戻る TOPへ

無敵鋼人(こうじん)ダイターン3(スリー)の最終回


万丈、暁に消ゆ


火星。
地表に設置された巨大な推進装置が上空に向かって火を噴き、火星が次第に地球へ接近してゆく。

火星上のドン・ザウサーの城。ドンのもとに、コロスがすがりつく。

コロス「破嵐万丈にダイターンを奪われたことが、これほどに私どもを悩ますとは思いませんでした。仰ってましたね、あなた…… 『メガノイドの力があれば、人類は地球以外の星に進出して行ける』と…… 『そうなれば、地球上で人間が殺し合って、戦いを起こしたりすることがなくなって、人類は永遠に平和になる』と……」

答えないドンの膝に、コロスが顔をうずめる。

コロス「それなのに、あの破嵐万丈が……! なぜ、メガノイドの原型サイボーグを開発した、あの破嵐創造の子供が、あなたの夢を壊そうとするのか…… あなたは、ご自分の夢を私にお話しになったまま、意識をなくされた……」

ドンの頭部に見える脳髄を、コロスが見つめる。

コロス「あなたの頭脳は、まだ生きているのですよ。目覚めて…… あなた…… 女の浅知恵とお笑い下さい。火星を発進させ、ダイターンもろとも万丈を倒します! そして、私は火星をぶつけると、人間どもに脅しをかけました。一挙に人間どもをドン・ザウサーの前に跪かせるつもりです」


破嵐邸。

万丈「今回の戦いは、晩餐までに蹴りをつけるというわけにはいきそうもないなぁ、ギャリソン?」
ギャリソン「はい、お弁当を持つということになりますな」
レイカ「あぁ、それなら作ってあるからね」
万丈「サンキュ! ふぅ〜、厳しいなぁ…… ビューティ、地球の天候異変はどこまで我慢できる?」
ビューティ「あと半日ねぇ〜」

アイスクリームを片手に、ビューティが呑気な口調で返事する。

トッポ「うぅっ…… ぼ、僕はねぇ、さっきから我慢が仕切れないよ!」
ビューティ「私のこと?」
トッポ「メガノイドが火星で特攻してくるんだよ? それをね、アイスクリーム舐めてて、不真面目なんだよビューティはぁ!」

どなるトッポの口に、ビューティがアイスクリームを放り込む。

トッポ「ペェ〜ッ、ペッペッ、お姉ちゃぁん!」
ビューティ「きったないじゃない!」
トッポ「情けないなぁ、もう」
レイカ「まったく…… 2人とも、いいじゃない」
万丈「よし、行くぞ!」
トッポ「僕もマサアのところにいくからね!」

出撃に向かう万丈、それを追うトッポ。

万丈「トッポ、今からうちに帰ってもいいんだぞ」
トッポ「イヤだよぉ!」
万丈「僕だって怖いのさ。痩せ我慢はやめるんだな、トッポ」
トッポ「や、痩せ我慢じゃないやい!」
万丈「なら、イライラするな。ビューティはビューティ、あれでいい。わかったな?」

万丈がマサアロケットに乗り込む。

トッポ「ふん、わかるもんかぁ」

いつの間にかトッポの後ろで、レイカとビューティが万丈の出撃を見送っている。

レイカ「見納めね……」
ビューティ「およしなさい、未練よ」
レイカ「そうね……」
ビューティ「やってみるだけよ!」
トッポ「えっ……? お姉ちゃん!」


火星では、ドン・ザウサーとコロスの前に、メガノイドたちが整列している。

コロス「地球の気象異変は5時間後に最大になります。人間は宇宙に脱出を図る者、地上でうろたえる者、共に捕えるのは造作もないことです。そして破嵐万丈は、ダイターンとマサアを迎撃機として立ち向かってきましょうが、抵抗はそこまで。全員の健闘を期待します」
メガノイドたち「オーラ・コロス!」

ドンが唸り声を上げる。

コロス「『一同、銀河帝国建設のために励め』との仰せです」
メガノイドたち「オーラ・ドン・ザウサー!」


破嵐邸では、レイカ、ビューティ、トッポが戦闘服に身を包む。

ギャリソン「お支度はよろしいですかな?」
レイカ「えぇ」
ギャリソン「トッポ様も?」
トッポ「うん、いいよ」
ギャリソン「おしっこは?」
トッポ「したよ」
ギャリソン「今、万丈様から連絡が入りました。メガノイドの攻撃隊が発進したそうです」
ビューティ「じゃあ、私たちも?」
ギャリソン「はい」

ギャリソン「メカマルたちに頑張ってもらいましたが、マサアを4機作るのが精一杯だったのが残念です」
レイカ「ダイターンは1台でいいのよ」
ギャリソン「ヒーローですから」
レイカ「フフッ、そうね」
ギャリソン「では、ご無事で」

