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●前回のあらすじ

亡者の軍勢を操り黄泉戦船(よもついくさぶね)を率いて恐るべき破壊をもたらす魔人・由比正雪。

黄泉戦船に対抗する力を求める覇王丸たちは、軍船バスティーユ号を率いるフランスの女剣士シャルロットを仲間に加え、
襲撃してきた菜霧と魔物を返り討ちにする。
その戦いで覇王丸は、正雪に操られた菜霧を解放しその魂に救いをもたらした。

そして今、覇王丸ら正義の剣士たちと、由比正雪率いる亡者の軍勢による最後の戦いの幕が切って落とされようとしていた・・・・









●最終章 變生の章








  (暗黒の海を行く黄泉戦船。その奥で鎮座する由比正雪)

正雪「おびただしい血が、魔界に流れこんだ・・・」
  「間もなく魔神アンブロジァ様が魔界の門を開いて降臨なされる」

  (幕府に謀反を起こす外様大名の血判状を広げる正雪)

正雪「そしてこの大名どもの血判状によって徳川幕府は倒れ、乱世がおとずれる・・・」
  「その時こそ我ら魔界人の天下! この由比正雪が地上の覇者となり君臨する!!」

  スッ(正雪の背後に音も無く現れる死郎)

正雪「時は近いぞ死郎よ・・・」
死郎「は」

  (静かに跪く死郎・・・・・)






見張り「船長、敵船が見えました、距離二〇〇!!」

  (覇王丸らが乗り込んだバスティーユ号の見張りが黄泉戦船の姿を捉えた)

シャルロット「剣と同じだ! 最初の一撃が物を言うぞ!!」
      「一斉射撃で敵船左舷の砲門を潰せ! 白兵戦に持ち込むぞ!!」

  (勇ましく船員の指揮をとるシャルロット)

半蔵「もうすぐだ! もうすぐ全ての決着がつく・・・」
ナコルル「風よ、海よ、大地よ。大自然に宿るカムイよ。お願い、力を貸してください・・・・・・」
覇王丸(菜霧・・・天で見ているがいい! 正雪の首は俺が取る!!)

  (決戦を前に決意を固める剣士たち)


シャルロット「撃てェ!!」

  ドドオン ドオン(バスティーユ号の大砲が火を噴き黄泉戦船を攻撃する)

船員「つっこめえ!!」

  (黄泉戦船に乗り込んでいくバスティーユ号の船員たち。覇王丸たちも続く)

覇王丸「うおおおおおおおおおお!!」

  (豪快に黄泉の兵をぶった切る覇王丸)

半蔵「ハアッ!!」

  (背中の忍者刀を払い、敵を切り裂く服部半蔵)

シャルロット「スプラッシュファーント!!」

  (輝きを放つサーベルの連続攻撃で敵を蹴散らすシャルロット)

ナコルル「アンヌムツベ!!」

  (黄泉戦船のマストに飛び乗り、空中斬りを放つナコルル)

  (負けじと船員たちも銃やカトラスで激しい戦いを繰り広げる)





  (戦いの音も響かぬ黄泉戦船の奥で鎮座する由比正雪)

正雪「来たか・・・」

  ズバン(扉を切り倒し、正雪の前に立つのは剣を構えた覇王丸)

覇王丸「・・・ようやく決着をつける時が来たな  由比正雪!!」
正雪「覇王丸よ・・・貴様ではこの由比正雪には・・・」
  「勝てぬ!!」

  ビュッ(正雪が言うや否や、大量の髪の毛が覇王丸を縛り上げる)

覇王丸「グ・・・」
正雪「身体中の血を搾り出して死ね・・・」
  「虫ケラよ・・・」
覇王丸「虫ケラだと・・・・・・?」「俺達人間を虫ケラと言ったな・・・」
   「その虫ケラの力! 思い知れェーーーーーーーーーッ!!」

  ブチブチ(怒りの覇王丸が込めた力で髪の毛が断ち切れる)

正雪「な・・・!?」「なぜだ・・・!!」
  「人間にこんな力が出せるわけが・・・」

  (覇王丸の力を理解できない正雪。そんな彼を囲むように剣士たちが現れる)

半蔵「人の生命を弄ぶしか知らぬ貴様にはわかるまい・・・」
正雪「!」
ナコルル「人の心は弱いわ・・・だけど人の心は魔を絶つ力を秘めている」
    「それは森羅万象のカムイが与えてくれた力!」
シャルロット「下衆なおまえには出来ぬ芸当だがな・・・」
正雪「くっ・・・」

  (今や四方を取り囲まれ追い詰められた正雪)



覇王丸「オオオオオオオオ!!」
正雪「!!」

  (覇王丸が刀を振り下ろし、正雪を大きく切り裂く!)


