第15話|歩いてゆく彼方 |
コロニーのミラーを破壊した段階で すでに勝敗は決したといえる── だが── もはやそれは ただの私闘だった |
微々たる戦力しか持たないレジスタンス軍であったが行動は迅速だった そして総統とコロニー・レーザーを失った木星軍に もはや戦う意志はなかった── 生存率は限りなく0に近いと言われた作戦は ミノル・スズキ ローズマリー・ラズベリー2名の生還者を残して 終結した 未帰還数── 5 そして 全てが終わる頃 地球圏へ到達したコロニー・レーザーは 地球から──100万km近く離れた所を通過していった レーザーは真空の宇宙では光を発しない 命中すれば地球に死と混乱を撒き散らす業火は── 誰に知られることもなく──彼方へと消えていった まるで何事もなかったかのように 宇宙は静寂だった…… 連邦軍は例によって事件を隠蔽したが 事件に関係した人々の足跡をたどることはできる 軍に服役したミノル・スズキ大尉は ローズマリー 遊撃作戦の参加者である2人は レジスタンスには英雄として また 残党勢力には“鬼神”として睨みをきかせている ローズマリー しかし これが何というか 彼女がいかに今回の事件を正確に把握 出版停止にすらならず むしろ事件の伝説化に一役買っている |
ハリソン・マディン(元)大尉は 結局色々と 連邦軍から追い出され 今は民間企業に籍を置く身である だが彼の尽力もあって 連邦上層部は確かに事の子細を正確に把握しており かねてより計画していた 月の遷都を加速度的に推し進めている それはたぶん どこのコロニーからもレーザーで狙われない位置に築かれるはずである 虎の子のMSを失ったブラックロー運送の海賊業は開店休業状態 |
「クロスボーン・ガンダム」は── これが目撃された最後の記録となった そして── すでにクラックス・ドゥガチの構成した政治団体は完全に解体されていたが その資産の一部は財団として残された 彼女はそこの当主となった その手腕で いつ倒れてもおかしくない小さな国である木星を 経済の面でよく支えている トビア・アロナクスとベルナデット・ブリエットの名は歴史に残されていない だが── |
たぶん テテニス・ドゥガチのそばに常に寄り添う一人の青年の姿があったことは 記録するに足る出来事であると思う |