4人の乗り込んだマサアロケット4機が海を飛び立つ。


宇宙空間。万丈のマサアが火星を目指す。
コマンダー・ダルシアの乗る大型戦闘機ドアンを先頭に、メガノイドの戦闘機群が迫る。

万丈「来たな……」

ダルシア「ブースターを外したドアンより、アイアイを発進させよ」

万丈「ブースター・カット!」

メガノイドの小型戦闘機アイアイが発進するが、次々に万丈のマサアに撃墜される。

ダルシア「おのれ万丈、火星には指1本触らせはせんぞ!」
万丈「こんなとこで無駄死にはしたくないんでね」

マサアとドアンの砲撃戦。

万丈「やるなっ……」
ダルシア「反転して万丈をやれ!」
兵士「コマンダー・ダルシア! 4機のロケットをキャッチしました。地球から発進した模様です」
ダルシア「何? 地球上のロケットは天候異変の影響で1台たりとも発進できんはずだ」
兵士「万丈機よりスピードがあるようです」

ギャリソンたちのマサアロケットが追いついて来る。

ギャリソン「メガノイドと接触致しますぞ。よろしいですかな」
トッポ「いいよ、ギャリソン」
レイカ・ビューティ「了解!」

ダルシア「戦力の3分の2を回せ! さっきの1機は万丈でなかったかもしれん」
兵士「はっ!」

万丈「ギャリソンたちに誘われて左翼が手薄になったか…… 行くぞっ!」

兵士「万丈機が右翼に入り込みます!」
ダルシア「その1機が万丈がどうかはわからん! 4機の映像はまだか?」
兵士「キャッチしました!」
ダルシア「そうか!」
兵士「4機とも、マサアタイプのロケットです」
ダルシア「な、何だと!? 4機ともマサア…… すると、5機のマサアと5台のダイターンがあるというのか!?」
兵士「本船は20秒で、4機編隊を射程距離内に捉えます」
ダルシア「よぉし、ダイターンを発進させる間を与えるな! 編隊を撃破する! 先行の1機の撃破はまだか!」

火星へ向かう万丈のマサアを、コマンダー・ゴーストのドアンが追う。

万丈「メガノイドにもいいパイロットがいる……!」
ゴースト「あのマサアを火星まで入れるな! 何としても!」

ギャリソン「各機ブースターカット。戦闘にお入りくださいませ」
一同「了解!」
ギャリソン「反転直進です。編隊を崩したら、1機ずつ袋叩きにされますぞ」

敵機の攻撃が降り注ぎ、宇宙空間での戦闘が開始される。

ギャリソン「トッポ様、後ろで怖くはございませんか?」
トッポ「だ、大丈夫!」
ギャリソン「結構でございます。しんがりは男の役目と決まっていますからして、頑張って下さいませ」


一方で火星地表まで降下した万丈。
振り向きざまにマサアがドアンへ砲撃を放つが、ドアンはこれも避ける。

万丈「避けたか……」

マサアの前面、砂嵐の吹きすさぶ中から、ドアンの機影が現れる。

万丈「うっ、正面!?」

マサアがドアンを避けようとして、眼下の岩棚へ。

兵士「岩にぶつかったようです」
ゴースト「安心するな! 爆発ひとつない、確かめろ!」

岩に衝突していたのではなく、岩棚の下に潜り込んでいた万丈のマサア。

万丈「こんな岩棚があるなんて、誰も知っちゃいないさ。後ろを取らせてもらうぜ」
兵士「し、しまった! 後ろを取られました!」
ゴースト「何!?」

マサアが背後からドアンを砲撃。ドアンが撃墜される。

城内でコロスが兵士から報告を受ける。

兵士「1機のマサアは、火星の推進装置に向かっております。マサアの編隊と戦闘中のドアンは苦戦です」
コロス「迎撃機アイアイの用意は?」
兵士「はっ、すでに追撃中であります」
コロス「火星の動きを止めて、その上でこのドンの城に向かうのが作戦の要なら、1機だけのマサアこそ万丈のものに違いありません」
兵士「は、しかし……」
コロス「私もアイアイで万丈を迎え撃ちましょう。そなたも!」
兵士「ははぁ!」