正雪「うぎゃあああああああああああああああ!!」

  (絶望のあまりか涙を浮かべて絶叫する正雪)

正雪「こんな・・・・・・こんな・・・!」「こんな馬鹿なぁぁあ!!」
  「我はアンブロジァ様の洗礼を受けた魔神の申し子だったはず!!」「なぜ虫ケラの剣が我の体を傷つける」

  (もはや威厳などなく恐怖に怯える正雪。その前にゆっくりと姿を現す死郎)

死郎「正雪・・・そなたの役目は終わったぞ・・・」
正雪「死・・・死郎・・・?」
死郎「そなた達、黄泉より還った者達が流す黒い血が我の最後の封印を解いたのだ・・・・・・」
  「わからぬか? 魔神アンブロジァ様の申し子はそなたではない」

  ズズズズズ(怪しいオーラに包まれていく死郎)

死郎「遙か昔、イエス・キリストが世に出るため洗礼者ヨハネが必要だったように、そなたには我の道をなすための役目しか
   なかったのよ・・・・・・」
正雪「死郎・・・貴様何者だぁ!!」
死郎「我こそは天草四郎時貞なり!!」

  (その身を奇怪な衣装に身を包み本性をあらわした死郎・・・・改め天草四郎時貞。その手より炎を灯す)

  ゴオォ(天草が放った炎が正雪を包む)

正雪「ヒッ!! ヒイイイイイイイイイイッ!!」
天草「汝、暗転入滅せよ!!」

  ボオッ(天草の額に梵字のようなものが浮かぶと、炎が爆発的に燃え上がる)

正雪「・・・・・・!!」

  (燃え上がった炎に包まれる正雪)

天草「正雪・・・ぬしの流した何万の血と無念の涙、この上なく美味であったぞ・・・」

  ブスブス(あっさりと焼き殺され屍と化した正雪)

天草「さて・・・」

  (振り返る天草。唖然とした様子の覇王丸たち)

覇王丸「・・・・・・天草・・・四郎・・・だと・・・?」

  (しばし無言で対峙する剣士たちと天草四郎)

半蔵「!」「し・・・・・・真臓!!」

  (何かに気づいた半蔵。覆面を脱いで天草に呼びかける)


  ビクン(反応を示す天草)

天草?「ち・・・父上・・・・・・」
ナコルル「父上ですって・・・?」

  (天草の表情が悲しげなものとなり、驚くナコルル)

天草「うぬ・・・まだこの体を全て支配できていないのか・・・・・・封印は完全に解けておらぬのか・・・」

  ギリ(歯軋りして天草を睨む半蔵)

天草「クククク・・・この身体は確かに二年前に死んだそなたの息子よ、服部半蔵」




  (2年前の伊賀。重傷を負った若者を抱き上げる半蔵)

半蔵「真蔵!!」
真蔵「父上・・・・・・すみません・・・ゴホ」
半蔵「バカな事を! おぬしではまだ雪崩渡りの修行は・・・」
真蔵「真蔵は・・・父上を超えたかった・・・父上に認めてもらいたかった・・・強くなりたかった・・・だから・・・・・・」
半蔵「真蔵ーーーーーーーーーーーーーッ!!」




  (現在、話し続けている天草)

天草「魔神の申し子が現世に出るにはその人形(ひとがた)となる肉体が必要だ・・・」
  「生まれ出た日の星辰の位置、肉体的強さ・・・そなたの息子の屍は理想的な人形であったぞ!!」

  (無言で話を聞く半蔵)

ナコルル「ハッ!」


  (心の声を聞くナコルル。見ると目の前の天草・・・否、真蔵が涙を流している)

真蔵(父上・・・)
  (私を殺してください・・・それがせめてもの慈悲です・・・)

  (涙を流す天草の背後に、真蔵の魂の姿が被る)

  (その姿を感じた半蔵。そっと目を閉じる)

