル達の足止めに掛かる。
彼女達の目的とは…


「!」
発煙筒の煙の中でネクウがイトの姿を捉えた。

「アラクネはどこ?」
「あっちだ!」
オメダを掴んでイトを追うネクウ。
ヒコオがメダロッチを見て二人の挙動に気付く。

「あっちだ!」
コイシマルを掴んで二人を追うヒコオ。
「いた!」
イトは更に深部へと続く通路へ潜っていった。
後ろからサキとカオルの四人を呼ぶ声が聞こえる。
「君らは上に出て大人達を呼んで来て。」
「僕らはアラクネを追いかける!」
直後に煙の中からイトのメダロットが飛び出してきた。
「見つけた!」
「「出た!!」」
オメダとネクウに襲い掛かるイトのメダロット。

「ここは私とオメダに任せて、」
「二人はアラクネを追え!」
「わかった。」

通路を進む二人。やがてまた広場へ出た。
「また広い部屋に出たぞ?」
「どこだアラクネ!」
電灯を振り回すヒコオ。
「いた!」
佇むイト。二人に構わず虚空を見つめている。
「いた。」
小さく呟くと、天井へ向かってライトを撃ち込んだ。
強烈な光が辺りを照らし、目が眩む二人。
「な゙!」

イトの前に陣取る巨大な化石を前に二人が絶句する。
彼らが知る由も無いが、それはかつてヒカルが遺跡で見た化石と同種のものだった。

「でっかいロボット?」
「巨大なメダロット。」
「見つけたぞ、マザー。」

巨大な躯体には所々ヒビが入っている。
「本によれば少なくとも、」
真上から落ちてくる砂を払うイト。
「戦国時代までは動いていたんだ。今だってきっと…」
「「そいつで何をするつもりだ!?」」
二人が声を上げる。

「私のコピーを作るんだよ。」

「は?」
「なんだ、コピーって。」
予想外のアラクネの告白に戸惑う二人。

「お前らのようにのほほんと生きているヤツらにはわからないか。」
マザーに視線を移し、独白を続けるイト。
「マザーメダロットに心をコピーしてもらうのさ。
 地上の生物の能力をコピーしたメダロットを産み出すマザーだ。私のコピーだって作れるさ。」

また二人の方を向き、言い放つ。
「われわれ人間の寿命はとても短く、
 メダロットの寿命はとても長い。

 いずれ私のメダロットは一人ぼっちになってしまう。

 そうならないよう、他のメダロットに私の心をコピーする。
 生身の私の死後も、ずっと一緒にいてやれる、長生きする、
 もう一人の私を作るのだ。」

「何か悪さをするのかと思ったらそんな事かよ。」
半ば拍子抜けしたような顔でコイシマルが呟く。
「変だよ。他の誰もそんな事考えてないし、ここまでの事しないよ。」

「じゃあどうする!?
 お前達のメダロットだっていずれ一人になるんだぞ!」
「「う!」」
激昂するイト。

「お前らはメダロットより先に死ぬんだぞ。」
「「ん〜〜〜〜」」
言葉に詰まる二人。

「ここには使われていない器がたくさんある。」
「器?」
イトが指差す方向。ドームの壁面には小さな穴がいくつも空いており、
その中ひとつひとつには、
「ひ!」
「眠ったままの最初のメダロット達だ。」
ミイラの様にも見える、「約束」によって眠り続けている無数のキッズ達…。
「これに私のコピーをうつすのさ。」

二人の後ろから何かを引きずるような音が洩れる。
「ん?」
「終わったよ。」
イトのメダロットがボロボロになったオメダとネクウを抱えて通路から出てきた。
「何!?」
「オメダ!」
二人を捨て置いてイトのもとへ向かうイトのメダロット。
「さあ、私の願いをかなえて。」

応えてイトがマザーに呼びかける。

「動け、マザー!

 私のコピーを作ってくれ!」

その時、天井のライトが撃ち込まれた部分が崩れ出した。
「ん?」
長年に渡る水や木の根による侵食は遺跡中を充分に蝕んでいたのだった。
「「あ゙!!」」
ライトごと天井が外れ、イトを目掛けて落下する。
巨大な石片は、イトを庇ったイトのメダロットを押し潰した。

「「あ!」」
「あ゙!!」
飛び散るオイル。ライトが無くなり、再び辺りは暗闇に包まれた。

「な、な、?、な、、何、な、な」
あまりに突然の出来事に狼狽するイト。
「おい!」
石片を押し除け呼びかける。
「大丈夫か、おい!おい!」
抱きかかえて何度も呼びかけるが、イトのメダロットは潰れた躯体をだらりとさせるだけで何も答えない。
ヒコオのライトに照らされながら、物言わぬ自分のメダロットを抱えながら、イトが立ち上がる。
「‥‥」
虚空を見つめ沈黙するイト。

「あのお‥‥」
たまらず二人が声を掛けようとすると、
「これで最後だ。」
呟いたイトは鞄から発煙筒を取り出した。
投げ捨てられ、周囲に煙が溢れ出す。
「うわっ、またかよ。」
毒づく二人。