万丈のマサアが、火星地表の推進装置を次々に爆撃する。

万丈「あとはドン・ザウサーの基地を爆発させて、火星をもとの軌道に戻すだけというわけだ。よぉし…… あっ!?」

前方のドンの城から、アイアイの編隊が出撃。マサアとの砲撃戦となる。

コロス「各位、特攻してでも万丈を食い止めなさい」

アイアイの数機が、マサア目がけて特攻。
マサアが火を吹きながら、ドン・ザウサーの基地へと向かってゆき、基地を取り巻くドームを突き破る。

コロス「うっ、しまった!」
万丈「何とぉ……!」
コロス「万丈!」

不時着したマサアから、バズーカを抱えた万丈が降りる。
コロスのアイアイが飛来する。万丈のバズーカの砲撃で、アイアイが爆発。
しかしコロスは爆発の中から飛び去り、城の中に消える。
万丈がリモコンでマサアからマッハパトロールを発車させ、飛び乗る。

城目がけて失踪するマッハパトロール。
入り口にコロスの姿。その手には爆弾が。

コロス「万丈!」

万丈の銃が火を吹き、銃弾がコロスをかすめる。
コロスの手から爆弾が転げ落ち、爆発。
万丈が爆風をジャンプで避け、城内に踊りこむ。

万丈を迎え撃つコロス。万丈の放つ無数のワイヤーがコロスを取り囲み、電撃が走る。

コロス「これは……!?」
万丈「あなたの体を動けなくする」
コロス「ば、万丈…… なぜドンの心をわかってくれないのですか!」
万丈「僕は憎む! サイボーグを作った父を…… まして僕の母も、兄も、サイボーグの実験に使って殺してしまったことは許せない! ドンもあなたもメガノイドを名乗ってスーパー人間と自惚れる! それを憎む!!」
コロス「人類が宇宙に飛び立つ時代には、ドンのお考えは正しいのです!」

万丈の銃が火を吹き、コロスがハチの巣となって倒れる。

コロス「ば、万丈…… あ、あなたって人は……」
万丈「あなたがいい例なのだ、コロス…… ドン・ザウサーへの想いが、愛情だけが心の中ですべてを占めて、ほかのことを何一つ考えられないメガノイドになっている!」
コロス「あの人を愛することは、私の命なのですから……」
万丈「みんな父の亡霊を背負って僕の前に現れるに過ぎない……」

万丈が銃をコロスの眉間に突きつける。

コロス「ド、ドン…… あ、あなた…… 助けて……」


ドン・ザウサー「コロス──」

突然の閃光。万丈が吹っ飛ばされる。

万丈「うわぁ──っ!」
ドン「コロス──っ!」
コロス「ド、ドン!?」

基地の奥から、ドン・ザウサーが現れる。

コロス「あ、あなた……!」
ドン「コロス──」
コロス「あ、あなた……」
ドン「お前を傷つけるのは── だ── 誰だ──」
万丈「ドン・ザウサー!?」

銃撃を放つ万丈だが、ドンはそれを意にも介さず突進し、万丈の首を締め上げる。

万丈「うぅっ!?」


一方の宇宙での戦い。トッポのマサアが攻撃を食らう。

トッポ「うわぁっ! ギャリソン、やられた!」
ギャリソン「了解、トッポ様。至急、戦闘圏から一抜けて下さい」
トッポ「ごめん、後を頼むね」
ギャリソン「お気遣いなく」

トッポがマサアの脱出カプセルで飛び去る。


火星。
万丈が必死に、ドンの腕を振りほどこうとする。

ドン「この力── お前はメガノイド── なのか──」
万丈「ぼ、僕を忘れたのか……? 破嵐万丈を!」
ドン「万丈──? あの破嵐創造の息子──?」

万丈がドンを振りほどき、銃を構える。

万丈「そうだ!」
ドン「万丈は子供だった── 私は── 今まで何をしていたのだ? ──万丈?」
万丈「コロスに利用されていたんだよ。人形のようにな!」

万丈の無数の銃撃がドンを貫く。

ドン「わかったぞ万丈── お前だな? ──コロスをいつも悲しませていたのは!」
万丈「何をっ!」

ドンが遅いかかる。万丈が城から飛び出す。

万丈「ダイターン・カム・ヒヤァッ!」

万丈の飛び乗ったマッハパトロールがマッハアタッカーに変形。
飛来したダイファイターがマッハアタッカーを収容、そしてダイターンに変形する。

万丈「ダイタ──ン3──!!」

ドン・ザウサーがみるみる巨大化、ダイターンの倍の大きさとなる。

万丈「ド、ドン・ザウサー……!?」
ドン「万丈──!」


宇宙での戦い。レイカ機が被弾する。

レイカ「ギャリソン! もう駄目、レーザーが使えないわ」
ギャリソン「ご苦労様、地球へお帰り下さいませ」
レイカ「了解」
ビューティ「よぉし、レイカの分もやるからぁ!」