半蔵「刃に心と書いて忍びと言う・・・」
  「己が心を刃で斬り、おぬしを斬ろう! 真蔵!!」

  ダン(跳躍し背中の忍者刀で天草を斬ろうとする半蔵)

天草「愚者め!!」

  ギン(眼力で睨みつける天草)


  ドオオン(凄まじい光の柱が立ち上り、黄泉戦船を破壊する)


  ゴオオオ(宙を飛び炎に包まれた船を見下ろす天草)

天草「ハァーハッハッハッ、身の程を知れ! そなた達は我の裾にも触れることかなわぬ!!」


  (勝ち誇る天草だが、瓦礫の中から立ち上がる覇王丸を見て表情を変える)

覇王丸「・・・・・・天草四郎・・・おまえを・・・」「斬る!!」
   「おおおおおおおおおおおおおお!!」

  ゴッ(宙を飛ぶ天草目掛けて跳躍し、刀を振り下ろす覇王丸)

  (その刀は見事、天草を縦一文字に切り裂いた!)

覇王丸(とった!!)

  (勝利を確信する覇王丸。だが・・・・・)

天草「ク・・・クク・・・」
覇王丸「!?」

  (真っ二つになったはずの天草の頭がみるみる復元していく)

天草「面白い! 人間風情がこれほどの力をだせるとは!!」
覇王丸「なに・・・!?」

  ブオン(元通りに再生した天草。両手に輝くエネルギーを集める)

天草「褒美をとらせようぞ!!」
  「死を!!」

  ズドン(集めたエネルギーはビーム砲のごとき勢いで放たれ、覇王丸を直撃した)

  ザパアン(焼け焦げて海に落ちる覇王丸)

天草「ククククク・・・」
  「我はこれより、この国のみならずこの惑星すべてを焼き尽くす力を手に入れる!!」
  「この惑星すべてを暗黒神に捧げるためにな!!」
  「その時、再びそなた達の前に見参するであろう!!」
半蔵「くう!!」

  (高らかに宣言する天草を見上げるしか出来ない半蔵、ナコルル、シャルロット)

天草「さらばだ!!」「ハーハッハッハッハ」

  (高笑いを残していずこかへと飛び去る天草)


  (炎に包まれ崩れ落ちていく黄泉戦船)

半蔵「この船はもうだめだ! バスティーユ号に!!」

  (ナコルルに声をかける半蔵。しかし返事はない)

半蔵「急げ! 巻き込まれるぞ!!」

  ギュッ(涙を浮かべるナコルル)





ナコルル「覇王丸ーーーーーーーーーッ!!」




  ザアン(海の底へ沈んでいく覇王丸。そこにかけられる声)

?(覇王丸・・・覇王丸・・・)
覇王丸(だれだ・・・俺を呼ぶのは・・・)
?(あなたはまだ死んではいけない・・・待ってる人がいるんでしょ・・・)
 (生きて覇王丸!!)
覇王丸「な・・・ぎり・・・」

  (覇王丸に魂を救われた菜霧の声が死にゆく彼を呼んだのか・・・・・・)






「一月後」





  (どこかの森。旅姿のナコルル、シャルロット、服部半蔵)

ナコルル「だめです・・・この森は死にかけている・・・」
    「森だけじゃない・・・山も川も・・・獣も鳥も・・・そして人の心も・・・」
    「勢いをまして暗黒の力に蝕まれている・・・」
シャルロット「我々の戦いは終わったのか・・・無残な敗北で・・・」
ナコルル「いいえ・・・ちがうわ・・・」
    「私には見えるの・・・これから出会う人達が・・・そして始まる もっと大きな戦い・・・」

  (ナコルルはガルフォードやタムタム、柳生十兵衛らまだ見ぬ剣士たちのビジョンを見ている)

ナコルル「でも・・・そこに覇王丸はいない・・・・・・」

  (悲しげなナコルル。ところが・・・)

ナコルル「ハッ!!」「この気は・・・」
半蔵「どうした? ナコルルどの・・・」

  (どこかへ走っていくナコルル)

ナコルル「感じるの!!」
半蔵「ナコルルどの!!」
ナコルル「感じるのよ!!」



「いざ」


  (息を切らせて走ったナコルルたち。彼女らがそこで見たものは・・・・)



「一本目!」



  (刀を振るい勇ましく戦う覇王丸の変わらぬ姿であった・・・・・)



「勝負!」







魔界武芸帖 サムライスピリッツ・完









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