「じゃあね。」
一言残して、イトは去っていった。


暗闇の中、入り口の方から声が聞こえる。
「おおい、大丈夫か。コイシマル、ヒコオ!
 いたら返事して、おおい、おおい…」


《 それから約一ヵ月後… 》

《 村長宅の遺跡は(株)メダロット社の人達が全部掘り出して持っていってしまった 》

《 あの遺跡、あのマザーメダロットは眠っていただけなのだろうか。それとも死んでしまっていたのだろうか… 》


「じゃあ、アラクネを告訴しないのですね。」
警官が訝しげに村長に聞く。
「そ。」
「許すのですか?」
「子供らもそう言っているしね。我々がしてやれる事はそれくらいしか…
 今頃、どこでどうしているのか。」


《 今回のアラクネの件を村長さんが村のホームページで書いてしまった 》

《 すると、なんと世界中から沢山の反応があった 》

「あ、テレビ?これ映ってる?ああ見ましたよホームページ。」

「ああ、持ち主が死んじゃって野良メダロットになるんだろ。」

「私のはずっと実家に置いてありますよ。この子の相手にまた必要になるかな。」

「久しぶりに遊んでやったんですよ、そしたらアイツ喜んで…」

「(株)メダロット社はこの件に関して何か良い考えは無いんでしょうかね。」

「考えてはいるらしいですが。」


「そんな問題が起きているなんて知らなかったよ。」
「どうすれば良くなるのですか?」
「ん〜〜〜」
道端で話すコイシマル、ヤマト、ベニ。
彼らの横を、マントを羽織った野良メダロットが通り過ぎていった。
そのメダロットが、亡き主人への餞にと金色のカブトムシを探し放浪している事など三人が知る筈も無い。

《 考えてみても…答えが見つからない 》


「なんだ、バカヤロー。」
「そう、そうやってね、ロボトルの相手を怒らせてミスを誘うんだよ。」
「嫌いじゃない人に意地悪を言うんですか。」
「そういう作戦よ。」
ロボトル名人達がメダリンピック誘致用の施設の一角でたむろしている。

「お、ロボトルを教えてやってるの?」
「ここにいられるのもあと何日かだしね。」
食事をしながら団欒を楽しむ名人達。

「セミが鳴いてるよ。」
「もうそんな季節かあ。」
売店の壁にはメダリンピックの誘致が失敗した事を知らせるチラシが貼り付けてあった。


《 で、オレ達は… 》

「よ。」
「「「「ジャン」」」」
イトに破壊されたクロトジルとシンザンのボディを装着したオメダとネクウ。
「前の機体、直ったんだね!」
「「さらに」」
ヒコオがぬいぐるみを取り出す。
『トウキョウダルマガエル君だ!』
「村長さんからみんなへのプレゼントだ。」
「えらそうだな。」
何故かふんぞり返るアキ先生にオサムが突っ込みを入れた。


「よぉし、ロボトルだぁ!」

「ロボトルー―ファイト!」

広場に声が響く。


「あのさぁ。」
一同のロボトルを見学するオメダがコイシマルに尋ねる。

「あの子、なんて名前だったんだろな。」
イトのメダロット。そういえば最後まで名前を聞く事は無かった。


「やれぇ」
「あ、私の仕事取らないでくださいよぉ。」
遅れてやって来たカバシラが文句をたれる。
尻目にどんどんヒートアップしているアキ先生。
「ゴー!」
「大人がむきになって…」
呆れながらシゲユキが呟いた。

《 この先生達の声、どこか他で聞いた事があるような無いような… 》


「アラクネは今どうしているんだろう。」
ぽつりとヒコオが呟く。
「かわいがってたメダロットが死んじゃったからね。」
「それはどうかな。」
「でも岩が落ちてきて酷く潰れちゃったし…」

ヒコオが寄りかかっていた金網から身を起こした。

「ぼく達、メダルが割れたの見たわけじゃないだろ。」
「あ…」
オサムのタマサブロウが倒れた。
「よし、次、ぼくだ。」
ヒコオとネクウが輪へ向かう。


《 (株)メダロット社は人とメダロットの寿命の差で起きる問題を考え始めたようだ 》


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                 【メダロット社ホームページ】

       『野良メダロットとメダロットの寿命の問題に関しての小社の思い』

 昨今、私どもの商品であるメダロットの問題が世界で取り沙汰されています。

 メダロットが人間より長寿であるが故に所有者に先立たれ居場所が無くなり、

 いわゆる「野良メダロット」と化す例が少なくないのです。

 この責任の一端は問題解決策を長年に渡り提示できなかった私ども

 (株)メダロット社にあります。

 結果、私どもの関係する施設「天国の門(ヘブンズゲート)」に関する根拠の無い噂まで生まれ

 てしまいました。

 私どもは2027年7月20日よりこの問題を考える専従チームを組織しました。

 行政、教育関係者、精神科医、宗教家、法律家等の有識者の方々と、

 コンピュータからなる素晴らしいチームです。

 しかし、事が命に関する問題なだけに私どももすぐに答えが出るとは考えておりません。

 開かれた議論が重要と思われます。

               皆様の御意見をお待ちしております。

                      (株)メダロット社 代表取締役社長 二毛作タイヒ

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《 そう簡単に答えは出ないけど 》


「オメダ、行くぞ!」

「おお!」


《 オレ達の今は、

 とりあえず楽しい 》



〜END〜



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