レイカが脱出、ビューティが奮闘して敵機を撃ち落とす。

ギャリソン「あと3機ですか」
ビューティ「行っけ〜!」

しかし、ビューティ機も被弾する。

ビューティ「ギャリソン、ごめ〜ん! 後を頼むわ」

孤軍奮闘となったギャリソン機。ダルシアのドアンが砲弾を撃ち込む。

ギャリソン「ほぉ、やりますな」

兵士「コマンダー・ダルシア、最後の1人、油断なりません」
ダルシア「何としても撃ち落すのだ! これだけの戦力をむざむざやられては、ドン・ザウサーにもコロス様にも合わせる顔がない」
ギャリソン「では、参りますか」

ギャリソンが脱出カプセルを切り離し、マサア本体がドアンへ特攻。

ダルシア「何ぃ? うわぁ──!!」
ギャリソン「万丈様、そちらのほうはいかがでございますか?」


火星で戦闘中のダイターン3。
次々に攻撃を食らうドン・ザウサーだが、びくともしない。

万丈「スナッパーもクラッシュも効かん、ましてこのザンバーで斬れるわけがない…… あの頭が破壊できればいいのだが……」

ザンバーで斬りかかるダイターンを、ドンが眼光で吹き飛ばす。

万丈「日輪の輝き…… サンアタック!!」

必殺のサンアタックが、ドンの眉間に命中する。

ドン「うぅっ── ば、万丈──!」
万丈「少しは効くのか? そうだ! あの同じところにサンアタックを当てれば仕留められるはずだ!」

しかし、ドンの両手から放った電撃がダイターンに炸裂する。

万丈「うわぁ──っ!!」
ドン「コロスを悲しませた罪! コロスを傷つけた罪! 一身に受けるがいい! 万丈──!!」
万丈「うわぁ──っ!!」
ドン「コロスよ、見るがいい! お前の苦しみの元を作った男の最期を!!」

基地内で、虫の息のコロスがドンを見上げている。

コロス「あ、あなた…… 目覚めたばかりで……」

苦痛に苛まれる万丈の脳裏に、父・創造の声が響く。

(創造『わが子よ…… 勝てる! コロスの必死の脳波が、ドンを一時的に目覚めさせただけだ。人間の精神はそんな、そんな…… そんな……』)

万丈「う、うぅっ…… うっ、僕への謝罪のつもりか……? と、父さん…… これは僕の、僕自身の力だ!! 僕自身の力なんだ!! 父さんの力など、借りはしないっ!!」

万丈が、そしてダイターンが力強く拳を振り上げる。

ドン「おぉっ!? まだ動けるのか!?」
万丈「日輪の力を借りて…… 今、必殺の! サンアタァ──ック!!」

サンアタックが、ドンの眉間に再び炸裂。

ドン「おぉあぁ──っ!?」

眉間から火が吹き始める。

ドン「コロ── スゥゥ──ッッ!!」

大爆発。

コロス「あ…… あなた……」

コロスもついに息絶える。


ボロボロになって倒れたコロスを見つめる万丈。
その表情には、虚しさが満ちている。


万丈「ぼ…… 僕は…… イヤだ!」


メガノイド基地が大爆発。
宇宙空間でダイターンの見送る中、火星が正常な軌道へ帰って行く。


破嵐邸。
レイカ、ビューティ、トッポ、ギャリソンが荷物をまとめている。

レイカ「じゃあね、さよなら」
ビューティ「いやにあっさりしてんのね?」
レイカ「う〜ん…… 仕方ないわ、住む世界が違うんだから。バァ〜イ」

荷物を手に去ってゆくレイカ。
続いて鞄を背負ったトッポが、ビューティの尻を叩いて駆け去る。

トッポ「フフフ、さ、いいお婿さんを探すんだね! じゃあね、ギャリソン」
ギャリソン「はい、よくお勉強なさって下さいませ」
ビューティ「みんな、情緒もへったくれもないんだから…… もう! じゃあね」
ギャリソン「はい」

邸宅を出るビューティ。玄関に車が止まっている。

ビューティ「朝ご飯、パパも来てくれるって?」
運転手「はい、お嬢様」

ビューティを乗せ、車が走り去る。


破嵐邸の窓から次々に灯りが消え、邸宅が闇に閉ざされる。


最後に邸宅から出たギャリソンが門に鍵をかけ、バス停に立つ。

雨が降り出す。
ギャリソンが靴でステップを踏みつつ、鼻歌で番組主題歌を奏でる。


バスがやってくる。
ギャリソンを乗せ、バスが走り去る。


やがて、海の向こうの東の空が、次第に明るくなってくる。


闇に閉ざされた破嵐邸。

その一室にだけ、灯りが灯る──。


(終)
inserted by FC2 system